2735.イラク情勢と米国



イラク・シーア派政権と米ブッシュ政権との間に隙間風が吹き荒れ
ている。この検討。        Fより

新聞記事を見なくても、イラク情勢は米軍増強で益々混迷するで
あろうと見ていたが、とうとうマリキ首相のシーア派とスンニ派の
亀裂が、埋められない所まで来ている。自爆テロも頻発して、治安
の確保もできない状況になっている。

しかし、米ブッシュ政権はマリキ首相を解任できない。一応、選挙
の結果で決めた首相であり、米国の援助で成り立つ傀儡政権ではあ
るが、米国の自由にはならない。シーア派でも穏健なマリキでさえ
、この在りようで、シーア派にもスンニ派にも候補が居ない。

このマリキ首相も米軍に期待したが、米軍の力がなく自爆テロを防
止できないし、イラク軍を養成しているが、その軍に配った武器を
持って、ゲリラ組織に行ってしまうために、紛失した兵器が19万
丁にも達している。現時点でもシーア派のゲリラはイランの支援、
スンニ派のゲリラにはサウジが支援をしている。

米国に頼れないマリキ首相は、隣国のシーア派で自分も亡命したこ
とがあるイランに治安維持や経済支援を求め、イランの同盟国であ
るシリアにも同様な支援を要請している。しかし、これは米国の敵
対国に支援を要請することになり、米国としては面白くない。マリ
キとしては米軍撤退後に来る内戦に備えるために、イランとシリア
を確保するしかない。

また、米軍は状況をサウジに報告している。サウジは内戦になれば
、イスラム社会主流派のスンニ派民兵をイスラム圏からイラクのス
ンニ派を助けるために派遣するし、その費用等の経済的な支援をす
る用意があると公言している。

米国政治は民主党が議会を押さえ、共和党が行政を押さえるという
構造で、民主党はイラクからの撤退を主張している。今までは、米
軍の現役司令官は、イラクからの一方的な撤退はできないとしてき
たが、米軍を増強したのに情勢が好転しないことで、部分的な撤退
も視野に入れ始めた。これを実行すると、米軍は将来的に撤退する
ことが確定して、撤退後のイラク内戦も確定することになる。

米ブッシュ政権を精神的に支えてきたキリスト教福音派の教会も軍
派遣の信者の死や信者からイラク戦争の実体を聞いて、イラク戦争
に賛成から反対になってきている。このため、世論の65%以上が
イラク戦争に反対になっている。

それと、この戦争に引き入れたイスラエルに対しても、不満が高ま
り米国にとって重要な国家という位置づけの知識人調査で17%ま
で減っている。やっと、米国知識人たちはイスラエルのリクード別
働隊であるネオコンの縛りから抜け出た状態になっている。

しかし、ニューヨークはユダヤ人が相対的に多い地域であり、民主
党クリントン大統領候補は、逆にイスラエル支持を鮮明にしている。

どちらにしても米国は中東のイスラム教徒たちを敵に戦っているた
めに、ロシアがいくら反米的でも上海協力機構が反米的であろうと
も、2正面作戦はできないために、問題視しない対応をしている。
ロシアのプーチンはここぞとばかりに反米的なスタイルを取ってい
る。冷戦時代に匹敵する軍備を持つために軍事費も増強している。

一方、米国の中東シフトの文脈で、北朝鮮とも融和的な対応をして
いる。このようなときに、米国の住宅バブルが弾けて、住宅ローン
から始まる信用収縮になり、経済的な傷も負った状態になっている。
イランとの戦争に拡大することはないと思うが、経済的な拡大のた
めに、戦争拡大という手もあり、

さあ、どうなりますか??

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イラク首相「米の政権批判、無責任な発言」
(nikkei)
 【カイロ=金沢浩明】イラクのマリキ首相は22日、米国のブッシ
ュ政権内からマリキ政権に対して国民和解が進んでいないとの失望
の声が出ていたことについて、「無責任な発言」と強く反発した。
訪問先のシリアでの記者会見で述べたもので、「我々はイラク国民
によって選ばれており、外部の誰も我々に日程を押しつける権利は
ない」と強調した。

 イラクでは22日も、北部バイジで警察署へ大型車が突入する自爆
テロがあり、少なくとも27人が死亡したほか、米軍ヘリコプターが
墜落し米兵14人が死亡した。(07:01) 
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イラク首相の交代求める声、米で強まる
(nikkei)
 【ワシントン=加藤秀央】来年の米大統領選に出馬している民主
党のヒラリー・クリントン上院議員は22日、声明を発表し、イラク
のマリキ首相を交代させるべきだとの考えを示した。民主党内では
レビン上院軍事委員長も同様の意見を表明しており、イラク国内で
の宗派間対話の遅れの責任をマリキ首相に求める声が強まっている。

