5694.東アジアに地殻変動が起きている



中国海軍艦艇が尖閣諸島の接続水域に初めて入り、軍事紛争が起き
る可能性が出てきた。なぜ、中国は南シナ海・東シナ海で紛争を起
こそうとしているのであろうか?その検討。  津田より

0.中国の現状
2016年6月11日、東シナ海の沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)諸島の
接続水域に9日未明、中国海軍の軍艦が初めて進入した。これは、尖
閣をめぐる日中対立が新たな局面に入ったことを意味する。

また、中国は南シナ海に眠る海底鉱物資源研究のため「深海ステー
ション」建設を進めて、同時に米国とロシアの潜水艦を探知するこ
とを計画しているという。また、中国軍に近い筋から情報で、中国
が東シナ海に続いて南シナ海にも防空識別圏を設定する準備をして
いるという。

このような状況で、カーター米国防長官はアジア安全保障会議(シ
ャングリラ・ダイアローグ)で、、南シナ海などで海洋進出の動き
を強める中国に対して「みずから孤立を招いている」とした。

これに対して、中国軍の孫建国・連合参謀部副参謀長は、同じくア
ジア安保会議で、南シナ海の領有権をめぐる問題で中国は「われわ
れはトラブルを引き起こさないが、トラブルを恐れてはいない」と
表明。南シナ海をめぐる仲裁裁判について「中国は仲裁結果の義務
を負わないし、主権や安全保障上の利益に対するいかなる侵害も認
めない。南シナ海に混乱をもたらす一部の国については意に介さな
い」と述べた。相当に強気な発言である。

それと歩調を合わせるように、王毅中国外相の強硬発言が際立って
目立つようになってきた。日本に対してだけではなく、カナダでも
質問した記者を罵倒している。外交的な言葉使いとは、大きくずれ
ている。

このような中国の強気な姿勢は、どうして起きているのであろうか
?

その一方、北京で行われた米中対話では、鉄鋼の過剰生産能力の削
減や新興国の出資比率引き上げに向けた国際通貨基金(IMF)の
改革推進などで、米中は合意している。経済面では、依然、中国は
融和的である。

そして、中国の石油輸入でも、今までのサウジアラビアからではな
く、ロシアからの輸入を増やし、ロシア産原油が輸入全体の半分を
占めるようになっているし、あれほど嫌っていた北朝鮮の高官リ・
スヨン氏と習近平総書記は会談するなど、今までとは違う中国の動
きがある。

この動きの背景には何かがあるはずである。

1.中国の国内経済と路線対立
中国経済の方向性について、国内で路線対立が起きている。習近平
総書記は、集団指導体制から独裁体制にして、2期以上国家主席を
務める決意を固めていると有識者はみている。

そして、習近平は、汚職追放で多くの江沢民派高官を排除したが、
今度は団派を分裂させ排除しようとしているようである。しかし、
王岐山は、余りにも個人崇拝が大きくなり、党内で習近平の批判が
できない状態は良くないと見ている。

また、習近平としても、王岐山が行う汚職追放の手腕を使い、権力
を掌握したことで、批判を封鎖できないような状態になっている。

このため、中国経済の減速が進む中で、景気・雇用の安定重視か、
構造改革優先かでの路線対立がおきているようだ。

両者の違いは過剰な生産能力を削減したりする「供給側構造改革」
への姿勢から来る。習派は「負けられない戦争」とまで表現して改
革を最優先せよとの姿勢だが、李克強首相を中心とした団派の政府
側・地方政府側は景気腰折れや雇用悪化にも目配りすべきだとの立
場だ。

しかし、習派の構造改革を行うためには、自由市場が必要であるし
、その自由市場を活性化するためには自由な言論が必要であり、そ
れと独裁強化とは、矛盾している。このため、経済の路線対立では
なく、権力闘争と見るべきなのである。しかも、習近平は、経済面
には暗いので、議論自体はどうでもよいのである。

よって、この異例の不協和音は、習氏への権力集中が進む中、来秋
に開く共産党大会での最高指導部人事を巡る摩擦が背景にあるとも
みられている。

現時点の中国経済は、人民銀行が大量の人民元を市中にばら撒いて
、何とか経済の減速を抑えているのが現状である。このため、多く
の中国企業は運転資金を借りているが、その借金の返済に苦しんで
いる。2015年の支払利息はキャッシュフローを18.5%上回ったこと
が明らかになった。この値は10年には8%であり、5年間で急速に
悪化している。

