5686.トランプ米大統領への備え



トランプ氏が米国大統領になる可能性が出てきて、戦後の世界体制
は大きく変化する。日本はその備えをする必要がある。その検討。
                    津田より

0.トランプ次期米大統領の政策
まだ、トランプ氏が次期大統領になるがどうかは分からないが、も
しなると、大きな変化が訪れる。その準備をする必要がある。日本
は、大きなピンチになるが、その準備をして乗り切れば、大きなチ
ャンスが待っている。それを11月、来年の春までに構築すること
が必要になっている。

今週のトランプ氏に関する記事を見ると、化石燃料中心経済に逆戻
りでパリ協定破棄、移民排撃して孤立主義になり、ハワイ・グアム
以西には軍を派遣しないようで、派遣するならその費用の全額を派
遣国が負担しろというアメリカ・モンロー主義で日米同盟の再構築
、工業製品や農産物などの米国への輸入には高関税を掛けるという
保護貿易主義などの政策が並べられている。

トランプ氏が米国大統領になる確率もクリントン支持率より高くな
り、徐々に高まっている。それに対して、日本の知識人や自民党政
治家は、大統領になれば意見が変わると見て、危機感がない。野党
政治家は、日米同盟破棄で、日本の安全保障をどうするかの見解も
なく、歓迎しているように見える。日本全体が、恐ろしくのんきで
ある。

これは米国も同じようであり、スレート誌記者のアイザック・チョ
ティナー氏は、偏見の塊のようなこの人物をアメリカの大統領にさ
せれば、取り返しのつかない惨事となる。サマーズ元財務長官もト
ランプ氏が馬鹿げていて矛盾した財政政策や貿易政策という話を超
えて、通常はアルゼンチンや中国やロシアといった国の文脈で語ら
れる政治リスクを初めて米国に関連付けた。債務の再交渉、自分に
反対する出版物の告訴、条約破棄といった脅しについては、それ以
外の解釈のしようがないと危機感を表明している。

チョティナー氏は、この状況に有権者はどう反応すべきか。答えは
ずばり「パニックになるべきだ」という。しかし、このことは、日
本の知識人・政治家にも言える。どうして、まともに、トランプ氏
が大統領になった時の対応政策を検討しないのであろうか?それほ
ど、のんきでいられるのであろうか?

政治家は先憂後楽の精神でいないといけない存在である。それを自
民党政治家は、現在のんきでトランプ氏が大統領になれば、政策を
変えると見ているが、変えない事を知って、焦って対策会議を開く
のであろうが先楽後憂である。このような政治家に日本を任せては
いけないと思うが、それ以上に野党の政治家は、日米同盟破棄を喜
ぶというので、より危険である。

1.米国は化石燃料中心経済へ
トランプ氏は、米国を化石燃料中心経済に戻し、パリ協定破棄して
参加しないという。インドや中国も、米国が破棄すれば同様に破棄
することになる。

となると、温暖化は進み、海面上昇は今後も持続してくるし、気候
変動要因の天災も増加する可能性が高い。もう1つが、再生可能エ
ネルギーへのシフトが遅れることになる。エネルギー価格は製品競
争力に大きく響くので、日本も再生可能エネルギーへの転換が遅れ
る可能性がある。

技術革新が起きているが、その技術進化は需要がないと進まないの
で、特に不安定性を制御するための燃料電池などの技術進歩が急速
に起きるかどうか不安になる。米国企業は、技術進歩を進めること
はできなくなり、撤退することになる。この時、日本企業が一人で
技術進歩を急速に進めることになるが、技術競争がなくなり、心配
である。

もう1つ、地球温暖化を止める方法としては、人工的な気候を作る
技術、成層圏エアロゾルなどのジオエンジニアリング(気候工学)
を真剣に考えることであり、また、海水温度差発電などの温暖化に
より有効になる再生可能エネルギーの開発をすることである。

