2759.メルケル独首相来日記念講演



メルケル独首相来日記念講演

              平成19年(2007)9月10日(月)
              於 京都国際会館
              主催 毎日新聞社&(財)稲盛財団
              纏め「地球に謙虚に」運動代表 仲津 英治

 残暑お見舞い申し上げます。

 去る8月31日、幸運にも来日中のメルケル独首相の講演を聞く機会に恵まれ
ました。主催者の毎日新聞社によれば、応募者2500人の内の1000人とか。皆
様方にお知らせ致したく、私なりのメモと理解で纏めて見ました。
                   (07.9.7毎日新聞朝刊にも掲載)。

第1部	パネルデイスカッション
 「環境から社会をどう変えるかージャパン・モデルを目指してー」

 6人のメンバーによる、パネルデイスカッションの中で、コメンテーターの
植田和弘京大教授による、次の発言を代表的発言として伝えたいと思います。

「1997年の京都議定書の成果は、科学が政治を動かしたと言えますが、その
後経済が政治を動かし、地球温暖化を加速させてしまいました。2050年に温
室効果ガスである炭酸ガス発生量を現在の50%にする目標は(毎年全世界で
1.5%弱づつ削減する必要)、開発途上国が50%を排出する現状からすると、そ
れを固定化することが出来ても、残る50%を排出する先進国が自らの発生量を
ゼロにしないと達成できないターゲットです。
 地球温暖化防止のためには、経済社会のあり方を根本的に変えなければな
りません。例として「物づくり」、「街づくり」そして「生活スタイル」の
3点です。」

第2部	「環境保護とグローバリズム」
 アンゲラ・メルケル ドイツ連邦共和国 首相
 10年ぶりに京都へ参りました。1997年の前回は京都議定書の採択の時で、
環境大臣として訪日しました。意義深い滞在でした。

 今年に入ってIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が各作業部会の評
価報告書を発表しました。それらによると地球温暖化は緊急な事態になりつ
つあるが、今世紀末に今より世界平均地球温度を2℃上昇に抑えることが出
来れば、非常な事態は避けうるとのことです。仮にこれが達成できないと
ニコラス・スターン氏によれば、莫大な経費を必要とする事態となります。

 具体的には2050年の炭酸ガス発生量を現在の50%にすることです。今行動を
起こせば、それが可能であり、将来の膨大な出費を抑えることができ、地球
環境と豊かな生活を両立させることが可能となります。何もしなければ、
20%生活レベルが下がることもありえます。豊かさを守るために地球温暖化
防止が必要なのです。

 環境維持・改善は雇用を生み出します。具体例として日本のトップランナ
ー方式が挙げられます。家電など具体的製品で一番性能が良く、省エネ・
省資源の製品を業界の標準目標とするのです。数年でコストダウンが実現し、
全体のレベルが上がり雇用拡大に繋がっています。

 EU(欧州連合)は京都議定書の目標年次である2012年に1990年比で20%
の炭酸ガス減を実現します。ドイツを含む欧州は全世界の15%の炭酸ガスを
発生させています。しかし米国は24%、中国は13%もの炭酸ガスを発生させ
ているのです。米国民は一人当たり年間20トンもの炭酸ガスを放出しており、
欧州民は9トン、そして中国民は3.5トンです。米国の責任は重大です。

 また中国を含む新興工業国(BRICS=ここでは経済発展が著しいブラジル 
(Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China))、南アフリ
カ(South Africa)の5カ国を指す)も急速に炭酸ガス放出量を増やしつ
つあり、彼らも地球温暖化防止に協力すべきです。このたび、訪中した折
も中国首脳に中国も努力すべきだと強調してきたところです。開発途上国に
新しい技術を提供し、彼らの経済成長の伸びと、炭酸ガス放出量を比例させ
ないことが大切です。

 本年6月ドイツのハイリゲンダムにG8(主要国首脳会議=通称サミット)
の直前、日本の安部首相は、「温室効果ガスの排出量を2050年までに世界で
少なくとも半減する」ことを提案され、G8の一致目標となりました。地球環
境問題は一カ国だけでは解決できません。

 次いでエネルギーの真の市場条件が重要です。化石エネルギーは有限なの
で、その価格は上昇して行きます。エネルギー価格には、市場経済の原則が
大事です。地球環境問題を考慮した公正な競争条件が必要です。この政策に
おいて日独はリーダーシップを発揮できます。日本経団連とドイツ産業連盟
は、非関税障壁を無くすことで協議を行っています。地球環境問題に貢献し、
省エネ・省資源で産出される再生可能エネルギーを優遇し、普及させること
が大切なのです。自国で再生可能エネルギーが増加すれば、輸入依存度を下
げられます。エネルギーの節約も大切です。

 来年7月日本が議長国として開催される洞爺湖サミットでは、前述の新興
工業国を地球温暖化防止の枠組みに組み入れるべきでしょう。これは緊急課
題です。
 知的財産権も重要なテーマです。このたびの訪中の際、知的財産権のことを
取上げ、これらは敬意を払うべきそして保護されるべき権利であると強調して
おきました。

我々は同じ運命にあります。同じ船に乗っています。そうした条件の中で世
界のウエイトはアジアにシフトしつつあります。21世紀はアジアの世紀と
言っても良いでしょう。もっと広げて言えば、アジア・太平洋地域にシフト
しつつあるのです。我々はEU(欧州連合)として対応して行きます。

