5704.資本主義社会から次の社会システムへ



英国がEU離脱を決めました。貧者の反乱で、富国や富裕層が優位な
資本主義の問題点が明確化してきた。次の社会を構成する考え方や
社会システムを考えることが必要になってきた。その検討。
                         津田より

0.富国や富裕層を優遇する資本主義の限界
英国がEUからの離脱を国民投票で決めた。そして、この英国に続
けとフランスやイタリアなどの右翼政党が騒いでいる。EUでは、
ドイツが自国の通貨であるマルクよりEU共通のユーロの方が為替
上安くなり有利であるにも関わらず、ギリシャなど南欧の弱い経済
国を助けずに、通貨が安いことで輸出が好調なのに、自国の努力で
あり南欧諸国は怠けているということを言って、助けない。

これでは、経済的に弱い国は、ユーロという高い通貨で、自国通貨
に比べて輸出には不利になり、かつドイツからの補助金もないので
、より貧乏になる。このように弱い者いじめが蔓延るために、EU
から離脱することが、経済的に弱い国では正義になる。富国ドイツ
がその他の貧国を食物にしている構造がEUである。

これは米国でも同じで、富裕層は税金を収めないようにして、貧困
層の窮状を見ないようにしている。貧者を助ける社会保障制度も完
備しない。しかし、この貧者の数がある限界値を超えると、民主主
義国は、1人1票という政治的な権利を貧者が行使することになる
。貧者の反乱が起こることになるのだ。

しかし、どうも、このような社会になるのは、資本主義社会の構造
にも問題があるようだ。

1.資本主義の問題点
資本主義は、自転車と同じで前に進むことで倒れない。このために
生産拡大を常に行う必要があり、生産拡大のためには利益が必要で
あり、富者になりたいという欲望が必要になる。企業にも個人にも
、利益というインセンティブが必要になる。

このため、企業は利益が必要になり、新しい製品を作り利益率を上
げることが必要になる。しかし、イノベーションがなくなると、新
しい製品がなくなり、利益率を上げようとするとコスト削減に走る
しかない。

コストを下げるには、企業は移民労働者や工場を海外移転して労働
コストを下げることになる。または、従業員の給与を下げるしかな
い。企業は株主の物であり、従業員は機械と同様であり、コストで
しかない。

富者は富を独占して、税金を収めずに貧者を怠け者と言って、貧者
への給与を一層下げる事になる。また、社会福祉という人権拡大を
止めるために、富者は選挙に金が必要なことを利用して、政治的な
権力も金で買って、税金を安くして社会保障もしない社会を作った
のである。そして、このような悪あがきをしないと利益が出なくな
ったのだ。

水野和夫さんは、「資本主義の終焉と歴史の危機」で、資本主義に
は、辺境の地が必要であり、その辺境がなくなったことで、利益が
でなくなり、資本主義の終焉が来たというし、100年前にローザ
・ルクセンブルクさんは、『資本蓄積論』で資本主義は植民地から
搾取した富がその源泉だったという。この植民地や辺境がなくなり
、利益を得る方法がなくなって、先進諸国企業は利益が出なくなり
、悪あがきをしないとその資本主義社会を維持できなくなってきた
ようだ。

この結果として、ナショナリズムや保護貿易主義が出てきて、その
結果で、世界の貿易が減少することになり、資本主義の衰退に繋が
ることになる。

このような資本主義の限界に、欧米諸国や世界は突き当たり始めた
ようである。

2.持続社会への切り替え
欧米社会では、資本主義の限界になり、ナショナルズムや保護貿易
主義を唱える政党が出てきたが、不思議に日本の参議院選挙で保護
貿易主義もナショナリズムも唱える政党がない。という意味では、
日本の政党は、皆同じ色をしているように感じる。TPP反対という政
党もないようである。

このように、欧米社会とは大きく違うように感じる。不思議に貧者
の反乱が大きくないというより、ないに等しい。貧者の数が足りな
いのでしょうか?

