2716.テレビと民意



題名:テレビと民意  

                           日比野
1.番組がCMで、CMが番組で。   

テレビ局には自浄作用・市場原理が働いていないというとき、顧客
が視聴者を指す場合のみ正しい。生産者と顧客の関係を売買契約で
考えるとこの定義は間違っている。お金を払ってくれるのはスポン
サー。スポンサーが顧客。 

テレビ局はスポンサー商品の委託宣伝業者。スポンサー商品のCM
を流すのが本来の仕事。スポンサーに視聴率を売って、お金を貰う
。 

視聴者は客じゃない。ただの群集。群集をどれくらい集めらるかが
、スポンサーからの評価。だから、群集を集めるためにあの手この
手で、芸人やら何やらを雇って、パフォーマンスを行う。うなぎの
蒲焼をパタパタやって匂いで釣ってみたり。万国びっくりショーを
やって、人を集めてみたり。 

群集って移り気だから、つまらないと寄ってこないし、最初は面白
くてもマンネリになったら離れていく。いつまでも群集を集めたい
から、パフォーマンスもどんどん過激になってゆく。たまに怪我人
も出たりして。   

金の流れだけを考えるとテレビの番組は全て、パフォーマンス番組
しか流せない。スポーツ番組もその範疇。でもなぜか、パフォーマ
ンスの間にニュース番組が入る。ニュース番組には公共性があるか
ら、スポンサーだけでなく、群集も顧客になる。 
   
公共サービスであっても、料金は払うのが普通。葉書一枚だすにも
金を払う。でも、民放ならニュース番組もタダで見ることができる
。 

群集から金を貰ってないから、群集のいうことを聞く必要がない。
好き勝手できる。スポンサーが群集の意見を代弁しているならいい
けれど、必ずしもそうじゃない。 

ニュース番組の質を保証するのは、テレビ局のモラル。
     
モラルが無くなると電波公害を垂れ流しても気にしない。いくら群
集が蒲焼が腐っているぞ、といっても耳を貸さない。モラルは利権
が絡んだり、金を積まれたり、時には脅されたりして無くなってゆ
く。番組は誰かの宣伝になったり、都合の悪いことやイメージが悪
くなることは絶対流さない。これって、CMそのもの。 
   
モラルが無くなったテレビ局では、番組とCMの名前と中身は逆に
なる。番組が特定の誰かのCMで。CMがスポンサーの番組で。

2.民営化と民主化 
  
役所の民営化とかよく言われるけど、民営化と民主化は違うもの。
役所の仕事が遅いから、民営化すればサービスがよくなるではない
かと、軽い気持ちで民営化するのはとても危険。

公共サービスが注意すべきは、資本の過度の介入を防ぎつつ、民主
化を図ること。資本が介入する度合いに合わせて、公共性はどんど
ん失われてゆく。カリフォルニアでは公共サービスを過度に民営化
した影響で、電力危機を起こした。ある程度で歯止めをかけないと
、それこそ資本家の言いなりになる。 
    
また、公共サービスが民主化されていないと、企業のやりたい放題
を誰も止められなくなって、独裁政治が始まる。公共サービスは、
利用料金を使用者が払うことで民主化を担保している。サービスが
気に入らなかったら、使わない選択もできる。企業側は支払いとい
う民意を受け取ることでモラルハザードを防いでいる。 

だから電気、ガス、水道、電話なんかは民主化できているといえる
。民放番組は簡単に独裁制になる危険を孕む。構造的に民意は反映
されにくい。しかも資本に特定団体の息が掛かっていたら最悪。 

捏造報道が問題になって、非難されたり、規制がかかりそうになる
たびに、彼らは報道の自由や公共性を叫ぶけれど、そうであればな
おさら民主化できていないといけない。電気やガスみたいにテレビ
にメーターでもつけて、見た分だけ払ったほうがよっぽどいい。番
組表のGコードを専用の機械で読み取れば、指定の番組だけみれる
とか、ダウンロードできるようにすればもっと民意が反映される。 
    
番組が議席で、ダウンロード数が票。   

昨今の捏造報道問題って、信頼性回復委員会とか、ネットで検証さ
れてやっと分かった問題。電波に毒が混ざっているなんて、検証し
ないと分からない。 
    
不二家の捏造がなぜ問題になったかといえば、店舗が営業停止にな
ったり、収益が落ちたり、具体的に被害が出たから。実際に報道被
害がおきたから、営業停止だ、放送免許剥奪だ、と声を上げること
ができた。被害がないと声すら上げられない。 

