5790.日本国民の状況が改善している



アベノミクスがやっと、正しい方向に向かい始めた。日本は単一民
族という纏まりを維持するために、国民全体の生活をよくする政治
をしないといけない。やっと、アベノミクスがその方向に回転し始
めた。今後は国民全体が貧乏にならないような政策が必要である。
その検討。               津田より

0.現状
株価が1万7千円に戻り、上昇し始めた。世界的に大きなリスクが
当面起こらないという予測により、リスク・プレミアムもない状態
になっている。このため、日本自体の経済状況がどうかという点に
なっている。そのため、経済状態が良いことが重要になっている。

そして、この経済状態が良い。1つには、米国利上げで105円と
ドル高円安になったことが大きいが、2つ目には日本の現状が政治
的にも安定して、経済的にもしっかりしているという観測が出始め
たことである。

これにより、欧米の年金基金などの長期的な投資家が日本株を買い
始めたことが大きい。日本企業にとっては、105円は一時の80
円より円安であり、業績には大きな影響が出ない。120円より円
高になったが、その影響範囲は為替差損分しかない。

特に、この現状を浜田教授の英文「アベノミクスの隠れた成功」と
いう英文で表したので、欧米投資家に大きな影響を与えているよう
に思う。有料版の読者は、参考資料で確認ください。

日銀黒田総裁も金融緩和手段として、マイナス金利深堀を行うとい
う発言もなくなり、銀行の生命線である金利低下の可能性がなくな
り、現時点、業績的には高いのに、株価が安いために高配当になっ
ている銀行株も上昇している。今までは安定的な大手銀行株の配当
は1%程度であったが、現時点4%から3%もある。

上昇を止める世界的なリスクとしてのトランプ米大統領リスク、ド
イツ銀行など欧州銀行破綻リスク、中国経済沈下リスク、米露中東
核戦争リスクなどが当面緩和したことが重要であるが、そうすると
、米ドル高になり米国の景気を冷やす可能性があるが、現時点では
、まだ顕在化していない。

1.日本経済の現状
日本経済は、政府統計で現れていない活動があり、日銀の税務ベー
スの統計と政府統計では大きなギャップが出ている。政府統計で用
いている家計調査でも専業主婦ベースで取り、全人口の多くを占め
る単身家庭の行動が取れていない。このため、政府統計は、現代社
会を十分反映していないのではないかとの疑いが持たれている。

税務ベースの日銀発表の経済指標では、政府統計のGDPがマイナスで
はなくプラスになっている。潜在成長力がゼロ%付近であるので、
プラスであるということは、現時点では日本経済は活況ということ
になる。

このため人手不足が起こり、9月の完全失業率3.0%であり、ほぼ完
全雇用状態を示している。このため、全国のアルバイトの平均時給
が1000円の大台を超えたようである。

2014年で団塊の世代が65歳を迎えて、大量退職したことで、
人手が足りない状況になっている。もちろん、65歳以上の高齢者
も働き続ける人が多くなり、就業率が30%であるが70%の人が
退職している。

大企業は、この穴を正社員ではなく、非正規社員や下請けに回して
いるので、大企業だけではなく中小企業にも仕事が回り始めたが、
中小企業の人手は逼迫しているようである。このため、健康な若者
が職を得ることはほぼ出来る状況になってきた。

アベノミクスが始まった当初とは違い、大企業ではなく中小企業や
非正規社員に金が回り始めているということになる。大企業社員は
賃金が上がらずに、非正規社員の給与が上がることになり、良い形
になってきた。やっと、所得格差が解消し始めてきたようだ。

企業は、人手不足のために機械化やIOT化などの合理化投資をする必
要が出てきている。

この状況で組合で構成される連合がベア要求を今年と同じ2%にとど
める方針を明らかにしたが、その途端、安倍政権から要求が低すぎ
ると不満の声が上がっている。大企業の賃金も上げて、物価を押し
上げたい政府と世界的な競争状況と日本の成長力がないことを知る
企業・労働組合とが対峙している状態である。一般労働者の味方が
政府というのも史上初めてのことであろう。

このような状態ができたことで、安倍政権の支持率は60%にも上
がり、当分安泰である。安倍首相の任期も9年になった。しかし、
まだ、政権が安定するかというと無理がある。財政基盤が危ういの
である。新規国債を30兆円も依存しているし、今後、防衛費や社
会保障費が増えることになり、財政破綻というリスクを抱えている。

2.財政再建
長期政権になるためには、この財政基盤を整備することで、将来へ
の不安を無くす義務が発生している。このままで30年もしたら、
日本は後進国になってしまう。その大きな原因は、人口減少である。

総務省の2015年国勢調査では、日本の総人口は1億2709万5000人で
、10年の前回調査と比べ96万3000人も減った。日本人に限ると107万
人減の1億2428万4000人にもなっている。それを埋め合わせている
のが日本在住の外国人であり、10万人増加し175万人もいる。

人口が毎年20万人以上も減っている。これでは、税収が減って財
政基盤が持たない。税収を増やすために、増税すると国民全体の可
処分所得が減り、デフレになってしまう。