違うように思う。非正規社員は全体の4割に達している。しかし、
社長の給与を比較すると、欧米では10億円以上が普通であるが、
日本企業の社長で10億円以上というのは聞かない。富裕層の厚み
も違い、少ない。日本の経済規模は大きいのに富者の独占度が、欧
米に比べて低いことと、社会保障制度が米国に比べて高く、高齢者
層でも貧困化していない。

資本主義を持続化するためには、少しの格差があるが、生活に困ら
ない社会を作ることが重要であり、利益を企業が率先して社会活動
に当てることであると思う。

江戸時代中期以降、経済発展が止まり、商人は、幕府から保護され
ていないために、どうしたら都市暴動から身を守るかが重要な問題
であった。江戸の両奉行所は、総勢200名程度であり、暴動に襲
われた店舗を助けられないし、暴動後、アコギな商人の財産没収と
いうこともした。

このため、暴動から身を守る答えが、日頃から周辺住民の面倒を見
て、暴動時、周辺住民が暴動の首謀者に、良い店なので店を破壊し
ないようにと懇願してもらうためであった。

また、幕府は豪勢な生活をしている商人の財産没収も行ったことで
、商人道を確立していった。目立たず、周囲に気を配り、そして儲
けることである。この集大成が石門心学である。

このように合理的な商人の損得勘定から石門心学ができている。民
衆の目が必要なのである。

この伝統があるので、大企業でも社会に気を使っている。社長の給
与も大きくない。また、企業に対する国民の目も厳しい。少しの不
正でも不買運動が起きてしまう。それに比べてドイツのフォルクス
ワーゲンは大きな不正しても販売好調で黒字になっているが、三菱
や旭化成は少しの不正でも、不買運動で大打撃になっている。

また、日本は企業活動を規制する法律も整備されている。

3.企業の支援活動が重要
今後、知的労働者でもAIなどに置き換わり、コスト削減が一層と進
むことになる。投資家や企業家が利益を積み増し、貧者の数が増え
ることになる。

このため、社会保障が重要になるし、多くの労働を提供することも
重要になる。この労働は、サービス産業と公共事業、福祉活動、海
外援助などである。この労働提供を地方自治体がするとその経費が
高くなり、企業的な効率が行われない。このため、企業の支援活動
として、企業的な要素が必要になる。またはNPOなどが行うこと
である。

企業が税金を払うより、社会活動の支援の方が社会的な効率が高い
ように感じる。

もう1つが、この企業文化を世界に展開することである。拡大日本
戦略である。日本企業が世界に展開して、その企業文化を諸外国に
知らせることである。

定常社会の資本主義を確立して、持続的な資本主義という主義を確
立することである。本当は石門心学を企業人やビジネス・スクール
では現代風にアレンジして学習することであると思う。

ハーバード大学の講義が一部、この石門心学的であるが、体系化し
ていない。

さあ、どうなりますか?