プロパガンダの類は、内容自身を検証しないと公害であることすら
分からないし、具体的被害が明らかになるまで放置される。風説の
流布が厳しく処罰されるのは、株価に影響があって、実際に被害が
でるから。   

大切なのは、報道されている内容が公害なのかどうかまず見極める
こと。誰かにとっての公害は、誰かにとっての利益。真実でなかっ
たり、事実を捻じ曲げた報道があれば、そこに意図と利権が絡む。  

検証できる場合はすぐ分かるけど、資料が無かったり、隠蔽された
りして検証自体できない場合もある。 

毒かどうか直ぐに分からない場合は、ちょっと薄めてから飲んでみ
る。具体的にはチャンネル数を増やして、相対的に電波公害の被害
領域を狭くする。何が真実が分からない場合は特に有効。 

ネットのいい面は情報発信するチャンネル数が何百万とあるから、
物凄く相対化が進んでいる。ひとつの報道がすごく薄まっている。 
報道に嘘があった時には、瞬く間に検証され、暴かれる。ブログは
トラックバックやコメントで視聴者と議論できる双方向性を持つか
ら、人気があるブログは凄く注目される。

逆に人気がないブログは自然と訪れる人も少なくなっていって、や
がて消えていく。 

何百万とある情報発信元も殆どが個人だから、資本の問題もない。 
ネットを公共サービスとみた場合、民営化の弊害がなくて、一番民
主化してる。 

3.プロパガンダと逆輸入 

プロパガンダって自分勝手。都合が悪いことは知らんぷり。悪い噂
はあっという間に広がるけれど、いい話や真実は伝わるのに時間が
かかる。人は悪い話に敏感。身を守るために必要な本能だから。プ
ロパガンダはそこを利用する。 

プロパガンダを受ける側は、大抵自分に不利なことを喧伝される。
真実を身内に弁解している間に、町中が悪い噂を信じてしまう。だ
から、プロパガンダを受けたら、相手の弱点を即座に指摘して反撃
することが大事。その上でゆっくり真実を証拠付で伝える。 
   
だから否定的内容でプロパガンダ攻撃されたら、すかさず声をあげ
て反論することが大切。違うなら違うといわなきゃいけない。黙っ
ていたら認めたことになる。

また、逆に好意的内容が報道されたら、感謝の言葉もすかさず返す
のがいい。節度ある態度を示す。

相手じゃなくて、周りで見ているその他大勢を味方につけることが
大切。なんでもかんでも批判しているだけと思われたら、こちらの
意見を信用してもらえなくなる。 

テレビで、だいぶ昔にみたけれど、ゲーム理論の研究者がシミュレ
ーションをやった。3種類の異なるアルゴリズムをもったそれぞれ
の集団同士で争わせ、どの集団が生き残るかというもの。 

ひとつの集団は、「裏切り」のアルゴリズム、もうひとつは「お人
よし」、最後のひとつはお人よし相手にはお人よしで応対して、裏
切られたら裏切り返す「折衷型」 
   
結果は、真っ先に「お人よし」集団が滅ぼされ、「裏切り」集団が
増殖していった。だけど「裏切り」集団が全体を支配する前に「裏
切り」個体同士で攻撃し合って、自滅。結局「折衷型」だけが生き
残った。 

シミュレーションと人間は違うといっても、構造は同じ。過程が複
雑になるだけ。譲ってばかりいたら、真っ先に滅ぼされてしまう。 

国内メディアが特定国のプロパガンダに加担するとき、その国に都
合の悪いことは絶対報道しない。実は電波公害垂れ流しより、なか
ったことにされてしまう方が深刻。プロパガンダを補強する上に反
撃の糸口もなくなる。 
    
国内で見向きもされなかった製品が、海外で評判になって、逆輸入
されることってよくある。都合の悪いことは報道しないけれど、当
の本人に喋ってもらえば、免罪符になる。 

だから、プロパガンダに関する反撃も相手の都合が悪く、同質の内
容でやるのがいい。

特定国に加担したメディアが絶対言えない内容は、当の本人に反論
させることで報道してもらう。国内で相手にされない真実は、相手
国から逆輸入すればいい。こちらの反論内容を相手のプロパガンダ
に盛り込んでもらう。毒消しを少し混ぜる。    

プロパガンダ相手と直接やりあうことで、プロパガンダに加担して
いる報道機関の存在意味はどんどん無くなる。相手とこちらの声明
を伝えるだけ。子供のおつかい、パシリになる。そこで初めて、報
道機関本来の役目を果たすことができる。 
    
マスコミが権力の監視者であるというのなら、少なくとも民主国家
では、民意を反映しなくちゃいけないし、民意の代表者であるべき
。特権階級じゃない。    


(了)


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