普通の資本主義国では、このような企業は倒産しているが、中国の
企業は、地方政府や国からの資金援助を受けて、生き残っている。
このため、鉄鋼やガソリンなどが供給過剰になり、世界に安値で輸
出するので、世界的な価格が暴落するのである。

このような国内政治闘争に勝つためには、民衆の支持が必要であり
、弱い経済なので経済面での支持獲得ができないので、愛国主義で
の支持を獲得しようとしている。対外的な強い調子は、このような
面から出ているようだ。

習近平が軍の主張を支持して、こうなっている。このため、国務院
外交部もその強い調子を維持する必要があり、王毅中国外相の強硬
発言になっている。

2.中国の孤立化か?
アジア安保会議でも中国の主張は、ASEAN諸国から自分勝手な
主張と見られていたが、米国の中韓離間工作により、韓国も親中離
米から離中親米に変えた。この成果が日韓外相会議での慰安婦問題
解決である。この後、朴大統領は慰安婦問題を発言していない。

そして、朴大統領は、G7サミットへのオブザーバー参加を断って、
北朝鮮と軍事盟友国であるウガンダ、エチオピアやケニアなどを歴
訪したのである。そして、ウガンダの北朝鮮からの断交を引き出し
た。

この朴槿恵氏のアフリカでの行動を最も敏感にして、かつ詳細にキ
ャッチしていたのが中国である。

韓国が親米離中したことで、習近平も北朝鮮との関係正常化が必要
になったのである。

このように、東アジアの大きな地殻変動が起きてきた。マレーシア
などASEAN内での親中的な国もアジア安保会議などを見て、その態度
を離中に変更している。ミャンマーなども親中から離中に変更して
きているので、中国としては中国友好国との関係を強固にする必要
が出てきたのである。

このため、ロシアとの関係も見直して、日本との関係を正常化する
のを阻止したい考えのようである。ロシアはベトナムのカムラン湾
にロシア艦隊を寄港させたり、日露会談をして中国がロシアとの友
好国なら、それなりの待遇をしろと要求していたが、それを中国は
無視できなくなったようである。

よって、サウジの安い原油を止めて、ロシアの高い原油を大幅輸入
したのである。

このように、中国軍の強い調子の外交姿勢で、中国の孤立化が明確
になってきた。そして、中国の友好国を繋ぎ止める必要にもなって
きたのである。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
中国の混乱はだれが起こしたか?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/280402.htm

Economic nationalism and the growing danger of war
http://www.wsws.org/en/articles/2016/06/04/pers-j04.html

China's Message to Asia (And America): We Own the Air and Seas Off Our Shores
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/chinas-message-asia-america-we-own-the-air-seas-our-shores-16556?platform=hootsuite

