■「小沢外交」の帰趨 −テロ特措法と日米の今後− ◆シーファー大使との会談◆ 参院選で民主党を大勝させ野党で過半数を得た小沢代表が、11月に期限が切れるテ ロ対策特別法延長に反対を明言している。 米国は、シーファー大使を民主党本部に送り小沢氏を説得したが、効果はなかった。 小沢氏は、アフガニスタン戦争は国連決議を得ずに米国が自衛権の行使として始めた 戦争だとして、それに対するテロ特措法による協力は出来ないという立場だ。 一方、シーファー大使は、この戦争「不朽の自由作戦」(OEF)はドイツを始めと したEU諸国の参加とロシア・中国を含む多くの国からの支持を得たもので、今年3 月に採択された安保理決議1746には、「OEF参加国の支援を受け、アフガン政 府がタリバンやアルカイダとの戦いを継続すること」を求めており、OEFが明記さ れている事をもって国連の活動であると主張した。 01年の9・11同時多発テロを受けて直後に開戦したこの戦争は、筆者の理解では 当時実質的な報復戦争の要素が強いとして開戦の国連決議を得られなかったが、諸外 国はテロへの怒りと、開戦しなければ米国社会が持たない事を慮って支持をし、集団 的自衛権の行使として参加し、その後、後付けで国連が原状を追認したものである。 ◆歴史の類例と「国連原理主義」◆ 今回、米国にNOを突きつけた形になった小沢氏と「小沢外交」の行方はどうなるの か。 衰えつつあるとは言え、今後2、30年は依然唯一の超大国であり続けると思われる 米国の意向に逆らう事は、小沢氏の政治上の父親である田中角栄元首相の独自外交と その後の失脚を連想せざるを得ない。直接的に言うなら米国に潰されないかというこ とである。 歴史に類例を探るなら、古代に当時の国際情勢を読み切り超大国である隋の煬帝に 「日出る処の天子」云々の国書を送り対等の外交を目指した聖徳太子が数少ない成功 例としてある。 あるいは、小田原攻めに参陣を渋った末、最後には遅参し秀吉に許された伊達正宗の 例等は、竜頭蛇尾に終わった例と言えようか。 日本が「小沢外交」を選択した場合、それは即ち日本の運命となる。 小沢氏の今回の行動に対し、自民党政権を早期に解散総選挙に追い込むための駆け引 きであり、外交を国内政局に利用しているとの批判がある。 その面はあるが、政治は、勢力集結、駆け引きの組み合わせで、政策を実現させるも のである以上、政策と理念の是非が先ず第一に論じられるべきであろう。 小沢氏は米国が開戦時に於ける直接的な国連決議を得なかった事を問題視し、その後 の国連の追認を以てしても日本の参加は認めないという立場であり、その主張は現実 の国連の有りようを超えて在るべき姿を想定し日本の行動の判断基準とするものだ。 一方で小沢氏は、01年12月の安保理決議1386に基づくISAF(国際治安支 援部隊)をアフガニスタンへ派遣している点を指摘し、「国連に認められた活動に参 加したい。これは米国にマイナスの話ではない」と述べた。 これ等を名付けるなら、いわば「国連原理主義」と言えようか。 ◆「小沢外交」の帰趨と日本の選択◆ 信憑性は不明だが、伝聞によると小沢氏は2年程前親しい人物に、東アジア情勢を分 析して、中国大陸で起こるであろう分裂状況を前提に「国連待機軍として日本が中国 大陸の混乱を収める時の首相で居たい」と語ったという。 小沢氏は本気だろうが、派遣地域によっては、より危険が大きいISAFに参加する ことで党内を纏めるのは非常に困難と予想される。 ましてや、どんな間接的な後方活動となってもアフガニスタンに陸上部隊を送るとな れば、現状で国民が付いて来ることはまずないと思われる。具体的には航空輸送に落 ち着くのか。 小沢氏が「国連原理主義」を主張するのは、単に原理主義者であるからではない、兵 力を出すのに国連の錦の御旗の下にだけで行うことは、長期的な日本の国益と国際秩 序構築に役立つとの見立てがあるからだ。