事実、実質消費支出は、前年比マイナス2.1%と7カ月連続の減
少して、9月全国百貨店売上高でも前年比マイナス0.5%になり
、9月全国スーパー売上高は前年比マイナス3.2%と2カ月連続
で前年を下回った。

9月全国消費者物価指数では、食料とエネルギーを除いたコアコア
CPIが前年比0.0%になり、原油の動向を差し引くと、物価が
上がっていないというより、マイナスになってきたことを鮮明にし
た。このように、再度デフレになってきたようだ。

その原因は、高齢化の進展による全人口の30%を占める年金生活
者の増大と、先行きの年金カット見通しによる節約志向の強まりと
、子育て世代は教育費の増大テンポが給与の増加分をはるかに上回
っており、貯蓄の取り崩し要因になっている家計が多いと予想され
る。

各世代にわたって将来への不安が存在している現状では、不安に対
応するため、節約して備えるという人が多いようだ。この不安感を
少しでも払拭し、明るい展望を示すのが、政治の本来の役割である
ができないでいる。

このためには、税収の拡大を増税だけに頼るのは無理であり、納税
者数を拡大して、税収を確保する道が必要なのである。

人口減少は累積的な効果があり、純血主義の保守主義者が反対して
長い議論している間に人口減少が加速して、より大きな量の海外労
働者を受け入れないといけない事態になるか、日本自体が後進国に
なってしまうことを恐れる。早く、人口減少を止めることである。
もう、日本女性の出産率向上を待ってはいられない状況になってき
たように感じる。

当面は、財政破綻を防ぐために、社会保障レベルの削減をすること
である。例えば、年金見直しだけではなく、70歳以上の医療費の
1割負担から3割負担等の保障制度の見直しが必要である。

選挙のために、高齢者を優遇してきたが、それも徐々に見直す必要
があるようだ。世代間格差を解消して、長い間一定的な社会保障制
度ができるようにすることが必要である。厚労省が行ってきたその
場しのぎを止めて、制度の安定化を図るしかない。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
The Secret Success of Abenomics
https://www.project-syndicate.org/commentary/secret-success-of-abenomics-by-koichi-hamada-2016-10

