5735.世界の秩序体系が変化する



中国のバーグ国際仲裁裁判所の判決を無視し、漁船230隻を尖閣
諸島に送り、日本への圧力を増している。世界の構造変化が急に、
その速度を増している。それに対して、どう日本は対処すれば良い
のであろうか。その検討。           津田より

0.現状認識
中国とロシアが、現状の秩序体系に挑戦してきていることに対して
、西洋諸国は、一体化できずに、その中露に押しまくられている状
態になってきた。

中国は、バーグ国際仲裁裁判所の九段線が無効であり、現状の礁埋
め立ても違法であると判決されたが、歴史的に自国領土であると譲
らず、米国もフィリピンも現状の違法状態をどうすることもできず
、中国の違法に対抗しないようである。中国の軍事力増強で、南シ
ナ海全体の支配を徐々に確立してきたが、それに米国も対抗手段が
ない。

そして、とうとう、東シナ海でも中国は行動を開始した。尖閣諸島
に漁船230隻と監視船9隻を送り込んできた。日本の対応を見る
ためであるが、ナチス・ドイツのラインランド侵攻と同じような対
応になっている。これの行く着くところは、戦争になってしまう。

日本も中国軍事力への対応として、核兵器装備も視野に入れていか
ないと、中国に対応できないことになる。中国に対抗しようとする
と、日本も軍事大国化することになる。

しかし、後門の虎もいる。この尖閣諸島への中国の攻勢に対して、
トランプ候補は現状の日米同盟を破棄するという。日米安保の不平
等性を問題視している。しかし、日米安保を平等化するためには、
日本の憲法を改正しないと難しい。

ロシアも東ヨーロッパへの攻勢を強めている。プーチン大統領は、
中国と共同で欧米対抗して、現状の状態を変更する試みをしている。

1.欧米の社会問題
中露は、このような試みを行える状態になってきた。欧米日などの
社会問題が明らかになり、資本・民主主義の問題点が大きくなり、
国民を資本・民主主義は裏切っているという。

日本は、需要の不足をカバーするために財政出動を25年以上も行
っているが、需給はバランスしないことが明らかになり、また、量
的緩和をして、その状態から抜け出さないことも明らかになってい
る。

欧米では、グローバルな資本の移動や法人税・所得税の軽減処置と
消費税の増税で、貧富の差が拡大して、国民の多くの希望が見失わ
れた状態にある。選挙に多大な資金が必要になり、低所得者層の希
望が政治に反映しなくなり、1%の富者と99%の貧者に社会が分
断されてしまった。

また、同性愛者の結婚や麻薬の合法化などを自由化して行い、社会
秩序も失い、グローバル化により多くの移民が押し寄せてきて、テ
ロ多発社会になっている。これら全てが資本・民主主義の問題点で
あると、プーチンは言う。

このプーチンの言動に賛同したのが、トランプ候補であり、ロシア
の無自覚な工作員であると元CIA職員も嘆くことになる。

主に、移民が起こすテロにより、欧米社会が安定しなくなり、今ま
での資本・民主主義の問題点がクローズアップされてきたようであ
る。

資本・民主主義により、自由の行き過ぎで混乱が社会に起きて、こ
のままの社会では、大きな不安や貧富の差が大きく不満が充満して
いる。この救いが秩序主義であるとプーチンは言っている。

ある程度、自由を犠牲にしても秩序を回復することが重要であり、
そのためには、富裕層より貧困層に耳を傾けて、貧困層が望む政策
をも実現させることであるし、富者が有利な選挙で選ぶということ
もしてはいけないと言う。

今度の戦争は、ということで自由主義陣営対秩序主義陣営となるよ
うである。

秩序主義国としては、ロシア、ポーランド、トルコ、中国、ベネズ
エラなどであり、自由主義陣営では、米国、英国、日本、EUなど
であろうか?

