2625.地球は人類を必要としているか?



地球は人類を必要としているか?

              平成19年(2007)3月24日(土)
           「地球に謙虚に」運動 代表仲津 英治
最近、下野新聞の客員論説委員でもある立松和平氏が、同紙に
「地球に対して謙虚であれ」という一文を寄せられていました。
同じく「地球に謙虚に」運動の呼びかけ人である安場 博氏が知
らせてくれたのです。そして立松氏は「地球上に存在させて頂い
ている人間が、「地球にやさしく」などと傲慢な考えに立つこと
は許されない」という趣旨の主張もされていました。

 平成14年(2002)の夏以来多くの賛同者とともに「地球に謙虚
に」運動を主宰している私は、この記事を読んでわが意を得たり
と思い、「地球にやさしく(い)」という言葉に違和感を覚えて
いる方が結構おられるとの認識を持ちました。そして改めて地球
は人類を必要としているか?あるいは人類は地球に役に立ってい
るか?という視点で考えて見ようと思ったしだいです。

 地球は大きな一つの生命体です。太陽系では唯一の生態系を有す
る、宇宙でも稀有な惑星です。地球を生命体と捉えられるのは、地
球自身を守るために酸素を有する空気を有していること、気温をあ
る範囲内に保つことになる水を保有していること、この空気と水を
維持再生する生態系を育む大地を形成していること、そして自身の
温度を維持するために内部にマントルと呼ばれる高熱部を構成して
いることなどが挙げられましょう。

 また命の揺り篭である海浜部に潮の満ち干をもたらしてくれる月
を従えていることも生態系を生み、維持する幸運の奇跡でしょう。

 酸素を含む空気層があるからこそ、地球は巨大隕石の衝突により
自らが破壊されることを防いでいます。酸素が高速で地球に向かっ
てくる隕石を空気との摩擦熱で燃やしてしまうからです。さもなけ
れば地球は月の表面のようにあばただらけの荒れた世界になってし
まいます。

 また水は宇宙に存在する物質の中で最も熱容量が大きく、温まり
にくいが同時に冷えにくい物質です。水が地球上に無ければ、隣の
星、火星のように数百度とマイナス数十度の温度変化を毎日の中で
繰り返す荒涼とした変温星となってしまうでしょう。

 さらに高山を含む大地があることによって、温度分布の多様な空
気を地上に形成します。これは空気密度の差をもたらし、空気の移
動つまり風を地上に起こします。風これは循環の第一基礎です。そ
して太陽熱と風によって海水などから水分が蒸発し、大地に雨雪と
なって降り注ぎ、川となって陸地から海へ水が運ばれます。循環の
第二基礎です。この空気と水の基礎的循環が生態系を育み、維持す
る条件となっています。

 そしてこの酸素を含む空気と水を生み出し、支えている存在が生
物でしょう。かつて生物が生まれる前の地球は、炭酸ガス、アンモ
ニアなどで構成する大気で被われていたと推定されています。これ
らは水蒸気とともに火山が空中に放出したもので、水蒸気は地球が
冷えて来るとともに雨となって海を形成しました。そして嫌気性の
微生物が、太陽光の注ぐ下で、水と大気から生まれました。これら
嫌気性の微生物は光合成機能を有し、炭酸ガス=二酸化炭素の中か
ら炭素を取り込み、アンモニアから窒素と水素を取り込んで自らの
体を形成します。そして自らに取って毒ガスである酸素を大気中に
放出します。酸素が大気中に増加してくるとアンモニアと反応し、
水と窒素が生成されます。

 こうして今日の空気(80%弱が窒素、20%強が酸素)が形成され
てきたのです。微生物により大量に形成された酸素(O2)は、上空
で太陽光と反応しオゾン(O3)に変化します。この生成されたオゾ
ンがオゾン層を形成し、地上に降り注ぐ有害紫外線が減少して、生
物が海中から地上に進出される条件が整ったのです。

 今日この酸素と水を形成する役割を生物が担っています。草木、
海草などは炭酸ガスから光合成によって炭素を取り込んで生長し、
酸素を放出しています。動物は植物が生産してくれる炭水化物(炭
素と水が化合した感じのもの)を摂取してその生命体を維持してい
ます。体内でこの炭水化物を燃やしてエネルギー源とし、その活動
と体温を支えているのです。そして排泄物として炭酸ガス、水、ア
ンモニア他有機化合物を放出します。自然界の動物の排泄物は、全
てまた植物の栄養源となり、大きな循環を形成します。

