5748.米利上げで世界はどうなるか?



26日イエレン議長のジャクソンホールでの講演会で、年内利上げ
の方向を示唆した。その後、フィッシャー副議長は9月の利上げで
、年内もう1回の利上げを志向するというから、年内利上げを見込
んでいない市場は、びっくりした。今後の経済状況を検討する。
                    津田より

0.状況の大きな変化
イエレン議長のジャクソンホールでの講演と、フィッシャー副議長
の示唆は、今までの状況をひっくり返すことになった。米国のFRBは
、そう簡単には利上げができず、米国首脳もドル高を望んでいない
ので、90円程度までドル安円高になると、市場は思っていたし、
為替が、どこまで円高になるかを日本の皆が心配していた。

このような状態をイエレン議長の講演は、ひっくり返したことにな
る。フィッシャー副議長の示唆後、円は1ドル=102円まで急落
した。今後、市場が折込むと円安は1ドル=105円程度まで行く
可能性がある。

それに伴って、NYSEの株価は下落し、月曜日の東証は株価を上げる
はずである。FRBの利上げによって、日銀の金融政策正常化として、
マイナス金利を止めることが可能になる。円安にするために、マイ
ナス金利を導入したが、結果は国債消化を不安定して、長期金利の
急激な上昇を引き起こす可能性が出てきたから、止める必要があっ
た。

なぜ、この時期にFRBは利上げをするのであろうか?
1つには、世界が密接に経済が結びつき、経済の相互依存性が増し
ている。中国経済の動向がおかしくなっているのに、加えて日本経
済が崩れると、米国にも大きな影響がでてくる。このため、通貨マ
フィアたちが通貨調整をしているように思う。

今まで、いくら円高であっても為替介入を日本単独ではできないの
である。通貨マフィアの了解が必要である。もし、やっても、為替
市場は膨大であり、効果がなく批判を浴び、かつ介入に対し世界の
ヘッジファンドが大量の空売りで対応すると、いくら日銀でも屈服
してしまうことになる。ソロス対英国中央銀行の戦いで証明してし
まっている。

もう1つが、リチャード・クーさんの講演でも指摘されているよう
に、インフレが起きた途端、国債の金利急上昇が起きるし、バブル
が起きる可能性があるし、景気が少し回復したら、早めに金利を上
げて、このようなことを防ぐことであると言っていたし、クーさん
はイエレン議長やフィッシャー副議長とも連絡を取っていると言っ
ていた。

バーナンキ前議長が訪日したのも、日本に40年国債発行をアドバ
イスするとともに、通貨マフィアにもバーナンキさんが話をつけて
くれる方向になったと見ている。

1.中国の現状
現在、中国の人民元は通貨流出で、標準値をキープするために、多
額の外貨準備高を切り崩して、人民元を買い支えている。また、通
貨管理を強化して、海外に流出しないように規制している。しかし
、それでも支えきれずにドル・リンクの標準値を下げて、元安にし
ている。これにより、貿易量の増大も目指している。

もう1つ、中国は一帯一路政策で、外貨を中央アジアなどに建設費
用として援助している。外貨が徐々に少なくなり、AIIBを作り、投
資に必要な金を世界から集めようとした。しかし、南シナ海問題で
、国際仲裁裁判所が中国の主張を全面的に否定したことで、中国の
信頼性が揺らいで、金を集めることができなくなっている。

中国国内では、経済的な問題で、派閥争いが起きている。というよ
り経済不振を共青団派の責任にしたいようである。しかし太子党の
多くは、国営企業のトップであり、習近平も国営企業を潰せないの
で、民間企業への資金を国営企業に回すように銀行に求めているの
で、太子党の方が中国経済に対して害悪の可能性も高い。これによ
り、民間企業の中国国内への投資がなくなってきている。

しかし、貿易量が世界一の中国経済が不調であり、このために世界
経済も上昇できずにいる。

米国企業も日本企業も中国で儲けていたので、日米企業業績も振る
わなくなってきた。

中国は、通貨マフィアと時々調整せずに、当局が動きを起こすこと
がある。人民元を国際通貨として確立するために、SDRに入った途端
に、通貨管理を強化して国際通貨化にしない動きをしている。

