2813.もののあわれ・ご参考までに



もののあわれ・ご参考までに

みなさま

お久しぶりです。

さて、もののあはれ論議が盛んのようですが、

私がカナダに留学中に客員教授として来られていて、論文を書く際
にお世話になった百川敬仁先生(明治大学教授、そのときに私が読
んだ著書は「内なる宣長」(東大出版会)でした)。源氏物語と宣
長の研究者で、これらを天皇制と結びつけて論じられていました。
講演を聞いたときには、深く感銘しました。「思想」がないとさえ
言われる日本の「思想」の原点を説いていたからです。

論の詳細は、ちょっと考えないと思い出せないのですが(当時のノ
ートがあるか探してみます)、
日本人の共同体的感性は、何かがあっても(喜びさえも)最後は「
しみじみとしてしまう」、「すべてを一種の悲哀のうちに受け止め
る」といった「もののあはれ」にあり、それが日本人の思想形成の
核にあると説いていました。

得丸さんが、もののあわれ=悟り と言っていましたが、「最後に
しみじみとした悲哀の気持ちで、物事を受け止める」のは日本的悟
りといえますね。ここで、普通は思考を止めてしまうから。
確かに、石牟礼さんの描く水俣病患者は、自らの悲劇に怒り狂うこ
となく、しみじみとした悲哀の気持ちで受け止め、でもそれが強さ
にもなって(これが強さになるところは極めて日本的だと思う)、
乗り越えていっていましたね。

袖川



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