2742.米国の動揺



米国は、イラク戦争とサブプライム問題の両面で難しい局面を迎え
ている。この検討。     Fより

米国は、金融と軍事産業が経済の中心にある。軍事産業以外の製造
業は、1980年代、日本企業に負けて撤退したために、航空機や
自動車など軍事産業に関係するか、日本企業が進出していない部門
に限られている。

1990年以降、IT産業の独占で息を吹き返しが、現時点では
ITのハードは台湾・中国に、ソフトはインドに取られて、国の中
心的な産業となっていない。Iphoneも製造は中国で、部品も日本製
ソフト開発はインドというように、米国でやったことは、設計と販
売である。勿論、企業としての儲けが大きいが、そこに関わった労
働者の数は、断然少ない。

米国は金持ちも多いので、高価な物でも売れる。このため、テスラ
・モータのような3000万円もする電気自動車を作り、売り出す
ことができる。現時点で400台以上も予約があるという。しかし、
部品のほとんどは、米国以外の部品会社やリチュームイオン電池は
台湾製とそのほとんどを外注している。しかし、斬新な企画ができ
る。

それに比べると、日本の自動車会社は保守的で電気自動車に本格的
には乗り出していない。しかし、ここで言いたいことは、米国は製
造業も空洞化して、企画と販売になっていることだ。

その米国経済の中心的な金融業、特にファンドの危機が押し寄せて
いる。世界のM&A急減や米格付け会社スタンダード・アンド・プ
アーズ(S&P)の信用低下を引き起こしている。ファンドの出番
が無くなって来る事になる。

このコラムでも再三に渡り取り上げているが、やっとFRBとブッ
シュ政権は重い腰を上げた所である。日本のバブル崩壊と同じよう
な土地価格の大幅下落や信用収縮が起こると、ファンド関係者の給
与が減り、不況が拡散して、サブプライムの10倍以上もあるオル
トAやプライム・ローンの返済不能が多発し、金融機関の不良債権
は膨大な量になり、また、それを組み込んだ債権は世界的に拡散し
ているので、次に何が起こるか予断を許さない。今、起こっている
ことは日本のバブル崩壊過程のような感じで見ている。

米国の諸機関の迅速な、そして過大と思えるような対応が必要であ
る。そして、そのような対応の方が、結果的に対策費は少なくて済
む。日本の経験で、「TO SAMLL TO LATE」の対応
では、今後に大きな出費が必要になると見る。

前FRB議長グリーンスパンは、日本のバブル崩壊とその後を研究
して、なるべく早め早めに対応していた。シティバンクやヘッジフ
ァンドの金融危機でも対応が早かった。しかし、現FRB議長バー
ナンキは、今までの対応を見ると、対応が遅いような気がする。
FRB議長にバブル崩壊の日本研究をお願いしたい。

もう1つの米国の課題が、イラク戦争終結に向けてどうするかとい
う問題である。米次期統参議長が「派兵幕引きの準備を」と発言し
ているように撤退の準備段階に入った。しかし、急には撤退できな
い。このため、ブッシュ政権は500億ドルの追加戦費を要請して、
来春まで増派を継続して、その間に撤退計画を練る様である。複数
のシンクタンクが検討を開始している。

このような情勢の中で、日本はテロ特措法延長が難しくなっている
し、韓国はアフガニスタンから撤兵を年内としたし、英軍はイラク
南部から徐々に撤退するというように、米国の動向を見て世界の各
国は動き始めている。

日本のテロ特措法とは、インド洋を航行する同盟国軍の艦船に燃料
などを補給することであるが、アフガニスタンへ派兵しているNA
TO軍にとっても日本の補給ラインは出費を抑える効果がある。
このため、来日したドイツのメルケン首相もテロ特措法延長を期待
していた。

米国からイラクのマリキ首相は見放されると、後ろ盾がないマリキ
政権は崩壊することになる。このため、米国を引き止めるために、
しぶしぶ旧バース党公職復帰を認めた。宗派間抗争や民族問題を解
決するための施策を早期実施すると発表した。

イラクのアフマディネジャド大統領は、米軍撤退後、イランが権力
の空白を埋めると声明を出したが、これは内戦時、シーア派を助け
るという意味である。サウジは既にスンニ派民兵を助けると声明を
出している。米軍撤退後、イラク内戦をどう抑えるかが今後の課題
である。サウジとイラクがその鍵を握っている。

それと密接に絡んでいるのが、イラクがウラン濃縮を拡大している
とIAEAの報告書で言う。イラクに北朝鮮はミサイル技術を売り
渡しているので、核とミサイルが揃うことになり、イスラエルは危
機感を持っている。米国はイラクからは撤退するかもしれないが、
同時にイランの核濃縮施設を爆撃する可能性はある。

さあ、どうなりますか??