2.日本の40年国債
中国の変調の状況で、米国は日本の擬似ヘリマネを止める必要があ
る。もし、実行すると超円安になり、米国のドル高が急激に進むこ
とになる。1ドル=200円程度になると言われている。

また、日本市場はハイパーインフレになり、急に縮小して輸出ドラ
イブがかかり、米企業のビジネスを阻害する可能性が高い。このた
め、日米の通貨マフィアの調整が必要になったようである。

しかし、日本はドル安円高でデフレになる心配があり、これを止め
るためにも擬似ヘリマネを志向しているが、日米の利害が相反して
いる。

このため、円安にシフトさせる必要が米国にも出てきたのである。
擬似ヘリマネという極端な円安にさせずに適当な円安にして、デフ
レを停めて、日本が過激な方法を取らないようにすることが米国と
しても利益である。

もう1つが、米国の利上げで、日本もマイナス金利を相殺の形で止
めるかも知れない。

日銀総括ということで、米国をも巻き込んだ形で事態が推移してい
るようにも見える。

3.今後の状況
世界経済は相互依存性がインターネットの普及で一段と進んでいる。
このため、各国の通貨マフィアやG7、G20などで世界経済全体
を調整して行く必要にある。

その調整手段が為替であるが、放置すると自国通貨を安価にしよう
として競争し始める。しかし、そこには限界があり、マイナス金利
が銀行経営を不安定化することで、イタリアの最大銀行が倒産危険
性もあり、マイナス金利の深堀りは危険であることがわかってきた。

というように、手段が限られているので、自国だけが得をすること
が難しくなっている。このため、各国通貨マフィアの調整で、、各
国の通貨基準を決めるようになるのかもしれない。

自国経済は国内需要と海外需要でできているので、内需が落ち込む
と外需に向かうので、内需を上げる努力が必要である。外需は調整
されて、通貨高になり、抑制されることになる。

国内経済政策の中心は、よって内需拡大になるしかない。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
量的緩和から脱出の困難さ
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L7/271211.htm