2.日本の米孤立主義への対応
前回までの考察では、米国孤立主義で、日米同盟の再構築が必要で
あり、そのためには、沖縄からの海兵隊撤退を要求して、第7艦隊
の横須賀分は負担することであると述べたし、保護主義には、米国
抜きTPPを推進して、ASEANとの自由貿易圏を造り、米国ブロッ
ク経済に対抗するべきとした。米国が孤立主義になるなら、日本が
ロシア、インド、ASEAN諸国とともに、中国包囲網を形成する
ことになるとした。

日本は、外需に依存せずに、内需拡大をしないと無理があり、その
ためには、移民問題を避けて通れないことになる。親日仏教国から
長期間単純労働者も入れるしかないとした。日本の人口減少で、高
齢化が進み、労働力不足を起こしてしまい、基礎になる労働人口が
いなくなるからである。

規制緩和も考え方を変える必要がある。規制緩和すると、危険性が
増すが、日本経済的には大きなメリットがあることで行うのであり
、海外製品を売れるようにすることではないので、日本が強いか日
本の市場規模を大きくして、経済規模を大きくできるかである。

日本が強いのは自動車であり、この国内販売をUPさせる規制緩和
が一番重要になる。このため、今までは、規制緩和を一番するべき
ポイントを外している。

経済的に弱いところは、日本経済のために規制強化することも考え
ることである。農業は国内の市場性を上げて、国内企業の競争環境
を作るが、海外からの輸入をブロック経済圏以外からは止めるか、
高関税にする。

米国は自動的に輸入できなくなる。工業製品は海外での生産ができ
るが農業は海外の人が日本では農業が出来にくいので、経済的な面
では大きくなる。ブロック内では日本の工業製品は売れるので、そ
の方が経済効果が大きい。

どこの規制緩和が効果大だかの検討が必要なのである。

一番重要なことは、イノベーションを起こして、旧型製品を陳腐化
させることで、これで経済復活をすることである。この一大分野が
エネルギー革命であり、再生可能エネルギーが低価格になれば、こ
れは間違いなく、大市場を日本が独占できることになる。このイノ
ベーションが起きるまでの繋ぎとしての規制緩和であり、イノベー
ションを起きて経済規模が大きくなれば、再度、規制強化をおこな
い、安全性を高めれば良いのである。

3.日本の革命を短期に行う方法
トランプ氏が大統領になったら、日本の社会体制を革命的変化させ
る必要になり、多くの野党と自民党が一緒に手を組んで政策実現の
ための法案を成立させる必要がある。

このためには、自民党+民進党の大連合も視野に、今後の米大統領
選挙期間中に準備しておくことが必要になる。

それほど、トランプ氏が米大統領になるということは、戦後70年
間の世界システムが破壊され、経済はメチャメチャで大恐慌に匹敵
するようなことになる。

この状況に、早く日本の政治家も知識人も準備をすることである。

さあ、どうなりますか?

参考資料
Gゼロ時代で日本にチャンスあり
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L8/280522.htm

トランプ氏が大統領になった時の日本の戦略構築
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L8/280508.htm