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資本主義は不可能か
2016年06月22日 00:05アゴラ
池田 信夫
日本が直面している危機は、トランプ騒動のアメリカやEU離脱にゆ
れるイギリスと通じる面がある。それを予言したのは、ローザ・ル
クセンブルクが100年前に書いた『資本蓄積論』だった――といって
も信じてもらえないだろう。
しかし今ではすっかり忘れられたこの大著は、私も『資本主義の正
体』で紹介したように、ケインズ理論の先駆であるとともに、グロ
ーバル資本主義のゆくえを論じてウォーラーステインにも影響を与
えた。
彼女の理論のコアになっている再生産表式は混乱しているが、その
基本的な主張は資本主義の本質を見抜いている。それは資本主義は
マルクスが本源的蓄積と呼んだ暴力によって生まれたのであり、植
民地から搾取した富がその源泉だった、という洞察である。そして
ローザは、資本主義世界経済は絶えざる本源的蓄積で維持されてい
るのだという。
それは新古典派的にいうと先進国と新興国の国際分業だが、これは
新興国の安い労働力を使って先進国で高く売ってレントを取る不等
価交換であり、新興国が自立するとそれは等価交換に近づく。具体
的には、中国製の安い工業製品が日本製品を駆逐し、アラブの移民
が欧米に流入して単純労働者の職を奪う。
このグローバルな資本蓄積は、全世界が一体になってレントが消失
するまで続く。それは遠い先のことだが、先進国ではレントが失わ
れ、ゼロ成長になり、ついにはマイナス金利が生じる。それはロー
ザの指摘した世界資本主義の限界が、姿を見せ始めたのかもしれな
い。
ここでは資本蓄積はソロー的な定常状態に達し、労働人口は減り始
めたので、成長の源泉は生産性の向上しかない。その一つの源泉は
フェルプスのいうイノベーションだが、もっと重要なのは人のグロ
ーバリゼーションである。
これは現代世界で問題になっている貧困や格差の問題を解決する上
でも有効だ。それを大規模に実行しているのがイスラム難民であり
、彼らにはもともと国家という概念はない。しかしトランプに代表
される人々は既得権を守るため、彼らを排除しようとする。それは
近世の宗教戦争ほど血なまぐさい争いにはならないだろうが、規模
は全世界に及ぶ。
そしてマルクスが『共産党宣言』で予告したように「ブルジョア階
級は、産業の足元から民族的土台を切り崩し、民族的な伝統産業は
破壊され、それらの産業は新しい産業に駆逐される」だろう。これ
まで搾取されてきた途上国が豊かになると同時に、彼らから奪った
富で繁栄してきた先進国は平均レベルに引きずり下ろされ、今世紀
末には世界全体の成長率は1%程度に落ちるだろう。
それは「資本主義の不可能性」を示すものではなく、グローバルな
経済システムとしては資本主義しかないことを示すが、先進国では
成長は不可能になるかもしれない。「主権国家」というフィクショ
ンも維持できないだろう。いま世界をおおう長期停滞やマイナス金
利や難民問題は、マクロ経済学よりもマルクスやローザの目でみた
ほうがわかりやすい。
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2016年 06月 23日 13:55 JST 
焦点:瀬戸際の世界経済、市場が注目する「1930年代の教訓」
[ロンドン 22日 ロイター] - 世界で保護貿易主義やナショナ
リズムが台頭し、グローバル化の退潮をめぐる不安が再燃している
。だからこそ国際貿易が大きく停滞した1930年代に何が起きた
かについて、改めて市場の注目が集まっている。
英国が23日実施する欧州連合(EU)離脱を問う国民投票がこう
したムードを助長している。
国民投票でブレグジット(英国のEU離脱)が決まればもちろん企
業活動や国際貿易は打撃を受けるだろう。世界経済は薄氷を踏むよ
うな状況で、テールリスクがもたらすショックを吸収する余力を持
ち合わせていないからだ。
だが国際貿易やさえない経済成長、投資リターンの減少に対する幅
広い懸念が2007─08年の金融危機以降ずっと消えずにくすぶ
っている以上、英国がEUに残留すれば、事態は良くなるかと言え
