2640.シロアリがエタノール生産の救世主に



シロアリが救世主となるというコラムを書いたが、すでにカナダや
米国でも研究がされているようです。   Fより

ホットワイアードニュースから引用する。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060216304.html
シロアリがエタノール生産の救世主に? 代替燃料技術の現在

カナダのエタノールメーカー、アイオジェン社(本社:オタワ)のジ
ェフ・パスモア副社長は、「われわれはこの研究を25年間続けてお
り、今ごろまでには商用生産に入りたいと思っていた。大統領の発
言は、たぶん、少しは追い風になるだろう」と語っている。

 アイオジェン社では、糸状菌『トリコデルマ・リーセイ』
(Trichoderma reesei)が持つセルロース分解能力を利用して、すで
にエタノールを生産している。この細菌は、第二次世界大戦中に太
平洋地域の戦地でテントや戦闘服がぼろぼろになるジャングル・ロ
ット(腐食)の原因となったものだ。

 アイオジェン社は「方向性を持つ進化」(directed evolution)と
呼ばれる遺伝子操作技術を利用してトリコデルマ・リーセイの分解
能力を強化し、麦わらを糖に分解するのに十分な量の酵素が作られ
るように改良した。糖さえできれば、発酵工程――醸造業者が何百
年も行なってきた方法――を経て簡単にアルコールを生産できる。

 アイオジェン社は、セルロースを原料とするエタノールを商業的
に利用可能な規模で生産できることを示すために、2004年に4000万
ドルをかけて小さな工場を開設した。この2年間で、この工場は
約250キロリットル弱のエタノールを生産し、これにガソリンを85%
混ぜたものが企業やカナダ政府の車両数十台の燃料として使われて
いる。イギリスとオランダに本拠を置く石油大手のロイヤル・ダッ
チ/シェルグループ社は、4000万ドルを投資してアイオジェン社の
株式の30%を取得している。加ペトロカナダ社やカナダ政府も同社
に投資している。

 そして、アイオジェン社は来年、カナダか米国アイダホ州のアイ
ダホフォールズに3億5000万ドルで商業規模の工場を建設する準備を
進めている。ただしこれも、資金が調達できれば、との条件つきだ
――資金調達は、セルロースを原料とするエタノールをガソリンの
代替燃料として実用化するうえで、長らく最大の障壁の1つとなって
いる。

 一般の投資家は新技術への投資に慎重なため、アイオジェン社は
米エネルギー省からの融資に希望を託している。すべてが同社の望
み通りにうまく事が運んだとしても、商業規模の生産が可能になる
には2009年までかかるはずだ、とパスモア副社長は言う。

 他の大きな障害としては、エタノール燃料を大規模に流通させる
方法、代替燃料が使えるエンジンを自動車メーカーに製造してもら
うこと、ガソリンスタンドにエタノール用補給装置を設置してもら
うことなどがある。ただし、大量のエタノールの出荷方法など残さ
れた技術的課題や資金不足といった問題は、今後数年のうちに解決
される望みがある。

 難題は山積しているが、ブッシュ大統領の支持表明とこの分野に
おける技術革新によって、さまざまな代替エネルギーに関する研究
も再び活発化してきている。

 商業化への期待が現実になりつつある点で、アイオジェン社にか
なうものはないが、他のバイオ企業各社でも細菌の遺伝子操作を行
ない、糖を生み出す同様の酵素の作成に取り組んでいるほか、大学
などの研究者はさらに斬新な材料を求めている。

 カリフォルニア工科大学のジェレド・リードベター助教授は、シ
ロアリの腸を調べ木材をエタノールに変えるのに利用できるものが
ないか探している。家屋を食い荒らすシロアリの腸内には200種類ほ
どの微生物が棲みついていて、木材をエネルギーに変えるはたらき
をしている、とリードベター助教授は言う。

 これらの微生物やその遺伝子材料は、エタノールを作る酵素の生
成に利用可能だ。そこで、カリフォルニア州ウォルナットクリーク
にある米エネルギー省『共同ゲノム研究所』の科学者たちは、微生
物の遺伝子配列を分析し、エタノール生産の鍵となる部分を見つけ
ようとしている。

 シロアリの腸の研究を15年間続けてきたリードベター助教授は、
「われわれは微生物が有害だと思ってきた。しかし、ほとんどの微
生物は有益だ」と語った。



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