2679.中国共産党の核抑止戦略の目的



中国共産党の核抑止戦略の目的

  −急速に進む、アジア圏内でのアメリカの核抑止力に対する挑戦−

               2007.6.10
               DOMOTO

米国陸軍大学の戦略研究所は5月25日に「中国の核戦力」と題する
研究報告を公表した。報告書ではその中で、中国軍が最近、核兵器
に関する戦略を大幅に変え、これまでの「核先制不使用」の方針を
変える兆しをみせてきた事にも言及しているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070526-00000023-san-int

「『中国の核戦力』 先制不使用の方針、変化も 米陸軍大研究所
が報告」(5月26日 産経)

陸軍大学の研究所では中国による「核先制不使用」の方針転換を警
戒し、前記事中の要約では、次のようにその理由を分析している。
「中国が最近、年来の「核先制不使用」(軍事衝突でも核兵器は先
には使わないという言明)の方針を変え始めたと述べ、その理由と
して米軍が通常兵器の性能を高め、非核の第一撃で中国側の核戦力
を破壊し尽くす能力を高めたため、中国側では自国の核が報復力を
失い、抑止効果を発揮できないという見方を強めてきた、ことをあ
げた。」

しかし、ワシントンの日高義樹氏によれば、中国の核戦力の増強は
、現在の時点ではあくまで、アジア圏内でのアメリカの核抑止力に
対抗するものだそうだ。
胡錦涛政権は2006年に入り、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の量産体
制を全力を挙げて始めた。アメリカ国防総省の情報では、2007年中
に少なくとも300発の大陸間弾道ミサイルの実戦配備を計画している
そうだ。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%A8%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C-%E3%80%8C%E7%94%A6%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%83%BB%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%80%8D%E5%8F%A9%E3%81%8D%E3%81%8C%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B-%E6%97%A5%E9%AB%98-%E7%BE%A9%E6%A8%B9/dp/4569659764/ref=sr_1_3/503-6332954-4852753?ie=UTF8&s=books&qid=1179670241&sr=1-3

クリントン政権時に、アメリカ企業2社を通じて中国に売った大陸
間弾道弾の高度な姿勢制御装置は、実は欠陥技術であったという情
報もあるようだが、米国防総省は先月5月に公表した中国の軍事力
に関する年次報告書で、
「中長距離弾道ミサイルでは、米本土の一部に到達可能な地上発射
型移動式弾道ミサイル東風31号(DF31)の実戦配備が近く可能にな
ると指摘。さらに射程を伸ばした改良型のDF31Aも、07年中に配備可
能なレベルに達する」
と警告した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070526-00000000-san-int

「米報告書 中国ミサイル警戒 『台湾照準、年100基増強』」
(5月26日 産経)

このような、この数年に見られる中国の急速な軍事技術の進歩は、
貿易によって得られる膨大なドル収入を、共産党独裁政権が独占的
に軍事予算につぎ込めるシステムが回転している事と、ビジネス領
域における、レーダーや電磁波などの通信・衛星技術などを始めと
する広範な技術分野での先端技術の買い入れが、簡単にできるよう
になっているためである。
このような中国の急速な軍事技術の進歩により、数年前は米中の軍
事力の戦力格差は30年で、その差は縮小しないという見方があった
が、アメリカを追い上げる速度が上がりつつあるようだ。

さて、アメリカは5600発の最新鋭の核兵器を所有しており、アメリ
カによる核攻撃の独占体制がいまの中国の核抑止戦略を圧倒してい
るのが現在の状況だ。
http://otd9.jbbs.livedoor.jp/911044/bbs_plain?base=243&range=1

現実主義的で、老獪な中国共産党政府が、米国陸軍大学の戦略研究
所の言うような、核兵器による先制攻撃への方針転換を、現時点で
アメリカを想定して始めることはなく、中国が考えているのは、ア
ジア圏の事は中国にすべて任せてもらい、アジアにいるアメリカ軍
は中東へ全軍移ってもらうための、アジアにおける核抑止力の確立
だ。

既に、安倍首相による玉虫色の靖国問題への対応で、ホワイトハウ
スやワシントンではアジアにおける中国の「政治的・外交的覇権」
が確立したとの見方に変化したようであるが、次の中国の国家目標
である『アジア圏における軍事的覇権』の獲得は、アジアに展開す
るアメリカ軍に対しての核抑止力を確立して初めて実現する。

それが実現した時、「丸腰の子供国家」日本は悲惨なことに間違い
なくなる。アジアでの勢力地図が、中国と北朝鮮・韓国の同盟国が
中心となって支配する勢力地図に全く変わってしまい、アメリカは
日本の安全保障に対しての責任を一切放棄する時が来るだろう。
日本は中国の属国にもなり、中国とアメリカの話し合いでいいよう
にされる二重の隷属外交の時代が始まる。

アジア情勢はすでに、今の日本にとっては過酷な、新しい時代へ入
っている。


参考文献:『ブッシュのあとの世界』 日高義樹(PHP研究所 2007年1月刊)

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%A8%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C-%E3%80%8C%E7%94%A6%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9B%BD%E3%83%BB%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%80%8D%E5%8F%A9%E3%81%8D%E3%81%8C%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B-%E6%97%A5%E9%AB%98-%E7%BE%A9%E6%A8%B9/dp/4569659764/ref=sr_1_3/503-6332954-4852753?ie=UTF8&s=books&qid=1179670241&sr=1-3


DOMOTO
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(Fのコメント)
15世紀のアジアにおいても、日本と中国は、あまり良い関係では
なかった。明は日本との直接貿易を禁止している。倭寇が明を苦し
めた。このため、日本と中国の中継貿易港として、チャンパのホイ
アンやルソンがあったのだ。日本の倭寇は元寇の仕返しという側面
があったようである。

ホイアンやルソンには日本人町があったが、中国の沿岸の町に日本
人街ができたことはない。日本人は倭寇で海賊ですから、殺したは
ず。このようなことを考えると、日本と中国は戦後、仲が悪くなっ
たわけではないことがよくわかる。昔からお互いに警戒している。

現在の中国は共産主義という過去の制度が問題で、民衆と政府の衝
突が頻発しているし、今後は大変なことになると感じている。
このため、あまり中国の軍事拡張を心配していない。
さあ、どうなりますか??



コラム目次に戻る
トップページに戻る