==============================
バイト平均時給1000円超 「さらに上がる見込み」で企業は体力勝負
2016/10/29 12:00 jcast
  2016年9月に求人広告を出した全国のアルバイトの平均時給が、
1000円の大台を超えたことが、人材サービス会社「インテリジェン
ス」(東京都千代田区)の調査で分かった。2002年の調査開始以来
、初めての4ケタの大台乗せだという。アルバイトやパートの時給ア
ップは「脱デフレ」に向けた動きとして歓迎されるものの、年末の
繁忙期を控え、企業にとっては経営圧迫の一因にもなりかねない情
勢だ。
   全国の平均時給は1003円で、前月より11円、前年同月より25円、
それぞれ上昇した。エリア別では関東が最も高く1062円。1000円を
超えたエリアは関東のほかは関西(1013円)だけだった。地域格差
は依然、顕著なものの、調査した全国5エリア(他に北海道、東海、
九州)すべてで前月と前年同月をいずれも上回った。特に、九州
(889円)は37か月連続の増加で、地方でも上昇基調が続いているこ
とが分かった。
社会保険の適用拡大の影響も
   職種別では、上げ止まりの傾向が見えていた「フード系」(969
円)や「販売系」(916円)を含め、全8職種のうち7職種で前年9月
より上昇した。最も高いのは薬剤師などの「専門職系」で1143円だ
った。
   平均時給が1000円を超えた理由について、インテリジェンスは、
10月に予定されている国の最低基準の引き上げ(全国平均で過去最
大の25円)に備え、企業側があらかじめ対応を取ったためと見てい
る。ただ、年末が近づく11月以降は、人手がいっそう必要となるこ
とから、「時給はさらに上がる見込み」という。
   人手不足が強まる中、アルバイトやパートは異業種の間でも奪い
合いになっているとされる。このため、特に、時給が比較的低いと
される外食や小売り企業を中心に人手確保は一段と困難になってお
り、時給引き上げの動きが続いている状況だ。一方、人件費の上昇
はコスト増となってじわじわ企業の首を絞めている。「人件費がさ
らにかさめば経営に影響を及ぼしかねない」(外食大手関係者)と
の懸念は着実に広がっている。
   こうした中、10月からは社会保険の適用が拡大され、加入対象と
なる年収が130万円以上から106万円以上に引き下げられた。「保険
料の支払いを避けるため、働く時間を減らす動きが実際に出ている
」(経済アナリスト)との指摘もあり、人手不足はさらに深刻化し
つつあるといえる。十分な人手を確保するため、企業が直面する環
境は厳しさを増しており、「人件費の上昇に耐えられるかどうか、
体力勝負になってきている」(同アナリスト)との見方が強まって
いる。
==============================
9月の完全失業率3.0%、前月比0.1ポイント改善 
2016/10/28 8:36日経
 総務省が28日発表した9月の労働力調査によると、完全失業率(
季節調整値)は3.0%で、前の月に比べて0.1ポイント低下(改善)
した。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値は3.1%だった。
 完全失業者数(同)は202万人で、前月に比べ8万人減少した。う
ち、勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人減、
「自発的な離職」は3万人減だった。就業者数(同)は6449万人で
15万人減少した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
==============================
財政再建にマジックはない
2016年10月28日 15:27アゴラ
小黒 一正
2016年9下旬、日銀が異次元緩和に関する「総括検証」を行い、短期
金利をマイナス0.1%程度、長期金利を0%程度に誘導する「長短金
利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した。
これは、主な政策手段を「量」から「金利」に修正し、金融政策を
方向転換したことを意味するが、それでも当分の間、日銀が相当な
量の国債を購入していくことに変わりはない。
日銀が国債を購入すれば、その分、日銀以外の民間銀行などが保有
する国債が減少する。このため、「日銀が国債を買い切ってしまえ
ば、財政再建は終了する」旨の言説がネット上で一時流行したが、
これはウソで誤解である。
詳細は拙著『預金封鎖に備えよ マイナス金利の先にある危機』を
ご覧頂きたいが、政府部門を「夫」、日銀を「妻」に喩える場合、
大雑把な見方としては以下のように説明できる。
まず、夫(政府部門)が発行した借用証書が「国債」だが、金融政
策により、それを妻(日銀)が買い取り、別の借用証書に等価交換
している。この等価交換した借用証書が「準備(日銀当座預金)」
だが、これは妻の債務である。
例えば、夫(政府部門)が発行した借用証書が1000兆円で、そのう
ち400兆円を妻(日銀)が買い取り、別の借用証書400兆円に等価交
換する場合、確かに夫の債務は600兆円に減少する。だが、妻の債務
が400兆円に増加するので、夫婦合計(統合政府=政府部門+日銀)
の債務が減少することはない。この家計の債務合計は1000兆円(=
600兆円+400兆円)である。
なお、いまは国債金利も、超過準備(=日銀当座預金−法定準備)
の付利も概ねゼロのためにコストが顕在化していないが、デフレ脱
却後、日銀のバランスシートの負債側にある現金と準備(日銀当座
預金)は、物価が何倍にもならなければ維持不可能なものであり、
日銀はバランスシート縮小のために保有国債を減少させるか、バラ
ンスシートの規模を維持する代わりに準備(日銀当座預金)に対す