米国の保護主義で戦争にする
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L8/280501.htm

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トランプ氏が強いる日本人への「頭の体操」
2016年05月26日 17:28アゴラ
井本 省吾
安倍内閣の支持率が今月に入って軒並み上がっている。読売新聞の
13〜15日の世論調査では53%で、前回調査(4月1〜3日)の50%から
やや上昇した。不支持率は34%(前回38%)と下落した。
時事通信が6〜9日に実施した世論調査でも、支持率は前月比2.3ポイ
ント増の47.6%だった。不支持率は同4.7ポイント減の29.5%に低下
し、2014年10月以来約1年半ぶりに3割を切った。
政党支持率も自民党が前月比1.7ポイント増の25.6%で、3月に発足
した民進党は同0.1ポイント増の4.3%とほぼ横ばいだ。
NHKの5月の世論調査では、安倍内閣の支持率は先月より3ポイン
ト上がって45%、不支持率は3ポイント下がって36%だった。
支持率上昇の理由は熊本地震への迅速な対応やオバマ米大統領の被
爆地・広島への訪問などが評価された、というのが各メディアの分
析。
だが、私はもう1つ、米トランプ氏の人気上昇が背景にあると思う。
このまま行くと、米大統領になる可能性が高まってきた。そのトラ
ンプ氏が「日本は米軍が駐在してほしいなら、駐留経費を全額、支
払え。それがイヤなら米軍は日本から全面撤退する」と吼えている。
これに対して、日本の識者の多くは高をくくっている。
<在日米軍は日本の防衛以上の米国の軍事・安全保障の世界戦略の
ためにある。米国にとってなくてはならない不可欠な基地だ。米軍
が簡単に手放すわけがない。今は大統領戦の最中だから、トランプ
氏も極端なことを言っているが、当選すれば、国務省や国防省の高
官や関係者がその辺を十分に説明するはずで、トランプ氏も理解す
るだろう>
しかし、過激なトランプ氏は、オバマ氏以上に「世界の警察」の立
場を降りたがっているようでもあり、その場合、米軍の活動範囲を
狭める可能性はある。「米軍基地はグアム、ハワイ、オーストラリ
ア以東で十分だ」と考えているフシもある。
「ヒスパニックやイスラムの面倒をみたくない。彼らの流入を防ぎ
、自分たちの雇用と生活を守ろう」という「内向きのアメリカ人」
の増加がトランプ人気を支えている。
実は「世界の警察」から降りようとする過去10年近い米国の動きが
、安倍政権に集団的自衛権の行使容認、安保法制の整備を迫った。
これに対して有権者の多くは集団的自衛権の行使容認に反対してい
る。米軍普天間基地の辺野古移設も反対する有権者の方が多い。
だが、安倍内閣の支持率は落ちても一定以上を維持している。自民
党の支持率も安保法案に反対した民主(進)党を大きく上回ってい
る。この傾向がトランプ大統領実現の可能性が高まるとともに強ま
っているのだ。
そのココロは?
多くの日本人は従来、こう考えてきた。
<米国の軍事力が圧倒的ならば、日米同盟は片務的で良い。日本の
安全は米軍に任せる。軍事基地が沖縄をはじめ全国にあっても、そ
れで安全ならいいではないか。「思いやり予算」もドイツなどに比
べて多めでも、向こうに全面的に守ってもらえるならばそれでいい。>
だから、自分のリスクが強まる双務的な集団的自衛権の行使容認に
反対だった。要するに、自分を守る行為をできるだけサボりたかっ
た。ところが、このところ、米軍は軍事予算を削減し、日本に対し
「自分のことは自分でやって」と言うようになった。大手メディア
がはっきりとは書かないが、詳細に読むとそんな感じである。