2.米国は当初、戦争に中立
しかし、ここで問題なのが、米国は当初、戦争に中立を保つ可能性
があることだ。

中国の南シナ海九段線の無効判決後、ライス補佐官が中国を訪問し
て、米中で協議している。この協議後、中国の習近平総書記は、国
際法を遵守するし、国際社会に挑戦しているわけではないという声
明を出したが、米国は中国との戦争を回避したことで、南シナ海を
事実上、中国に渡したような感じになっている。フィリピンも中国
と条件闘争の方向で交渉を開始するようである。

というように、米国は、ナチス・ドイツへの英国のチャンバレン首
相と同様な譲歩を中国に行っている。このため、中国は、次の目標
を東シナ海にしたことで、漁船230隻を尖閣諸島に送ったのであ
る。

この漁船の多くが海洋民兵であるので、隙あれば、尖閣諸島に上陸
して占拠することになる。米国の譲歩がこのようなことを引き起こ
している。

米国は戦争終盤、中国が疲弊した段階で、参戦してくることになる。
それまでは、日本が中国と戦うことになりそうである。

もし、日本が尖閣諸島への占拠でも対応しないと、次は沖縄の独立
戦争を中国は仕掛けている。どんどん、攻めて来ることが確実であ
る。

大変な時代になってきた。

しかし、民進党の方向は、憲法改正反対であり、中国の現状の攻勢
にどう対応するのか、米国の戦争中立化にどう対応するのか、その
シナリオが見えない。蓮舫さんが代表になっても、共産党や左派と
一緒に戦争反対というので無理がある。安全保障が国家サービスの
最初にするべきことを政治家は、無視している。

3.日本のするべきこと
このコラムでは、過去に日本は、国家指導者が泣きたい状態になる
と予言したが、その方向に確実に歩を進めているようだ。

中国とどう対抗し、中国とどう外交をするのか、強弱の両面でのシ
ナリオを準備しておくことであり、その様なことになる前までには
、経済的な問題を解決しておくことが必要になる。

もう小手先の経済問題解決はできないし戦争までの時間がないので
、問題の中核に切り込んだ解決策をするしかない。それは、親日仏
教国からの移民の受け入れである。

これなしに、日本の経済問題解決はない。とうとう、そこまで日本
は、追い込まれたことになる。25年以上のいろいろな解決策は有
効ではなかったということである。財政政策も金融政策・量的緩和
も的外れであったことになる。

秩序主義が問題している資本・民主主義の問題点は、社会制度の決
め方で解決できるので、そのような制度を資本主義の中に入れれば
良いのである。中庸な制度を持つことである。

そして、軍事強化をして、安全保障という一番大きな国家の役割を
果たすしかないように思うがどうであろうか?

さあ、どうなりますか?


The New Ideology of the New Cold War
http://www.nytimes.com/2016/08/02/opinion/the-new-ideology-of-the-new-cold-war.html?ref=opinion&_r=1


