5745.財政破綻と戦争が同時進行



国が破綻する原因は、財政破綻と戦争での敗戦の2つであるが、こ
れが、2つともに同時進行しているのが、日本である。どうすれば
よいか。その検討。               津田より

0.中国の襲来と財政破綻
中国が尖閣諸島に漁船250隻と武装された公船数隻を送り、隙あ
れば、海洋民兵を尖閣諸島に上陸させようとした。これは戦争に結
びつくし、日中戦争になる可能性が高い行為である。

この行為に対して、政府は中国政府に抗議しただけで、対応手段を
言わないことで、中国はより強い行動を取る可能性が高まっている。

しかし、この戦争になる可能性がある現時点で日本経済は、復活で
きずに停滞したままである。財政破綻が起こり得る状態を引きずり
、地政学リスクと財政破綻の2つの深刻な問題が同時に襲いかかっ
てきている状態である。

この2つの問題を、同時に解決することが政府に求められているこ
とである。アベノミクスでの構造改革が不十分というより、まった
く役にたっていないことによる。アベノミクスから3年が経ち、そ
ろそろ、構造改革の効果が出てきても良いが、その気配は全くない。

それは構造改革の方向が間違えていたことによる。一番に取り組む
必要があったのは、人口減少問題、労働人口減少問題であったが、
これがほとんどされていないことによる。

人口減少問題の解決は、限定された移民政策しかない。将来のテロ
や戦争国になりそうな国の移民はしてはいけないが、親日国や味方
になる仏教国家からの移民は、運命共同体とし受け入れて良いはず
である。もちろん、日本語教育などをして、文化的な問題を起こさ
ないようにして移民することが重要である。

現時点、将来戦争になるかもしれない中国から50万人以上もの知
識階層移民を受け入れているが、戦争になったとき、この中国移民
の人たちを、どのように待遇するのであろうか?

多くの中国人が日本でゲリラ活動や破壊工作をする可能性があるが
、第2次大戦時の米国の日本人収容所みたいな収容所を作るつもり
であるのか、非常に心配な状況である。特に企業の中核にいる中国
人労働者が多数退去したら、その企業は活動が出来るのであろうか?

そろそろ、企業も対応策を考えておく必要があると思うが、どうで
あろうか?それほど、今回の漁船250隻来襲は心配な状況になっ
ているのである。

しかし、一方、日本の成長には、移民が必要である。人口減少は、
即、経済の維持ができずに、日本は財政破綻になる。このため、移
民は、少なくとも年間20万人以上は、必要になっている。それも
中国人以外で、イスラム教徒以外で必要なのである。

1.夢も持つ国対現状維持国の戦い
世界は、夢を持つ国家群対現状維持希望の国家群の戦いになりそう
である。夢を持つ国とは、1つにソ連の復活を夢見るプーチンのロ
シア、2つが唐や清帝国の復活を夢見る習近平の中国、3つ目がオ
スマン・トルコを夢見るエルドアンのトルコである。それと、ペル
シャ復活というかシーア派擁護のイランが世界の紛争を引き起こす
ことになる。

サウジ、欧米日、東南アジア諸国、インドは、現状維持を望むが、
4つの国は、拡大志向であるので、当然、この周辺諸国は戦争の準
備をしないと負けてしまうし、戦争できる程体力がないなら、属国
化するしかない。徐々に周辺諸国は色分けされてきている。

第3次世界大戦に向けて、世界は再構成され始めている。米国の覇
権力が弱まり、また国内の貧富の差が激しくなり、国力を世界の警
察として使えずに、国内の社会福祉に向ける必要があるようだ。

このため、米国は限定的な対応しかできないので世界の警察の役割
を同盟国にシフトさせている。このため、日本も米国の役割の一部
を分担する必要が出てきたのである。

2.国家破産
日本は財政破綻する可能性がある。今までに1053兆円もの国債
を発行して、それでも新規に40兆円程度の国債を発行して、税収
は50兆円しかないのに、予算は90兆円にもなる。これは、いつ
か破綻すると小学生でもわかる。

防止するためには、税収を増やすか、支出を削るしかない。しかし
、消費税増税もしないし、社会福祉予算の減額もしないというので
、何も対策をしていないに等しい。税収を上げる方法として、景気
を底上げして、法人税や所得税の増収を狙うが、倍にはならないの
で、増税をしないと難しい。