であれば、やむを得ない。米軍が退いたアナを責任を持って埋める
努力をしそうなのは安倍内閣ぐらいだろう。そう思って今も安保法
案や辺野古移設に反対しつつ、安倍政権に任せようとなっているの
ではないだろうか。
日本の有権者の多くはこれまで米国の厳しい注文や難題に対して、
あまり真正面から考えてこなかった。自民党政権が防波堤になって
処理してきたからである。それだけ怠けていられたのだ。
だが、トランプの攻勢は「安倍政権を防波堤にして、自分は何も考
えないでいい」ということにはならなくなってきた。「軍事費を出
さないなら日本から米軍はすべて撤退する」「自分が大事ならば、
日本は核武装もすればいい」とまで言っている。
これは日本の有権者に「頭の体操」(ブレーン・ストーミング)を
強いる難問の頻出である。
「もし米軍が日本からいなくなったら東シナ海や沖縄に中国が本格
的に進出(侵略)してくるのではないか」。
「いや、米国はそこまではさせないだろう。させないように、日本
の政権は米国に働きかけるべきだ」
「ならば、米軍への軍事費を増額しなければならない」「その前に
トランプが認めるのだから日本も核武装に大きく前進しようではな
いか」……。
という具合で、来年1月に新大統領が誕生するまで、頭の体操は尽き
ない。そして、それは日本人が自立(自律)するのに、大切なプロ
セスでもある。トランプ氏の「暴言」「激論」はなかなか有益であ
る。
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トランプ氏 
日本に核容認「言っていない」 軌道修正図る
毎日新聞2016年5月28日 12時41分(最終更新 5月28日 14時25分)
【サンディエゴ(米西部カリフォルニア州)長野宏美】11月の米
大統領選で共和党の候補になることが確定している実業家ドナルド
・トランプ氏(69)は27日、サンディエゴの集会で支持者を前
に、日本の核武装に対する自身の発言を巡って民主党のヒラリー・
クリントン前国務長官(68)の批判に反論し、「彼女は私が日本
に核兵器を持ってほしいと言っていると言うが、そんなことは言っ
ていない。彼女はうそつきだ」と軌道修正を図った。 
 トランプ氏はこれまでの対話集会などで、北朝鮮に対する抑止力
として日本の核兵器保有を容認する発言をしてきたが、徐々に発言
内容を弱めている。 
 また、米国が日本や韓国など他国を防衛しているとし、安全保障
面での費用負担に関して「彼らは支払うべき軍事費を負担していな
い」とこれまでと同様の批判を繰り返した。 
 一方、オバマ大統領が広島を訪れたことについては「謝罪しない
限り、まったく構わない。誰が構うものか」と語った。 
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2016-05-28himaginaryの日記
次の景気後退について知っておくべきこと(主演:ドナルド・トラ
ンプ)
というWaPo論説をサマーズが書いている(H/T 本石町日記さんツイ
ート、原題は「What you need to know about the next recession
 (starring Donald Trump)」)。
サマーズはそこで以下の4点を挙げている。
1.米国の繁栄にとって、米国の議会の機能不全よりも「扇動家ドナ
ルド」選出の可能性が遥かに大きな脅威 ?馬鹿げていて矛盾した財
政政策や貿易政策という話を超えて、通常はアルゼンチンや中国や
ロシアといった国の文脈で語られる政治リスクを初めて米国に関連
付けた。債務の再交渉、自分に反対する出版物の告訴、条約破棄、
といった脅しについてはそれ以外の解釈のしようがない。
忍び寄るファシズムはマクロ経済政策よりもはるかに重大な問題!