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「TPPは死んだ!」米批准は絶望的=国民・経済界の反発強く、議会
の賛成派も尻込み―米有力政治筋
Record china配信日時:2016年8月6日(土) 8時40分
TPPが米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統
領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日
程消化期間)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その
可能性は極めて低いという。 
米有力政治筋が8月3日明らかにしたところによると、TPP(太平洋連
携協定)が米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月
の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッショ
ン(日程消化会期)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが
、その可能性は極めて低いという。 
世耕弘成経済産業相は、9月中旬召集の臨時国会での批准に全力をあ
げる考えを示している。しかし日本でも農業関係者を中心にTPP反対
論は根強く、安倍政権も前国会での可決を見送った。最大の経済シ
ェアを有する米国が批准しなければTPPは成立せず、空中分解する。 
米有力政治筋の発言要旨は次の通り。 
共和党候補のトランプ氏、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が
ともにTPPに反対。オバマ大統領が推進してきた「アジア枢軸」政策
の中心とも言うべきTPPを拒否している。オバマ政権は任期中に議会
承認を得たいとしているが、同政権の幹部やTPP支持の議会関係者も
、「可能性は2割以下」と見ている。 
共和党のマッコウネル上院院内総務やライアン下院議長が慎重姿勢
のほか、米国世論の大勢も国際貿易連携に反対している。さらに有
力議員には、オバマ大統領の歴史的な業績に手を貸したくないとい
う思いも強い。大統領選と併せ上下議員の一部が改選されるが、こ
れに直面している議員も賛成票を入れにくい。 
経済界でもTPPに賛成する企業や団体は極めて少なく、促進へのロビ
ー活動もほとんど行われていない。特に製薬業界やIT業界は現行TPP
に猛反発している。 
国務長官を務め、当初TPPを推進していたヒラリー氏が大統領に当選
した場合、賛成派は翻意を期待するが、困難だろう。夫のビル・ク
リントン大統領時代の1993年に調印されたNAFTA( 米国、カナダ・
メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)は、多くの米労働者
の職が奪われたと批判されている。NAFTAへの否定的な国民感情が、
反TPPの感情にもつながり、労働組合、環境保護団体、消費者団体が
TPP反対運動を展開している。 
国民の多くは過去20年間以上にわたり、NAFTAでは労働約束が反故に
されたと批判、「TPPではもう騙されない」という感情を抱いている。 
オバマ大統領退陣後は、議会の構成から見て、議会承認はますます
困難になる。民主党では上院議員25人が18年に選挙を控えており、
下院も11月の選挙で自由貿易を支持する議員が減るのは必至で、さ
らに難しくなる。(八牧浩行)
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尖閣周辺に中国船230隻
異例の多さ、外務省が抗議
2016/8/6 13:53共同
 外務省は6日、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に中国海警局の船
6隻、その周辺海域に中国漁船約230隻を確認したとして中国に強く
抗議したと発表した。尖閣の接続水域周辺に数百隻規模の中国船が
入るのは異例。海警局の船には機関砲のようなものが搭載されてい
る。中国側は領有権を主張する尖閣周辺での取り締まりをアピール
する思惑とみられる。日本側は既成事実を積み重ねる狙いだと警戒
している。
 中国海警局の6隻は6日午前7時20分ごろから順次、接続水域で確認
された。
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<南シナ海問題>習主席の内部会議での発言が流出―香港紙
Record china配信日時:2016年8月6日(土) 12時0分