それより、国債が返せなくなる。そのため、国債が売れなくなり、
国債が暴落するはずが、国債販売は順調に消化している。日銀が預
金をマイナス金利にしたことで、その国債の金利がマイナスである
。損をすることが確定している国債が売れる。このため、政府は国
債を発行して利子を受け取れるので、国債発行を止めない。どうし
てかというと、国債を日銀がより高い値段で買ってくれるからであ
る。

このような事態になり、三菱東京UFJ銀行は、国債の買取を中止して
持ち高を減らしているし、他の銀行も国債の持ち高を減らす必要が
ある。

日銀の量的緩和で、国債を年間80兆円も買っているので、国債に
占める日銀の割合が30%程度になり、18年末には50%程度な
ることが確実である。しかし、いつかは、国債に対する信任が尽き
る。日銀が量的緩和を縮小したら、国債の金利は急激に上昇して、
銀行が持つ国債は暴落になり、銀行の安全資産は一夜にして不良資
産になる。ゆうちょ銀行や地方銀行の多くが破綻すると言われてい
る。

このため、日銀も量的緩和を縮小できないのである。しかし、日銀
のマイナス金利で、国債の消化が日銀の買取を前提にしていること
自体が異常であり、正常な国債消化には、国債をプラス金利にする
必要があり、そのためには日銀のマイナス金利政策を止める必要が
ある。

もし、マイナス金利を深堀したら銀行の国債買取はできずに、海外
のヘッジファンドの国債暴落狙いのターゲットにされるだけである。
国債暴落(国債の金利の上昇)で、長期金利が暴騰して、円が超円
安(1ドル=200円程度)になり、国民は輸入食料品価格が2倍
以上になり、ハイパーインフレで貧しくなるし、日本は財政破綻す
ることになる。そして、国債の発行ができずに、予算の大幅カット
をするしかない。国民はダブルパンチを食らうことになる。

これをハイパー・インフレによる国家財政の健全化というようであ
るが、国民は塗炭の苦しみを味わうことになる。

3.金融抑圧
もう1つが、英国が戦後行った金融抑圧という方法で、金利をゼロ
にして、インフレを年率2%にして、30年先には、重みが半分に
なる。税収は倍以上になるので、全体的な重みからすると1/4に
なる。国民は徐々に慣らされるので、苦しみは少ない。

しかし、現在は、このような計画でインフレ率を上げようとしてい
るが、なかなか上がらない。

ということで、ハイパー・インフレのような急激な円安ではないが
金融抑圧レベルのマイルドなレベルより、もう少し過激な方法で円
安にして、インフレを作る必要があるようだ。

特に、日銀の量的緩和でも、円高が止まらず、このままにすると、
インフレではなくデフレになり、国債の重みが増す方向になるので
、どうしても円安にすることが必要になっている。

4.40年国債
このため、ヘリマネという方法が話題になっているが、政府の国債
を直接、日銀が買い取ることでカネを供給しようとことであるが、
国債の直接受け入れを日銀法では、禁止している。この日銀法を改
正して、直接受け入れをするのは、歴史的な観点からも難しい。

そこで、40年国債を日銀が現在持っている国債と交換するという
手を財務省が提案して、日銀がそれを検討しているのである。

このため、麻生財務相が、日銀黒田総裁との会談後、40年国債を
作ると言ったのである。もちろん、金利はゼロである。一般にも売
り出すが、金利はゼロである。相続税がかからないというメリット
を付けるようである。一般に売り出すことが目的ではなく、日銀の
国債を凍結するのが目的である。これで借り換えの国債発行がなく
なるので、国債の販売量が少なくできる。

このような40年国債発行でヘッジファンドがどう反応するのか、
また、格付け会社がどう格付けをするのかが問題である。

そして、これを擬似ヘリマネということにして、円安になるかどう
かである。円安になるが、これは日本から投資が逃げることになる
ので、日銀はETFなどの買いで株価の下落を止めるようである。

日銀総括の内容と日銀・財務省の合同作戦の概要はこのようなこと
になるのではないとみている。

さあ、どうなりますか?