ばそう単純な話にもならない。
貿易が拡大しないため、世界経済は過去10年で2回目の景気後退
に陥るかどうかの瀬戸際に立たされている。成長率は、大方のエコ
ノミストが1人当たり国内総生産(GDP)を安定させる上で必要
とみている2.0─2.5%をかろうじて上回る状態だ。
オランダ政府の統計機関によると、世界の貿易額の伸びは今年3月
までの3カ月平均が前3カ月比でマイナスに転じた。残念ながらこ
れは単なる季節的な動きではない。スイスの資産運用会社ピクテの
分析では、昨年の世界の輸出入額は09年以降で最大の落ち込みを
記録し、09─15年の平均伸び率は3%と、それ以前の25年間
の平均の半分にとどまった。
外国直接投資(FDI)は、世界のGDPの2%とやはり1990
年代以来の低さで、信用バブル崩壊の後遺症がある金融セクターを
見ると国境をまたぐ銀行融資額の年間伸び率は08年までの10年
間の半分まで鈍化している。
こうした中でピクテは今月、向こう5年間の投資テーマを考えるキ
ーワードとして「岐路に立つグローバル化」を掲げた。
国際貿易が伸び悩んでいる理由の1つとしては、2つの経済大国で
ある米国と中国がいずれも内向きになる要素を抱えていることが挙
げられる。米国はシェール開発の活況、中国は輸出から消費主導へ
の構造改革だ。
ただピクテは、欧米の極右および極左勢力が唱えるナショナリズム
の勢いが増していることが、国際貿易と世界経済全体を泥沼に引き
ずり込む恐れがあるのは間違いないとみている。
ブレグジット問題が欧州の経済統合にひびを入れかねないことに加
え、米国でも11月の大統領選に向けてそれぞれ民主・共和両党の
候補指名を確実にしたヒラリー・クリントン氏とドナルド・トラン
プ氏はともに環太平洋連携協定(TPP)の再交渉に言及している
。国際貿易額の40%を占めるTPPについて、米国はまだ批准し
ていない。
ピクテは「ナショナリズムの高鳴りが保護主義の拡大、さらに国際
貿易の減少につながれば、世界経済の状況はこれまでよりもっと悪
くなりかねない」と指摘。特に銀行やハイテクを中心とした多国籍
企業の痛手が大きいと予想した。
<過早な引き締め>
以前に国際貿易が大きく停滞した局面を探すとすれば、1930年
代まで遡る。そこでエコノミストはこの時代の教訓や政策面の処方
せんを見直している。
モルガン・スタンレーは「1937─38年の再来か」と題したリ
ポートを公表し、当時の政策的な失敗に関して詳しく説明した。つ
まり1929年の株価暴落とそれに続く1936年に始まった大恐
慌からの回復期において、金融・財政が過早に引き締められたのだ
。将来の経済成長や物価に対する民間セクターの信頼感が上向く前
に、性急な政策の正常化を進めたことで、1938年までに再び景
気後退に陥った。結局経済を救ったのは第2次世界大戦による政府
の膨大な軍事支出と復興需要だった。
そしてモルガン・スタンレーは、08年の金融危機に対する世界的
な対応とその後の景気後退に当時との類似性を見出している。
09年までに打ち出された金融・財政政策は経済活動を下支えした
ものの、やはり予想物価や民間設備投資が持ち直す前に財政が引き
締められたからだ。
その結果、景気後退に再突入しかねない状況にある点からすれば、
民間企業を活気づかせるにはもう一段の世界的な財政刺激が必要な
のかもしれない。モルガン・スタンレーは「景気後退にまた陥らな
いための効果的な解決策は、景気刺激策をまた積極化させることだ
」と主張している。
1930年代から導き出されるのは、世界戦争のような社会的な激
変を伴わずに新たな景気後退をうまく回避しなければならないとい
う深遠な教えだ。政治的な過激主義や孤立主義、保護主義はそうし
た取り組みの成功をどんどん遠ざけてしまう。
(Mike Dolan記者)
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2016年 06月 22日 17:08 JST
アングル:英EU離脱派、底流に「トランプ主義」と共通する価値観
[ワシントン 21日 ロイター] - 米大統領選の共和党候補指名
を確実にしたドナルド・ トランプ氏の躍進ぶりを目の当たりにした
