5725.次の文明の形は、新しい江戸時代



欧米流の短期利益重視で投資家・経営者本位の資本主義経済は、欧
米国内の貧富の差が拡大して貧者の反乱で崩れようとしている。こ
れは、欧米型文明から次の文明の形に移行していくことを意味する
。この時、日本の江戸時代が大きな次の文明の形を示唆している。
その検討。                   津田より

0.欧米流資本主義の限界
欧米の企業は、短期利益最大化して、投資家や経営者に最大の利潤
を払うことがメインになっている。このため、本来は研究開発して
、イノベーションを起こして新製品を開発することで利益最大化を
目指すべきが、イノベーションのネタがなくなり、代わりに労働コ
ストを最低限に抑えて利益最大化するために、海外進出、移民導入
など、労働コストを抑えることに必死になている。

この目的で、労働者を代替する知能ロボットも開発している。将来
的には、労働者がいなくなるようだ。労働コストをゼロにする。

しかし今は、製造業の工場が先進国になくなり、サービス産業が産
業の中心になり、経営者と労働者の賃金格差が拡大して行き、とう
とう労働・貧困階層の反乱が起きている。

貧困層を代表するトランプ大統領候補が掲げる経済鎖国主義は、世
界的な経済縮小になり、世界に大きな衝撃を与えることになる。そ
して、もう1度、米国に工場を戻すという。このように欧米流資本
主義は限界になり、次の経済原理を探ることが重要になっている。

貪欲な企業経営が貧者の反乱で見直しを迫られている。どうも、欧
米文明の根本部分が限界に来ているような気がする。欧米流資本主
義は利益重視であり、その利益重視が問題の本質であり、その部分
を変えることが必要になっている。

しかし、日本には、資本主義を改革した歴史がある。この資本主義
を変革したのが江戸時代の石門心学である。

もう1つが、エネルギー資源を使うことで、地球温暖化が進み異常
気象が常態化している。この先は、海面上昇や台風の強大化、土石
流など一層の災害が起きることになる。

江戸時代は、リサイクル、リユーズ、リデュース、リペアの4Rが
確立していた時代である。

1.江戸時代の商人の限界
海外の欧米企業は経営者に30億円以上の報酬を与え、株主に経常
利益の50%以上も渡し、株価が上がるように自社株を買っている。
しかし、日本企業が欧米企業に比べて配当率は少なく、20%以下
が主流だし、株価を上げる自社株買いも世界的に資金を集める大企
業以外はしていない。

日本の大企業の社長の年俸は1億円以下が多い。このように日本企
業は、欧米企業に比べて、経営者や株主を向いていない。これは、
なぜかというと、江戸時代の家訓が今も生きているからである。

江戸時代は、士農工商と商人は一番下の階級であり、幕府の政策と
しても商人を抑える政策が中心で、商人を優遇することはない。

江戸の南町、北町奉行所の人員は、与力25人、同心150人づつ
で、その下に岡っ引が200人づつ程度の体制であり、これで、江
戸100万人都市の警察+裁判所の業務をしていた。それ以外の業
務は町年寄、町役人などが行い、番屋を地域毎に建てて、地域の商
人が金を出して、見張りをしていた。この番屋が交番となり、現在
に至っている。

しかし、ここで暴動が起きると、どうなるか?
北町奉行所、南町奉行所は、月交代で勤務するために、暴動に対処
する人数は、与力25人、同心150人、岡っ引200人しかいな
い。民衆が数千名にもなる暴動に対応できない。このころは刀、槍
などの武器であり、民衆もそれらを持っている可能性が高い。

このため、暴動が収まるまで、奉行所は待つしかない。暴動が収ま
ってから出動して、襲われた商店の評判が悪いと、そこの商人に暴
動の原因があるとして、全財産没収になっていた。

このため、商人としても、防衛することが必要になる。もし、武士
を雇って防衛すると、暴動時、武士が10人でも数千名の群衆を相
手にできないので、逃げてしまう。このため、店の防衛は無理であ
る。

暴動が起きても、周りの住人が暴動に来た群衆に、この店は良い店
であるから、違う店を壊してというと、暴動の群衆も納得して違う
商店に行くので、一番の防衛になる。

ということは、商人が一番頼りにするのが、周辺の住人、特に裏長
屋に住む貧困層である。このため、常日頃から周辺住人の世話を焼
き、相談にも乗ることが重要なのである。