2016年8月4日、香港・明報によると、中国の習近平(シー・ジンピ
ン)国家主席が南シナ海問題について、仲裁裁判所の判決が出る前
の内部会議で「われわれが行動を起こせば、対立状態が保たれるこ
とになる」と述べていたことが分かった。 
習主席は「南シナ海問題で今手を打たなければ、将来的に歴史資料
が残るだけで、何を言っても無駄になる。われわれが行動を起こせ
ば、対立状態が保たれることになる」と語ったという。中国共産党
中央政治局の会議後は「真の大国は問題を恐れない。問題の中から
利益を得ることが可能だ」としていた。 
習主席は就任後、南シナ海問題で大きな行動に出てきた。フィリピ
ンは13年初め、南シナ海問題で仲裁裁判所に仲裁を申請。中国は同
年9月に埋め立てを始め、これまで3つの島で大型飛行場を建設して
いる。中国軍の将官昇進記念式典でも南シナ海担当者の昇進が目立
っている。南シナ海での軍事演習、行動も増えている。
(翻訳・編集/大宮)
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終末期を迎えた資本主義?
――21世紀の資本主義と歴史の未来
2016年8月号
「いまや政府は戦後の税金を前提とする国家から、債務を前提とす
る国家へと変貌している」。この変化は非常に大きな政治的帰結を
伴った。政府債務の増大によって、国際資本が、各国の市民の望み
を潰してでも、自分たちの意向を各国政府に強要する影響力をもつ
ようになったからだ。こうして格差が拡大し、賃金が停滞する一方
で、政府は、資金力豊かな金融機関が問題の兆候を示しただけで救
済の対象にするようになった。こうして市民たちは、いわゆる調整
コストを運命として受け入れるのを次第に嫌がるようになった。
(ブリス)
1980年以降、拡大し続ける格差を前に、トマ・ピケティのよう
に、19世紀後半のような世界へと現状が回帰しつつあると考え、格
差をなくすために、世界規模で富裕層の富に対する課税強化を提言
する専門家もいる。しかし、大規模な富裕税は、資本主義民主体制
が成功し繁栄するために必要な規律や慣習とうまくフィットしない
。もっとも成功している市民への法的、政治的、制度的な敬意と支
援がなければ、社会がうまく機能するはずはない。 (コーエン)
問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、
左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化
しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財
政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように
状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問わ
れているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していく
のを政府がどの程度助けるかという点にある。 (フクヤマ)
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震源地は中国とサウジ?秋に災厄が世界経済を見舞う
権力闘争の犠牲となる中国経済、サウジでは銀行が危機的状況
2016.8.5(金)  藤 和彦
中国人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通
貨に加わる時期が迫っている。2016年10月以降、SDRの通貨バスケッ
トにおける人民元の構成比は10.92%となって円の8.33%を上回り、
米ドルやユーロに次ぐ重要通貨になる。
ところが人民元のSDR入りを控えた7月21日、米ダラス連邦準備銀行
(FRBのメンバー行)は「人民元は投資家にとって安全資産にはなり
えない」とする報告書を発表した。
ダラス連銀のスタッフは、株価変動の指数と安全通貨とされる米ド
ルや円、ユーロ、ポンド、スイスフランに対する人民元の相対価値
を分析した。その結果、「人民元のパフォーマンスは2011年から2015
年後半までは主要通貨よりも良好だったが、その後市場のボラティ
リティーが高まる中で主要通貨に対する相対価値が低下した」こと
が判明したという(人民元は今年に入って主要通貨に対して約3%下
落)。
経済成長の勢いに陰りが見られるとともに、人民元取引の自由化に
逆行する動きが目立つ中国政府の姿勢から、「現時点で人民元が安
全通貨だとの指摘は裏付けられず、人民元が安全通貨の地位に向け
て前進しつつあるとの見方も疑問視される」と結論づけた。
国際銀行間通信協会(SWIFT)の今年6月時点の発表によると、人民