米有権者は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を主張
する陣営に、不気味なほどの既視感を覚えるかもしれない。
そこにあるのは、ナショナリズム、美化されたノスタルジア(懐古
趣味)、エリートへの不信感、移民が犯罪を持ち込み、雇用を奪う
という警戒心だ。これを「トランプ抜きのトランプ主義」とでも呼
ぼう。
23日の国民投票で仮にEU離脱を選択すれば、英国は独自に貿易
協定を交渉し、入国する移民を制限することなどが可能となる。
今週訪英するトランプ氏は離脱支持を表明。英サンデー・タイムズ
紙のインタビューで「個人的には、官僚主義が大きく後退するとい
った多くの理由から、離脱のほうがいいと思う」と語った。
<共通するテーマ>
トランプ氏は選挙キャンペーンで、メキシコからの不法移民や中東
からの難民がもたらす危険を繰り返し警告し、メキシコとの国境に
は壁を築くことを提案した。英EU離脱問題でもシリア難民は議論
の的であり、離脱派は中東などからの経済移民の流入を阻止すべき
だと訴える。
ミネソタ大のウェンディ・ラーン政治科学教授は「大西洋の両岸に
共通するテーマがある。国家の主体性が脅かされる危機感、反グロ
ーバル主義、ノスタルジア、エリートの無責任さといった問題だ」
トランプ氏や英EU離脱が体現する保守的ポピュリズムの新しい潮
流は、いまやスウェーデンやフランス、ポーランドなど他の欧州諸
国にも波及している。
離脱派の外国人嫌いは批判の対象となっている。反EUを掲げる英
国独立党(UKIP)のファラージュ党首は先週、シリア難民が押
し寄せる写真と「限界点だ」という文言を入れたポスターを公表し
、各方面から非難を浴びた。
<距離を置く主流派>
ただ、ブレグジット陣営の主流派は、ファラージュ党首のような人
物とは距離を置いている。共和党候補指名を争ったジェブ・ブッシ
ュ元フロリダ州知事や2012年の共和党候補だったミット・ロム
ニー氏ら同党の重鎮も、イスラム教徒の米入国禁止など過激な主張
を繰り返すトランプ氏と一線を画すよう努めてきた。
トランプ氏はフロリダ州オーランドで起きた銃乱射事件の後、「わ
れわれは自由で開放的な社会で暮らしたい。それならば、国境を管
理する必要がある」と発言した。
政治や金融のエリート層への嫌悪感はトランプ人気の追い風となっ
たが、これもEU離脱派に共通する感情だ。
イングランド南東部で離脱派キャンペーンを立ち上げたジャスティ
ン・ベルハウスさんは、トランプ氏を「ばかげている」としつつも
、英国の労働者のチャンスを増やすために移民抑制は必要だと主張
する。米国人労働者のための雇用確保というのはトランプが好むテ
ーマだ。
ロンドンのシンクタンク、欧州改革センター(CER)のチャール
ズ・グラント所長は、ブレグジット支持層はトランプ氏の支持層と
酷似していると指摘。年齢が高く、白人で、経済的に豊かでなく、
都市部以外に住んでいる。
また、トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大にする」と同様、
ブレグジット支持層は過ぎ去った時代を懐かしんでいる。グラント
氏は「英国に白人が多く、イングランドがより安全だった時代を取
り戻りたいと感じる人々が一部にいる」と指摘した。
(記者:James Oliphant 、Emily Stephenson 翻訳:長谷川晶子 編集:加藤京子)
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世界の不確実性と日本の奇妙な安定感
2016年06月24日 09:40アゴラ
岡本 裕明
英国のEU離脱を問う選挙が進んでいますが、仮に残留となってもそ
れで安心できるわけではありません。今回の問題の根本はユーロ体
制に対する不満がたまたま英国で大きなボイスとなっただけで2017
年のドイツ、オランダ、フランスでの選挙で再び国を二分するよう
な議論となってもおかしくないでしょう。
アメリカも11月に大統領選が行われます。このところ、トランプ氏
支持派の凋落が伝えられていますが、まだ選挙戦は長いので全米を
巻き込んだ議論が継続されることでしょう。お隣中国は議論を吹っ
