2667.日本の核武装について



教えて下さい。   
   
 Fさん こんにちは
国際戦略コラムでの卓見に敬服しています。

私は、あまり詳しいことが分からないのですが、素人として素朴な
疑問を持っていますので教えて下さい。

私は、日本が核武装する事に抵抗感はありません。
というより、むしろ平和を守るために核武装は必要と思っています。

核武装に反対、核保有などもってのほか、と唱える人達は、
「核武装が戦争への道につながる」
「広島長崎の悲劇を再現する事につながる」
と主張しているように思えます。

しかし、広島長崎の悲劇について言えば、米国は
昭和20年8月6日時点で日本が原子爆弾を保有していないと確信し
ていたからこそ、原爆投下を躊躇なく実行したのではないでしょう
か。

私は、「原爆を持っていなかったから原爆を落とされた」
「だから原爆をもっと早く持つべきであった」
「やられる前にやるべきであった」などと
という極論を言うつもりではなく、米国に対し
「ひょっとしたら、原爆で反撃されるかも知れない」
という思いを少しでも抱かせる事ができたなら、
悲劇は防げたのではないかという事です。
この考え方は間違っているのでしょうか。

また、現代においては「日本に核武装の可能性がある」と思わせる
事で周辺国に対し、充分な抑止効果があり、実際に核武装すれば、
絶対に手出しは出来ないと思います。

今の日本は、どんなにぶん殴られても抵抗できない
弱々しい人間のように感じます。
周辺国にナメられていると思えます。
たしかに自衛隊は不眠不休でがんばっていると思います。
しかし、たった今、仮に北朝鮮からミサイルを発射されれば、
防ぎようがないというのも冷厳なる事実ではないかと思います。

核武装への道を探る事が、「やむを得ない事」であるが
日本の平和を守るために必要であると思います。
このような考えを持つことは、危険で戦争につながる事に
なるのでしょうか。

私の亡父は旧海軍兵学校出身で、広島の原爆投下を
江田島で目撃した証人でした。
生前に原爆の衝撃波の凄まじさをよく語っていました。
ですから、私自身も決して軽々しく核武装を語っている
つもりはありません。

Fさんのご見解をぜひお聞かせ下さい。
教えて下さい。
Fさんが「間違っている」とおっしゃるならば改めます。

                        T.K
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(Fのコメント)
高井三郎さんが、私の先生です。高井先生は自衛隊幼年学校に入学
し勉強して、苦労して防衛大学を卒業し、ウエストポイントまで行
くという秀才である。戦史などの研究をして自衛隊でも理論家とし
て名が通っていた。幼年学校出が将軍になることはない中で、将ま
で上り詰める。軍事戦略では一目もニ目も置いている人である。

軍事戦略で日本の第一人者:高井先生が唱える軍事関係理論の考え
は、世界の軍事関係者が共有している。このため、軍事戦略の第一
人者が理論的に、日本の核は無意味であると言う事は、それ自体が
中国の軍事関係者も十分知っていることであると認識する必要があ
る。

日本は使えない核、核戦争をすると全滅することが分かっている。
日本から核戦争はできないし、核戦争をすると中国が勝つことが自
明である場合、核の抑止効果はほとんどないことになる。中国への
抑止効果はないのに、なぜ、費用を掛けるのかとなる。

日本を攻撃すると、米国の核で中国は全滅することがあるという状
態を作るか中国と同盟関係になるか有効なMD(ミサイル防衛)す
るしかないように感じている。日本単独での核攻撃対応防衛は国土
の深度がないために無理である。日本防衛のためには、MDか集団
安保しかないと見る。しかし、現時点MDは確実ではない。

このため、米国との同盟関係維持と、戦争しないですむ中国との友
好しかない。軍事理論は一般常識に近いことになる。


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