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世界の株式、欧州銀行問題を警戒 16市場で下落 
2016/8/20 13:17日本経済新聞 電子版
 今週(15〜19日)の世界の株式市場は、主要25市場のうち6割強
にあたる16市場で下落した。7月以降の相場は米景気の緩やかな回
復期待などを背景に堅調だったが、欧州を中心にした政治リスクや
金融機関の経営問題はくすぶったまま。こうした問題に対する警戒
感が再び浮上している。
 最も下落率が大きかったのはイタリアで、週間で約4%下げた。
レンツィ首相が進退を賭ける国民投票を今秋に控えているほか、不
良債権問題…
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ロイター2016年08月19日 08:55
防衛省の17年度予算、過去最大の5.1兆円を要求へ=政府関係者
[東京 19日 ロイター] - 防衛省は2017年度の概算要求に
、過去最大の5兆1600億円程度を計上する方針を固めた。北朝
鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、日本を取り巻く安全保障
の環境が一段と厳しさを増しているとして5年連続で増額を要求す
る。
政府関係者が19日、明らかにした。
防衛省がとりわけ重視しているのが、北朝鮮の弾道ミサイル技術向
上を受けた防衛態勢の強化。地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3
」の改修費用約1000億円を計上するほか、米国と共同で改良に
取り組む海上配備型ミサイル「SM3」の量産費用を盛り込む。
大気圏に再突入してきた弾道ミサイルを迎撃するPAC3は、射程
距離を約2倍の30キロ超に伸ばす。大気圏外でミサイルを捕捉す
るSM3は、高度をさらに引き上げる。ミサイル防衛(MD)を将
来的にさらに強化する研究費用も計上する。
このほか、東シナ海で動きを活発化させる中国をにらみ、沖縄県宮
古島や鹿児島県奄美大島に陸上自衛隊の沿岸警備部隊を配備する費
用を要求する。有事の際の制空権を確保するため、9カ国が共同開
発する新型戦闘機F35の取得費用も盛り込む。
防衛省が次年度予算の概算要求額を増やすのは5年連続。初めて5
兆円を突破した16年度の当初予算からは、約2.3%の上積みと
なる。16年度は5兆0911億円を要求し、5兆0541億円が
認められた。
防衛費は、装備の調達を契約してから完成するまでに時間がかかる
。実際の支払いは複数の会計年度をまたいで分割にするケースが大
半で、毎年の予算が膨らみやすくなる傾向にある。来年度の概算要
求も、過去に計上した予算の後払いが多くを占める。
(久保信博)
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不毛な「押しつけ憲法」論争はもう卒業しよう
戦争より大きなリスクが国を滅ぼす
2016.8.19(金)  池田 信夫 JBPRESS
アメリカのバイデン副大統領の日本国憲法についての発言が論議を
呼んでいる。これはクリントン大統領候補の応援演説で、共和党の
トランプ候補が「日本と韓国から米軍を撤退させて日韓に核武装さ
せる」と主張していることに反論した中で出てきたものだ。
「われわれが日本国憲法を書いたので、彼らは核兵器を保有できな
い」("We wrote the Japanese constitution so they could not 
own a nuclear weapon")という発言の「われわれ」はアメリカ人、
すなわち当時のGHQ(連合国軍総司令部)を意味する。これは歴史的
には間違っていないが、アメリカの副大統領が公式に認めたのは異
例だ。
GHQが「平和憲法」を起草した
これに対してワシントンの日本大使館は「現行憲法は帝国議会で最
終的には十分に審議され、有効に議決されたものだが、占領軍当局
の強い影響のもと制定されたものだと考えている」とコメントし、
バイデン発言を大筋で認めている。
この発言を産経新聞は「押しつけ憲法」をアメリカが認めたものと
して大きく報じたが、朝日新聞は「戦後の歴史を無視するかのよう
なバイデン発言は傲慢」と批判し、東京新聞は「戦争放棄は幣原首
相が提案した」というGHQのマッカーサー最高司令官の発言を紹介し
ている。
この経緯については多くの研究があるが、幣原が提案したという話
は疑わしい。これは1946年1月24日に行なわれたマッカーサーと幣原