掛けると捕まるお国ですから国民は心の中で鬱積するものをぐっと
こらえて黙っているのだろうと思います。中国でボイスが自由に飛
び交うようになれば共産党は吹っ飛ばされるのではないでしょうか?
日本では参議院選挙が始まりましたが議論で盛り上がるということ
はなさそうです。特に今回の選挙は争点が与野党でずれまくってい
ますのでつまらない選挙となりそうです。
日本で議論はなぜ盛り上がらないのでしょうか?個人的に思うこと
は、我慢してしまう、あきらめてしまう、野党に力がなさすぎる、
国家体制が盤石すぎる、保守的思想の蔓延などがあげられるのでは
ないでしょうか?その上、近頃は「草食系若者」と「偏食系若者」
が増えすぎたようです。
草食系がなぜ増えたのか、これも長年のテーマです。一時、ユニセ
ックス化が指摘されました。男がより女に、女がより男に近づく的
な発想です。女性の社会進出は勿論大きな要素です。が、それだけ
でもなさそうです。
確かに男はファッションに気を配るようになる一方、女子はタバコ
を吸い、「女酒会」でガンガン酒を飲んだりします。女はスカート
より動いやすいパンツファッションと確かにその傾向はみて取れま
す。しかし、Z世代(85年から91年生まれ)は37.5%が草食系女子と
される報告もあります。
これは日本の「失われた時代」に符合し、バブルが何であるかも知
らない世代が小さな幸せに満足するようになってしまったことがあ
るかもしれません。今の若い人にはスポーツカーも高級スイス時計
も全身デザイナーズブランドも必要ではありません。そのかわりフ
ェイスブックでつながるうれしさ、友達とシェアする楽しさ、イヤ
ホンの音楽で自分の世界に入り込む引きこもり感、ミニマリストと
してすっきりあっさり過ごす人生がテイストなのでしょう。これは
世界の中では私が見る限り日本、韓国などに見られる傾向ではない
でしょうか。
欧米ではなぜ対立軸が生まれ、ボイスを交わし盛り上がるのでしょ
うか?私が見る限り、欧米人は少なくとも「濃いブラッド」を持っ
ていると思います。中流の人は中流なりの、上流の人は上流の人な
りの不満がいつもあって(私は聞き役になってしまいますが)常に
「もっと」という熱い欲望が渦巻いています。
その背景の中、リーマンショック後の過剰流動性が招いた格差社会
に対して大衆が蜂起した、ということではないでしょうか?主要先
進国の金融緩和によりニューノーマルが生じました。これが社会に
不満を生み出し、民衆の蜂起化現象を引き起こした、これが私の現
在思うところです。
金融緩和が引き起こした問題とは何でしょうか?金利が下がりまし
た。その結果、金利収入が重要な生活手段だったリタイア層はそれ
を失いました。(欧米は5-10%の金利でした。)金利低下で投資マネ
ーが市場に入り込み、住宅価格は暴騰しました。世界から安い不動
産を求め、マネーが集中砲火のごとく浴びせられたため、一般大衆
はいくら金利が安くてもローンをして買える物件はうんと遠方に行
くか、小さな集合住宅ぐらいとなりました。
企業は効率化を求め、世界の同業を買収する一方でリーマンショッ
クで数多くの構造的変化が生まれました。、安泰であった職が失わ
れたり、かつての水準の給与はもらえなくなりました。アメリカの
自動車産業はその好例であります。私の顧客であるホテルの従業員
用駐車場を歩くと面白いことにエグゼクティブと称する駐車エリア
の車は生活感あふれる年季の入った車が多いのに対してアルバイト
の人達の車はアウディやポルシェといった高級車で通勤する人が目
立ちます。明らかに歪んでいるのです。
この歪みに声を上げるのが欧米、諦めて自分の世界を作り上げるの
が日本を含むアジアのような気がします。
不確実な世界はまだまだ続く気がします。悩ましい世の中です。
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世界で高まる日本企業待望論、背景に格差拡大
トランプ氏支持者らが不満を抱く社会問題へのソリューション
2016.6.20(月)  瀬口 清之 JPPRESS
1.米国におけるエスタブリッシュメントへの反発の広がり
最近の米国経済を見ると、昨年12月にゼロ金利から脱出するなど、
