中国が国連海洋法条約から脱退するようである。 フィリピンが国連海洋法条約に基づき求めた仲裁手続きで中国に不 利な判断が近く出されるとの観測が出ており、中国は、その対策を 多数、画策してきたが、どれも旨く行かない。 中国が14日の東南アジア諸国連合(ASEAN)との外相特別会合で、南 シナ海の領有権争いは日米など域外国の干渉を許さず、当事国同士 の「2国間」で解決するとの合意文書案を提示し、ASEAN側に拒否さ れていた。 そして、ASEANだけで発表した共同声明は、名指しは避けながらも、 南シナ海での中国の行動に対して、異例の強い語調で「深刻な懸念 」を表明するものだった。ところが、この声明は発表された数時間 後に「修正が必要」として撤回された。中国の圧力がかかったよう であるが、中国の提案も拒否したことで、ASEANの立場を表していた からでもあるようだ。 このため、仲裁手続きで、海域の境界線に関する中国の主張の根幹 を否定する判断が出された場合、中国政府が対抗措置として条約脱 退するようである。 中国の孤立が明確化してきている。というより、国際社会で中国が 嫌われ出している。中国の強引さに辟易しているというのが実情の ようである。 パナマ文章でも、習近平の親近者が関与していることが出されて、 腐敗をした上海派を追い詰めたが、太子党・特に習近平も汚職をし ているということになる。団派の名前が出てこないということは、 中国の権力闘争も背後にあるような気がする。 団派の政府対太子党の軍という構図も、見えるような気がする。 今後の権力闘争がどうなるか、決着が着くまで、軍が周辺諸国に嫌 がらせなどを行うことが予想できる。 さあ、どうなりますか? ============================== 中国、国連海洋法条約の脱退検討 南シナ海仲裁判断へ周辺国に伝達 2016/6/21 02:07共同 中国による南シナ海での領有権主張は国際法に違反するかが焦点 の国連海洋法条約に基づく仲裁手続きで、海域の境界線に関する中 国の主張の根幹を否定する判断が出された場合、中国政府が対抗措 置として条約脱退を検討していると一部周辺国に伝達したことが20 日分かった。複数の外交筋が明らかにした。 境界線は、南シナ海の大部分を管轄していると主張する中国が管 轄範囲を示す根拠とする「九段線」。これが否定されれば、人工島 造成など中国が進める軍事拠点化への大きな打撃になる。中国政府 には、条約脱退をちらつかせ国際社会との対決も辞さない強硬姿勢 で臨む構えを強調する狙いがあるという。 ============================== 中国外相「2国間解決」迫り決裂 ASEANに、南シナ海問題 2016/6/18 18:08 【ハノイ共同】中国が14日の東南アジア諸国連合(ASEAN)との外 相特別会合で、南シナ海の領有権争いは日米など域外国の干渉を許 さず、当事国同士の「2国間」で解決するとの合意文書案を提示し、 ASEAN側に拒否されていたことが18日分かった。特別会合は終了後に 共同記者会見も開けない異例の事態となり、南シナ海問題を巡る協 議は決裂した。 複数のASEAN外交筋が明らかにした。フィリピンが国連海洋法条約 に基づき求めた仲裁手続きで中国に不利な判断が近く出されるとの 観測が出ており、中国はその前にASEAN側との合意を発表し国際社会 にアピールする狙いだったが失敗した。 ============================== 中国の圧力? 撤回され憶測呼んだASEANの“共同声明” 南シナ海 問題に「深刻な懸念」 更新日:2016年6月16日newsphere 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の外相らは14日、中国雲南省 で特別会合を行い、南シナ海問題について話し合った。だが終了後 に予定されていた共同記者会見はキャンセルとなり、共同声明も発 表されなかったことから、話し合いは物別れに終わったとの観測が 広く持たれた。さらに、ASEANサイドだけで発表した共同声明は、名 指しは避けながらも、南シナ海での中国の行動に対して、異例の強 い語調で「深刻な懸念」を表明するものだった。ところが、この声 明は発表された数時間後に「修正が必要」として撤回された。中国 から圧力がかかったのではないか、との憶測を呼んだが、さまざま な報道が飛び交っており、事態は複雑なようである。 ◆協調を望む中国、懸念を表明するASEAN 南シナ海での中国の主張をめぐって、フィリピンはオランダ・ハ ーグの常設仲裁裁判所に仲裁を申し立てている。ウォール・ストリ ート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、その判断は数週間以内に下る ものとみられている。中国はその判断には従わないことを公言して いるが、判断を前にしたこの時期、中国には今回の会合で、ASEANと の結束を強調しておく狙いがあったようだ。ブルームバーグによる と、中国の王毅外相は、この会合は「タイムリーかつ重要な戦略的 対話」だと評していたそうである。日本経済新聞によると、会合は 直前に開催が決まったもので、中国には、ASEANに経済協力を示し反 発を和らげる狙いがあるとみられていたとのことだ。 WSJがASEANの外交官らの情報として伝えるところでは、この会合 は、今年2月のASEAN外相会合で最初に提唱されたもので、マレーシ アが、南シナ海での最近の展開をめぐるASEANの懸念を表明する場と して提案したそうだ。 ASEAN側の共同声明とされたものについてAFPは内容を伝えている が、それを見ると、会合では実際に、ASEAN側から中国に対して「深 刻な懸念」が強く表明されたようだ。