元の決済シェアは昨年8月にピークに達して以降、縮小傾向にあり、
2014年10月以来の低水準(1.72%)となった。シェアの順位は5月と
同じくカナダドルに次いで第6位である。
IMFが2016年10月の人民元のSDR入りを決定したのは2015年11月30日
だった。当時は「人口規模が米国の4倍以上もある中国が、経済規模
で米国を上回るのは時間の問題であり、人民元が米ドルの基軸通貨
としての地位を脅かす存在になる」とセンセーショナルに受け止め
られた。だが、今年に入り中国経済に対する悲観的な見方が支配的
になったことから、人民元のSDR入りはほとんど話題に上ることはな
くなった。
上海株式市場が下落、資金流出も再び拡大傾向に
中国の不動産市場は今なおバブル崩壊には至っていない。むしろ北
京や上海など一部都市では既に高止まりしていた不動産価格がさら
に上昇するという不可解な現象が起きている。
今年第1四半期の不動産業界への新規融資額は1.5兆元と、過去最高
水準となった(昨年第4四半期は8000億元弱)。同業界の財務体質は
目を覆うばかりである。5月21日付米ウェブサイト「The Automatic 
Earth」によれば、30%を超える上場不動産企業が金利負担に耐え切
れず明日倒産してもおかしくない状態にあるという。
中国の企業債務が経済成長率を大幅に上回る勢いで拡大しているこ
とを危険視する論調も高まっている。モルガンスタンレーによれば
、現在の企業債務の水準は金融危機前の住宅バブル期の米国に比べ
ても2倍に相当し、バブル崩壊により中国の銀行が被る損失額はサブ
プライム危機の米国の銀行の損失額の約4倍に上ると懸念されている。
株式市場を見ても、このところ安定していた上海株式市場が7月下旬
に6週間ぶりに大幅下落した。金融当局が、リスク性の高い理財商品
を通じた株式投資の抑制に動きつつあるとの懸念が広がったからだ。
中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、盛京銀行などの都市銀行
の金融投資額の伸びが前年比100%を超えている(6月14日付ブルー
ムバーグ)状況を踏まえ、3.6兆ドル規模にまで膨らんだ理財商品に
関する商業銀行の取り扱いについて、新たな規制を策定中であるこ
とを明らかにした(7月28日付ロイター)。これに対して市場関係者
の間では、「当局の規制で過度の調整が起きるのではないか」と心
配する声が上がっている。
資金流出も再び拡大傾向にあるようだ。中国外貨管理局は「5月の純
流出規模は約20億ドル」としているが、ゴールドマンサックスは7月
2日、「中国からの資金流出が加速しており、5月の資金流出規模は
260億ドルに達した可能性がある」との見方を示した。
経済政策の主体は李克強から習近平へ
中国では7月下旬から8月にかけて「北載河会議」が開催されている。
北載河会議とは、中国共産党の指導者や長老らが毎年夏、河北省の
海辺の避暑地である北載河に集まって開く非公式の会議である。毛
沢東時代から指導者らが家族連れで別荘に滞在しながら毎年重要な
政治的決定がなされると言われている。
今年の重要テーマの1つは、“政治局常務委員の定年制の見直し”だ
。共産党の最高意志決定機関の7人のメンバーである政治局常務委員
は、従来のル−ルでは節目の党大会の時点で「68歳以上」であれば
引退しなければならない。そのため、習近平国家主席は反腐敗闘争
の盟友である王岐山氏を常務委員の座に残すことができない。そこ
で、習近平国家主席はこのルールを「70歳以上」に改正するのでは
ないかという観測がある。そうすれば、王岐山氏を首相に抜擢し、
対立が囁かれている李克強首相を全国人民代表大会委員長という「
閑職」に追いやることができるようになるからだ。
中国では江沢民政権下の1998年から2003年まで在任した朱鎔基首相
の時代に、民政分野の具体的問題について首相が全面に立って指導
し、国家主席は首相を「立てる」方式が確立した。次の胡錦濤政権
でも四川大地震(2008年)や高速鉄道事故(2011年)の際に現地に
飛んで陣頭指揮をする温家宝首相の姿がクローズアップされた。
しかし、今年の夏に全国規模の水害が発生した際、その陣頭指揮に
立ったのは李克強首相ではなく習近平主席だった。異例の状態に中
国メディアの関心が集まっている。
経済問題についても、習近平政権の発足当初は李克強首相が活躍し
ていたが、今年春頃から習近平主席の発言が目立つようになった。
李克強首相と国務院の官僚たちは経済政策として、規制緩和を進め
て民間企業を育成する、いわゆる「リコノミクス」を始動させてい
た。だが、5月9日付の共産党機関紙の人民日報がリコノミクスを厳