経済状態は回復に向かいつつある。
しかし、米国民の多くはこの経済状態の改善を享受できていない。
過去30年間で豊かになったのは、所得上位8%の人々だけで、92%の
人々は給与水準がほとんど変っていないと言われている。
リーマンショック後のバブル崩壊によって生じた住宅ローンの多額
の借金返済負担の苦しみから脱出できていない人も多い。加えて、
給与水準はリーマンショック以前に比べて低下したままであるため
、借金返済負担が以前よりむしろ重くなっている人々も少なくない。
白人の低所得労働者層や就職難が続く若年労働者層の不満が特に強
く、彼らが今回の米国大統領選挙においてドナルド・トランプ氏や
バーニー・サンダース氏の支持基盤となっている。
現在、大統領選においてトランプ氏とサンダース氏が予想外の善戦
をしている背景には、リーマンショックから間もなく8年が経過しよ
うとしているにもかかわらず、こうした経済問題をきちんと解決で
きないエスタブリッシュメントに対する強い不満がある。
米国におけるエスタブリッシュメントの象徴的存在は、政治と外交
を牛耳るワシントンDCと経済を牛耳るウォールストリートである。
ヒラリー・クリントン氏は、米国初の女性大統領候補であり、大統
領の職務遂行に必要な政治・行政・外交手腕に秀でた人物であると
認められている。にもかかわらず、最近の世論調査では、支持率が
40%前後で伸び悩み、非支持率が50%台後半に達して支持率を大き
く上回っている。
それは彼女がエスタブリッシュメントを代表する存在とみなされて
いるせいである。
彼女はビル・クリントン大統領のファーストレディーとしてホワイ
トハウスを熟知し、オバマ政権の国務長官として米国の外交政策を
指揮するなど、ワシントンDCの中枢において豊富な経験を持つ。
それに加えて、彼女の豊富な政治資金を支えているのがウォールス
トリートの金融機関である。まさにエスタブリシュメントの典型例
と言っていい存在である。
米国経済はマクロ経済データ上は順調に回復傾向を辿ってきたよう
に見えるが、実際にはその回復を実感できていない低所得者層がか
なりの割合に達している。彼らの給与水準は横ばいだが、実質的な
生活水準は30年前に比べると向上しているとの指摘もある。
それは低コストの輸入品の増大やIT関係の高付加価値サービスの急
速な価格低下などによるものである。
しかし、米国内での彼らの経済的地位は相対的に低下した。以前は
中流に属していると感じられた多くの労働者が、今や低所得層に属
していると実感せざるを得ない状況に追い込まれている。
この経済的地位の低下を感じる層が、エスタブリッシュメントに対
する強い不満を持つ母集団である。彼らの投票行動が米国の大統領
選挙の行方を全く分からなくしている。
一般的にはトランプ氏に比べてクリントン氏がやや優勢との見方も
あるが、実際には11月の開票結果を見るまで誰にも分からない状況
に陥っている。
2.欧米、中国と日本の違い
景気回復の遅れや経済的格差の拡大を背景とするエスタブリッシュ
メントに対する反発と類似の現象は、欧州や中国でも見られている
。欧州については、経済学者のトマ・ピケティ氏らがフランスの格
差拡大問題について指摘している。
中国では、国内の所得分配の不平等の度合いを示すジニ係数が2008
年に0.491に達した。その後、低下傾向を辿り、2015年は0.462まで
低下したが、それでもなお、0.33前後の日本に比べるとはるかに高
い水準にとどまっている。
こうした状況下、社会保障水準や教育機会の都市農村格差、固定化
する社会階層、大量の失業を生み出す重化学工業企業のリストラ政
策などへの不満は根強い。
日本でも2000年以降、所得格差の拡大が指摘されている。また、東
京大学合格者の親の平均所得水準が慶應義塾大学合格者の親の平均
所得水準を上回るなど、所得格差が学歴格差を生み出し、所得・学
歴格差が固定化することへの懸念も指摘されている。
それでも、欧米や中国に見られるような、エスタブリッシュメント
に対する強い不満の増大という深刻な社会現象は見られていない。
その1つの原因は、欧米の巨大企業の経営者が数十億円という年収を
得ている例が珍しくないのに対し、日本の大企業経営者の多くは、
