得丸さん 次回のアフリカの話楽しみにしています。 ヨハネスブルグ・サミットの参加記録送ってください。 5月の連休中に読んだ「ピークオイルパニック」(ジェレミー・レ ゲット著 益岡賢他訳 作品者)が地球環境問題について現実的に 報告しているので紹介します。お時間のある方どうぞ。 小川 ************************************************************ 迫る石油危機と代替エネルギーの可能性を副題にしている。地政学 と一体のものとなって石油資源獲得競争は政治力学の中で暗躍し石 油価格が操られ世界経済が動かされている。中東戦争は、石油利権 覇権の歴史でありロシアの周辺CISや中国のアフリカへの石油開 発の動きも同様である。 著者は、地球環境保護活動を実践している地質学科出身のイギリス 人科学者である。資源コンサルタントとして石油探査の経歴もあり 新しい石油の発掘が如何に困難であり、公表されている石油の埋蔵 量の数値が発表機関によっていかに大きな差があるかその背景をも 指摘している。 65産油国のうち60カ国以上がすでに油田発見のピークを超えて おり、49カ国以上が石油生産のピークを超えている。世界最大級 の油田はクウェート/ブルガン油田(860億バレル)やサウジ/ガ ワール油田(875億バレル)などであるが第2次大戦(1940 -50年)前後に発見されたもので1970年代以降の油田発見は ほとんどない。北海油田などあった1965年が、石油発見のピー クである。発見量が消費量を上回ったのは1980年までであり 90年以降発見は全体的な下降がはじまる。世界の可採埋蔵量に ついては2兆バレル説(2005年ー2010年がピーク)と 3.8兆バレル(2037年がピーク)の両説がある。確認埋蔵量 についてのBPの報告書、統計年鑑の記述は600億バレル (1970)や1.1兆バレル(2003)と大きく変化しており OPECによるデータ操作がみられる。早期ピーク説での埋蔵量は ,9,200億バレルとかなり低い。2004年に既にピークを過ぎたという。 代替エネルギーの開発は遅れている。 オイルシェールやオイルサンドなど石油代替が開発が試みられてい るが、生産コストがかかりすぎて余り期待できない。天然ガスは発 電には利用されるが車を走らせることはできない。流動性が高いの で定常的な生産が突如終わるか可能性がある。中東と旧ソ連圏内で 70%以上埋蔵するがテロに対する爆発や危険も懸念される。原子 力は安全性に問題があって期待できない。再生可能エネルギーへの 転換の動きは遅くて回避するには間に合わない。石油生産ピークの 後は、世界エネルギー危機をめぐって「石炭化への反動」か「太陽 エネルギー利用化」など代替エネルギーの開発と対応は地球の未来 を左右すると予測している。 一方、温暖化は進む。大気中のCO2濃度は、氷河期には200ppm であったが産業革命以降急速に増加して2000年には380ppmに なった。21世紀末には700ppmになると予想され急速な地球温暖化 が進行している。地球の平均温度も14.8度から20度に上昇する。 平均気温を2度℃上昇が臨界点であり超えると取り返しがつかなくな る。400ppm以上になると温度上昇は急激に加速する。あとは、 「不都合な真実」のようになる。 この著者の面白いところは、彼は環境保護活動家であるとともに再 生可能エネルギーに関する投資ファンドも扱っておりシティの金融 業務にも通じている。関連する世界経済の動きもよく観察している。 世界の保険産業の破綻を予測している。保険業界は世界経済の10 %に相当する年間収入の業界であるが、地球が温暖化するために差 し迫った状況にあると警告する。大災害発生の可能性が高まり、 世界資本市場の破綻の危険がある。異常気象による保険業界の破綻 が世界資本市場へドミノ現象を生むと予想する。すでにこの40年間 で洪水など自然災害による損失は約10%ずつ上昇しており2兆ドル の保険業界にある補償準備金は5億ドル以下しかない。 再保険会社 も引き受けられなくなっている危機的状況という。まさに地球温暖 化は大量破壊兵器と変わらない。 地球環境についての警告も貪欲な利益の追求が妨害をしている。178 カ国が法的に拘束力のある温暖化ガス削減対策に賛成しているにも かかわらずアメリカは、石油の大量消費国であるにもかかわらず 地球温暖化や気候変動条約について異説を唱え、京都議定書にも批 准していない。国際協定が現在のように弱大した状況に陥っている 一因は、石油メジャーのアメリカ政府に対する政治力が背景にある。 同書では「エクソン・モービル不正の10年」 (http://www.greenpeace.or.jp/campaign/climate/esso/exxon10years.pdf を報告している。日本の日常マスコミが書かない(書けない?) アメリカ原理主義の陰謀らしきものが背景にあるようだ。世界は地 球温暖化とピークオイルパニックの2つの危機が同時に進行してい る。