る付利を引き上げたり、法定準備率を引き上げる必要などが出てく
る。
そのとき、財政赤字を無コストでファイナンス可能な状況は完全に
終了し、巨額な債務コストが再び顕在化するわけで、財政再建にマ
ジックはない。
(法政大学経済学部教授 小黒一正)
==============================
THE PAGE2016年10月28日 09:00BLOGOS
賃上げに前向きなのは政府だけ? 物価や景気の見通しは厳しく
 来年の春闘に向け、労働組合の中央組織である連合がベースアッ
プ(ベア)の要求を今年と同じ2%にとどめる方針を明らかにしまし
た。これに対して、何と安倍政権の側から要求が低すぎると不満の
声が上がっています。労働組合は労働者の要求を会社に突きつける
のが本来の役目ですが、企業側はもちろん、労組ですら2%以上の賃
上げは難しいと考えていることになります。物価が上がると信じて
いるのは、もはや政府だけなのかもしれません。
ベア2%の要求に、政権は低すぎると不満の声
 安倍政権は2%の物価上昇を実現するため、3年連続で財界に対し
て賃上げを要請しています。財界側は本意ではなかったようですが
、安倍政権の強い意向を受け、賃上げを受け入れてきました。労組
は基本的に賃上げを求める立場ですから、不思議なことに、右派と
もいわれる安倍政権と左派の代表である労働組合の意見が一致して
いたわけです。
 ところがこうした奇妙な蜜月関係も終わろうとしています。ベア
の要求を2%にとどめるという方針が示されると、麻生財務大臣は閣
議後記者会見で「もっと上がってもおかしくない状況にあるのでは
ないか」と不満を表明し、さらには「何となくそこらに押さえ込ま
れたのかなという感じはします」と述べ、強い要請があったのでは
ないかとの見解も示しました。
経営も労組も物価動向は厳しい見解で一致か
 財界と連合でどのような話をしているのかは知る由もありません
が、経営側と労組側で物価動向に関する厳しい見解で一致している
のは間違いないようです。これ以上、ベアの要求はできないと労働
組合が認識しているわけですから、物価や景気の見通しはかなり厳
しいと考えてよいでしょう。
 実際、最近の物価動向は散々です。総務省が発表した8月の消費者
物価指数は、代表的な指数である生鮮食品を除く総合(いわゆるコ
ア指数)が前年同月比でマイナス0.5%でした。物価がマイナスにな
るのはこれで6カ月連続ですから、すでにデフレと呼んでもよい状況
です。
 この先、すぐに景気が回復し物価が上昇する見込みは低いですか
ら、企業は設備投資に対して極めて慎重になっています。こうした
状況では、さすがの労組も3%や4%の賃上げを要求するのは難しか
ったものと思われます。労働組合ですらここまで物価に対して慎重
ということですから、日本は本当にデフレに逆戻りしてしまうのか
もしれません。賃上げに前向きなのはもはや政府だけとなりつつあ
るようです。
(The Capital Tribune Japan)
==============================
海外年金マネー日本株を再評価か、安倍長期政権に視線−BNP
関根裕之
2016年10月28日 07:15 JST 更新日時 2016年10月28日 12:33 JST
日本株を動かす海外投資家の主役が、ヘッジファンドなど短期資金
から年金など中長期資金に交代する可能性が出てきた。アベノミク
スのスタートから間もなく4年、政策面などでサプライズが起きに
くくなった半面、主要国における相対的な政治安定への評価が背景
にある、とBNPパリバ証券ではみている。
  岡澤恭弥グローバルマーケット統括本部長はブルームバーグの
インタビューで、9ー10月は例年になく、日本を訪問する海外投資
家の対応に追われたことを明らかにし、「年金などロングオンリー
の中長期資金を運用する投資家の訪問が多い」と述べた。一方、ア
ベノミクスは「もはやノーイベントということを見越し、グローバ
ルマクロ戦略を取る投資家の訪問はほとんどない。アベノミクスの
華やかな部分が薄れ、簡単に利益を上げる方法がなくなってきたこ
とがある」と言う。
  日本株の売買代金で7割を占める海外勢は、安倍晋三首相の政
権復帰を機にデフレ脱却、構造改革の進展を期待し、2013年に現物
株を15兆円、14年に8527億円買い越した。その後、中国経済の減速
や米国の利上げなどで世界経済の不透明感が広がり、為替の円高進
行で日本の企業業績懸念も浮上した昨年後半以降は売り姿勢に転換
。ことし1ー9月の累計売越額6.2兆円は、同期間としては1987年を
抜き最大だった。10月に入ると、第1週に2805億円、第2週に1132
億円の買い越しと動きに変化が生じている。
  ブルームバーグ・データによると、27日時点のTOPIXの年
初来騰落率はマイナス11%。世界の主要94指数の中ではイタリアや
サウジアラビア、中国上海などに続きワースト12位だ。
  海外の中長期投資家が日本に目を向け始めた理由として、岡澤
氏は安定した日本の政治を挙げた。23日に行われた衆院東京10区と
福岡6区の補欠選挙は、いずれも与党側候補が野党統一候補に勝利
。同氏は、「補選勝利を受け1月に解散総選挙に踏み切るモチベー
ションは高い」とし、総選挙なら「自民党の勝利は確実。さらに2021
年まで安倍政権が続く可能性が見えてきたことはかなり強烈で大切
なメッセージ」と話す。自民党は26日の政治制度改革実行本部の総
会で、総裁任期をこれまでの連続2期6年から3期9年に延長する
ことを決めた。
  11月に迫った米国の大統領選挙は民主、共和党両候補とも決定
打を欠く混戦模様で、難民問題を抱えるドイツではメルケル首相の
支持率が低迷。岡澤氏は、相対的に安倍首相が強いリーダーとして
浮かび上がるため、「アベノミクスは最高ではないが、政権の長期