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9月あるか…FRB議長、利上げへ地ならし 
2016/8/27 1:19日本経済新聞 電子版
 【ニューヨーク=大塚節雄】米連邦準備理事会(FRB)のイエ
レン議長は26日、米ワイオミング州でのジャクソンホール会議の講
演で追加利上げへ地ならしを進めた。時期は9月か12月か。カギは
、雇用改善が続き物価上昇に波及するかどうかが握る。議長は米成
長の実力に見合う「中立金利」の低下を踏まえ、現在の金融政策手
段の点検にも焦点を当てた。今後の利上げシナリオと絡み、市場の
焦点となりそうだ。
 イエレン氏の講演…
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NY円、一時101円94銭
米当局者発言でドル買い
2016/8/27 07:45
 【ニューヨーク共同】26日のニューヨーク外国為替市場の円相場
は米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部から追加利上げに前向きな発
言が相次いだことでドル買い円売りが進み、一時は1ドル=101円94
銭と約2週間ぶりの円安水準に下落した。
 FRBのイエレン議長が講演で利上げに意欲を示したほか、フィッシ
ャー副議長ら複数のFRB幹部が年内の利上げを示唆し、早期利上げ観
測が強まった。
 利上げペースが想定より速いとの見方が広がったことが嫌気され
て、この日は株式相場も下落。ダウ工業株30種平均は一時約110ドル
安まで値を下げた。
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2016年 08月 27日 03:07 JST 
米FRB議長講演、年内利上げ観測に沿う内容=副議長
[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のフィッシャ
ー副議長は26日、イエレンFRB議長がこの日に行った講演の内
容について、年内に利上げが実施されるとの観測に沿ったものとの
考えを示した。CNBCに対して述べた。
フィッシャー副議長は、9月に利上げが実施され、年内に複数回の
利上げがあると予期するべきかとのCNBCの質問に対し、「イエ
レン議長がこの日の講演で述べたことは、この2つの質問に対し『
イエス』と答えることと整合性が取れている」と述べた。ただ、こ
うしたことは経済指標次第となるとの見方も示した。
そのうえで、経済指標は改善しているとし、「経済が力強さを増し
たとの証拠は出ている」と指摘。労働省が発表する8月の雇用統計
は利上げをめぐる決定を左右する可能性があるとの見方を示した。
連邦公開市場委員会(FOMC)の年内の日程は9月、11月、
12月となっている。
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フィッシャー氏が仕切る利上げ 
NQNニューヨーク 野見山祐史
2016/8/27 7:18日本経済新聞 電子版
 26日の米市場を動かしたのはイエレン米連邦準備理事会(FRB
)議長でなく、副議長のフィッシャー氏だった。イエレン講演を補
強するかのような発言を受け、市場はにわかに9月の追加利上げを
シナリオの1つに加えた。
 「イエレン氏がきょう話した中身は、その質問に『イエス』と応
えるのと整合的だ」。CNBCテレビのインタビューで9月利上げ
を問われたフィッシャー氏は「データ次第」と断りつつ利上げを口
にした。市場で…
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中国の経済官庁、投資失速の責任なすり合い 
2016/8/27 0:36日本経済新聞 電子版
 【北京=原田逸策】民間投資の伸びが大幅に縮小する中国で、経
済官庁同士が失速の責任をなすりつけ合っている。投資の許認可権
を握る国家発展改革委員会(発改委)がさらなる金融緩和を求める
一方、中央銀行の中国人民銀行は追加緩和に慎重で逆に財政出動の
拡大を促す。中国で経済政策を巡る政府内の溝がここまで露呈する
のは極めて珍しく、中国経済の不安定要因になりかねない。
 「いまの預金準備率は歴史的にも主要国と比べても高い」。発改
委経済研究所は26日午前、こんなリポートを発表した。
 預金準備とは中央銀行が預金量に応じて市中銀行から強制的に預
かるお金のこと。この比率が低いほど銀行の手元にお金が残り、企
業向けの貸し出しに回しやすくなる。
 リポートは「中小企業の資金調達コストは依然高い」とも指摘。
準備率の引き下げで金融機関の貸し出し余力を増やし、企業の調達
金利を下げ、民間投資を後押しすべきだとの考えだ。民間企業主体
の中華全国工商業連合会の譚林経済部長も「銀行は貸し倒れリスク
を防ぐため、すでに融資した民間企業に追加融資するのに慎重な態
度だ」と話す。
 「流動性は十分に供給している」。同じ頃、人民銀の易綱副総裁
は北京市内の講演でこう語った。短期金融市場で2週間と長めの資
金供給を増やす方針を示した。人民銀は流動性を増やすには預金準
備率を下げる必要はなく、日々の金融調節で対応できるとの立場だ。
 両者の論争の背景には民間投資の伸びが今年に入って失速したこ
とがある。昨年通年で10.1%伸びたのに、今年1〜7月は2.1%まで
落ちこんだ。李克強首相が何度も会議を開いて対策案もまとめたが
、なかなか上向かない。足元の6、7月は前年同月比でマイナスだ
ったとみられる。その責任を巡って「発改委と人民銀がお互いに『
仕事をきちんとやれ』と言い合っている」(官僚OBの経済学者)。
 実は発改委と人民銀の論争は今月2回目。3日午前に発改委が「
一段の利下げ、預金準備率下げを実施する」と記した文書を発表し