の会談で出たとされているが、幣原の証言によれば戦争放棄は一般
論だった。1月30日に閣議了解された日本政府案(松本案)には戦争
放棄という条項はなかった。
憲法制定当時の最大の焦点は第9条ではなく、第1条(天皇)だった
。日本政府が「国体護持」を求める一方、連合国のつくった極東委
員会で、ソ連は天皇制の廃止を求めていた。マッカーサーは天皇制
を廃止すると大混乱になると考え、それを名目的に存続しようとし
ていた。
ところが松本案の内容は、天皇主権の明治憲法とあまり変わらない
ものだったので、マッカーサーは2月3日に民政局のケーディス次長
に憲法草案をつくるよう命じた。25人のスタッフが大急ぎでGHQ草案
(写真)を起草し、10日にマッカーサーに提出した。
2月13日に日本政府は松本案を提示しようとしたが、マッカーサーが
逆にGHQ草案を提示し、これをもとに新憲法をつくるよう求めた。帝
国議会がそれを(二院制などの部分だけ)修正して可決したのが、
今の憲法だ。
戦争放棄も戦力の不保持もGHQ草案で初めて出てきたので、バイデン
発言は間違っていないが、それを「押しつけ憲法」というのは正し
くない。当時は米ソが連合国として共に戦い、世界の脅威だった枢
軸国が敗れたので、戦争はもう起こらないと多くの人が考え、帝国
議会でも(共産党を除く)ほぼ全会一致で憲法は承認されたのだ。
「占領憲法」をめぐる左右のルサンチマン
しかし米ソの蜜月は短かった。1949年にソ連が核実験に成功し、50
年に朝鮮戦争が起こると、戦争放棄などと言っていられる状況では
なくなった。アメリカのダレス国務長官が来日して、吉田茂首相に
日本が憲法を改正して再軍備をするよう2度にわたって求めた。
これに対して吉田は「再軍備は日本経済の再建を不可能にする。ア
ジア諸国にも日本の再侵略に対する危惧がある」として再軍備を拒
否し、警察予備隊を「保安隊」と改称するだけでお茶を濁した。
吉田の真意は、まだ焼け跡の残っている貧しい日本は莫大な軍事費
の負担には耐えられないということにあり、朝鮮戦争の最中に再軍
備したら日本も戦争に巻き込まれることを恐れていた。
もう1つの理由は、第2次大戦のような総力戦では経済力の差が勝敗
を決めるので、10倍ぐらい経済力の違うアメリカにソ連が戦争を挑
むことはないだろうという見通しだった。だが、これはソ連が核兵
器をもったことで大きく変わった。核戦争は低コストで敵を全滅さ
せることができるからだ。
吉田も晩年には「憲法第9条は間近な政治的効果に重きを置いたもの
だった」と語り、日本経済が立ち直ったら改正しようと考えていた
が、そのチャンスは2度と来なかった。憲法改正を党是として結成さ
れた自民党も、衆参両院の3分の2を取ることはできなかった。
占領時代のままの憲法に対する屈折したルサンチマン(怨恨)はそ
の後も続き、右派が占領状態から脱却する「自主憲法」を目指すの
に対して、左派は日米安保条約を「対米従属」として批判してきた。
財政破綻がもたらす経済の「焼け野原」
だが憲法改正は、それほど大事な問題だろうか。自衛隊は解釈改憲
で増強され、世界有数の堂々たる軍隊になった。今年の参院選で「
憲法改正勢力」が初めて両院の3分の2を超えたというが、第9条につ
いては公明党が反対を明言しており、野党も「第9条の改正反対」が
野党共闘の唯一のスローガンなので改正は不可能だ。
世論調査でも「憲法を改正すべきだ」という意見は半数に満たず、
特に第9条については3割以下なので、たとえ国会で発議しても国民
投票で否決されるだろう。
それより大きな問題は、人口減少や高齢化にどう対応するのかとい
うことだ。世論調査でも国民の最大の関心事は、憲法ではなく社会
保障だ。
国が滅びる原因は、昔から2つしかない。戦争と財政破綻である。日
本が戦争で滅びるリスクは大きくないが、財政破綻はほとんど避け
られない。しかし財政赤字の最大の原因は社会保障(特に老人福祉
)だから、与野党ともに手をつけようとしない。投票者の過半数が
老人だからである。
日本の社会保障はすでに破綻している。年金だけで800兆円以上の積
立不足があり、これを一般会計で埋めると政府債務は2000兆円を超
える。医療費も巨額の赤字を抱えており、急がないと団塊の世代が
年金基金を食いつぶしてしまう。
今までは日本銀行が国債を「爆買い」してゼロ金利になっていたの
で問題が表面化しなかったが、さすがに日銀も「総括的な検証」と
称してテーパリング(国債買い入れの減少)を検討し始めた。国債
が消化できなくなって金利が上がるとインフレになり、それがさら
に金利上昇を呼ぶ。
長期的には、大幅な歳出削減と負担増は避けられない。問題を先送