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領有権主張、南シナ海けん制の“一石二鳥”狙う?中国軍艦,尖閣
接続水域を初航行、日中対立、新たな局面に
Record china配信日時:2016年6月12日(日) 6時30分
2016年6月11日、東シナ海の沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)諸島の
接続水域に9日未明、初めて進入した中国海軍の軍艦。これは、尖閣
をめぐる日中対立が新たな局面に入ったことを意味する。中国側に
は尖閣の領有権主張に加え、南シナ海問題で対中包囲網を敷く日本
や米国をけん制しようという“一石二鳥”の狙いもあるとみられる。
国連海洋法条約では、自国の沿岸から12カイリ(約22キロ)までを
領海、24カイリ(約44キロ)までを接続水域と定めている。接続水
域内では沿岸国に通関、財政、出入国管理、衛生などの規制が認め
られているが、本質的には公海とされ、外国軍艦が入っても国際法
上の問題はない。 
海上保安庁によると、中国海警局公船の尖閣領海侵犯は今年になっ
てから8日までに15回を数える。日本の実効支配に対抗して領有権の
既成事実化を図るためだ。当初、漁船だったが領海侵犯は公船にエ
スカレートした。 
今回、中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦は接続水域にとどまっ
たが、そのまま進めば領海にまで入りかねなかった。その場合、監
視中だった海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」などが領海侵入を阻止
する「海上警備行動」を取る可能性もあった。 
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中国が南シナ海に「深海ステーション」建設を計画=センサーネッ
トワーク「海面下の長城」で米露の潜水艦を探知も!―米メディア
Record china配信日時:2016年6月12日(日) 6時0分
2016年6月8日、米ブルームバーグは中国が南シナ海に眠る海底鉱物
資源研究のため「深海ステーション」建設を進めており、これは同
時に軍事目的でも使用可能になると報じた。10日付で観察者網が伝
えた。 
報道は中国科学技術部の説明資料により深海ステーションは南シナ
海の深さ3000メートルのところに建設予定で、海底の鉱物資源研究
がその主な目的だが、軍事目的でも使用可能になると伝えた。この
実験プロジェクトは今年3月の第13次5カ年計画に組み込まれており
、優先発展させるべき科学技術プロジェクト100位中の第2位に位置
づけられている。 
有人の深海ステーションは移動式で、英軍事情報企業ジェーンズ・
インフォメーション・グループの専門家によれば、中国はすでに「
海面下の長城」と呼ばれる海底のセンサーネットワークを作り出し
、米国とロシアの潜水艦を探知することを計画しているという。米
戦略評価予算センター(CSBA)のブライアン・クラーク上級研究員
はこのような深海に実験ステーションが建設されたことはかつてな
いが、それは確かに可能であるとし、有人の潜水艦が50年前にすで
にその深さまで到達しているとコメント。そして毎回潜る期間がど
れくらいの長さになるのかが課題になるだろうと加えた。 
報道はさらに、中国当局は深海ステーションについて具体的なこと
はまだ明らかにしていないが、世界の海洋魚類資源の10%が集中す
る南シナ海に主権を強く主張していることを指摘。同時に南シナ海
は魚類資源の他、豊富な天然ガスと石油埋蔵量を誇っていると伝え
た。(翻訳・編集/矢野研介)
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中国・王毅外相の「強硬発言」は尋常ではない
権力中枢で深刻な緊張が続いている可能性
美根 慶樹 :平和外交研究所代表  
2016年06月08日TK
最近、王毅中国外相の強硬発言が際立って目立つようになってきた。
同氏は誰もが知る知日派であり、駐日大使も務めたことがある。1980
年代の中葉、筆者が在中国日本大使館の政治部長であったときに王
毅は日本課長であり、同氏が順調に昇進し、今や中国の外相として
八面六臂の大活躍をしていることを、尊敬の念をもって見守ってき
た。
しかし、その強硬な姿勢が日本に向けられているとなると、昔の思
い出に浸るだけではすまなくなる。
「日本はケチなソロバンをはじき、小細工をした」
新聞報道によると、中国外交部は去る4月のG7外相広島会合のころか
ら対日批判を強めていた。5月27日に終わったG7首脳会議については
、「日本は南シナ海問題を大げさに騒ぎ、緊張を宣伝している。G7