、同じ日の午後に関連部分を削除する一幕があった。市場では「人
民銀に緩和圧力をかけた」との見方がある。
 すると人民銀も5日の報告書で「準備率を下げて大量の流動性を
供給すれば、人民元の下落圧力が高まり、外貨準備が減る」と反論
した。7月には人民銀幹部が「金融政策の効果を上げるには積極的
な財政政策が必要」と語った。
 発改委と人民銀はいずれも中国政府のマクロ経済政策の中心を担
う経済官庁。中国で政府内の方針のズレがここまでハッキリとあら
わになるのは極めて異例だ。しかも論争は収束する気配がない。共
産党は来年秋の5年に1度の党大会で指導部が大幅に交代する。マ
クロ経済が安定しなければ人事にも影響しかねない。
 中国では今年5月に共産党機関紙の人民日報に「権威人士」との
匿名で経済に関するインタビュー記事が掲載された。過剰流動性で
頻発する局所バブルに警鐘を鳴らし、バラマキの財政出動をいまし
める内容だった。
 習近平国家主席に近い人物の意向が反映されたといわれる。この
方針を忠実に守れば、人民銀は追加の金融緩和に慎重にならざるを
えず、発改委も財政出動による景気対策に二の足を踏むことになる
。政策の空白が生じた中で民間投資が失速し、効果的な対策を打て
ていない可能性もある。
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米当局が利上げにこだわる「重大な理由」
「イエレン講演」で見えた秋以降のシナリオ
滝澤 伯文 :CBOT会員ストラテジスト 2016年08月27日TK
夏枯れで材料に欠いた相場関係者は、異常なまでに8月26日のジャク
ソンホールでのイエレン議長の講演に期待していた。
だがそもそも「ジャクソンホール」は、FEDが与えられた法的権限の
中で、新しいフレームワーク(政策決定の枠組み)を世界に向けて
示す場である。対象は市場関係者ではなくアカデミア。新しいフレ
ームワークのアイデイアが無ければFRB議長は参加しない。
ならば、バイナリー(二者択一)のイベントに慣れてしまった今の
「オン・オフ二進法相場」には、本来馴染まないイベントだったか
もしれない。26日の米国市場も、結局のところ異常な期待があだと
なり、いったんイエレンで「オン」(上昇)。ところが、直後にフ
ィッシャーFRB副議長がCNBCでイエレンのスピーチの解釈を説明する
と、簡単にオフ(下落)してしまった。
いつから市場は「中央銀行主義」へ傾斜したのか
筆者の経験では、1970年代後半から存在するこのイベントが常時注
目されるようになったのは、2000年代になってから。そのきっかけ
は1999年、当時議長だったグリーンスパンが、後に?”グリーンスパ
ン・プット”とよばれるようになった?“New Challenges for 
Monetary Policy” を発表してからだろう。これを境に、株価の急
落局面では、FEDはインフレや失業率に関係なく、金利を引き下げて
株価を支えることが”普通”になった。
ここから金融市場は中央銀行主義へ傾斜。DO NOT FIGHT FED(中央
銀行に逆らうな)という「格言」が、あちこちから聞こえるように
なったが、さらに踏み込んだのが2010年だ。この年にバーナンキが
発表したのが“The Economic Outlook and Monetary Policy”だ。
ここでは日銀がひっそりとやっていたQE(量的緩和政策)を、なん
と2008年のリーマンショックから2年が過ぎ、システム危機が去った
後の米国でも始めることが示唆された(QE2)。
この時は実際に市場が動き出したのは9月になってからだ。当事最も
有力なヘッジファンドだったデービット・テッパー氏が、CNBCで“
中央銀行がこれから債券を買うとわざわざ表明しているのに、なぜ
みんな躊躇しているのか”と発言。ここが基点となり、株高は2015
年まで続いた。
では、26日のイエレンのスピーチで見えてきたシナリオはなんだろ
うか。繰り返すが、イエレンは皆が期待した利上げの時期について
の明確なヒントは避けた。ただ重要な示唆をしてくれている。
なぜ利上げは歓迎されるのか
利上げの時期は示さなかったが、イエレンが強調したのは、銀行が
FEDに預けている当座預金への金利の重要性だ。筆者は事前にNY連銀
のダドレー総裁が利上げを示唆したのは、ハト派としての予防的な
タカ派ポーズではなく、筆者がメリーゴーランドとイカロスの神話
で解説したように(「コラム『中央銀行バブル』は、いつ完全には
じけるか」を参照)、NY連銀の株主でもあるウォール街の要望を代
弁したと考えている。
リーマンショック後、混乱のドサクサにまぎれて銀行免許を取得し
たゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーには、今や大量
に預金が集まり始めている。ゴールドマンは、GS BANKとして、個人
向けのセービング口座に1%の金利を付けている。
これまで一部の大金持ちだけを相手にしていたゴールドマンが、最
低預金額を設定せず、一般からも預金を集めるなら、その信用力か
らしても大量の資金が集まるはずだ。しかし安定した運用先(金利
)がなければ、このビジネスモデルは成り立たない。証券会社とし
て相場の変動で儲けるにも、株も債券もここまで割高になっては、
もはや危ない。
そこでもし利上げをすれば、FEDは銀行免許をもち、FEDに預金を預
ける金融機関にその分の金利を余計に払うことになる。それは銀行
免許を得たゴールドマンなど、金融機関にもありがたいことだ。も
ちろん旧来からの銀行であるJPモルガンやCITIも利上げは歓迎であ
る(このあたり、筆者はマイナス金利を導入した後の日本の現状を
参考にしている可能性を強く感じる)。


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