りすればするほど負担は重くなり、世代間の不公平は大きくなり、
日本経済が「焼け野原」になるおそれが強い。与野党ともに選挙が
恐くて社会保障に手をつけられないのなら、民主党政権の三党合意
のように「挙国一致」でやるべきだ。
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40年国債増発≒「ヘリコプターマネー」 麻生・黒田の協調演出の
思惑
2016/8/19 12:29jcast
   麻生太郎財務相が2016年8月2日、政府の発行する国債の中で最も
満期までの年限が長い「40年債」の増発を検討すると表明した。
   このことが、金融市場にさまざまな波紋を投げかけている。「政
府が国債を日銀に買ってもらったまま償還しない」――もっと平た
く言えば「日銀が政府に返済不要のお金を渡す」――いわゆる「ヘ
リコプターマネー」に近いものとして意識してほしい、との政府の
意図がにじみ出た、との解説も聞かれる。
わざわざ「帝国ホテル」で会った理由
   この日午後4時半。東京都千代田区内幸町の「帝国ホテル」の一
室で、麻生財務相と黒田東彦日銀総裁が向き合った。政府の施設で
はなく、プライベート感のある場所での会談だ。双方ごく限られた
幹部しか随伴していない。極秘裏に行ってもよさそうなものだが、
始まる数時間前にマスコミ各社に告知することで、冒頭の様子をマ
スコミが写真撮影するために準備する時間の余裕を作るという、な
かなか宣伝色の濃い会談だった。
   財務省(霞が関)と日銀(日本橋)の間に存在する格式の高いホ
テルを選んだのは、仮に財務省庁舎内で実施すれば政府が日銀を呼
びつけたような格好になるからだろう。そうした印象を避け、あく
まで政府と日銀の協調姿勢を演出しようとしたのは間違いない。
   それにしても、協調を宣伝するにしてもなぜこのタイミングなの
か。
   答えの一つが、会談後の記者会見(財務相と日銀総裁は個別に実
施)において、麻生財務相が記者団に聞かれてもいないのに自ら語
り出した「40年債の増発」だ。会談内容を自ら説明するついでに、
どさくさにまぎれて発表したとも言える。麻生財務相は「増発」に
ついて、「日銀の大規模な金融緩和策で生じた低金利環境を活用し
、リニア中央新幹線のような長期にわたるインフラ整備にあてる資
金を調達コストが低い中で手に入れる」との趣旨であると説明した
。それはそうなのだろうが、あえて発表した理由は市場の動揺を収
めることにあったとの見方が有力だ。
   日銀が7月29日の金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入
拡大という「小ぶり」の追加緩和を決める一方、次回9月会合で「緩
和策の総括的検証を行う」と発表した。ETF購入拡大で「株価が下支
えされる」として株式市場はある程度好感した。
   だが、国債市場は、「日銀が大規模に国債の購入を続ける現状か
ら後退し、9月会合以降に購入額縮小に動くのではないか」との観測
から国債が売られた。長期金利の指標となる新規発行の10年債の利
回りは、8月2日に一時マイナス0.025%と3月半ば以来、約4カ月半ぶ
りの高水準に急上昇(国債価格は下落)した。7月下旬に一時0.3%
までマイナス幅が拡大していただけに、上昇のスピードはかなり急
ピッチだった。
9月の日銀会合に市場が大注目
   これに慌てた政府と日銀が急遽、トップ会談の場を設け、市場に
アピールしようとしたとみるのが自然だ。会談後の記者会見で黒田
総裁は、「市場では緩和縮小に向かうとの観測がある」との質問に
「そういったことにはならない」と述べ、緩和縮小を否定。これに
先立つ麻生氏の記者会見で「40年債の増発」が飛び出した。会談と
その後の記者会見を受け、長期金利(新発10年物国債利回り)は低
下し、やや落ち着きを取り戻したため、それなりの効果はあったと
言える。
   40年と言えばかなり先だ。一方で日銀総裁は緩和縮小を否定した
。そのため政府が日銀に返済不要の国債を引き受けてもらう「ヘリ
コプターマネー」政策、あるいはそれに近い政策の導入があるので
はないか、との市場の期待を高めたと指摘するアナリストもいる。
   ただ、ヘリコプターマネーは現行法令上の禁じ手で、日銀は否定
し続けている。財政規律が緩むとみられ、財政や通貨の信認が揺ら
ぎかねない劇薬でもある。日銀の9月会合は検証の結果、どんな結論
を導き出すのか。多くの市場参加者が注視している。


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