2730.信用収縮をどう止めるか
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/190819.htm
2724.米国発金融不安について
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/190812.htm
2707.米国の株価上昇はおかしい
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/190721.htm
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2007/09/01米アメリクエストが廃業へ
           =サブプライム大手、シティが資産取得 

【ロサンゼルス31日時事】米紙ロサンゼルス・タイムズなどが電
子版で31日報じたところによると、2005年に低所得者向け高
金利型(サブプライム)住宅ローンで米最大手だったアメリクエス
ト・モーゲージ(カリフォルニア州)が、廃業することを決めた。
最近の金融市場の混乱を受け、サブプライム市場が急速に縮小した
ためで、廃業に伴い提携関係にある米銀最大手シティグループが、
アメリクエストの親会社ACCキャピタル・ホールディングズから
関連資産を買い取る。買い取り価格などは不明。従業員2000人
はシティが引き継ぐという。 
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米S&P社長が退任、サブプライム証券格付けで混乱 = 読売新聞

 【ニューヨーク=山本正実】米出版大手マグロウヒルは31日、
傘下の米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の
キャサリン・コーベット社長が退任し、後任にデブン・シャーマ執
行副社長が就任すると発表した。

 S&Pなど米格付け会社は、米国の低所得者向け住宅融資「サブ
プライムローン」の債権を担保とした証券に高い格付けを与えてき
た。その後、同ローンの焦げ付きが急増すると一斉に格付けを引き
下げるなど、投資家を混乱させたとの批判が広がっている。

 社長交代は、経営責任を明確にする狙いがあるとの見方も出てい
る。(2007年9月1日12時23分 読売新聞
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米議会、関連法案の立法作業急ぐ・サブプライム対策で
(nikkei)
 【ワシントン=藤井一明】米国の信用力の低い個人向け住宅融資
(サブプライムローン)について、ブッシュ大統領が借り手の支援
策を表明したことを受け、米議会は年内可決も視野に関連法案の立
法作業を急ぐ。また、米連邦準備理事会(FRB)は18日に開く次
回の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、企業や金融機関の
聞き取り調査も活用して景気実態の把握を急ぎ、本格的な利下げに
踏み切るかどうかを最終判断する。

大統領は1日のラジオ演説で前日に公表したサブプライム総合対策を
改めて説明。米国民に住宅保有を促す機関である連邦住宅局(FHA
)について「改革が重要だ」と述べ、保証額を引き上げたりして
FHAによる債務保証の対象者を拡充する方針を示した。持ち家の
値下がりに悩む人への減税にも言及。法改正による対策実現へ「議
会に迅速な対応をお願いする」と強調した。(07:00) 
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世界のM&A急減、8月71%減・市場混乱、ファンド資金調達滞る
(nikkei)
 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題によ
る金融市場の混乱で、世界のM&A(合併・買収)が急減している。
8月は金額で1718億ドル(約20兆円)と前の月に比べ71%減った。
企業の有力な買い手である米欧の買収ファンドが資金を調達しにく
くなっているためだ。急膨張してきたM&Aの流れが変わるとの見
方も出ており、今後、世界的な企業再編や株式相場にも影響が出そ
うだ。

 米有力金融情報会社のトムソンファイナンシャルに依頼し、世界
各国のM&A案件を集計した。件数は前月比22%減の2709件だった。
1件あたりの金額は約6300万ドルと前月の4割弱の水準に“小粒化”
しており、大型案件の急減ぶりがわかる。(07:00) 
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米、サブプライム問題で政策を総動員・大統領が発表
(nikkei)
 ブッシュ米大統領は31日、信用力の低い個人向け住宅融資(サブ
プライムローン)問題について、政府による信用保証の拡充などを
柱とする対策を発表した。米連邦準備理事会(FRB)のバーナン
キ議長も同日、サブプライム問題を発端とする金融不安を沈静化す
るため「状況を監視し、必要に応じて行動する」と表明。今後の情
勢次第では本格的な利下げも辞さない姿勢を示した。米政府・金融
当局は政策総動員で対応する姿勢を明示。これを受けてニューヨー
ク市場の株価は一時、前日比で150ドル超上昇した。(02:36) 
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「派兵幕引きの準備を」 米次期統参議長 2007/08/01

 ワシントン・ポスト8月1日付によると、ブッシュ大統領が次期
統合参謀本部議長に指名したミューレン提督は、指名承認を審査す
る昨日の上院公聴会で、イラク戦争は米軍に大きな犠牲をもたらし
ていると述べ、アメリカ軍は「不敗ではない」と警告するとともに
、イラク派兵に「最終的な幕を降ろす計画」が必要になっていると
強調した。
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米軍撤退後はイランが権力の空白埋める 2007/08/29

 イランのアフマディネジャド大統領は28日、米軍がイラクから
撤退する時には、米占領軍に成り代わって、生じるであろう「権力
の空白を埋める」用意がある、と語った。イスラム・メモが28日
夜11時38分(メッカ時間)の速報で伝えた。

 イスラム・メモの報道によると、2時間の記者会見をおこなった
イラン大統領は、「占領軍からなる政治勢力は急速な崩壊に瀕して
おり、われわれは間もなく同地に大きな権力の空白を目にすること
になるだろう」と述べた。アフマディネジャドがここで示唆してい
ることは、彼が「イランの友人」と呼ぶシーア派根本主義の民兵に
支持された中東の覇権国家として、アメリカにとって替わる用意が
あるということだ。

