5721.ヘリコプター・マネーは危険だが、噂で円安になる



安倍晋三首相とベン・バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議
長の会談があり、その時にヘリコプター・マネーの話が出て、それ
を安倍首相は実行する可能性があると市場はみている。

本田悦朗駐スイス大使が最近、首相に「今がヘリマネーに踏み切る
チャンスだ」と進言して、その第一人者であるバーナンキFRB前
議長と会談を設定したようである。

この噂がヘッジファンドに入り、円高方向の見直しが起こっている。

江戸時代に、各藩は藩札という紙幣を作り、大量の紙幣を発行した
が、東北の多くの藩で物価高騰、金などとの交換ができない事態が
起こり、疲弊して明治維新がなったのである。

第2次大戦の戦争時にも、大量な紙幣を発行したが、戦争後大イン
フレになり、反省したのである。

ヘリマネは危険であるし、歯止めがきかない。米国のFRBが用い
ている利上げするぞという脅しでバブルを防ぐと同じような噂を撒
き散らすのは、効果があると思う。

実際、1ドル=99円であったドル円は、105円まで戻している。

噂をいつも、呼び起こす発言をするが、実行はしないことが正解の
ような気がする。為替も大衆心理学であることを考慮することであ
る。

どちらにしても、時間が稼いで、抜本的な景気刺激策を打つことで
ある。それをしないと、日本は労働人口が減り、高齢者は増え、子
供は減り、財政難になり近い将来、沈没である。

さあ、どうなりますか?