は世界経済を論議する場なのに、日本はそれを利用した。徹底的に
反対する」と論評した。日本経済新聞6月1日付によれば、中国はさ
らに「日本はそれを利用し、ケチなソロバンをはじき、小細工をし
た」とも述べており、同紙の中沢克二編集委員は「まるで北朝鮮の
宣伝放送なのかと見まごう口調」と評している。
このような論評は国家間の儀礼を無視した無礼なものだ。王毅外相
は表には出ていなかったが、外交の責任者としてこうした論評を承
認したのは間違いない。(略)
王毅が今、強硬な姿勢をとっているのは、国内で緊張状態が高まっ
ているからではないか、と筆者は考える。
さまざまな政治的な緊張が考えられる。南シナ海における政策問題
かもしれないし、習近平政権内外のパワーバランスに変化が生じて
いるのかもしれない。あるいは王毅外相のさらなる昇進問題が絡ん
でいるのかもしれない。
具体的な理由については、現時点では推測するほかない。しかし、
いずれにしても、中国外相の対外強硬姿勢は、国内との関係と不可
分であることを知っておく必要がある。
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2016年 06月 7日 17:21 JST 
米中、IMFの改革推進で合意=汪洋副首相
[北京 7日 ロイター] - 中国の汪洋副首相は7日、新興国の出
資比率引き上げに向けた国際通貨基金(IMF)の改革推進で米中
が合意したと明らかにした。
さらに、金融政策の正常化が国際市場に及ぼす影響を米国は十分に
考慮する方針だと述べた。
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中国、鉄鋼の過剰生産削減を表明 米中戦略対話  
2016/6/7 18:39
 【北京=共同】ルー米財務長官は7日の共同記者会見で、中国が
鉄鋼の過剰生産能力の削減を表明したと明らかにした。
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中国企業の債務、さらに深刻さ増す  
2016/6/7 6:30
日本経済新聞 電子版
 中国経済の減速が続くなか、多くの中国企業が借金の返済に苦し
んでいる。フランスの投資銀行ナティクシスが中国の上場企業3000
社を対象に実施した調査では、2015年の支払利息はキャッシュフロ
ーを18.5%上回ったことが明らかになった。この値は10年には8%
であり、5年間で急速に悪化している。
 最も多額の債務を抱えているのは不動産部門で、15年の債務水準
は197%に達し、08年比でほぼ倍増した。不動産…
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習近平の状況 70年前の蒋介石に似ている=米歴史学者
2016/06/07 12:00epochtimes
 米国の歴史学者がこのほど、中国の現指導者、習近平国家主席を
理解するには、過去の中国共産党指導者ではなく、蒋介石と比較す
る必要があるとの見方を示した。米ロサンゼルス・タイムズが5月24
日、この学者の寄稿文を載せた。
 米セントジョセフ大学の歴史学教授、ジェームス・カーター氏と
カリフォルニア大学アーバイン校の歴史学者、ジェフリー・ワッサ
ーストロム氏によると、現代の研究者は、習近平論を展開する際に
過去の共産党指導者らと比較しているが、習近平氏の立場と政治手
腕は、70年前、中華民国を統一した蒋介石に近いという。
1955年、米タイム誌の表紙の人になった70歳近い蒋介石氏
 70年前と同じ反腐敗に挑む
 両氏の見解によると、蒋介石がひきいた中国は1946年の第二次世
界大戦後、戦勝国の1つとして、国連安全保障理事会の常任理事国入
りした。アメリカの財政支援を得て、あたかも国際秩序を維持する
大国の一員である立場にあった。
 現在、中国は文化大革命の壊滅的な状態から回復し、世界的な影
響力を持つ「スーパーパワー」を持つ国になるだろうと予想されて
いる。しかし、70年前と同じように、「腐敗」は中国が真の大国に
なる道を阻む障害となっている。
 習氏は名目上、中国共産党の主席という立場にあるが、今の中国
では「共産主義」は既に有名無実化しており、「消費主義」が幅を
利かせている。
 中国の未来を展望する際、習氏が直面している課題は、例えば、
巨額の不正蓄財をする腐敗問題、70年前の蒋介石の立場に非常によ
く似ていることを見逃せないという。
 1946年の『中国週間評論』では、汚職の横行によって腐敗官僚の
話題はありふれたものとなり、記事のネタにもならなくなったと報
じられている。蒋介石が反腐敗運動を起こした時、彼は奇しくも今
の習氏と同じように、親戚関係にあった孔祥熙と宋子文が投機に従
事して個人資産を貯めこんでいるという醜聞に巻き込まれていた。