しく批判する論説を掲載した。論説の筆者は、習近平主席の側近の
経済専門家(劉鶴・党財経指導小組事務局長)とされている。彼の
持論は「国有企業を保護し、経済に対する共産党の主導を強化する
」である。共産党の主導強化に反することになる人民元のSDR入りに
も、習近平主席は消極的だろう。
国家統制と締め付けの経済政策
習近平派の経済専門家が主導権を握るにつれて、強権的な手法によ
る経済政策が目立つようになってきた。
やり玉に挙がっているのは「ゾンビ企業」だ。中国人民大学によれ
ば、実質的に経営破綻しているゾンビ企業は、2013年時点で約2.7万
社に上る。上場企業でゾンビ企業の比率が高かったのは製鉄業(51.4
%)、不動産(44.5%)、建設業(31.8%)である。
中国メディアの報道を見ても「ゾンビ企業は中国経済にとっての『
悪貨』だ!?今こそ駆逐せよ」という論調が目立つようになっている
。「高い技術力を有する『良貨』の企業を増やすことで『悪貨』の
ゾンビ企業を淘汰せよ」という主張は一見正論のように聞こえる。
しかし、「財務面で不利な環境に置かれている民間企業を一斉に駆
逐して、国有企業を温存する」という習近平派の本音が見え隠れし
ているように思えてならない。
また、今年になっても中国企業による海外でのM&A攻勢が旺盛だが
、資金流出を防ぐための当局の強硬手段のせいで、買収を撤回する
事例が相次いでいると いう(6月1日付ロイター)。7月に入り中国
政府は国境をまたぐ為替取引の管理を強化している(8月3日付日本
経済新聞)。
ゴールドマンサックスは7月28日、「中国の最高指導部は資産バブル
を警戒しており、金融当局は一段とタカ派になるかもしれない」と
の見方を示した。朱鎔基首相の時代に発生した金融危機を蛮勇を奮
って乗り切った王岐山氏が首相に抜擢されれば、その傾向はさらに
強まるだろう。
チャイナウォッチャーの間では「南院(共産党中央の建物、中南海
地区の南側にある)」と「北院(国務院の建物、中南海地区の北側
にある)」の争いに注目が集まっている。いずれにせよ権力闘争が
激化して犠牲になるのは経済そのものである。
サウジの建設事業が壊滅的状況に
中国経済と同様にこのところ軟調気味なのが原油市場である。
OPECの7月の原油生産量は日量3341万バレルと過去最高を記録する勢
いである(7月30日付ロイター)。OPECの増産が嫌気され、8月1日、
米WTI原油先物価格は一時約3カ月半ぶりに1バレル=40ドルの節目を
割り込んだ。
OPEC増産の要因は、イラクやナイジェリアで輸出量が伸びたことに
加え、サウジアラビアも日量1050万バレルと過去最高の生産ペース
を維持していることにある。
気になるのは、サウジアラビアの原油需要の伸びが、少なくともこ
こ6年で最低のペースになっていることだ。原油安はサウジアラビア
の経済成長に深刻な打撃を与えている。以前のコラム(5月28日)で
、サウジアラビア政府が深刻な財政不足から建設業者に対する支払
いをIOU(政府借用証書)で行うことを検討していると紹介した。そ
の後、建設業者が国家プロジェクトへの参入を避けるようになった
ため、同国内の建設事業は80%減少したと言われている。
サウジアラビア株式市場は7月後半の2週間で株価が急落した。上場
企業170社のうち株価の下落を免れたのは16社に過ぎなく、株式市場
で140億ドル以上の損失が発生したと言われている。
株価急落の要因は金融システムの崩壊に瀕していることにある(7月
31日付ブルームバーグ)。国内銀行の破綻を回避するためサウジア
ラビア通貨庁(中央銀行に相当)は40億ドル規模の緊急支援を行う
ことを決定した。
以上、中国とサウジアラビアの経済が置かれている厳しい状況を見
てきた。私たちは秋にかけて世界経済にパーフェクトストーム(複
数の災厄が同時に起こって破滅的な事態に至ること)が吹き荒れる
ことを覚悟しなければならないだろう。
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なぜアメリカは中国に強硬策をとれないか
―― アジアの海を混乱させる中国と米上院
2012年10月号FAJ
「これまで国連海洋法をめぐる仲裁裁判所の判断に従った国連安保
理の常任理事国が存在しない」のも事実だ。但し、北京の穏健派は
、九段線を今後も「境界線」とみなし続ければ、「アメリカ、そし
て殆どの東南アジア諸国を敵に回すことになる」と事態を懸念して
いる。(ウェイン)
「国連海洋法の批准に反対する」という米上院議員の宣言を聞いて
、北京がほくそ笑んだのは間違いなく、アジアにおけるアメリカの
同盟国と戦略的パートナーは、ワシントンが地域的なリーダーシッ
プを果たしていく能力をもっているかどうか、ますます疑心暗鬼に
