対米関係対等への道しるべ 和田 中露と中央アジア4ヵ国、カザフスタン、キルギスタン、タジ キスタン、ウズベキスタンで構成される「上海協力機構」(SCO )初の軍事演習が8月の17日迄の9日間行われた。機構内の軍事協 力を狙ってのロシア主導によるものとみられている。この軍事演習 に先立つこと2005年ロシアは中国、インドとあいついで軍事演 習をおこなっている。 従来この機構は中露主導の反米機構とみられていたが中国とロ シアでは温度差がみられるようだ。中国としては極力反米を前面に は出さずエネルギー需要国としての資源を求めて関係を強化したい というのが本音とみられている。一方中央アジアをとりこむ中露の 覇権争いという面で両国の利害が対立していると見る専門家もいる。 ただ両国ともにこの地でのアメリカの排除ということでは一致をみ ている。 アメリカとしては中露を地球規模で封じ込めようとする計画を 着々と進めている。ミサイル防衛(MD)システムである。手始め に2012年までにポーランドには迎撃ミサイル10基をチェコに はレーダー施設の建設を計画している。一方東からは日本が重要な 役割を受け持つことになる。日本のMD関連予算は平成19年、 当初予定の1,960億円から2,160億円と増額され対前年比 56.5%の伸びとなっている。今年度中に運用開始を予定してい るのはPAC−3(地上配備型の迎撃ミサイル)でありSM−3( 海上配備型迎撃ミサイル)も配備予定。このミサイルシステムとと もに世界最強の戦闘攻撃機、敵のレーダーに写らないステルス機能 をもつF22の配備もある。 迎え打つロシアとしてはレーダー網をかいくぐるミサイル、ト ーポリMの開発に乗り出した。また先頃中国ではロシアからの技術 援助を受けた軍事衛星による衛星の破壊実験に成功し宇宙軍拡競争 の幕を開いた。 アメリカの一極支配を決して許さないといった意思を感じ取る ことができる。 獰猛とも見えるアメリカの単独行動主義に対してEUは国際協 調を骨子とした安全保障戦略を展開している。ブッシュ政権を民主 化と市場原理という武器で軍事グローバリズムと経済グローバリズ ムを推し進めているととらえ、EUは国際法整備、独自の軍事構築 に裏づけられた戦略的代替案を突きつけている。 アメリカが軍事力を背景に世界政府をめざそうが、そんなこと は無理なことだとするならばわが国としての方向性はどこにあるか はおのずと知れたこととなる。 世界の方向が多極化に向かわざる を得ないと見るならば、そこはEU、ロシアを含めたアジア、アメ リカの三極体制を視野に入れざるをえなくなる。 わが国はアジアの中でそれなりの信頼とリーダーシップを保持 することによってアメリカと対等な関係を構築できるという指摘も ある。今のままだと外交、軍事をアメリカに丸投げし、その反動は 、市場を開放せよと言われればハイと言い、アメリカの財政難を救 えと言われればダアと米国債を買い続ける。そんないびつな関係で ある。ここに国力を発揮する場がはたしてあるのだろうかと危惧す る向きも確かにある。