 当時の評論家は、蒋介石の反腐敗運動の真意が、乱れた秩序を回
復しようとしたのか、それとも敵対勢力を潰そうとしたのかと疑問
を投げかけていた。
 今の習氏の立場も同様で、習氏自身は断固として腐敗を撲滅する
姿勢を崩していないが、パナマ文書の流出によって姉の夫がオフシ
ョア会社を設立していたことが明るみに出たことが、これまで行っ
てきた腐敗撲滅運動に水を差す結果となっている。メディアは、習
氏が権力を強化したいのか、それとも現体制を改革したいのか、あ
るいはその両方なのかと、なかなかその真意を掴めなく首を傾げて
いる。
 伝統文化を重んじる共通性
 もう一つの共通点は、二人とも孔子思想を高く評価し、本当の強
い中国を作るため、伝統文化を重んじ先人の知恵で国民の素質を高
めることが欠かせないと主張していることである。
 カーター氏とワッサーストロム氏は、習氏が蒋介石のように、敗
北して台湾に追いやられるわけではないと強調。経済成長の減速と
環境問題の悪化で、一党支配を否定する人が多数となることが予想
される現代中国で、習氏は、最も重要な指導者だと語っている。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)
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2016年 06月 6日 09:05 JST 
中国、南シナ海めぐり「トラブル恐れず」 アジア安保会議が閉幕
[シンガポール 5日 ロイター] - 中国軍の孫建国・連合参謀部
副参謀長は、アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)
の最終日となる5日、南シナ海の領有権をめぐる問題で中国は「ト
ラブルを恐れていない」と述べた。
孫氏は「われわれはトラブルを引き起こさないが、トラブルを恐れ
てはいない」と表明。南シナ海をめぐる仲裁裁判について「中国は
仲裁結果の義務を負わないし、主権や安全保障上の利益に対するい
かなる侵害も認めない。南シナ海に混乱をもたらす一部の国につい
ては意に介さない」と述べた。
孫氏は念頭に、「われわれは過去や現在においても孤立していない
し、将来も孤立はしない」と発言。「一部の人々や国々が依然とし
て冷戦時代の考え方や先入観をもって中国をみていることを懸念し
ている。彼らは心に壁をつくり、最終的に自らが孤立してしまうの
ではないか」と述べた。
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米長官 中国の海洋進出をけん制「孤立招く」
6月4日 16時38分NHK
アメリカのカーター国防長官はシンガポールで講演し、南シナ海な
どで海洋進出の動きを強める中国に対して「みずから孤立を招いて
いる」としてけん制する一方、アジア太平洋の安全保障で責任のあ
る役割を果たすことを期待するとして、各国との協調を呼びかけま
した。
アメリカのカーター国防長官は4日午前、シンガポールで開かれて
いるアジア安全保障会議で講演しました。
この中でカーター長官は、南シナ海で中国が人工島の造成を進める
など、海洋進出の動きを強めていることに懸念を示したうえで、万
里の長城を引き合いに「みずからの孤立を招き、孤立の長城を築く
ことになるだろう」と述べ、けん制しました。そのうえで、「すべ
ての国や人々が繁栄し続けられる前向きで道義的な未来に向け、指
導者たちはともに取り組んでいかなければならない」と述べ、アジ
ア太平洋の国々の間で安全保障面での協力を深めるネットワークの
構築を提唱し、責任のある役割を果たすことを期待するとして協調
を呼びかけました。
また、カーター長官は「アメリカは中国と軍事面での関係を強化し
実務的な協力においても合意を拡大させていきたい」として、アメ
リカと中国の軍事的な協力関係を発展させていきたいという姿勢を
示しました。さらに、南シナ海のほぼ全域が自国の管轄下にあるな
どとする中国の主張の是非について、近く国際的な司法機関が判断
を示すことを踏まえ、「中国にとって原則に立ち返り外交政策を新
たにする機会だ」と述べ、いかなる判断でも受け入れて、各国との
協調に向けた機会とすべきだと指摘しました。
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習近平はなぜ北朝鮮高官と会談したのか?――その舞台裏を読み解く
2016年6月3日(金)17時00分NWJ
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
 6月1日、北朝鮮高官李洙?(リ・スヨン)氏が習近平総書記と会談
した。背後には朴槿恵・韓国大統領の親北朝鮮アフリカ諸国歴訪と
それ以前の米国による中韓蜜月離間および昨年末の日韓外相会談が