化が政策実行力を高める」とみている。財政政策や円高対応、コー
ポレートガバナンス(企業統治)の推進に加え、構造改革の歩みも
「ゆっくりだが、後退はせず、マネーの置き場として日本株のバリ
ュエーションが高いわけでもない」とし、消去法的な観点でも日本
株には選ばれる理由があるという。
日本株売りの最大要因はマイナス金利
  海外勢によることし前半の猛烈な売りについて、岡澤氏は「日
本銀行による金融政策の不透明感が日本株をアンダーウエートにす
る理由」と分析した。政官財が一体となり、アベノミクスを応援す
る流れが続いてきたが、日銀による「1月のマイナス金利導入から
『アンチアベノミクス』的な肌色に変わった。為替がさほど円安に
進まず、一枚岩がほころび始めた」とみる。
  この動きにストップがかかったのが、日銀が9月に行った金融
政策の総括的検証だ。マイナス金利による貸出金利の低下は金融機
関の収益を圧迫している、などと配慮を見せ、「これまでの政策を
否定することなく方向転換を図った。マイナス金利政策に副作用が
あることを認め、政策的には有効でも、積極的には使わない考えを
にじませた」と同氏は評価する。
  岡澤氏は、日本株のストラテジーを聞いてくる海外投資家に対
し、政治の安定や経済政策の対応力などを挙げつつ、「日銀がもは
や世の中を驚かせることはしないとの前提に立てば、これがアンダ
ーウエートの市場か」と逆に質問している。海外勢にとって理解し
にくい面はあるものの、論点を整理していくと、悪くもないと返答
されると言う。
ブルームバーグ
==============================
 2016年 10月 28日 20:26 JST 
コラム:消費不振の真因、天候不順ではなく「不安」と「節約」の
連鎖
田巻 一彦
[東京 28日 ロイター] - 日本国内における個人消費が低迷し
ている。政府は天候不順を大きな要因として挙げているが、果たし
て正しいのか。私は高齢化の進展による年金生活者の増大と将来の
年金カットによる不安感があると指摘したい。不安感は子育て世代
や20代などにも広がり、節約志向を顕在化させている。政府が手
をこまねいていると、消費低迷が長期化する兆しが見え始めている。
<政府が強調する天候不順>
総務省が28日に発表した9月家計調査では、全世帯(単身世帯除
く2人以上の世帯)の実質消費支出は、前年比マイナス2.1%と
7カ月連続の減少だった。
20日発表だった9月全国百貨店売上高は前年比マイナス0.5%
と、ここでも7カ月連続の前年割れ。24日に発表された9月全国
スーパー売上高は前年比マイナス3.2%と2カ月連続で前年を下
回った。
政府は、8、9月に台風が多数、日本列島に上陸するなど夏場の天
候が悪化し、消費を抑制したと説明している。
しかし、天候要因だけで本当に消費の低迷を説明できるのだろうか──。
政府・日銀内では、大企業を中心に3年連続でベースアップが実現
し、いずれ個人消費は底堅さを示すとみてきた。
ところが、いつまで待っても消費は回復してこない。売り上げが回
復しないので、スーパーなどでは「特売」の回数が増え、足元では
通常価格の値下げの動きも出てきている。
28日に発表された9月全国消費者物価指数では、食料とエネルギ
ーを除いたコアコアCPIが前年比0.0%になり、原油の動向を
差し引くと、物価が上がっていない実態を鮮明にした。
<増加する年金生活者数と年金カットの影響>
消費低迷の第1の要因は、高齢化の進展による年金生活者の増大と
、先行きの年金カット見通しによる節約志向の強まりだと考える。
厚生労働省によると、65歳以上の高齢者が全人口に占める割合は
、2015年10月1日現在で26.7%。年金生活者の割合は30
%を超えている。
一方で、臨時国会で審議中の年金制度改革法案では、公的年金額は
減少することになる。年金財政を維持して行く上でやむをえない改
革であると政府は説明しているが、高齢者の節約志向は強まってい
る可能性が高い。
その割合が全体の3割を超える現状では、消費全体に堅調さが戻ら
ないのもうなづける。
将来への不安感は、高齢者にとどまらないのではないか。子育て世
代は教育費の増大テンポが給与の増加分をはるかに上回っており、
貯蓄の取り崩し要因になっている家計が多いと予想される。
さらに出産・育児に携わる世帯では、夫婦共働きの場合、託児所や
保育所の不足が深刻で、女性が出産時に休業したまま職場に復帰で
きないケースも多発している。
20代、30代では収入が少ないから、結婚せずに独身でいる方が
いいと考える層が一定程度の割合を占めている。明治安田生活福祉
研究所が今年3月に実施したアンケート調査では、結婚したいと思
わない、という20代男性の割合が20.3%、30代男性が
24.7%にのぼった。
また、独身でいる理由の中で「家族を養うほどの収入がない」が
27.2%でトップを占めた。
<不安感払拭へ、問われる政治の構想力>
各世代にわたって将来への不安が存在している現状では、不安に対
応するため、節約して備えるという人が多いのではないか。
この不安感を少しでも払拭し、明るい展望を示そうとするのが、政
治の本来の役割であると考える。
確かに安倍晋三政権は支持率が高く、今や日本はG7で最もポリテ
ィカル・キャピタルの厚い国だ。その「原資」を不安解消に振り向
けることが、遠回りなようでも消費を活発化させる近道だ。
「不安」と「節約」のリンクをどこで断ち切ることができるのか。
日本の政治がこれまで「苦手科目」としてきた大振りな構想力の発
揮が求められている。
==============================
2016年 10月 27日 19:31 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:日本政治「安定」の謎=河野龍太郎氏