2.2009年は1929-33年の再演とはならなかったが、まだ安心はできな
い ?2007-18年の経済のパフォーマンスは1929-40年と同じくらい悪
いものとなる可能性がある。
政府債務を抑え、国家の安全保障を高め、貧困者への寛容を促し、
中間層の生活水準を引き上げるに当たっての単一の最も重要な課題
は、米国の経済成長を加速させること。

3.財政政策は今や最も重要な安定化ツールとなった ?これは自説の
長期停滞仮説に基づく。大恐慌以来、財政政策の安定化ツールとし
ての重要性がこれほど高まったことはない。
過去の経験は、今後3年以内に景気後退が公式に判定される可能性が
半分以上あることを示唆している。FRBは景気後退期に通常は実質金
利を4〜5%引き下げてきたが、次の景気後退期にはとてもそれだけの
余地はない。
FRBの非伝統的政策のことは十分に承知しているが、1.5%の金利引き
下げに相当する以上の追加緩和効果は望めそうにない。 ?現金の存
在する社会で-0.5〜-0.75%以下の金利は難しく、また、そこまで下
げると金融仲介を実質的に損なう。
フォワードガイダンスは理論上は結構だが、次の景気後退が訪れた
時、先物金利は遥か未来までかなり低い水準が続くと既に予想され
ている。
量的緩和は既に収穫逓減になっている。利回り曲線は平坦化してお
り、市場は回復初期に見られた非流動性プレミアム無しで機能して
いる。
「ヘリコプターマネー」は基本的に財政政策の一形態であり、中央
銀行が自律的に実行できるものではない。
低金利も財政政策を行うべき理由となる。現在の経済は適度の成長
のために非常に低い金利を要求しているが、そうした金利は、レバ
レッジ、少しでも高い金利を追い求めること、金融工学、バブル、
といったものの種となる。金利を顕著に引き上げることを多くの人
が提唱しているが、何もせずにただ金利を引き上げれば景気後退を
招くため、正しい政策は金融的に持続可能な成長を促すための需要
喚起である。従って、民間需要を喚起するための税や規制や移民に
ついての改革とともに、財政政策を実施すべき、ということになる。
4.景気後退の可能性を低める、ないし、景気後退が来た時に対処す
るための拡張的財政政策を適用すべき場所は多々ある ?最近の金利
や雇用機会や資材コストの低下に照らすと、米国のインフラ投資の
減少は容認しがたい。
依然として投資が振るわない住宅などの耐久財も有望な分野。
社会保障への支援も有望。現時点での社会保障は、成長率が政府の
借入金利を大きく上回るという点で、良い経済学である。またそれ
は、財政赤字を拡大させることなく需要を高める。
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トランプ:化石燃料を米エネルギーの中核に
2016年05月27日 12:49
岩瀬 昇
朝、PCを立ち上げてニュース検索を始めたら、面白いタイトルが目
に飛び込んできた。FTが “Trump puts fossil fuels at US energy
 core” (May 26, 2016 11:16pm) と題して報じているニュースだ。
一読してみると、シェールオイル州とでもいうべき北ダコタにおけ
る発言で、同州のシェールオイル事業のパイオニアであるHarold 
Hamm(Continental ResourceのCEOで、2014年に永年連れ添った妻に
10億ドル近くを支払って離婚したことでも有名)のアドバイスを入
れて行ったものだそうだ。ほとんどの政策において共和党主流派と
は一線を画しているトランプだが、このエネルギー政策だけは産業
優先の共和党政策そのものといえる。
いわく
・(気候変動対策としてアメリカを含む全世界の196の国と地域が調
印した)昨年のパリ協定はキャンセルしたい
・(国有地での水圧破砕を禁じた)連邦規制は元に戻す
・弱体化した石油産業を復興させる
・(長いあいだ議会でも討議されており、最近ではオバマ大統領が
反対したため宙に浮いているカナダからの原油輸送のための)キー
ストーンXIパイプライン建設を促進する
トランプらしく、オバマ大統領やヒラリー・クリントンら民主党の
エネルギー・環境政策を批判し、そんなことをしたら「再び中東に
油乞いをすることになる」と主張している。素人受けする発言だ。
FTは、いくつか関係者のコメントを紹介している。
前エネルギー省次官で今は投資銀行にいるBill Whiteがいう「水圧
破砕と石炭の両方を支援するのは矛盾している」「ガス増産を後押
ししてきたClean Air Actをあと戻りさせて石炭産業を後押しさせる