 アフマディネジャドは、中東の安全保障のために「何千キロも離
れた国(=アメリカ)がやってくる必要はない」と述べ、アメリカ
その他の国はイラクとアフガニスタンで問題を解決できなかったと
語った。 
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米、拉致問題提起へ・1日から作業部会
(nikkei)
 【ジュネーブ=山口真典】ヒル米国務次官補は北朝鮮の核問題を
巡る6カ国協議の「米朝国交正常化」に関する作業部会に出席する
ため31日、ジュネーブ入りし、同市内のホテルで記者会見した。
9月1、2両日に開く同部会で日本人拉致問題を取り上げる考えを
表明。「北朝鮮は完全に説明し、二度と起こらないよう明確に保証
すべきだ」と述べ、再発防止の確約など北朝鮮側の取り組みを求め
る方針を示した。

 次官補は拉致問題を「日朝間関係を超えた問題であり、米国にと
っても重要だ」と指摘。北朝鮮が求めている米国のテロ支援国家指
定の解除問題を部会で議論する際、米側から拉致問題を提起する姿
勢をみせた。ただ、拉致問題解決を、指定解除の要件とするかどう
かは明言を避けた。(07:00) 
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テロ特措法延長に期待感 米大統領補佐官(ASAHI)
2007年09月02日00時38分

 与謝野官房長官は1日夜、ハドリー米大統領補佐官(国家安全保
障担当)と電話で会談した。ハドリー氏は、11月1日に期限切れ
となるテロ対策特別措置法の延長に期待感を表明し、「(同法の延
長は)米国のみならずインド洋で活動している国々を含む国際社会
にとって重要な課題だ」と強調した。 

 これに対して、与謝野氏は「安倍政権の外交安保の基本方針に変
更はなく、引き続き日米同盟の強化に努めたい」と述べ、同法の延
長に全力を尽くす考えを伝えた。 
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イラン、ウラン濃縮活動を拡大 IAEAが報告書(ASAHI)
2007年08月30日22時00分

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は30日、
イラン核問題に関する非公開の報告書を理事国(35カ国)に配布
した。国連安全保障理事会の制裁決議を無視してイランがウラン濃
縮活動を拡大していると指摘。一方で、イラン側と合意した作業計
画は重要な前進で、核問題の未解明点の段階的解消を目指すとした
が、米欧からは作業計画に批判も出ている。 

 報告書によると、イラン中部ナタンズの濃縮施設では、遠心分離
器164基を連結した「カスケード」と呼ばれる装置を、当面の目
標である18系列(約3000基)のうち、14系列(約2300
基)にまで増設。うち12系列に濃縮ウランの原料の六フッ化ウラ
ンを注入して濃縮活動を続けている。2系列は試験運転中で、さら
に2系列を増設中だ。 

 報告書は、IAEAがイラン側の求めに応じて27日に公表した
作業計画を添付。計画では、9月末までにナタンズの濃縮施設の査
察方法を詰め、11月までに高性能の遠心分離器開発問題の解決を
目指す。 

 その後、高濃縮ウラン検出問題、核弾頭の製造説明書とされる金
属ウラン関連文書、ミサイル弾頭開発との関連が指摘されるイラン
の「グリーンソルト計画」といった未解決の問題を段階的に解明し
ていくとしている。 

 イラン側は作業計画で協力姿勢をアピール、安保理の追加制裁を
回避する狙いがあるとみられる。だが、作業計画が安保理が求める
濃縮活動停止に触れていないことに対し、米欧などが「不十分」と
指摘。段階を踏む手順に対し、欧州外交筋は「時間稼ぎにすぎない
」と批判した。 
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500億ドルの追加戦費要請へ=イラク増派、来春まで継続か−米紙
8月29日16時1分配信 時事通信

 【ワシントン29日時事】29日付の米紙ワシントン・ポストは、ブ
ッシュ大統領が9月、イラクでの軍事作戦に関連し、最大500億ドル
(約5兆7000億円)の追加拠出を議会に要請する計画と報じた。
 追加戦費の要請は、ブッシュ政権が議会による部隊削減要求を抑
えることができるとの自信を深めていることを意味しており、部隊
増派による軍事作戦は2008年春まで継続される見通しという。
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マリキ首相、抗争解決策発表 旧バース党公職復帰(ASAHI)
2007年08月27日21時38分

 イラクのマリキ首相は26日、スンニ派勢力、クルド人勢力の指
導者とともに会見し、宗派間抗争や民族問題を解決するための施策
を早期実施していくことで合意したと発表した。 

 ロイター通信によると、法的手続きなしで拘束されている収監者
の釈放や、旧フセイン政権で実権を握っていた旧バース党関係者の
公職復帰、石油収入の分配方法などを定めた法案を議会に提出する
という。 

 マリキ政権では8月に入り、閣僚の辞任や閣議ボイコットが相次
いでおり、米国で同首相の政治手腕を疑う声が上がっているほか、
仏外相も米誌インタビューで「首相を取り換えるべきだ」と発言す
るなど批判が高まっている。 

 マリキ首相は、今回の合意で批判をかわし、引き続き米国などか
ら支援を得ることを狙っているとみられる


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