AFPによると、会合ではASEAN 側と中国の外相間で「率直な意見交換」があったが、これは激しい 外交的やりとりをほのめかす言葉であるという。 WSJは声明の内容について、争議解決では国際法を尊重するよう ASEAN外相らは強く主張したが、これは、中国政府が仲裁判断受け入 れを拒絶していることへの、うっすらとぼかした非難の言葉だ、と 語っている。 ◆ASEANらしからぬ、南シナ海問題でまとまった共同声明? ASEANが共同声明としてこれらを主張したことは、ASEANらしから ぬ、異例のものだという印象を引き起こしたようだ。 ASEAN加盟10ヶ国の中でも、南シナ海問題に関し、中国に対する姿 勢には温度差がある。当事国として島などの領有権を争っている国 もあれば、中国の経済的影響が大きく、親中国的な姿勢を固守して いる国もある。そういった事情もあり、これまでASEANは南シナ海問 題について共同声明を取りまとめるのに苦労してきた。共同声明の 発行には、10ヶ国全ての合意が必要だ。ブルームバーグやAFP、WSJ などさまざまなメディアは、この歴史と、今回の共同声明を対照的 に捉えている。WSJは、ASEANがこの共同声明を出したことについて 、中国政府に対抗する団結を異例にも示したものと述べた。 さらに、その内容も、名指しこそしないものの、はっきりと中国 の行動に注文を付けるものだ。AP通信は、加盟国間の分断を考える と、地域の問題についてこのような強い文言を使用するのはASEANに とって異例だと述べている。 この声明は、中国がいくつかのASEAN加盟国に圧力をかけようと試 みていることを含めた、中国の最近の行動への不満を反映していた と、この会合に通じている東南アジアの1国の政府当局者がブルーム バーグに語っている。 ◆発表から約3時間後に撤回 だが、この共同声明も、ブルームバーグによると発表から約3時間 後、緊急に修正が必要だとして撤回された。AFPによると、声明を発 表したのも、撤回を発表したのも、マレーシア外務省だったという 。AFP、AP通信などによると、声明は14日夜、同外務省がネットのチ ャットグループに出したものだそうだ。それ以上の説明はないが、 報道関係者が使っていたものだろうか。 マレーシア外務省の報道官は、ASEAN事務局がその声明の発表を承 認していたが、その後、同国外務省に撤回を通知してきたと語って いる(AFP)。 なお15日夜の時点で、修正後の共同声明は発表されていない。WSJ によると、あるASEAN加盟国の上級外交官が、撤回後、ASEANは共同 声明を出さないことを決定したが、加盟国は、望むのであれば、個々 に声明を発表することになる、と語ったという。シンガポールやイ ンドネシアは撤回前に、この共同声明と同趣旨の声明を発表してい た。ベトナムは撤回後、共同声明をなぞった声明を発表したそうだ。 この件に関して、さまざまな報道が乱れ飛んだ。まず、この共同 声明は、中国の圧力によって撤回されたという説である。ブルーム バーグの上述の政府当局者は、ASEAN外相らは当初、その声明に合意 していたが、中国がASEANの今年の議長国のラオスに働きかけた後で 、その声明は撤回された、と語っている。 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙によると、中国外務省の 陸慷報道官は15日の定例会見で、中国はASEANのどの国にも、共同声 明の撤回について圧力をかけていない、と語った。もっとも、中国 はそもそも、これは共同声明ではなかったとの立場である。AFPによ ると、同報道官は「わが国はASEAN側に確認したが、AFPが報じた声 明なるものは、ASEANの公式文書ではない」と語っていた。 ◆「共同声明」とされたものは実は…… それでは、あの文書は一体何だったのか。その説得力ある説明は 、AFPの新たに現れた記事に見られる。それによると、マレーシアが 発表した文書は、単に、ASEAN外相が会議後の記者会見で参照するた めの「メディア・ガイドライン」であり、合意を経た最終声明では なかった、というのだ。これは、インドネシア外務省Arrmanatha Nasir 報道官がAFPに明かしたとのことである。 Nasir報道官によれば、会合が予定より長引き、そのせいで「(共 同)記者会見がキャンセルとなり、多数のASEAN外相はすぐに去らな ければならなかった」という。さらに「ASEAN外相には、メディア・ ガイドラインの内容をどのようにメディアに発表するかについて、 話し合う機会がなかった」とのことだ。マレーシアはこの文書の位 置づけを間違えて発表した恐れがある。 中国の王外相が行った記者発表は、予定より5時間遅れて行われた 。王外相とともに、今回の会合の共同議長だったシンガポールのビ ビアン・バラクリシュナン外相が、予定では共同で発表をするはず だったところ、同外相は帰国便に乗らなければならなかったため、 それをキャンセルした、と中国外務省は語っていた(WSJ)。それと も整合する。 それでは、共同記者会見が行われなかったことなどから生まれた 、「会合で中国とASEANは物別れに終わった」という観測は、根拠の ないものだったのだろうか。そうではないようだ。共同声明はどう やら幻のものだったようだが、内容自体はASEAN全体のお墨付きを得 たもののようである。さらに共同議長国シンガポールなど、個々の 国が出した声明の中で、ASEAN側が中国に「深刻な懸念」を伝えたこ とは明らかにされている。毎日新聞は、ASEANが中国との直接協議の 場で懸念を伝えるのは異例だとしている。 (田所秀徳)