企業業績が良くても社長の年収を2億円程度以下に抑制し、その分従
業員の給与水準の引上げや納税を通じて社会に還元していることに
あるのではないかと考えられる。
その背景にある経営理念は短期利益より長期的な信用の重視である。
3.日本の企業文化の独自性
一般的に、欧米系や中国系の企業は、短期利益の追求を重視し、株
主利益の最大化に力点を置く。これに対して、日本企業の多くは、
経営の長期的安定と顧客や社会からの信用を重視する傾向がある。
会社の業績が悪化しても、従業員の雇用を何とか維持しようと必死
に努力を重ねる企業経営者の割合は欧米や中国より多い。従業員の
リストラによる減量経営を梃にした収益の回復という、欧米企業に
よく見られる経営手法はなるべく取らないようにするという考え方
が一般的である。
営利企業である以上、利益を確保し経営を維持することは不可欠で
あるが、従業員の雇用の安定や地域社会の利益を犠牲にしてまで企
業業績の改善を目指すのは望ましいことではないという考え方は広
く共有されている。
それは単に経営層が考えて実践するのみならず、日常的な従業員教
育を通じて全社が一体となってそうした価値観を共有し、社会への
貢献を重視し実践している企業も少なくない。こうした理念を真摯
に実践する日本企業は米国や中国でも高く評価されている。
もちろんこうした企業カルチャーは全企業に共有されているもので
はない。従業員の長期的な雇用を前提としながらも、労働コスト引
き下げのために正社員として採用せず、派遣社員の扱いを維持しよ
うと考える企業は顕著に増加した。
確かにそれは労働力コストを抑制するには有効な手段であるが、日
本では高い評価は得られにくいはずだ。
4.日本企業の社会貢献の現代的意味
こうした日本企業の経営理念が、欧米や中国の経済社会が直面して
いる社会的不満の増大やエスタブリッシュメントへの反発に対して
1つの解決方法を提示していると考えることができる。
すなわち、株主利益の最大化のために短期利益の拡大を重視するの
ではなく、企業の長期的な信用を重視し、社会への貢献および従業
員の雇用確保を優先する企業文化は地域社会、そして国家の安定に
大きく貢献する可能性が高い。
こうした日本企業の理念や行動様式は米国大統領選でトランプ氏や
サンダース氏を支持する選挙民や中国各地で地域社会の雇用と税収
確保を目指す地方政府のリーダー層のニーズに合致する。
もちろんすべての企業にこうした経営理念を強制することはできな
いが、一定割合の企業が上記のような理念を持つ日本企業と同様の
経営方式を採用するだけでも、地域社会および国家全体の安定性は
大幅に向上すると考えられる。
以上のような認識を踏まえ、日本企業が欧米や中国の経済社会が直
面している課題の実態を十分に認識し、自らの企業経営理念とその
実践が各国の社会問題を解決する効果を持つことを、自らの企業価
値として適切にアピールすることを提案したい。
そうすることによって、各国社会の安定に貢献するとともに、企業
のレピュテーション(評判)を高め、それをブランド力に変えて、
収益基盤の強化にも生かしていくことが可能である。
日本企業が日本国内のみならず、世界各地で社会の安定に貢献する
ことを通じて、企業の長期的な信用と社会への貢献を重視する企業
経営のあり方を日本独自の価値として、世界に対して発信すること
はグローバル社会における日本の存在感も高める。
私が知る限りの範囲でも、その役割を担う気概のある日本企業の経
営者は決して少なくない。
各国の中央・地方政府も社会安定効果を持つ日本企業を誘致するイ
ンセンティブは大きいはずであり、補助金や税制優遇措置により積
極的に誘致する可能性も考えられる。
各地の政府のリーダーが日本企業の貢献の大きさを宣伝してくれる
だけでも、レピュテーションが高まり、企業のブランド力向上に直
結する。
世界中で資本主義社会への信頼が動揺しつつある状況下、日本企業
が世界各地で社会の安定に貢献することによって、日本型経営の価
値への理解を深めさせ、日本の存在感をも高めていくことに期待し
たい。



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