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ロイター2016年07月14日 15:44
インタビュー:ヘリマネに反対、財政・金融の協力あっていい
=浜田内閣官房参与
[東京 14日 ロイター] - 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣
官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は14日、ロイ
ターとの電話インタビューに応じ、制度としてのヘリコプター・マ
ネーの導入はインフレに対する歯止めがなくなるとし、「反対だ」
と述べた。ただ、財政政策と金融政策を近いタイミングで発動する
協力は行われてもいい、と語った。
浜田氏は、12日に行われた安倍晋三首相とベン・バーナンキ米連
邦準備理事会(FRB)前議長との会談に同席したが、バーナンキ
氏からヘリコプター・マネーの話は出なかった、という。
浜田氏は、日銀が国債を直接購入して財政資金を提供する、いわゆ
るヘリコプター・マネーについて「インフレの歯止めをなくす可能
性が当然あり、制度として認めるわけにはいかない」と語った。「
政府は、絶えず政治や、私欲にお金を使いたい。お金を印刷すれば
いつでもできるようにする制度を日本に定着させてしまうことは、
将来に禍根を残す恐れがある」とし、「国債引き受けなど制度の変
更を含むヘリコプター・マネーには反対だ」と強調した。
一方で「財政と金融(のそれぞれの政策)を近いタイミングで発動
し、協力するような政策が、1度か2度行われてもよいと思う」と
指摘。こうした手法は「ヘリコプター・マネー論者からみると、ヘ
リコプター・マネーの1つのバリエーションと取ることも不可能で
はない」との見方を示した。
安倍首相とバーナンキ氏の会談では「ヘリコプター・マネーの話は
なかった」とし、バーナンキ氏は「今までの日本のアベノミクスは
成功している。景気刺激策の金融政策の方法は、いろんなことがあ
る」などと発言したという。
円高進行による日本経済への影響が懸念される中、「為替介入はア
メリカから通貨戦争の批判を受けやすい。私のアメリカ高官との対
話からもそう受け取れる」と述べ、「円高を解消しようとする場合
、さらなる緩和政策を何らの形で行わなければならないのは確か。
金融政策でやるのは正攻法である」との認識を示した。
また、現在の日本経済の問題点として、日本の経営者や投資家が日
本経済の実力を信頼せず、見捨てていると主張。そのうえで、日本
のメディアには「絶えず悲観論が語られ、アベノミクスのやること
はいつも文句をつけることが多い」とし、「臆病な日本企業家や投
資家の傾向を、日本のメディアが助けている」と批判した。
(金子かおり 日本語記事作成:伊藤純夫 編集:田巻一彦)
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円が一時105円台後半、3週ぶり安値 リスク選好強まる 
2016/7/14 15:14 (2016/7/14 15:47更新)日本経済新聞 電子版
 14日の東京外国為替市場で円安・ドル高が一段と進み、円相場は
一時、1ドル=105円台後半に下落した。英国民投票で欧州連合
(EU)離脱が決まった6月24日以来、約3週間ぶりの安値になる
。米国株が最高値圏で取引されるなかで、日経平均株価も英EU離
脱…
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歴史に見るヘリコプターマネーのリスク
2016年07月14日 11:31
久保田 博幸
12日にバーナンキ前FRB議長が安倍首相と会談したことで、「ヘリコ
プターマネー」政策の導入が検討課題に浮上してきたとの報道があ
った(産経新聞)。この記事によると本田悦朗駐スイス大使が最近
、首相に「今がヘリマネーに踏み切るチャンスだ」と進言したそう
である。
ヘリマネとは何か、簡単に言ってしまうと日本の財政法で禁じられ
ている日銀による国債の直接引き受けである。なぜ中央銀行による
国債の直接引き受けが禁じられているのか。それは歴史に裏付けら
れたものである。日本では高橋財政による日銀の国債引き受けが財
政法に繋がることになるのだが、ここではあらためてドイツにおけ
る中央銀行の国債引き受けにより何か起きたのかを振り返ってみた
い。
第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わ
され、財政支出の切り札になったのが国債を大量発行しドイツの中
央銀行であるライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。
その結果、ドイツは1923年にかけてハイパーインフレに見舞われた。
そのハイパーインフレはヒャルマル・シャハトが設立したドイツ・
レンテン銀行によるレンテンマルクの発行などにより終息すること
になる。レンテンマルクとそれまでの通貨であるパピエルマルクの
交換レートは「1対1兆」と決定された。大規模なデノミとともに政
府が財政健全化を発表したことにより、いったんインフレは終息す
る。このインフレの収束はレンテンマルクの奇跡と呼ばれた。さら
にシャハトの指導によるアウトバーンを初めとする大規模な公共事
業などによって失業率は改善し、ドイツは1937年にほぼ完全雇用を
達成したのである。
レンテンマルクは法定通貨ではなく不換紙幣であり金との交換はで
きなかった。しかし1924年8月30日には、レンテンマルクに、新法定
通貨であるライヒスマルクが追加された。レンテンマルクとライヒ
スマルクの交換比率は1:1となった。
シャハトなどの支援もあり、1933年1月30日にはヒトラー内閣が成立
。しかし、ヒトラーがシャハトを解任したあたりから再び状況が変
わる。シャハトが帝国銀行の総裁を兼務していた際は国債の発行に
も歯止めがかけられていたが、その歯止めがなくなった。ヒトラー
は帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、戦争に向けて
軍需産業への莫大な投資を行った。ただし、日本と同様に価格統制
により戦時中にハイパーインフレそのものは発生しなかったが、戦
後にハイパーインフレが発生することになる。敗戦によりヒトラー
政権の発行したライヒスマルクは紙切れ同然となったのである。
戦後設立されたブンデスバンクは、インフレに対して極度に神経質
となり、その要因となった中央銀行による国債引受に対して警戒感
というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。ブンデスバ
ンクは政府からの独立も保障され、ECB発足以前は世界でも最も高い
独立性を有する中央銀行の一つであると評価されていた。
1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧
州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止
する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件
の一つとなった。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマ
ーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うこ
とは禁止されている。当然ながら欧州中央銀行(ECB)も国債の直接
引受は禁じられている。
高橋財政による日銀の国債直接引き受けもドイツの事例も戦争が絡
んでいる。いまはそんな時代ではない。だからヘリマネを1回ぐらい
導入しても問題ないなどと言うことはできない。むしろ戦争という
異常時でもないにも関わらず、異常時の対応をすべきと主張してい
る人たちの方が何を考えているのかわからない。
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2016/07/15 No.3336
 10秒で読む日経!視点が変わると仕事と投資のネタになる
   今日のNews
●英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めたショックから
、世界の金融市場が  立ち直ってきた。日経平均株価が14日に英
国民投票前の水準を回復し、米ダウ工業  株30種平均は連日で最
高値を更新している。英EU離脱決定の余波で米利上げ観測  が
後退。これが呼び水となって利下げに動く国が相次ぎ、投資マネ
ーを活気づけている。
 株高は世界に広がる。ベトナムやインドネシアの株式相場も年
初来高値圏にある。世界の株価の動きを示すMSCIオールカン
トリー・ワールド指数は13日に6月23日の水準を回復した。
 大きいのが世界で金融緩和が相次いでいることだ。13日にマレ
ーシアが利下げを決め、6月中にはインドネシアやロシアも利下
げした。英EU離脱のショックを受けて、「米国は当面、利上げ
はできない」との見方が台頭。「新興国は資金流出懸念が弱 ま
り、通貨防衛のために政策金利を維持しておく必要性が薄れた」
            日本経済新聞2016年7月15日
   佐々木の視点・考え方
★世界中の株価が上昇してめでたい。
 英国のEU離脱ショックで下げた分を、各国の金融緩和やその
期待で取り戻したという趣旨の上記記事。
 要旨は良くても、中身に違和感ありあり。
 まず、米国の利上げが当面なくなったとの話だが、国民投票後
は早くて17年夏まで利上げは無いとなったが、最近の雇用統計
で驚愕の28万人の雇用増が出て、利上げなしに賭けるのはまず
いぞとなった。よって、これが相場上昇に与えた影響は少ない。
 上記記事に無い話が2つ。
 1つは日本が世界で初めてヘリコプターマネーをばら撒くとの話。
 http://archives.mag2.com/0000102800/20160711135000000.html
 要は、政府支出を中央銀行の債券直接引き受けで賄う事で拡大
することと、これまで量的拡大で市中から集めてきた国債を償還
にゼロクーポンの永久債に置き換える事。
 1つ目も上記記事内容も「期待」や「アナウンスメント効果」
で、実際のお金の流れ は発生していない。
 しかし、実額変化で大きいのは中国人民銀行の資金供給だ。こ
れまで約1年の間、中国は外貨準備を減らす事で世界中の株や債
券を売ってきた。これが逆転した訳で変化は大きかった。
 上の2つの動きを嗅ぎ付けたヘッジファンドたちが、先物やデ
リバティブを使って空中戦を仕掛けて、世界中の株高を演出した
という訳。
 それが証拠に、連日新高値を更新している米国株の中で、52
週の新高値を更新した銘柄は15%しかない。インデックスが動
きやすい銘柄での売買が多いからだ。
 日本株では日経平均を動かすのに欠かせないファーストリテー
リング株を売り叩いて日経平均を下げてきた向きが、どてん反転
してファーストリテーリング株を大きく買い上げている。
 日米株とも、ヘッジファンドの仕掛けるセオリー通りに動いて
いることが分る。
 日経編集局証券部の皆さん、もう少し取材しようよ。


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