ある。巨大な地殻変動を解読する。(略)
 金正恩氏は習近平政権が最大の敵であるアメリカに媚びて、「新
型大国関係」などを米中間で打ち建てようとしていることに激怒し
ていた。ネットには架空の「平壌日報」なるものが現れて、中国を
「修正社会主義帝国主義国家」と罵倒し続けている。世界には「ア
メリカ帝国主義国家」と「中国修正社会主義帝国主義国家」という
二大帝国主義国家があると酷評。今年の4月末にも、この罵倒がまた
ネットに登場したばかりだ。
 それでいて、今年4月19日、李洙?氏が突如、北京国際空港に姿を
現した。迎え出たのは駐中国の北朝鮮大使、池在竜(チ・ジェリョ
ン)氏で、李洙?氏は池在竜氏の車に乗って北京にある北朝鮮大使館
に消えた。目的は5月6日から開催される朝鮮労働党第7回全国代表大
会(第7回党大会)に参加するため、中国から代表を送ってくれない
かという要望であったと聞く。
 しかしその願いは拒絶されたため、李洙?氏はアメリカのニューヨ
ークに向けて出発した。李洙?氏にとっては非常に珍しい訪米だとの
こと。(略)
 今年5月28日、スウェーデンに北朝鮮外務省の高官とアメリカ国務
省OB等が姿を現し、非公式会談を行ったことが日本でも報道された。
 なぜ、こんなことが突如、米朝の間で行なわれるのか、少なから
ぬ人が不思議に感じたのではないかと推測するが、その陰には、ま
さにこの李洙?氏がいたことになろう。
 中国を批難することによって、アメリカを引っ張り出そうとして
いた北朝鮮は、4月19日に中国の拒絶に遭い、「それなら直接アメリ
カと」という形で、北朝鮮外交の大物、李洙?氏が動いたと考えるの
が妥当だ。
 5月9日付の本コラム「北朝鮮党大会を中国はどう見ているか?」
で書いたように、朝鮮労働党の第7回党大会開催に対して、習総書記
は一応祝電を送ってはいる。しかしそれは第6回党大会のときの祝電
と比較して非常に抑えられたものだったし、また送信したのが党大
会開催の夜だった。それもあってか、北朝鮮の「労働日報」では、
他の国の祝電に関する情報は第5面にあったのに、習近平総書記から
の祝電だけは第7面に小さく書いてあったという。
なぜ、中国へ?――背景には朴槿恵のアフリカ諸国歴訪
 それならなぜ、諦めたはずの中国を、北朝鮮はまたアタックし始
めたのか?
 その背景には韓国の朴槿恵大統領のアフリカ諸国歴訪がある。
 実は北朝鮮と外交関係を結んでいる国は意外と多いのだが、アフ
リカには軍事的に北朝鮮と協力的な国が少なくない。中でもウガン
ダとかエチオピアなどは軍事同盟を結んでいるに等しいくらいの軍
事的および経済的に友好的な関係にあった。中国では明確に「北朝
鮮の軍事盟友国」という言葉で位置付けているくらいだ。
 だというのに、朴槿恵大統領は、わざわざ際立った親北朝鮮国家
を狙い撃ちして歴訪したのだ。5月25日からエチオピア、ウガンダ、
ケニアなどを歴訪したあと、フランスに向かった。(略)
 しかし、結果的にウガンダは北朝鮮との軍事協力を断絶したこと
に変わりはない。
 武器などに関する協力は、韓国と行うことになったようだ。
 中国では「ウガンダは北朝鮮との軍事盟友関係を断絶した」と大
きく報じている。
G7オブザーバーより優先した韓国のアフリカ歴訪と米中朝の連鎖反応
 朴大統領は、実はオブザーバーとして日本で開催されたG7伊勢志
摩サミットに参加する資格を持っていた。しかし彼女はG7参加の選
択を蹴ってアフリカ歴訪を優先した。韓国のメディアでは、朴槿恵
大統領がG7よりアフリカを優先したことを批判するメディアもある
ようだ。
 しかし、そこには遠大な計画があり、しかもこれにより東アジア
情勢に巨大な地殻変動が起き始めたと筆者は見る。
 朴大統領の少し前までの媚中外交は世界の知るところで、中韓蜜
月を習近平国家主席も積極的に演じて見せた。なんといっても習氏
は北朝鮮を訪問する前に韓国を先に訪問したのだ。
 これは中国建国以来、前代未聞の出来事である。それくらい、韓
国を中国の懐に抱え込もうとした。
 それを嫌ったアメリカは中韓離間工作に力を注ぎ、朴大統領に圧
力を掛け続けた。その結果、媚中をあきらめた韓国は、ついに昨年
末、電撃的な日韓外相会談によって慰安婦問題を二度と再び国際社
会で言わないことを日本に約束するにおよんだのである。安倍外交
のこの瞬間の決断は非常に大きい。
 潮目はこの瞬間から急変している。
 日韓外相会談によって習氏との袂を分かつことになったパク氏は
、中国の早くからの地盤でもあり、北朝鮮の軍事協力の陣地でもあ
る「アフリカ」に目を転じたのだ。
 朴槿恵さん、なかなかやるではないか......!
 彼女の戦略をあなどってはならない。
 アフリカは、まだ国連に加盟できていなかったころの中国にとっ
て、1955年のバンドン会議以来、最大の友好国を持った大陸であり