陥っているはずだ。アジアでのパワーバランスが大きな変化に直面
している以上、これ以上アメリカが主権にこだわり続けるのは、戦
略的な大失策になる。このやり方は、アメリカ主導の国際秩序を終
わらせたいと考えている国を大胆にするだけだ。(ライト)
軍、国有エネルギー企業、主要輸出企業、地方の党エリートなど、
国際社会との協調路線をとれば、自分たちの利益が損なわれる集団
が中国の外交政策への影響力を持ち始めている。これが、中国がソ
フト路線から強硬な対外路線へと舵を切った大きな理由だ。
(クリステンセン)
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運命の女神が変える、経済運営のカジ取り  編集委員 滝田洋一 
2016/8/3 6:30日本経済新聞 電子版
 運命の女神は時に思わぬいたずらをする。舛添要一前東京都知事
の失脚は、巡り巡って初の女性都知事を誕生させた。谷垣禎一自民
党幹事長の自転車事故は、積極財政派の幹事長を誕生させ、経済運
営は新たな局面に入ろうとしている。
 金融市場は敏感だ。長期金利の指標となる10年物国債利回りのマ
イナス幅が、みるみる縮小している。7月末には一時、0.3%まで拡
大していた利回りのマイナス幅は、8月2日には一時マイナス0.…
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長期金利が急上昇、一時マイナス0.025% 
金融政策に不透明感
2016/8/2 11:18 (2016/8/2 13:30更新)日本経済新聞 電子版
 2日の債券市場で長期金利が急上昇(債券価格は急低下)した。
指標となる新発10年物国債利回りは一時、マイナス0.025%と3月16
日以来約4カ月半ぶりの高水準を付けた。日銀の金融政策運営への
不透明感が強まったことが背景にある。財務省が同日実施した10年
物国債の入札結果が不調に終わったとの受け止めが広がり、債券売
りが加速した。
 低下が続いてきた長期金利が急上昇に転じたのは、黒田東彦日銀
総裁が9月に現行の金融政策を「総括して検証する」と表明したこ
とがきっかけとなった。株式や為替市場では追加緩和の予告と受け
止められている一方、債券市場の一部には限界が見える国債買い入
れやマイナス金利などを軌道修正するのではないかとの警戒感が強
まった。
 長期金利は日銀の金融政策会合が開かれた7月29日以降、上昇が
続いており、3営業日での上昇幅は0.25%に達した。短期間に大き
な金利上昇が進むのは、2013年4月に日銀が量的・質的金融緩和を
導入した直後に5営業日で0.3%程度上がって以来となる。
 利回り上昇は幅広い年限の国債に及んでおり、2年債や5年債は
それぞれ2月中旬以来の高い利回りとなった。超長期債利回りも軒
並み上昇した。市場では「日銀の政策運営が一段と読みにくくなり
、投資家が債券買いに慎重になっている」(証券会社)との声が上
がっている。
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「ウィドウメーカー」期の終わりか、日本国債利回り上昇で−HSBC
Luke Kawa
2016年8月2日 11:35 JST
英銀HSBCホールディングスのテクニカル分析責任者マレー・ガ
ン氏が正しければ、われわれは今、「ウィドウメーカー」期の終わ
りに向かっている。
  日本銀行によるデフレ脱却に向けた極端な刺激策や公的債務増
大を踏まえ、日本国債の値下がりに賭けることはこれまで「ウィド
ウメーカー」取引と呼ばれてきた。何年もそうした取引がうまくい
かなかったため、戦争などで夫を亡くした女性が増えるという状況
になぞらえられていたのだ。
  だが最近、そうした傾向に変化が見られる。7月29日の日銀金
融政策決定会合を受けた10年物日本国債の利回り上昇だ。同会合で
の決定は投資家を満足させることができなかった。
  ガン氏は日本国債の利回り上昇はエリオット波動の新たな局面
の始まりだとみている。「日本国債市場は、長く待たれていた売り
局面に入る用意ができている可能性があることを再び示唆している
」と分析。「10年債利回りはダイアゴナルパターンが終わりつつあ
る長期のエリオット波動を示している。このパターンが終われば、
最も確信的な日本国債弱気派すら驚かす利回り上昇につながるはず
だ」と記している。
原題:HSBC: Wave Goodbye to the Widowmaker ? Japanese Yields 
Are Technically Poised To Explode(抜粋)
ブルームバーグ


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