5736.株価が動かない



日銀がETFを年間6兆円の買取りを決めたが、この影響で円高にな
っても、東証日経平均の株価が下がらない。1ドル=100円台で
も、16000円をキープしたままである。そして、円安に振れても、
16500円以上ではあるが、17000円には届かない。

非常に狭いレンジでしか日経平均が動かないことになっている。午
前、株価が下落すると、午後は株価が上昇してしまうことになり、
下落がない。上昇時には、日銀の介入がないので、株価の値上がり
も、売りに押されて伸びない。

このままでは、東京証券取引所は、本来の市場の役割を果たさなく
なるように思う。

景気の先行指標としての日経平均株価は意味がないように思う。

さあ、どうなりますか?

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米国株が最高値でも日本株がイマイチな理由
日経平均は1万7000円を簡単に突破できない
田代 昌之 :マーケットアナリスト 2016年08月06日TK
米労働省が8月5日に発表した7月の米雇用統計は、市場予想を大きく
上回る内容となった。市場では米国の年内利上げの可能性が再び高
まり、為替市場では円安ドル高、株式市場では米国株が上昇した。
S&P500指数(2182.87p)とナスダック総合指数(5221.121p)は、終
値ベースでの史上最高値を更新。コモディティ市場では、安全資産
と言われる金価格が大幅安となり、ややリスク選好の地合いになっ
た。8日以降の東京市場には追い風となるが、夏枯れ相場と言われる
時期に突入していることから、日経平均株価など、指数の上値は重
くなりそうだ。上がりにくくなる理由の一つには、今話題の日銀の
ETF買い入れも含まれる。なぜなのかは、のちほど説明しよう。
米景気の先行きに関する過度な警戒は払拭
7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+25.5万人で市
場予想の同比+18万人を上回った。7月の失業率は4.9%で6月と同水
準だったが、労働参加率は6月の62.7%から0.1ポイント上昇して
62.8%になった。労働人口の増加が失業率の低下を阻んだようだ。
市場関係者が注目していた平均時給に関しては、前年比+2.6%で上
昇率は6月と同水準だったが、前月比では+0.3%と6月の+0.2%を上
回っている。
市場関係者からは、「7月の雇用統計は労働市場の改善が続いている
ことを示す内容」との声が聞かれる。一方で、インフレが2%レベル
に加速するためには、平均時間給のさらなる上昇が必要になるとの
見方は多い。なお、7月は製造業、ヘルスケア、小売り、人材派遣、
娯楽・ホスピタリティなどの分野で雇用者が増加したが、7月の広義
の失業率(不完全雇用率)は0.1ポイント上昇して9.7%となってお
り、労働市場の緩みは解消されていないことも確認された。
つまり上記の内容をまとめると、今回の米雇用統計は、市場予想を
上回る「ポジティブ・サプライズ」となったわけだ。7月29日の4-6
月期GDP予想下振れ以降、米国景気の先行きに対する不透明感が高ま
っていたが、6月の雇用統計に続くポジティブな雇用統計に、米国景
気の先行きに対する過度な警戒は払拭された感はある。
Fedウォッチを確認(東京時間6日8時30分時点)すると、9月のFOMC
での利上げを予想する割合は18.0%と雇用統計前の水準(9.0%)比
では2倍となっている。では、今年最後の12月14日のFOMCでの利上げ
を想定する割合はどうだろうか?
こちらも46.5%と雇用統計前の水準(32.1%)より増加している。
昨年12月に利上げを実施した際、利上げを想定する割合は70%を超
えていたことを考慮すると、7月の雇用統計の内容は、年内利上げ期
待を押し上げるものとなったが、年内の利上げ実施が難しいことに
変わりはない。年内利上げの有無に関しては、引続き8月の雇用統計
の内容や、落ち込んでいる設備投資の回復などを見極める必要はあ
りそうだ。
さて、このポジティブ・サプライズを受けて、週明けの日経平均は
どういった動きを見せるだろうか?米金利引き上げ期待が高まった
ことから、米景気への先行き不透明感が後退し、為替市場で円高ド
ル安の進行が一服したことは好材料だ。
ただ、年内の利上げ実施は難しいという見方に変化が無いことや、
足元の日本国債の価格下落が影響して日米金利差が縮小傾向にある
ことなどから、円安ドル高の地合いが一気に強まる展開は難しそう
だ。週明けの東京市場は買い優勢で取引スタートとなりそうだが、
日経平均を押し上げるような持続力は乏しいと見る。
そもそも日経平均は、日銀によるETF買い入れによって、需給面では
既に下落しにくくなっている。まだパターンが少ないことから、日
銀がETF買い入れを実施する運用が確立していないが、前場のTOPIX
が前日比+0.07%だった5日、買い入れは見送られた(設備投資およ
び人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF買入
は常に12億円入る)ことから、今のところ前場TOPIXがある程度下落
していれば、後場ETF買入が実施されるとの見方だ。
前場が下落すれば、日銀がETFを買ってくる。それも700億円前後
(4日は707億円だが、毎回この金額かどうかはわからない)の規模
で市場に入ってくるわけだ。売り方にとっては非常にやりにくい。
日銀が買入を実施する以上の資金で先物売りを浴びせれば、指数は
崩れるだろうが、市場の先行き不透明感を示す指数である日経VI(
ボラティリティ・インデックス)が21p台と大発会以来の水準まで低
下していることを考慮すると、短期筋の投資家は値動き鎮静化を嫌
気して積極的な売買は手控えるだろう。
株価はなぜ上がりにくいのか?
つまり現在の日経平均は非常に下げにくい状況にあるわけだ。ただ
、9月の日銀会合に向けて海外投資家の参戦は手控えられる可能性が
高い(7/30号を参照)ことや、日銀は前場プラスの局面では買い入
れを実施しない公算から、日経平均が上値を追うのも難しい。当初
の想定通り、日経平均は下がりにくく、上がりにくいといった地合
いが続くと考える。薄商いでの1万6000円から1万7000円のレンジ相
場をイメージしている。
なお、日銀によるETF買い入れの需給面を考慮すると、ファーストリ
テイリングなど日経平均の指数寄与度が高い銘柄は相対的に強含む
展開となろう。8月の第1週は、明治HDなど内需株が売られた一方、
ここ最近さえなかった同社やトヨタ自動車に資金が向かった。
一部では数千億円規模の大規模なリバランスが実施されたとの話も
聞かれる。トヨタが決算だけで買われたのか、それともTOPIX寄与度
の高さが意識されて買われたのかどうかはわからないが、投資資金
の流れは変化しつつあるようだ。もっともリバランスが入っている
だけで、新規資金流入の観測は伝わってこない。



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