、中国にはすべての政府組織に早くから「アジア・アフリカ処」が
あり、大学にも「アジア・アフリカ研究所」が設置されていた。
 だから朴槿恵氏のアフリカに対する動向を最も敏感にしてかつ詳
細にキャッチしていたのは中国だと言っても過言ではない。もっと
も、当事者の北朝鮮以外で、ということになるが。
 だからこそ、今般、北朝鮮の李洙?氏との会談を習氏は承諾したの
である。
 ということは、アメリカの中韓離間工作と日本の昨年末の日韓外
相会談が習近平総書記の心を動かし、北朝鮮をようやく受け入れる
方向に動き始めたということになる。つまり中朝接近を促したこと
になるのである。中朝がもし今後関係を改善するとするなら、中朝
をそこに追いやったのはアメリカだ。恐るべき連鎖反応ではないか。
 東アジア情勢にとって、どちらが効果的で、どちらが平和安定に
つながるかは、次のステップまで待たなければならないが、少なく
とも巨大に地殻変動が起き始めたことは確かだ。北朝鮮問題を解決
するために「中国」というコマを使う上で、日米にとってどちらが
良かったのか、今後も慎重に解読を続けていきたい。
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中国、南シナ海にも防空識別圏設定の準備―香港紙
Record china
配信日時:2016年6月2日(木) 19時20分
2016年6月1日、米CNBCは香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポ
ストの報道を引用し、中国軍に近い筋の話として、中国が東シナ海
に続いて南シナ海にも防空識別圏を設定する準備をしていると報じ
た。 
中国は2年前に東シナ海に防空識別圏を設定している。中国軍に近い
筋によると、中国は南シナ海にも防空識別圏を設定する準備をして
おり、発表の時期は、米国の軍事プレゼンスや周辺諸国との外交関
係など地域の安全保障情勢によるという。「米軍が中国の主権に対
して挑発的な行動を続けるなら、中国にとって南シナ海の防空識別
圏を発表するのに良い機会となるだろう」と述べている。
(翻訳・編集/蘆田)
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2016年 05月 25日 14:39 JST 
アングル:「影の銀行」への回帰強める中国の斜陽産業
[上海 25日 ロイター] - 中国では、激しい逆風にさらされて
いる産業が基盤を置く一部地域で、銀行の企業に対する貸出態度が
厳しさを増し、これらの企業はいわゆる「影の銀行(シャドーバン
キング)」に再び依存するしかない状況に追い込まれている──。
ロイターが人民銀行(中央銀行)の統計を分析したところ、こうし
た構図が浮かび上がってきた。
影の銀行は2014年に野放図な拡大を懸念した中国当局からいっ
たん締め付けを受けた。しかし鉄鋼や石炭などが盛んないくつかの
省では、足元でまた企業が伝統的な銀行よりもずっと高い金利で影
の銀行から借り入れる傾向が鮮明だ。例えば重工業が活発な遼寧省
においては、第1・四半期の影の銀行からの企業借入額は前年同期
比で2000%を超える増加となった。同省内の資金調達額全体は
前年同期から1%しか増えていない中で、調達先別で影の銀行の比
重が19%を占めている。
上海のある資産運用会社のディレクターは「経済のしくみがきちん
としており、とりわけ地方債市場を大いに利用できる地域は、影の
銀行への回帰度合いはそれほど大きくない。だがより経済規模が小
さく、貧しい地域は事情が異なる」と述べた。
米国風には「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼べる地域
で影の銀行からの借り入れが再度急増したのは、伝統的な銀行が長
年培ってきた考え方を放棄していることの表れだ。つまり、国有企
業(SOE)への融資は、地元政府がほぼ間違いなく救済してくれ
るのでリスクフリーとみなせるという認識は、捨て去られつつある。
過去半年間で増え続けた社債のデフォルト(債務不履行)はSOE
で、その多くは旧来型の産業に属している。
またデフォルトの増加は、政府がこうした産業の過剰設備を整理し
ようとする取り組みの裏返しでもある。ただ、これらの産業に対す
る影の銀行の融資が裏付けとなる「理財商品」を個人投資家が購入
することで、社債市場から個人投資家へとリスクの背負い手が移り
変わるリスクが増大している。
もっとも伝統的な銀行としては、エコノミストが唱えるような経済
成長持続のためのより効率的な信用供与を実現するためには、実情
に即した信用リスクを融資に反映させなければならない。そしてこ
うした状況が実際にある程度起こりつつあるようなのだ。
人民銀行の統計によると、経済的により富裕な地域では第1・四半