 環境問題以外にも世界の共通課題があります。イランの核開発に対しては
一枚岩で対応すべきです。安全保障は国境線の外で確保されなければなりま
せん。アフガニスタン等でのテロ行為防止には日本の協力が欠かせないので
す。大量破壊兵器の拡大は食い止められるべきです。北朝鮮はその一例でし
ょう。同国による日本人拉致問題に関してもドイツは協力して行くつもりで
す。
 残念ながらアフリカにおける多くの問題に関し、共同して対応できていな
い状態です。EUはアフリカを重視しています(07.9.7付毎日新聞には、環境
問題以外の話は記載されていません)。
                   ご清聴有難うございました。

 ここで京大の学生からの質問に対し、環境問題に関して次のような回答があり
ました。

○ 再生可能エネルギーの価格政策(再生可能エネルギー:枯渇しない永続的
な利用が可能なエネルギーと定義される。太陽光・風力・バイオマス(生物起源)
・小規模水力、地熱、波力など)

 ドイツでは再生可能エネルギーを市場価格より高めに購入する制度を導入した
のは、全体として将来の環境対策コストを考慮しているからです。確かに再生可
能エネルギーの高価格購入政策はエネルギー価格を押し上げており、電力価格は
12セント/KWHとなり、以前より4%上昇しています。最終的には消費者の負担と
なっています。

 しかし年々再生可能エネルギーの購入価格を引き下げる制度にしており、それら
の生産コストダウンも実現しつつあり、全体としていずれドイツ経済への負荷は
減少し、産業の競争力は維持向上するものと認識しています。ドイツ電力供給の
中軸に石炭火力を置いたままでは、排気ガス(炭酸ガスなど)対策にコストが増
大し、全体として環境コストが掛かりすぎることになるのです。2030年を目標に
再生可能エネルギーの優遇政策を存続させることにより、それらの技術が進歩す
ることを期待しています。

○ 地域での環境問題への取組みの意義
地域レベルでの環境問題への取組みは重要で意義があります。細かい努力の
積み上げが成果を生みます(日本で冷房温度を28℃に設定していることなど)。
また中小企業、個人における努力も有効で大切です。
                           講演記録以上

 メルケル首相は、連日のように米国のブッシュ大統領に電話を入れ、地球温
暖化防止の重要性を説いていると言われます。一国の首相として、自国の課題
のみならず、世界を視野に入れ、発言行動している姿勢に大いに共感を覚えま
した。

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仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表

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高井から拙文情報   

日時:  2007年09月14日
   
 週刊実話という意外な本屋から注文があって、中国の軍事に関する
拙文を連載中です。最近号は9.27で売り出し中。これより先に
3回連載。

本誌は暴力団事件があると、この記事を優先するので、拙文は間歇
的な連載になる。霞ヶ関の若い役人などが読んでいるという事です。
本は悪いが、編集スタッフは週刊プレイボーイ、週刊現代などの軍
事組より遥かに立派。営業戦略の手筋か?

                                     高井  
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化石老人

 テロ防止措置法の延長をめぐってアメリカからの強い要望を受けつ
つある作今、もう戦争をしないようにするにはどうしたらいいのか
いろいろに考えますが、日本はいま米軍の膨大な駐留費負担と米国
から買わされているミサイル防衛システムなどの費用を総て近隣ア
ジアのインフラ整備と技術援助に振り向けて文化交流をさかんいし
ていけばシッカリしたアジア友交圏が構築できるものと思います。

人口わずか2000万の疲弊した国の核開発におびえて膨大な軍事
費を使うのではなくこの国の再生に協力して真の友好関係を築くこ
とこそが拉致問題の早期解決と地域安定に資するものだと思います。

出来るだけ早く全国の米軍占領基地の桎梏から逃れ、米軍軍事シス
テムの下請けを脱し東洋人どうしの経済協力権を築き上げていくこ
とこそ平和日本に課せられた任務であると思います。

先の大戦では国家防衛という美名の下に我々庶民は戦場で日本の国
土で何百万という犠牲者をましたそして支配層は自らの命をささげ
ることなく生き延びて再び愛国心とか国家とか言い始めていますが
、もう再びジャングルのなかでウジにまみれて死んだり煮えたぎっ
た川の中で親子ともども最後をむかえたり原爆の後遺症を死ぬまで
かかえるような悲惨な目にあわないよう絶対に戦争だけは避けるべ
きだと思います。

それでも正義とか国のための戦争を主張するひとたちには先ず自分
の親族を一番危険な任務につかせてもらうことにっしましょう。
もうこの辺で防衛、外交については発想の転換をしないと我々日本
人は再び他国からの使そうの踊らされて戦火に巻き込まれ民族絶滅
の危機に晒されることになるかもしれません。
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(Fのコメント)
アフガニスタンで戦っているのは、イギリス軍、ドイツ軍など欧州
のNATO軍ですよ。このため、テロ防止措置法を破棄すると、
日本は反欧州主義になってしまう。反米なら分かるが、反欧州では
日本は中ロと同じ道を取る事になる。

テロ特別処置法の延長ができないと、欧米諸国からの強烈な反発が
来ることになる。自由主義国連合からの脱退に等しいことになる。
国家の安全保障上、経済上、絶対にやってはいけないことである。



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