 自然界の動物は、自らの遺骸を大地、海中に還し、微生物の分解
されるところとなり、また植物の栄養源となります。動物を食んで
生きる肉食動物も最後はその遺骸を自然界に還します。食物連鎖は
大きな自然循環なのです。また陸と海の間の循環もあります。
 
 河川で生まれた鮭のような魚は、河川を下って陸の幸を海にもた
らし、また子孫を残すために母川に帰って海の幸を山にもたらしま
す。熊に食べられた後、鮭の遺骸は豊かな森を育成する栄養源と
なっています。中で、海中の循環を形成しているでしょう。

 渡り鳥も陸地間、陸と海の間の栄養循環を結果として担っていま
す。日本列島で生まれるツバメは、1割位しかに日本に戻ってきてい
ないでしょう。渡りの途中で生命を失うが、他の生き物の栄養源に
なっているのです

 このように見てくると人類は地球にとってどんな存在なのかと思
えてきます。生命に欠かせない、酸素は消費して炭酸ガスなどにし
て放出するばかりです。水もあまり生産していません。

 日本人に焦点をあてて見ても、その排泄物の多くは下水処理上で
処理され、大地に還されていません。下水処理水は工業水などで活
用されていますが、汚泥から発生する下水汚泥は、今まで大半が埋
め立て処理されてきました。大地にあまり返されず、他の生命の栄
養源になっていません。かつて戦後しばらくまで金肥といって人間
の排泄物は肥料として田畑に還されていました。

 我々の遺骸はどうでしょう。かつては土葬埋葬が基本でしたが、
いまや石油を使ってまで焼却されています。陸海から栄養を頂きな
がら、自然に還していないのです。別の表現で言えば、自然からの
搾取でしょう。先進国を中心に作り出している物品は、地球生命の
育成と維持に何かの役に立っているでしょうか。単なるゴミになっ
てしまうものが大半です。東大の松井孝典教授の表現を借りれば、
自然系とは独立した人間系を形成しています。そし「地球にやさし
く」などと尊大な態度を取っているのです

 いったい地球は、いつまで人類のこのわがままを許してくれるで
しょうか。そう長くはないでしょう。そして地球は「地球にやさし
く」という人間様にお世話してもらうほど柔な存在でしょうか。「
地球を救う」などの言い方もありますが、救ってもらわなければな
らないのは人類です。そして古より「天は自ら助く者を助く」原則
に立っています。

 私は、「地球にやさしく」というような表現で表される不遜な考
え方、態度を人間が取り続ける限り、地球はいずれ地球生命に貢献
しない人類に対して鉄槌を下す答えを出すと思っています。私の想
像では下記の4通りのシナリオが考えられます

1.	人類が放出する炭酸ガスなどの温暖化ガスで、地球温暖化が
加速し大自然災害が多発して、人類の急減に繋がる予測です。ま
で地震と風水害は同時に起こった経験は歴史上あまり知りません
が、風水害の多発によりその確立は高まりましょう。

2.	2000年周期で巡っていると言われる大海流がストップして気
温平衡機能が止まり、極地から氷河が地表を覆う氷河期が再来し、
植物が急減し食料不足により人口が急減する事態の予測です。地
球温暖化の進行に伴い、グリーンランドなどの氷が急激に溶け、
海水の塩分濃度が低下し、アイスランド付近で発生している冷海
水の沈入が止まってこの事態が発生する可能性は高いと言われて
います。映画「ザ デイ アフター トモロー」の世界です。

3.	生物としての人類の生殖機能の低下による急減
 増えすぎたある生物種には自然淘汰が自主的に行なわれます。
自らの作り出した薬物、化学製品により、人類の生殖機能の
低下、あるいは乳幼児の死亡率の上昇等により、人口急減に至る
事態です。

4.	伝染性疫病の流行による人口急減
 今や天敵のいなくなった人類を抑制する力を持っているのは
微生物など目に見えない生物しかないかも知れません。鳥イン
フルエンザなどよりもっと強力な抗体細菌が、人類の作り出す薬
物に対抗する過程で誕生し、人類に襲いかかる事態です。
  皆様いかが思われますか?
                     以上


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