河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 27日] - アベノミクス開始以降、日本の平均成長率は年
率0.8%にとどまる。2015年以降はわずか0.2%だ。一方
、物価動向を見ると、エネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI
)は15年12月に一時、前年比1.3%まで上昇したものの、今
年8月には0.4%まで低下している。安倍政権は2%成長、2%
インフレを大々的に掲げていたが、いずれも目標に届いていない。
しかし、安倍首相の支持率は高く、今や先進国では稀と言っていい
ほどの政治的な安定性を確保している。経済のさえないマクロパフ
ォーマンスと高い政治的な安定性のアンバランスは、海外の人にと
って大きな謎である。筆者は先日、ニューヨークを訪問したが、そ
れが投資家からの最も多い質問だった。
今回は、改めて日本経済の潮流を振り返る。そうすることで、安倍
首相の高い支持率の背景や日銀が2%インフレの達成を急がなくな
った理由が見えてくるからだ。
<完全雇用でも賃金上昇が緩慢な理由>
まず最も重要な点は、低い成長率の下でも、日本では労働需給の改
善が続いているということである。その理由はかねて述べている通
り、日本の潜在成長率そのものが今やゼロ近傍まで低下しているこ
とだ。この結果、わずかなプラスの成長であっても、需給ギャップ
が改善し、労働需給は逼迫(ひっぱく)する。
現在、失業率は3%程度まで低下しているが、筆者の推計では、日
本の構造失業率は3%台半ばであり、14年年初には完全雇用に入
っていたと考えられる。今の日本では、働く意思と能力があり、仕
事内容を選ばなければ、ほとんどの人が職を見つけることが可能だ
。安倍首相の支持率が高いのは当然だろう。
安倍首相も7月の参議院選挙で強調していた通り、現在の有効求人
倍率は1990年代初頭のバブル期並みの水準まで上昇している。
企業経営者にとって今や最大の問題は、需要不足ではなく、人手不
足だ。成長率に触れさえしなければ、アベノミクスのおかげで、需
給ギャップ改善が続き、実体経済は好調だと主張できる。
しかし、完全雇用に達しているにもかかわらず、なぜ賃金上昇が緩
慢なままなのか。それがニューヨーク滞在中、次に多い質問だった。
これに関しては、いくつか理由がある。1つは、人手不足で正社員
の採用が困難になっているため、高齢者や主婦など非正規の採用が
増えていることだ。日本の公式な賃金統計はいずれも月給ベースで
あるが、月間の労働時間が短い労働者が増えているため、集計され
る月給ベースの平均賃金の伸びに下方圧力がかかりやすい。業界統
計で時間給を確認すると、労働需給の逼迫を反映し、13年後半か
らパート・アルバイトの賃金は上昇率が加速している。
このように指摘すると、労働需給が逼迫すれば、良い人材を集める
ため、企業側は好条件を労働者に提示せざるを得ず、その結果、非
正規労働の比率は低下するのではないかとの疑問を持つ人は少なく
ないだろう。数年前までは、筆者もそう思っていた。だが実際には
、少子高齢化で人手不足が強まると、短時間しか働くことができな
い人まで駆り出されることになり、マクロ経済全体で見ると、非正
規雇用の比率は増えている。
現実に起こったことは以下のようなことである。12―14年に団
塊世代が65歳の引退時期に達した。同時に14年初頭には、日本
経済は完全雇用に入った。人手不足によって補充の正社員を見つけ
ることが難しいため、企業は団塊世代に職場に残ることを要請した
。すでに60歳になった段階で、嘱託に切り替わっていた人が少な
くないが、65歳になった段階では本人の希望もあり労働時間は短
縮された。
そのことで発生する労働力不足については、主婦などやはり労働時
間の短い雇用によって補われた。この結果、近年、労働者数は増え
ているものの、総労働投入時間はほとんど増えていない。これは、
実質国内総生産(GDP)がほとんど増えていないこととも整合的
である。
<金融グローバリゼーションの弊害>
ただ、こうした状況を勘案しても、完全雇用の割には賃金上昇率は
やはり緩慢だが、それはグローバルな現象だと言える。日本と同様
、米国も完全雇用にあるが、やはり賃金上昇率は鈍い。それゆえ、
インフレ率の上昇も遅れており、利上げは進んでいない。資本市場
のプレッシャーによって、業績が改善しても、企業経営者が賃上げ
を渋っており、金融グローバリゼーションの弊害とも言える。
日本の時間当たり実質賃金を分析すると、2000年代以降、交易
条件の悪化と労働分配率の低下が実質賃金の上昇を大きく抑えてい
る。前者は原油価格の高騰によってもたらされたが、後者は金融グ
ローバリゼーションによって、資本市場からの強いプレッシャーが
日本企業の経営者にも働くようになり、業績が改善しても、以前の
ようには賃上げが容易ではなくなっているということだろう。多く
の人が感じている通り、世知辛い世の中になっているのかもしれな
い。
ちなみに、ニューヨークを訪問する直前に、ワシントンで国際通貨
基金(IMF)・世界銀行年次総会に参加したが、そこで最も興味
深かったのは、かつて新自由主義政策の総本山と見なされていた
IMFが新自由主義的政策を強く批判するようになっていたことだ
。もちろん、自由貿易の堅持は変わらないが、資本の自由化などの
新自由主義的な政策は、所得格差を拡大し、社会を不安定化させ、
潜在成長率を低下させると批判していた。
また、近年のIMFの対日審査では、儲かった企業に対し賃上げを
要請する安倍政権の所得政策について、極めてポジティブな評価を
下している。つまり、賃金やインフレが上昇しないのは、構造的な
要因が大きく影響しており、金融政策のみで対応しようとすると、
金融仲介機能を損なったり、資産バブルをもたらしたり、弊害が大
きいということであるが、それが世界的な共通の理解となってきた