また国連決議に制限された形で米国に協力 することで是々非々の日米関係を築くことが出来るとの考えもあるだろう。 問題は、それが諸外国の国益がぶつかり合う現実の外交で、計算の歯車が狂うことな く上手く奏効するかどうかである。 外交は、国際的な大義を伴った長期的な国益の追求であるべきである。 「小沢外交」は日米関係と国際秩序に新しい展開をもたらす可能性がある。 その一方、ボタンの掛け違いがあれば、日米関係は本より国際社会の孤児になる危険 を孕む。 その是非は、国会議論と世論を通して国民が判断し監視して行くしかない。 以上 佐藤 鴻全 ============================== 今、北朝鮮債券に注目 和田清明 米国の2008年度会計予算が発表になっているが、テロ戦費予 算の累計がすさまじい。ベトナム戦争の戦費5,840億ドルを超え て2001年以降の累計で7,000億ドルに近づこうとしている。 莫大な軍事コストと人命をかけても守りきろうとするエネルギー資 源の確保にかけるアメリカの揺るぎない戦略というものを感じとれ る。 イラク攻撃の原因の一端としてイラクの原油取引決済のユーロ化 を指摘する向きがある。サウジアラビアなどのOPEC諸国は原油 取引決済にユーロを使い始めてもいた。米国はオイルマネーを取り 込もうと必死であった。ドルの威信にもかかわることだ。 当時ユーロの短期金利は2%、一方ドルは2.75%に誘導してい た。米国としては財政赤字額相当はオイルマネーを還流させたい、 そのためには中東を自らの影響下におきたいのは米国の通貨、金融 政策の戦略であるのは至極当然のことだ。一方貿易黒字国でもある 日本や中国は稼いだ金で米国債を買い貿易黒字の大半を米国に還流 させている。ここで、かつて米国に波紋を投げかけた橋本元首相の 発言が思い起こされる。「米国債を売りたい衝動に駆られたことが ある」。 こんな直裁な言いまわしではなかったが山本有二金融担当相の発言 、外貨準備の運用多様化について「民間主導の市場で公的部門がど の程度関与可能であるかベストポイントを探ることがなにより肝心 だ」と6月29日発言している。外貨準備高9,000億ドル、世 界第二位の担当者の発言である。尾身財務相が火消しに躍起になっ たのは至極当然であった。 米国は中東、中央アジアでの影響力を強めNATOは東方拡大を すすめている。一方シーレーンを日米同盟ががっちりと押さえてい る現実がある。北朝鮮問題ではかつて腰を上げない中国を刺激する 意味で日本の核武装を言いだす米国政策助言者がいた。現在の六カ 国協議は米朝二国間協議をベースに六カ国間での保証確認といった 様相である。核廃絶を今年度中に具体化しようと焦るアメリカに対 して履行期限に言質を与えない北の交渉優位にある。 事の本質はいかに平和裏にソフトランディングさせるのか。その 後に続くのは南北統一の方向でもあり、あるいは中国による北の属 国化の方向も考えられる。要は朝鮮半島冷戦の終結である。 アメリカの北に対する柔和策からみて朝鮮半島の動乱の目はなく なったかに見える。ここで投資家の視線が気になるところだ。1997 年金日成の服喪期間に発行された北朝鮮債券である。当初額面1ド ルが22セントほどのものが現在26セント、20%程上昇してい る。今世界で一番危険な債券ではあるが逆に一番魅力的な債券でも ある。かつてベトナム向け債券が大化けして巨大な富を築いた例も ある。あながちジャンク債だからといってばかにはできない。また 最近の例では一次産品価格上昇に乗ったロシアである。額面1ドル が17セントであったものが額面を回復した。 さて、今有望な投資先としてキューバを一番にあげる向きがある。 カストロの死後アメリカとの関係が正常化した時、観光等が飛躍的 に伸びることに対しての期待である。またスーダンやアイボリーコ ースト(コートジボワール)も面白いと言われている