2823.米国覇権の衰退



この1週間、米国の覇権がますます弱くなっている。その検討。
                     Fより

米国の外交が破綻してきている。イラン核問題はないというNIE
報告の影響は大きかった。サウジ国王がこともあろうにシーア派の
熱狂的信者であるイラン大統領を巡礼に招待した。スンニ派の中で
も過激なワハーフ派のサウジはスンニ絶対主義であったが、シーア
派と協調にシフトしたようである。また、イスラエルとパレスチナ
の中東和平交渉も始まったが、米国の期待とは遠く離れた内容であ
った。

9日英国もイラクの南部から撤退して、部隊を4500名から
2500名程度に縮小すると発表している。だんだんイラクからも
各国軍隊が撤退し始めている。

これに輪をかけて、サルコジ大統領は、イスラエルのイラン攻撃を
警告したが、米国はイスラエルを止めることができない。イラン攻
撃ができない状況でイスラエルを前回のように説得できない。米軍
人のブッシュ支持が急減して、新しい戦争はできないし、イラクか
らの撤退も促進する必要がある。

次期大統領選に共和党候補を勝たせようとすると、軍人と福音派の
票を取るしかない。ローブがその共和党の戦略を建てているので、
ブッシュ大統領も無視ができない。福音派の牧師であるハッカビー
候補にローブは肩入れしている。福音派の票が確保して、残すは軍
人票である。

中国との米中戦略経済対話でも、人民元の上昇ペースをめぐり両国
の考え方の違いが改めて浮き彫りになり、中国から米ドル安につい
ての不満が出て、米国は人民元の切り上げどころではなく、外貨準
備のドルから他通貨への変更を止めるのがやっとであったようだ。
米国は対中国でも劣勢になっている。

北朝鮮金正日総書記へのブッシュ大統領親書の返答が米国に返され
たようだが、その内容はそっけないものであったようだ。

このような状況をEUは認識して、覇権を米国から引き継ぐ準備を
始めている。EUの問題は、各国の政策決定が優先されるために、
迅速な決断ができないことであるが、EUの新基本条約を09年に発
効して、問題解決の方向を明確にした。

米国の金融・サブプライム問題が大きくなってきた。
米シティグループの最高経営責任者(CEO)にビクラム・パンデ
ィット氏が決まったが、SIVを連結対象にすることで損失は大き
く膨らむことが確定している。このSIVを援助する米サブプライ
ム対策基金に日本の3メガ銀からの融資を米国に要請されたようで
ある。このサブプライム対策基金には欧米の主要銀行から融資を受
けるようであるが、それだけでは基金が足りないので、中東・アジ
アの資金も入れるようである。

FRBは公定歩合を0.25%下げたが、市場予想より少ないので株が
安くなり、これに対して、米国、欧州など5つの主要中央銀行は12日
、各国の短期金融市場にそろって大量の資金を供給する緊急声明を
発表する事態になっている。

ドル安が進行したことで、ペッグ制を取りドルとリンクしている通
貨ではペッグ制の廃止をして、自由化するか通貨切り上げをして、
ドル安を緩和するかの選択をさまられている。サウジアラビアなど
ペルシャ湾岸の5カ国は、当初ドルとのリンクを止めるとしていたが
、ドルのペッグ制はそのままで、通貨切り上げを5ケ国通貨、同時
に実施する方向になったようだ。どちらのしても米国の基軸通貨も
揺らいでいる。

さあ、どうなりますか??
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米軍関係者もブッシュ離れ加速 イラク政策めぐる不満を反映
(ベリタ)

 【コングレス(米アリゾナ州)12日=マクレーン末子】米軍人
の家族にとっては、軍最高司令官である大統領は絶対的存在、多く
の家族は軍ならびに大統領を支持してきた。しかし、最近の世論調
査によると、軍人の家族の過半数がブッシュ離れをしていることが
わかった。長期化するイラク戦争に多くの軍人の家族は苛立ち、ブ
ッシュ大統領のイラク政策に疑問を投げかけているようだ。
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サウジ国王、イラン大統領を巡礼に招待
(nikkei) 
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビアのアブドラ国王はイラン
のアハマディネジャド大統領を18日からイスラム教の聖地メッカで
始まる大巡礼に招待した。厳格なイスラム教スンニ派でメッカの守
護者であるサウジ国王が、同教シーア派のイラン大統領を巡礼に招
くのは初めて。 (12:47)
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米中対話、人民元の上昇ペースで溝・中国「十分速い」強調
(nikkei)
 12日の米中戦略経済対話では人民元の上昇ペースをめぐり両国の
考え方の違いが改めて浮き彫りになった。中国の陳徳銘・商務次官
は記者会見で「我々は人民元の上昇に反対はしないが、速すぎる上
昇に反対する」と指摘。年初からの上昇率が既に6%に達したとして
「上昇ペースは十分に速い」と強調した。