のである。
<正社員の賃金上昇は限定的>
日本にはもう1つ、完全雇用に達しても賃金上昇を緩慢にさせる労
働市場の特性がある。それは、正規・非正規の二重労働構造だ。残
念ながら過去四半世紀の間に、日本の労働市場の新たな特質として
すっかり定着してしまった。終身雇用の待遇を受ける正社員は、労
働需給が逼迫しても、職の安定性を求めて高い賃上げを必ずしも要
求しない。
17年春闘では、円高による業績悪化や原油安によるインフレ低下
を受け、ベアは0.1―0.2%にとどまるとみられる。このため
、労働需給の逼迫を反映して上昇するのはもっぱら、非正規雇用の
賃金や終身雇用制の色彩が薄い中小企業の従業員の賃金ばかりにな
ると予想される。
労働需給が逼迫しているのなら、正社員が共謀し、高い賃上げ率を
要求するのが合理的ではないかと海外の人は思うようだ。しかし、
終身雇用の待遇を受けるのは、企業特殊的な人的資本を蓄積してい
る人であり、そのノウハウは他の会社では必ずしも通用しない。こ
のため、彼らは職の安定を求め、会社の存続確率が低下するような
選択や、業績悪化で株主や銀行など外部のステークホルダーからの
雇用リストラのプレッシャーが高まるような選択を望まない。
16年のベアが15年の0.6%から低下して0.3%になったの
は、企業側がベアを渋る以前に、原油安によるインフレ率の低下を
背景に実質賃金が改善するため、組合が先に遠慮したためだった。
こうした様々な構造的要因が存在するため、完全雇用が続いても、
日本の賃金上昇率は緩慢なのである。
また、アグレッシブな金融政策をもってしてもその壁を破ることが
難しいと判断したからこそ、9月21日に日銀は政策の枠組みを大
きく転換した。2%インフレの達成にはまだまだ距離があり、一方
で政策ツールも無限に存在するわけではなく、副作用も目立ってき
たため、無理をしてまで2%インフレ達成を急ぐ必要はないと総括
したのではないか。
この点について、もう少し掘り下げよう。もともと、需給ギャップ
の改善だけで2%インフレを早期に達成するのは不可能であること
は日銀には分かっていたはずである。そこで、黒田日銀総裁が考え
たのは、金融市場の期待に働きかけ、円安に誘導し、インフレ期待
を高めることだった。為替市場では比較的簡単にバブルが醸成され
やすいことが知られていたため、円安バブルの醸成を狙ったのであ
る。そして、当初はうまくいっていたように見えた。
しかし、大幅な円安にもかかわらず輸出数量が全く増えなかったた
め、国内生産も増えず、円安による輸入物価の上昇を吸収するほど
、家計の所得は十分には増えなかった。賃金上昇が緩慢だったため
、円安によるインフレ上昇は家計の実質購買力を損ない、多くの人
が1ドル120円を超える円安に強い不満を覚えるようになった。
消費増税が行われた14年度だけでなく、15年度も消費が低迷し
たのは、増税の悪影響が長引いたからではなく、円安による輸入物
価の上昇で食品価格などが上昇を続けたためというのが正しい説明
だろう。2%インフレを急いでも、良いことはない。
賃上げ主導のインフレ上昇であれば話は別だが、安倍首相ももはや
2%インフレの達成にこだわっていない。むしろ、今後も賃金上昇
が緩慢であることを前提にするのなら2%インフレ達成は家計の実
質購買力を低下させるだけで、支持率の低下につながる恐れがある
ため、望んでいないと思われる。このことも日銀が9月にグラジュ
アリズム(漸進主義)戦略に回帰した政治的な背景だろう。
<財界人はなぜ安倍政権を突き上げないのか>
さて、安倍政権は2%成長と2%インフレを達成することで、社会
保障制度改革や公的債務の膨張などの長期的問題を解決すると言っ
ていたはずであり、その戦略が瓦解したのは明らかである。もし財
界人が本当に長期的視点で考えるのなら、安倍首相を突き上げても
不思議ではない。しかし、そのような気配は全くのところ感じられ
ない。実は財界人にとってもまた、現状は極めて心地良い状況なの
である。
日本の大企業経営者は、マクロ経済環境が良い場合でも悪い場合で
も、業績の全ての結果に対し責任を問われる。それゆえ、循環的な
景気のダウンサイド・リスクに対して極めて敏感で、完全雇用であ
っても、先行きが心配であれば直ちに補正予算を編成する安倍政権
は極めて頼りになる。
英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択(ブレグジット)後、震
源地の英国を含め、先進国の中で追加財政を決定したのは日本だけ
である。歴代政権の中でも、これほど景気循環にきめ細かな配慮を
示す政権は存在しなかった。それゆえ、財界からも安倍政権への支
持は簡単には揺るがないのだ。
ここで重要な点は、かなり早い段階で(恐らく15年度中に)安倍
政権は、金融政策の限界に気が付き、財政政策に軸足を移していた
ことである。そのことが、日銀の政策枠組みの二転三転にもつなが
った。景気刺激のための政策はあくまで追加財政で、金融政策の役
割は大幅な円高が訪れた際の回避と政府が追加財政を行う際のファ
イナンスと割り切っていたのである。
多くの国では、潜在成長率の低下によって分配可能な所得は大きく
縮小し、高齢化によって膨らむコストの分担問題は暗礁に乗り上げ
、政権の支持率は大きく低下している。それに代わって勢力を伸ば
しているのが、達成不可能な政策を国民に約束するポピュリスト政
治家である。
米国でのトランプ旋風やブレグジットだけではない。大陸欧州では
、政権奪取までは行っていないケースでも、極右勢力が今やアジェ
ンダ・セッターとなっている。
2%成長や2%インフレといった非現実な政策を掲げ、日本も同じ
運命をたどるのかと思われたが、少子高齢化による人手不足と事実
上の日銀ファイナンスによる追加財政によって需給ギャップは改善
が続き、高い支持率の下で政治も極めて安定している。
