5786.米孤立化した後に中露の対決か?



米国のトランプ旋風はクリントン大統領後も、影響を残すことにな
る。それは米国の孤立主義である。米国がユーラシアから撤退後に
向けて、ロシアのプーチンが積極的に動き始めた。その検討。
               津田より

0.世界の情勢分析
トランプ候補が大統領になる眼はほとんどなくなった。しかし、ク
リントンが大統領になろうと、TPP反対でも分かるとおりに、米国は
孤立化していく。

アフガニスタンでもタリバンとの和平会談を行い、実質的には米軍
撤退後は、タリバンがアフガニスタンを統一することになるし、イ
ラン・シリアでISを排除してもシーア派とスンニ派の対立は起こり
、アルカイダ系のヌスラ戦線がISの代わりに、その地域を支配する
ことになる。

米国は中東での戦闘で、スンニ派とシーア派をその時々で揺れ動い
たので、信用をなくしている。中東全体からも米国は遅かれ早かれ
、撤退することになる。

シリアのアレッポの無差別空爆でも、米国はロシアを非難するが、
アレッポのシリア軍やロシア軍に報復することはないし、何もして
いない。再度、ムダな会議を続けているだけである。

トルコは、米国の頼り無さから、ロシアに近寄っている。しかし、
アサド政権を認めていないし、クルド組織がシリアで拡大している
ので、当面の敵としてアサドからクルドに変更して、シリア領内に
侵攻した。米国のクーデター後の非難もあるが、トルコは米国の撤
退を見越して、動き始めている。

今回の大統領選挙で、米軍兵士はトランプ氏を支援しているという
報道があったが、米軍兵士も中東での戦闘を無意味であると思って
いる証拠である。米国は数年で、ユーラシア大陸から撤退して米国
大陸に閉じこもると予測できるし、CIAと関係が深いストラッド
フォーは、米国の孤立化を提言している。

1.米同盟国は浮き足立つ
この予想ができるので、フィリピンのドゥテルテ大統領は、それを
見越して中国と交渉をして、南シナ海の共同開発の代わりに国内の
インフラ建設に多額の支援を得たのである。米国内情勢が米孤立化
を志向しているので、世界の米同盟国は浮き足立っている。

インドやベトナムも中国と国境紛争を抱えているが、米国との関係
を緊密化していたが、つい最近はロシアとの関係をより緊密化して
、中国を牽制し関係も維持することで戦争にならないようにしよう
としている。

EU諸国は、ロシアとの紛争を予想して、中国との友好な関係を構
築して、ロシアを牽制する方向である。特に東ヨーロッパに多額の
投資を呼び込み、ロシアを抑えるために中国の政治的な関与を引き
出している。

というように、米国の孤立化を見越して、米中露以外の国は動き始
めたのである。もちろん、日本もロシアとの関係を友好化するため
に、平和条約締結に向かって交渉を開始している。ユーラシア大陸
からの米国撤退を見越した世界的な動きなのである。

2.米国孤立化後の世界
米国をユーラシアから追い出すまでは、中露同盟は磐石であるが、
ユーラシア大陸から米国が撤退し関与しなくなると、どうなるので
あろうか?

ユーラシア大陸を支配できるのは、中国かロシアしかない。ロシア
は、しかし経済力が中国に非常に劣るので、そのままにしておくと
、中国が優位になる。中露同盟でも、中国はロシアをジュニア・パ
ートナーとしてしかみていない。一番のパートナーは欧州である。

このため、中国はロシアの経済範囲である中央アジアに積極投資を
して、実質、中国経済圏化しようとしているし、アジアと欧州を結
ぶシベリア鉄道を無効化する羅新鉄道を作り、ロシアを迂回した鉄
道網を作り、上海からスペインのマドリードまでの貨物列車を運行
開始している。将来的には高速鉄道化して、旅客列車も運行する計
画である。一帯一路の戦略を中国は相当に速い速度で実行している。

このため、放置していると中国圏が拡大してロシア圏の縮小になる
ので、ロシアのプーチンが動き始めている。それは中国包囲網であ
る。安倍首相が提言した中国包囲網をロシアのプーチンが実践して
いるのである。このため、中国近傍の国に軍事支援をし始めている。
よって、安倍・プーチンの関係が良い理由は、2人の戦略が中国包
囲網形成で一致しているからである。

それが、ベトナムやインドである。2つの国ともに経済力は十分あ
るので兵器産業の支援が必要で、ロシアはそれを2ケ国に提供する
方向である。

シリア政府軍には空軍戦闘力が必要なので、ロシアは提供している。
中東には、現在、中国は手を出していないし、軍事力の展開が不十
分な状態であるので、ロシアは先手を打っているのである。
ロシアの目的は、中東を中国に取られないようにすることである。

もう1つが、日本の経済力をロシアが取り込んで、中国と対抗しよ
うとしていることである。日本はロシアの軍事力を利用して、中国
と対応しようとしているので、目的は日露では一緒なのである。

3.日露友好条約の締結
日本の問題点は、南シナ海が中国の領海になった途端に中東からの
石油輸送ルートをより長いロンボク海峡経由にするしかないが、日
中の戦争時には、このルートも爆撃されて使いえないことになる。

石油や天然ガスを中東に80%も依存している日本は中国との戦争
はできないが、尖閣諸島を攻撃されると自動的に日中戦争状態にな
ってしまう。

このため、サハリンの天然ガスをパイプラインで日本が買うと、L
NG(液化天然ガス)に比べて1/3以下の値段で買えて、かつ、
長い航路をタンカーで運ぶ必要もないので、日本にとっては二重の
意味で、ありがたいことになる。シベリアのパイプラインが繋がれ
ば、より多くのガスが供給可能になる。天然ガス価格が安いと、エ
ネルギー大食いの化学工業など製造業が復活できるようになる。

または、シベリアに工場を建てることで、安い化学製品が出来るこ
とにもなる。投資機会が増えることになるし、人手不足の日本人で
はなく、職不足のロシア人の雇用もできて、両国にとって良いこと
である。

もう1つが、シベリア鉄道の日本延伸という計画もあり、シベリア
鉄道の始発が札幌になると、日本発欧州行きの列車ができることに
なる。貨物便も便利になる。もし、シベリア鉄道を標準軌にすると
、新幹線が乗り入れできて、東京発パリ行きの列車が出来ることに
なる。

ロシアとの交渉で問題なのが北方領土問題であるが、いろいろな解
決方法を既に、コラムでは提案しているので、ここでは述べないこ
とにするが、領土問題も重要であるが、より重要なのがエネルギー
安全保障であろうと思う。

12月が楽しみである。中国包囲網形成の日露同盟を結ぶことにな
ると見るのは、考えすぎであろうか?

さあ、どうなりますか?

参考資料:
Stop this stupid sabre-rattling against Russia
http://www.spectator.co.uk/2016/10/stop-this-stupid-sabre-rattling-against-russia/

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