2690.東南アジアの世紀に



日本は、米国との関係を維持しながら、東南アジアに目を向ける必
要にある。その検討。   Fより

東南アジアが交易によって繁栄したことは、今までのコラムを見て
いただければと分かると思う。そして、地域全体が1つの商圏とし
て発展したことでムラユ語が通じる地域を形成していた。また、イ
ンド商人、イスラム商人、中国商人がこの地域に移り住んで、それ
ぞれの文化をこの地域にもたらした。

この地域は、その後英国、オランダ、フランスの植民地になり、そ
こでも欧米文化が入り、独立後はASEANとして昔と同様な統一
的な経済政治地域を形成している。この共同体は15世紀以前の昔
に戻ったとも見える。

このため、この地域は独特の特徴ある文化があるように見えない。
しかし、インド文化と地域文化の融合、中国文化、欧米文化との融
合などという何でも融合する混沌とした文化がある。混沌とした多
様性と、にもかかわらず、どこか懐かしさがあるという共通性の併
存だという人もいる。

精神的な面では、多くの日本人が忘れたものを今も持っている。
生活の知恵なども豊富である。貧しいことが精神面で重要なことで
あると東南アジアに行くと思う。

そして、現在、この地域に新しい力を入れているのが、日本である。
日本のエスニックブームに乗り、その地域のインド料理などと融合
したいろいろな料理を日本の街に導入しようとしているし、日本企
業は安い労働者を求めて、東南アジアに工場を建てている。中国人
と違い、従順で長く勤めてもらえるために、日本固有の技術を伝承
することができる国々のような気がする。

特に現在、ベトナム・タイに日本企業は進出している。タイのトヨ
タ工場は従業員を教育して、ライン指導者までにしている。このタ
イ人が東アジアに進出するときの現地の従業員を教育することにな
る。また、キャノンなどはプリンターの出荷の半分以上をベトナム
で作ろうとしている。帝人のタイ工場には日本人がいない。などタ
イ人やベトナム人は忍耐強い。職人を育てるにはいい資質である。

日本企業はヒエラルキーを作り、その下で生産をするという形を取
らない。現地企業ができることは、現地企業を使う方向であり、
徐々に現地企業が技術を習得して、日本企業の工場に近接した地域
で生産し、納期と品質を確保してもらえばいいと考えている。この
ため徐々に現地化率が高くなる。

東南アジアで部品産業が立ち上がり、それを日系企業は中国や東南
アジアの違う国の工場で使う方向にあり、東南アジア域内と中国を
結ぶ輸送が重要に成ってきている。そのため、中国と東南アジア域
内を結ぶ高速道路や鉄道などの整備が必要になっている。

どうして、このような現地化を日本企業はするかというと、米国と
の貿易摩擦で現地化率を厳しく問われた時代があり、しかし現地化
するとコストが大幅に下がることを経験したことで、このような現
地企業育成策を取るようになったのでした。

現地化率をなぜ、米国は、問うたかというと当初、日本の部品を全
て運び、アセンブリだけを現地で行ったためであり、米国はその製
品を日本製をしたことで、逆に日本企業としては輸出規制を逃れる
ことができなくなったのでした。

このため、日本企業は、現地企業を育成して現地化率を上げる努力
をしたのだ。あの日米貿易摩擦は日本を世界の指導大国にするため
に米国が意図せずに、仕掛けた育成策であったような気がする。

しかし、現地化率を上げると中国や韓国のように自国企業にその技
術を転用して、日本企業を苦しめる現地下請企業もあり、日本企業
は中国では苦労している。単なる生産だけを目的にするなら中国か
ら東南アジアに日本企業は移転する必要があると思う。


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