しかし、追加財政の効果の本質は、将来の所得の前倒しである。つ
まり、将来世代の所得を先食いする形で、足元の政治的な安定性が
確保されているということだ。一方で、潜在成長率はゼロ近傍まで
低下し、将来の税収で公的債務を解消することはますます難しくな
っている。各国と手段が違うだけで、同根と言うべきだろうか。す
ぐにではないにせよ、いずれ限界は訪れる。
*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエ
コノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友
銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一
生命経済研究所を経て、2000年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに
掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
==============================
日銀の枠組み変更で追加緩和はむしろ困難に
2016年10月26日 11:32
久保田 博幸
25日に毎日新聞は、日銀が31日から2日間開く金融政策決定会合で追
加の金融緩和を見送る方向となったと伝えている。物価上昇率の見
通しは下方修正する方針だが、9月の前回会合で導入した新たな政策
の効果を見極める必要があるとの意見が優勢となっているそうである。
21日に日銀の黒田総裁は衆院財務金融委員会に出席し、物価目標の
達成時期が後ずれする可能性を示唆した一方、追加緩和には慎重な
姿勢を示した。
31日から11月1日にかけて開かれる金融政策決定会合では、「経済・
物価情勢の展望」、いわゆる「展望レポート」も発表される。ここ
で物価目標の達成時期について現在の「2017年度中」を2018年度以
降に先送りするとみられている。先送りするのであれば、追加緩和
をするのではとの思惑が海外投資家などを中心に一部に出ていたよ
うである。
その期待が裏切られ、ほとんど動きのなかった債券先物が21日から
24日にかけて下落した。下落したと言っても先物で20銭程度なので
、誤差範疇ではある。それでも久しぶりに動いたことも確かであり
、24日は現物債の中期債が売られて、超長期債はしっかりしていた
。中期債の売りは、追加緩和期待で買っていた海外投資家が一部売
ってきたとの見方もあった。
ただし、日銀は9月にフレームワークを大きく変更してしまったこと
で、むしろ追加緩和には動きづらくなったとの見方もできることに
注意すべきである。一部の海外投資家などはさておき、国内の市場
関係者の多くは日銀はそう簡単に追加緩和はできなくなったとの認
識が強くなっているのではなかろうか。
なぜ日銀は9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政
策に変更し、操作目標を「量」から再び「金利」に戻したのか。
昨年12月に日銀は補完措置を決定したが、これは国債買入の量の限
界を示すものとなった。このことは1月の決定会合でマイナス金利を
導入したことからも明らかである。量から替えてマイナス金利の深
掘りを追加緩和手段にしようとした。ところがマイナス金利の弊害
が出て、金融機関からの批判も相次ぎ、その深掘りも困難となって
きたのである。
9月の総括的な検証など待たずとも、量の拡大が物価の上昇に寄与し
てこなかったことは明らかな上、マイナス金利による国債のイール
ドカーブの急速なフラット化は、資金運用にも悪影響を与えること
となった。量も動かせず、マイナス金利の深掘りも困難となり、金
融機関からの批判に対処するために、捻り出された手段がイールド
カーブコントロールとなったとみられる。
物価がいっこうに上がらない限り、日銀は退路を閉ざされているこ
ともあり、前向きの姿勢を示さざるを得ないため「オーバーシュー
ト型コミットメント」を持ってきた。目標を多少引き上げようが、
そもそも物価が金融政策で動いていない以上は、あまり意味はない
。これで追加緩和の可能性が強まったとは受け取れない。
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は追加緩和の余地を拡げ
たわけでもなく、むしろ量と金利の限界を示すものとなり、これは
つまり余程のことがない限り、日銀が追加緩和を行うことが困難と
なった見ざるを得ない。そしてもし仮に追加緩和として長短金利を
さらに深掘りしても、それがもたらすプラス効果は何でも良いから
「追加緩和をした」との事実からの一時的な円安・株高程度ではな
かろうか。実態経済には負の効果のほうが大きくなる懸念すらある。
==============================
日本の人口、96万人減の1億2709万人 15年国勢調査 
2016/10/26 14:45日経
 総務省は26日、2015年国勢調査の確定値を公表した。日本の総人
口は1億2709万5000人で、10年の前回調査と比べ96万3000人減った
。日本人に限ると107万人減の1億2428万4000人。日本在住の外国人
は10万人増加し175万人となった。
 全国1719市町村のうち82.5%にあたる1419市町村で人口が減少し
た。15〜64歳の生産年齢人口は474万人減り7628万人。総人口に占め
る65歳以上の高齢者の比率は26.6%と「4人に1人」を超えた。イ
タリア(22.4%)やドイツ(21.2%)より高く世界最高水準だ。
 世帯数は5344万世帯で149万世帯増加した。単身世帯が増加してい
るため。東京都の1世帯当たり人員は1.99人となり、比較可能な
1970年以降で初めて2人を下回った。



コラム目次に戻る
トップページに戻る