 同日の人民元相場は一時、1ドル=7.3670元と2005年7月の切り上
げ後の高値を更新。中国側は元高容認姿勢をアピールした格好。
だが米側は「人民元の上昇ペースは不均衡問題解決のカギ」(ポー
ルソン財務長官)との立場を崩していない。(07:02) 
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中東和平交渉、7年ぶり再開
(nikkei) 
 【カイロ=安部健太郎】パレスチナ自治政府のクレイ元首相とイ
スラエルのリブニ外相は12日、エルサレムで会談し、中東和平に向
け約7年ぶりの本格交渉を再開させた。11月下旬に米国で開いた中東
和平国際会議を受けたもので、パレスチナ国家樹立に向け2008年末
までの和平合意を目標に掲げる。だが交渉再開のこの日はイスラエ
ルによる入植地問題を巡って双方の主張が対立、めぼしい合意のな
い幕開けとなった。
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イランとの戦争の危険性があると警告=サルコジ大統領、仏誌との
インタビューで
2007年12月13日09時09分 
【パリ12日AFP=時事】サルコジ仏大統領≪写真≫は仏誌ヌー
ベル・オプセルバトゥールとのインタビューで、もしイスラエルが
イランの核開発で自国の安全が深刻に脅かされているとみなせば、
イランとの戦争の危険性があると警告した。同誌は13日に発売さ
れる。
 サルコジ大統領はその中で、イランが国際原子力機関(IAEA
)との協力を強化するならば、民生用の核協力について協議するた
めテヘランを訪問する用意があると述べるとともに、「われわれに
とって問題なのは、米国が軍事介入する危険性がどの程度あるかで
はなく、イスラエルが、自国の安全が真に脅かされているとみなす
かどうかである」と指摘した。
 サルコジ大統領はイランのウラン濃縮作業に言及し、「イランが
現在行っていることについて、民生用の説明がないという事実には
誰もが同意するところである。イランが1年あるいは5年で軍事能
力を開発するかどうかについての議論のみだ」と語った。
 イスラエルはイランについて、アハマディネジャド同国大統領が
イスラエルを消滅させるべきだと繰り返し呼び掛けていることから
、第一の敵とみなしている。〔AFP=時事〕
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EU、政治統合へ新段階・新基本条約に調印、09年発効
(nikkei)
 【ブリュッセル=下田敏】欧州連合(EU)加盟27カ国首脳は13
日、ポルトガル・リスボンで、10月に採択したEU新基本条約(リ
スボン条約)に調印した。EU大統領(常任議長)ポストの創設な
どが柱で、加盟国の批准を経て2009年発効を予定する。EUは大統
領を中心とする新体制に移行、政治統合の加速へ新段階に入る。
ただ、批准手続きではアイルランドや英国の動向に不透明感も残っ
ており、新体制始動の最大のハードルとなる。

 リスボン条約はフランスとオランダの批准失敗で発効が見込めな
くなったEU憲法条約が前身。「欧州合衆国」を連想させる歌や旗
の規定などは削除されたが、実質的なEUの機能強化条項は残った。
(07:03) 
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北朝鮮、米大統領の親書に返答・聯合ニュース
(nikkei)
 【ソウル=山口真典】韓国の聯合ニュースは14日、ワシントンの
外交消息筋の話として「ブッシュ米大統領が金正日総書記に送った
親書について、北朝鮮が返答のメッセージを米国に伝えた」と報じ
た。だが、大統領が親書で要求した「核計画の完全な申告」には具
体的に返答しなかったという。(14日 23:01) 
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米シティ、簿外の7運用会社を連結対象に
(nikkei)
 米シティグループは13日、簿外で運営するストラクチャード・イ
ンベストメント・ビークル(SIV)と呼ばれる運用会社7社を、
2008年1月に連結対象に加えると発表した。

 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を受
けて、SIVはシティに対する信用不安を生む一因となっていた。
シティは財務の透明性を確保し、損失処理を本格化する狙いがある。

 SIVはコマーシャルペーパー(CP)などで短期資金を調達し
、サブプライムローンを裏付けにした債務担保証券(CDO)や住
宅ローン担保証券(RMBS)など長期証券で運用。だが保有証券
の値下がりで資金繰りが悪化。シティはSIVに資金を融通したり
、SIVが発行した買い手のつかないCPの買い取りなどを迫られ
ていた。(11:38) 
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米住宅ローン最大手、基準厳格化で貸付額4割減
(nikkei)
 【ニューヨーク=米州総局】米住宅ローン最大手カントリーワイ
ド・ファイナンシャルは13日、11月の住宅ローン貸付設定額が前年
同月比4割減の230億ドルだったと発表した。焦げ付きが増えている
サブプライムローンなどの貸し出し基準を厳しくしたため。サブプ
ライムローンの貸付設定額は前年同月の20億6000万ドルから1700万
ドルに急減した。全体の設定額のうち借り換えは40%、新規貸し出
しは39%それぞれ減少した。(13:02) 
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米、0.25%追加利下げ・FF年4.25%、経済減速に懸念
(nikkei) 
 【ワシントン=小竹洋之】米連邦準備理事会(FRB)は11日の
米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフ
ェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き下げ、年
4.25%とすることを賛成多数で決定、即日実施した。金融機関向け
の貸出金利である公定歩合も0.25%引き下げ、年4.75%とした。
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通貨切り上げ「湾岸5カ国同時に」・UAE外相ら
(nikkei)
 【ドバイ=加賀谷和樹】サウジアラビアなどペルシャ湾岸の5カ国
は通貨切り上げを同時に実施する方向で検討し始めた。バーレーン
のハリファ外相、アラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ外相が8日
、相次ぎ表明した。輸入価格上昇によるインフレを抑える狙い。
外国為替市場の不安定化を防ぐため、通貨のドル連動(ペッグ)制
度は維持する方針だ。


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