期も銀行借り入れはおおむね容易で、商業銀行の融資は過去最高水
準を記録した。富裕地域の中で、第1・四半期に借入額全体に対す
る影の銀行のシェアが増えたのは上海だけだった。
対照的に湖北省、山西省、吉林省、安徽省、河南省、四川省、山東
省においては、影の銀行からの融資が第1・四半期に240─249
%増加。中国全体での増加率の30%を大きく上回った。
<当局の変化>
14年に当局が影の銀行への規制に乗り出した際には、社債のデフ
ォルトを慎重な態度で容認し始めたが、その多くは結果的に救済を
受けた。
しかし今年の場合はもっと事態は深刻だ。これまでに確認されただ
けでもデフォルトは20件超と未曾有のペースで、特に過剰生産問
題を抱える産業では多くの企業が25年ぶりの低成長のもたらす痛
みを感じている。
それでも政策担当者は、自力での存続が難しい「ゾンビ」SOEへ
の厳しいコメントを相次いで発し、かつてと態度は一変した。この
ため4月に入ると社債が急激に売り込まれ、信用スプレッドは
2012年以降で最も拡大した。投資家が個別の発行体ごとのリス
クを織り込み始めたからだ。
先の上海の資産運用会社ディレクターは「4月全体で見ると、ゾン
ビSOEへの政府の行動とメッセージは非常に整合的でわかりやす
かった」と指摘した。
4月20日には人民銀行が金融機関に、石炭・鉄鋼企業の「合理的
な」資金調達ニーズは支えるべきだが、ずっと赤字を垂れ流して競
争力を失っている企業からの融資は「断固として圧縮し、引き揚げ
る」よう促した。 
(Nathaniel Taplin記者)
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中国指導部、経済巡り溝 金融・財政政策食い違い  
李首相ら、景気の安定重視 
2016/5/23 0:55
日本経済新聞 電子版
 【北京=原田逸策】中国の指導部内でマクロ経済政策を巡る温度
差が目立ってきた。李克強首相ら政府高官が中国経済の現状を前向
きに評価するのに対し、習近平国家主席に近いとみられる人物が反
論。景気・雇用の安定重視か、構造改革優先かで意見が割れている
もよう。異例の不協和音は、習氏への権力集中が進む中、来秋に開
く共産党大会での最高指導部人事を巡る摩擦が背景にあるとみられ
る。
 発端は中国共産党の機関紙、人民日報が9日付で掲載した匿名イ
ンタビュー。中国経済を「権威人士」なる人物が語った内容が政府
と食い違っていた。中国では「権威人士」は習氏の経済ブレーン、
党中央財経指導小組弁公室の劉鶴主任とその周辺とみられている。
■異なる現状認識
 まず異なるのが経済の現状認識だ。1〜3月の成長率は3期連続
で減速したが、3月単月は経済指標も改善が目立った。
 政府内からは「(16年は)幸先良いスタートを切った」(国家発
展改革委員会の趙辰●(日へんに斤)報道官)との声が相次ぎ、先
行きに「短期的には(成長率が上振れする)U字やW字もありうる
」(国家統計局の盛来運報道官)と楽観的な見通しが出た。
 だが、「権威人士」は「固有の矛盾は解消せず『幸先良いスター
ト』では説明できない」と政府見解を否定し、先行きも「U字やま
してV字でなく(成長率が上がらない)L字だ」と強調した。
 実際、工業生産など4月の経済指標は悪化したが、政府は16日に
公式サイトで「4月は昨年より営業日が1日少ない。1〜3月と同
じく安定する」と反論し溝が深まる。
 個別の政策も食い違う。中国は昨年から今春にかけて金利と預金
準備率を度々引き下げた。「権威人士」は「(債務を膨らませる)
高いレバレッジで為替、株式、債券、不動産と銀行融資のリスクが
上がっている」と指摘。「コントロールできなければ金融危機を起
こし、マイナス成長になる」と警鐘を鳴らした。李首相は16日に「
債務はコントロールできる水準」と反論した。
 財政出動でも「権威人士」が「バラマキで経済にカンフル剤を打
つのは避けるべきだ」と指摘すると、李首相は9日に「ここ数年、
経済の下押し圧力に直面しても強い景気刺激策はとらなかった」と
強調した。
■市場も疑心暗鬼
 両者の違いは過剰な生産能力を削減したりする「供給側構造改革
」への姿勢から来る。「権威人士」は「負けられない戦争」とまで
表現して改革を最優先せよとの姿勢だが、政府側は景気腰折れや雇
用悪化にも目配りすべきだとの立場だ。
 市場も疑心暗鬼になる。中国人民銀行(中央銀行)が13日発表し
た4月の企業や家計の資金調達額は3月より大幅に減り「『権威人
士』の影響で金融政策が変わった」と臆測を呼んだ。人民銀は翌14
日に「地方政府の融資が債券に振り替わった特殊要因による」と釈
明する発表をした。



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