 クリントン議員は声明で、「イラクの指導者たちは旧バース党員
の公職復帰や地方選挙の実施時期の決定など、自らが定めた目標を
達成できていない」と指摘。レビン委員長の発言に同意を示す形で
、「イラク国民議会は来月の休会明けに、マリキ首相をもっと強い
結束力をもつ人物に交代させるべきだ」との考えを示した。

 レビン委員長はイラク視察から帰国した直後の20日、「宗派色が
より薄い首相」を選ぶべきだと述べ、マリキ首相の“不信任”をイ
ラク議会に求めた。レビン氏もマリキ内閣が「機能していない」と
厳しく批判している。(12:00) 
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米中央軍司令官、サウジ国王らと会談・イラン政策で協議か
(nikkei)
 【ドバイ=加賀谷和樹】中東地域を担当する米中央軍のウィリア
ム・ファロン司令官は21日、サウジアラビアのジッダで同国のアブ
ドラ国王、スルタン国防相(皇太子)と相次ぎ会談した。国営サウ
ジ通信が報じた。核兵器開発が疑われるイラン対策、イラク情勢の
安定について意見を交換したとみられる。

 米国はイラン封じ込めの一環として、ペルシャ湾岸の親米国家の
リーダー役のサウジに今後10年間で200億ドル(約2兆3000億円)分
の武器を供与する計画を表明。サウジはイラクのイスラム教スンニ
派民兵を援助し、シーア派民兵を支援するイランに対抗していると
いわれる。(12:00) 
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ブッシュ大統領、イラク首相に「一定の不満」(ASAHI)
2007年08月22日10時34分

 ブッシュ米大統領は21日、訪問先のカナダでの共同記者会見で
、イラクのマリキ政権について「一般的に言って、一定の不満があ
る。政府が国民の要求を満たすことが出来なければ、国民は政府を
入れ替えるだろう」と語った。米政府は9月半ばにイラク情勢の報
告書をまとめるが、閣僚離脱などで「死に体」化が進むマリキ首相
への不満が高まっている。 

 ブッシュ氏はマリキ氏への不信任は「イラク国民が決めることで
、米国の政治家が決めることではない」とも述べた。一方で「イラ
クの草の根レベルでは暴力に飽き飽きしている」と強調。イラク政
府に対して「議会を通じ、傷をいやすためにもっと取り組む必要が
ある」と求めた。 

 マリキ氏への不満が噴き出した発端は、上院軍事委員会のレビン
委員長(民主)の発言だ。同委員会の共和党有力者、ウォーナー議
員とともにイラクを訪問した後の20日、電話を通じた記者会見で
「イラクの議会が再開後、マリキ政府を不信任し、宗派対立が少な
く、国民を統合できる首相を選出することを望む」と述べた。 
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「死に体」マリキ首相、シリアを訪問 「反米国家」行脚(ASAHI)
2007年08月21日20時16分

 イラクのマリキ首相は20日、シリアの首都ダマスカスを訪問し
、オタリ首相とイラクの治安や難民問題などについて協議した。
80年代初めに断交したイラクとシリアは昨年末、四半世紀ぶりに
国交を回復。旧フセイン政権期にシリアに亡命していたマリキ氏は
首相としての初訪問となった。21日にはアサド大統領と会談した。 

 マリキ氏は今月のイラン訪問でアフマディネジャド大統領との蜜
月ぶりを見せつけ、ブッシュ米大統領の不興を買ったばかり。だが
、治安悪化や閣僚ボイコットなどで急速に「死に体」化が進むマリ
キ首相にとって近隣の大国イランとシリア訪問は、後ろ盾を求めて
の「反米国家」行脚と言えそうだ。 

 会談で、オタリ氏は「占領軍の存在が過激派を引きつけ、イラク
の治安を悪化させている」としてイラク駐留米軍の撤退日程を設定
するようマリキ氏に要求。マリキ氏は「治安回復には周辺国との協
力が重要だ」と述べるにとどめた。 

 オタリ氏は「シリアは150万人近いイラク難民を受け入れ、社
会的、経済的な重荷に耐えている」とも強調。難民帰還に不可欠な
治安回復と国民融和を促した。 
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イラク・マリキ首相のイラン接近に激怒する米政権 対イラン攻撃再燃
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200708111822516