のか」という指摘は重要だろう。
シエラクラブのMichael Brune事務局長が「環境を破壊させる」と激
しく非難するのは予想とおりだ。
石油ガス業界の望ましい政策を後押ししてくれていると認識してい
るアメリカ石油協会(API)が「エネルギーが大統領選の争点になる
ことは望ましいことだ」としながらも「トランプを大統領候補とし
ては支持しない」と発言しているのも興味深いところだ。
はてさてアメリカ国民は、11月にどのような判断を下すのだろうか。
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「トランプ大統領」の悪夢を有権者は本気で恐れろ
The Case for Panicking
2016年5月26日(木)16時40分
アイザック・チョティナー(スレート誌記者)
<世論調査でついにヒラリーに逆転したトランプ。偏見の塊のよう
なこの人物をアメリカの大統領にさせれば、取り返しのつかない惨
事となる>
 ドナルド・トランプがついに支持率でヒラリー・クリントンより
優位に立った。FOXニュースが先週発表した世論調査では、大統
領選本選で2人が対決した場合、トランプの支持率は45%、クリン
トンは42%。先月の同調査ではクリントンが7ポイント差でリード
していたから、トランプはわずか1カ月で大逆転を果たしたことに
なる。
 ソーシャルメディアではさまざまなコメントが飛び交っている。
いわく、「たった1回の調査結果で大騒ぎすることはない」(確か
に)。「民主党幹部はすぐパニックになる」(そのとおり)。「選
挙戦はこれからまだ何カ月も続く」(うんざりだが、そのとおりだ)。
 トランプは共和党の指名を事実上獲得済みだ。ヒラリーは執拗に
食い下がるバーニー・サンダースに手を焼いているが、民主党の指
名はほぼ確実で、指名後は支持率が上がるだろう。
 長い選挙戦(それも展開の読めないキワモノ芝居と化した選挙戦
)の中のたった1回の世論調査で何が分かるというのか。
 答えは「何も」。今回の調査結果はトランプの支持拡大をあらた
めて印象付けただけ。出生疑惑でオバマ降ろしを図ったおバカなセ
レブが事実上の指名候補にのし上がり、前国務長官を脅かすほど支
持率を伸ばしている。この不可解な状況に有権者はどう反応すべき
か。答えはずばり「パニックになるべきだ」。
【参考記事】米共和党、トランプ降ろしの最終兵器
 偏見の塊がアメリカの大統領になろうとしているのだ。「冷静で
いろ」と言うほうが無責任だろう。
「冷静でいろ」と言う人々が指摘するのは次の2点だ。第1に、ト
ランプはそれほど危険な男ではない。過激なデマゴーグに見えるが
、計算ずくで暴言を吐いているだけだ、と。
 百歩譲って人種差別やイスラム嫌い発言がトランプの本音ではな
いとしよう。だが人気取りのために自分の信条と異なる発言をする
候補者を信用できるだろうか。これまでのトランプの戦いぶりを見
れば、暴言がただの演出ではないのは明らかだ。女性蔑視はポーズ
ではない。傍若無人なワンマンぶりも本性だ。
取り返しのつかない惨事
「冷静でいろ」派が指摘する第2の点は、トランプは本選では勝ち
目が薄いということだ。
 いいだろう、トランプがクリントンを倒す確率は20%しかないと
しよう。だが、それだけでもパニックになるには十分だ。
 想像してほしい。11月までにあなたの家族に恐ろしい災難が降り
掛かる確率が20%あるとしたら? これから半年、あなたはのんき
に暮らせるだろうか。
 政策の中身はゼロ。病的なまでに虚言を弄するメディア戦略でこ
こまでのし上がってきたトランプ。今回のいかれた選挙戦では、白
人至上主義者でも、大統領候補になる資格があることを彼は証明し
てみせた。
 ドナルド・トランプとは何者か、何を代表しているのか。何百万
人ものアメリカ人(その多くはとても進歩的な人々だ)はこの問い
と真剣に向き合っていないようだ。11月8日の投票日が目前に迫れ
ば、遅まきながら彼らもパニックに陥り、民主党支持になだれ込む
かもしれない。だが、土壇場になって人々が真剣に考える可能性に
国家の命運を懸けてもいいのか。
「パニックになれ」と言っても、「理性的に考えて行動することを
やめろ」と言っているのではない。いま何が起きているかを直視し
、事の重大さを認識してほしい。取り返しのつかない大惨事を回避
するために。
c 2016, Slate
[2016年5月31日号掲載]



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