2650.どぶ川の浄化



どぶ川の浄化 ――三重県四日市市・阿瀬知川の例――

                    平成19年(2007)5月9日(水)
                    「地球に謙虚に」運動代表 仲津 英治

●	コイの泳ぐ都心の川
去る平成19年(2007)3月21日、私の所属するエコネット近畿のメンバーほか
計7名は、悪臭漂うどぶ川であった都心の川を見事に魚の泳ぐ川に甦らせるこ
とに成功した三重県四日市市の「阿瀬知川」を訪れました。(株)EM助っ人
ねっと岡 正典社長が案内して戴きました。私は以前からその成果のことを
伺っていたのですが、現地訪問は初めてです。

大阪生まれで大阪育ちの私は、高度成長時代から都心の川は濁って、悪臭を放
っていたのは良く記憶しています。四日市市を流れる川も相当のひどさだった
でしょう。しかし近鉄四日市駅からすぐ近くの阿瀬知川の橋に着いたとき、全
く悪臭は感じませんでした。それどころか大きなコイがゆうゆうと泳ぎ、何か
の稚魚だろうか小魚も群れていました。浅いとは言え、底も見えます。「鯉を
取るな」との掲示が日本語、英語、中国語、ポルトガル語で掲げられていたの
はご愛嬌でした。

阿瀬知川は戦争直後まではホタルの舞う自然豊かな川だったそうです。それが
事業所や家庭からの雑排水が流入した結果、汚染が進み、ヘドロが溜まり、悪
臭もひどくなったと言います。どうして鯉も小魚も泳ぐに甦ったのでしょうか。
答えは平成12年(2000)当時から、EM(Effective Micro-Organisms=有用微
生物群)の米の研ぎ汁培養液とEM団子を沿川の住民、学校の生徒が投入し始
めたからです。1年後にヘドロが減り始めるなど目に見えて効果が出始めたと
いいます。
実際数値で見ますと、四日市市のデータによれば、平成13年度BOD(生物学
的酸素要求量)が平均2.9 mg/lから、平成17年(2005)度には 1.6mg/l に低下し
ています。(H13 &H17 年度四日市市環境計画年次報告書 阿瀬知川北浜田橋)

●EM培養液作り、EM団子作りで、地域と行政の連携
EMの投入をいぶかっていた人たちも、川のヘドロが減り、ヘドロに埋まって
いた昔の橋の杭が見え出すと、その効果を実感し手伝うようになったと言いま
す。阿瀬知川を美しくする会」(堀木忠朗会長)ができたのです。同会は、任
意団体ですが、地元の方々や企業を巻き込んでの活動をもう7年ほど行ってい
ます。平成18年(2006)度には、ドラム缶約70本分の米のとぎ汁、EM発酵液
を投入しました。

さらに、ビオトープの予定地に面している企業は、EMの効果に驚き、積極的
に応援しており、社員の参加や資金の援助もしているそうです。財政難で排水
路である「阿瀬知川」を綺麗にできなかった四日市市下水道セクションがEM
活用に動くようになり、今や、浄化のための予算もつけ、「阿瀬知川をきれい
にする会」の浄化活動の技術的支援をしている「NPOイーエム市民広場」と」
(小川敦司理事長)1年契約をし、上流の神社にはEM培養装置を設け、EM活
性液を阿瀬知川に投入し続けています。井上哲夫四日市市長も積極的にEM投
入の運動に役割を発揮するようになったのです。下記HPをご覧下さい。


・EMとは
有用な微生物群(Effective Microorganisms)の略で、沖縄の琉球大学農学部の比
嘉照夫教授が開発した、3種以上の微生物集合体の総称です。醗酵食品に使われる
同じ仲間の乳酸菌、酵母(イースト菌)をはじめ光合成細菌などです。自然界の微生
物は8割が日和見菌グループで、醗酵型の善玉菌と、腐敗型の悪玉菌のいずれかが
リードするかによってバランスが変るそうです。いろいろな性格の善玉菌を組み合
わせたEMは、いわば善玉菌のエリートで、日和見菌を引っ張るリーダーとして活
躍をします。
 EM研究機構HP  http://www.emro.co.jp/em/index.html

●	EMへの姿勢

EMによる河川浄化などの成果は、大阪道頓堀、淀川河口でも実践され、全国
的に各地で成果を挙げつつあります。しかし下記のような批判を耳にすること
も結構あります。

1.EMによる河川浄化などの成果は、何故効果があるのか
科学的に解明されていない。
 この批判は行政の方々から多く伺います。「EMの効果は確かにあるようだ
が、科学的に解明されていないものの使用を行政として認めたり、それに予算
をつけたりすることはできない」との見解です。公権の行使、公金の使用には
慎重を期すというところでしょう。

 私は微生物の専門家ではありませんが、自然系というものは複雑に絡み合っ
ており、何十種類もある微生物の総合的作用は、その一つ一つの機能を追及し
たところで解明できるものでは無いと思います。良い結果がでれば、良しとし
て実践すべきかと思います。ましてや汚れた河川を化学的、物理的に処理し
ようと思えば、大掛かりな対策や巨大な設備を必要とし、また却ってマイナス
の作用すらもたらすでしょう。自然の生物を活用するのが一番です。

2.EMのような、その地に存在しない微生物を大量使用す
ることは、付近の微生物バランスを崩し、危険ですらある。

 この見解は、かなり環境問題に熱心で、科学的知識の豊富な方から聞かれま
す。
 これに対しても私は、専門家でありませんので、科学的にお答えは出来ない
のですが、EMという特別な菌がいる訳ではなく、前述のように日常我々がお
世話になっている醗酵食品を作ってくれる世界中どこにでもいる微生物等の
集合体がEMなのです。EMは今まで川の浄化だけでなく、生ゴミの堆肥化、
農耕地の活性化など広範囲に使われていますが、自然界に大きな悪影響を与
えたという話は伺っていません。

3.EMの集まり、勉強会に行くと新興宗教集団のような
雰囲気がある。

 この反応は、環境問題に熱心な方々に結構あります。確かに私も
EM関係の勉強会などで、色んな方々の発言を客観的に聞いてみて、
これはいささか宗教活動的印象を与えるなと思うことが度々ありま
す。そして現実にEMを敬遠したり、活動を遠慮する人は、理由とし
てその宗教的雰囲気を上げる人が多いようです。EMがあまり広がら
ない理由の一つとしてこの宗教的雰囲気があると思われるので、心
して当られる方が良いと思われます。

●	私のEM活用実践
・	生ゴミの堆肥化;毎日出る生ゴミをEMぼかしで堆肥化し、野菜
をプランター栽培しています。
・	EMトンボというEMを含んだトイレットペーパーを便所で使用。
下水管の浄化を実践しています。
・	EMWという一種のEM液を日常お茶などに点滴し、頂いています。
胃腸の調子が良いですね。
  ・米の研ぎ汁でEM液を培養し、シャンプー代わりに使用しています。

米の研ぎ汁を下水にそのまま流しますと、魚が住める程度に水質を回復さ
せるには、数百倍の水が要ります。米の研ぎ汁EM培養液はむしろ下水
管を浄化してくれます。*******************

仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表


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