もう1つが、豪勢な生活をしていると、幕府から突然、商人の分際
で豪勢な生活をしているとして、全財産没収になることがあった。
紀伊国屋文左衛門が有名であるが、商人は、目立たない生活をする
しかないなかった。もう1つが、利益が出ることに対する正当化の
理由が必要であった。

この問題を解決してくれたのが、商人を隠居した石田梅岩であり、
その理論を石門心学として、私塾を作り、商人に教えた。この私塾
が日本全国で千以上もできたことで、商人が理論武装して、幕府の
政策を対応できるようになったのである。

理論は、商業を人として正しいことをしていて、利益が出るのは正
しいというものであるが、正しいことは論語がベースにあり、皆が
寺子屋教育があることを前提としていた。

石門心学が現在でも日本企業に影響して、欧米企業ほどには投資家
や経営者を優遇しないのである。

2.循環型社会
環境問題が江戸時代を見ると、灰買い、古骨買い、瀬戸物焼き継ぎ
屋、ゲタの歯入れ屋、箍屋、古着屋、汲み取りなどの4Rのシステ
ムが機能していた。

このシステムが確立していたが、この伝統があるので、現在、日本
のペットボトルの回収率は、85%程度になっている。ガラス、空
き缶などの回収率も同様レベルになり、限界に近いし、世界的にも
最高の回収率である。

また、現在、レアメタルのリサイクルが中国が供給を政治的に止め
るなどを防止するために精力的に取り組まれ、また、レアメタルが
必要ないモーターの研究開発も行われている。これにより、レアメ
タルの価格が下落してきた。

森下仁丹と大阪大学などが共同でレアメタルの回収効率を上げるた
めに、レアメタルを吸収する微生物でレアメタルを集積する方法を
開発、実用化している。このため、益々、レアメタルのリサイクル
・コストが下がっている。

このように、循環型社会の伝統があるために、日本は世界的にもリ
サイクル率が高くなっている。

3.礼儀正しい国民
江戸時代の文化文政期には、全国に寺子屋が1万2000件以上もあり
、江戸の就学率は80%以上であった。この寺子屋で使用した教科書
は、「商家往来」や「百姓往来」であるが、論語を習い、礼儀を中
心に書かれていた。

中国では、論語は科挙の試験に出るために、勉強する必要があり、
大夫が知る必要がある学問であり、国民の多くが知ることではなか
った。論語を国民の多くに教育したのは、日本しかない。また、そ
の当時、英国の就学率は20%程度であり、世界的にも教育が国民に
行き渡っていたのである。

このため、江戸時代に朝鮮通信使の報告書の中にも、多くの女性が
本を読んでいるとビックリしているし、明治に日本に来た英国外交
官も日本人の本好きに驚いている。英国でも識字率が低く、出版業
が江戸の日本ほどには発展していなかった。

このように、江戸時代は教育水準が高く、論語を一般的にして、礼
儀正しい国民を作っていたのである。この伝統があるので、今、欧
米や中国の観光客が、日本の礼儀正しさ、街の綺麗さ、お客に対す
る扱いが良いと、褒めちぎることになるのである。

日本は地震などの災害が多いが、災害時、皆が一致協力して乗り越
え、盗賊がいないことにビックリしている。南米やアジアなど多く
の国では、地震後、略奪が増えるが、日本にはない。

4.今後の経済システム
このように、日本的な共生と倫理の経済システムが世界にも必要に
なっている。しかし、戦後、日本も欧米的な経済システムを取り入
れようとして、欧米流資本主義の新自由主義を取り入れるとしたが
、それは日本の退化でしかなかったのである。

欧米も日本の共生・倫理的な経済システムにする必要があり、その
先頭を日本は走り、皆を感化する必要があるように感じる。

日本は江戸時代というモデルを持っているので、そのモデルをブラ
ッシュ・アップしていくことである。それにより、世界が日本の指
導を受けたいと思わしめることである。

そして、日本は日本の良さを最大限、活かして、次の文明としての
新しい江戸時代を形作る必要があると思う。

さあ、どうなりますか?



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