2006年5月に発足したイラク正式政府のマリキ首相が06年9
月に続き今年8月も米国が最も敵視するイランを訪問、経済、安全
保障での協力協定に締結した。しかも、ブッシュ米大統領がワシン
トン近郊の大統領山荘・キャンプデービッドに初めて招いたアフガ
ニスタンのカルザイ大統領までが会談後、隣国イランとの関係改善
が進んでいると公にした。その直後のテヘラン訪問だけに米政府は
激しい拒絶反応を示した。イラク戦争泥沼化の元凶としてイランに
よるシーア派イラク反米武装勢力への支援を挙げてきたブッシュ政
権では、チェイニー副大統領を筆頭に対イラン強硬論が再燃してい
る。(ユンゲヴェルト特約) 
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イラク・マリキ首相がけっぷち 閣僚37人中17人去る(ASAHI)
2007年08月11日18時27分
 イラクのマリキ首相が、がけっぷちに立たされている。今月に入
って閣僚の辞任やボイコットが相次ぎ、閣僚37人中17人が不在
という異常事態だ。米国の反対を押し切って、国会は9月初旬まで
の夏休みに突入。同15日のイラク駐留米軍司令官らによる米議会
への情勢報告期限までに、ブッシュ政権が強く求める石油法案など
の「宿題」を仕上げるのは、ほぼ絶望的な情勢だ。 

 首相を支えるイスラム教シーア派の中からも、反米強硬派のサド
ル師派閣僚6人が「マリキ氏が米軍撤退日程を示さないのが不満」
としてすでに離脱していたのに続き、今月1日にはスンニ派有力政
党「イラク合意戦線」の閣僚6人が辞任を表明。 

 マリキ氏は辞任受け入れを拒否して復帰を呼びかけているが、
さらに世俗派アラウィ元首相派の閣僚5人も「政治参加や治安対策
をめぐる要求をマリキ氏が無視した」(同派議員)として6日から
閣議ボイコットを始め、追い打ちをかけた。 

 マリキ氏の求心力の低下は明らかで、アラウィ氏やジャファリ前
首相らが「マリキ後」の政界再編に向けて水面下で動き始めている。 

 アラブメディアによると、ブッシュ米大統領は最近、イラクのタ
ラバニ大統領と電話会談し、マリキ政権閣僚の相次ぐ離脱に懸念を
表明。「米国は、マリキ首相よりもイラクの政治プロセスへの支援
に関心がある」と、首相を見限るような発言さえしたとされる。 

 米議会でのイラク情勢報告を目前に控え、米側からは「ワシント
ンの時計の針は、バグダッドの時計よりも断然速く進む」(クロッ
カー駐イラク米大使)といった焦りの声が漏れ始めた。
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イラクに供与の銃、19万丁不明=武装勢力の手に渡る?−米紙
8月6日17時1分配信 時事通信
 【ワシントン6日時事】6日付の米紙ワシントン・ポスト(早版)
は、米国がイラク治安部隊の育成・強化のために供与しているAK47
自動小銃(カラシニコフ銃)や拳銃のうち、推定19万丁が2004年か
ら05年にかけて行方不明になっており、反米武装勢力の手に渡って
いる恐れがあると報じた。会計検査院の報告書で分かったという。
 銃を野放しにしている米国の体質が国運のかかるイラクでもにじ
み出て、駐留米軍を危険にさらしている格好だ。
 報告書作成に携わった会計検査院当局者が同紙に説明したところ
では、米軍当局は行方不明になった銃がどうなったのか皆目見当が
付かないと言っているという。イラク復興事業の監査官は昨年、
1万4000丁の銃が行方不明になっていると報告したが、実際にはけた
違いの水準だったことになる。
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米国防長官「イラク撤退計画」存在認める・ヒラリー氏に書簡
(日本経済新聞)7/27 
【ワシントン=加藤秀央】米国のゲーツ国防長官が民主党のヒラリ
ー・クリントン上院議員にあてた書簡で、米軍のイラク撤退計画の
存在を公式に認めた。米軍は常に様々な部隊配置計画を準備してい
るが、国防長官が特定の上院議員への書簡でその一端を明らかにす
るのは異例だ。

 ゲーツ長官は25日付の書簡で「駐留規模を縮小するための計画策
定は行われている」と明記。「優先課題である」とも認めた。

 発端は撤退計画を策定すべきだと訴えたヒラリー氏に、エデルマ
ン国防次官が書簡で「公の場での拙速な撤退論議は敵のプロパガン
ダを利するだけ」と返答したこと。大統領選に出馬し世論の目が気
になるヒラリー氏が猛反発した。(13:02) 


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