5646.ロシアのシリア撤退は何を示すか?



ロシアが、部分的にシリアから撤退することを発表した。アサド・
シリア大統領が望む全土の奪還は難しいので、連邦制を提案。ロシ
アの世界的な位置づけを検討したい。  津田より

0.ロシアの国力
ロシアの経済力は世界10位であるが、欧米からの制裁と石油価格
の低迷でマイナス成長を2年続けているので、この順位は下がって
いく。1人当たりのGDPは50位以下になっている。アフリカの
ガボン共和国より貧しい。

このような国が、世界の大国として位置づけられるのは、どうして
も無理があると思っていた。非誘導型爆弾でも1発30万円程度は
するから、ロシアの空爆の回数であると1日100発程度は消費し
ている。ということは、1日で3000万円程度、1ケ月で9億円
程度であり、1年では100億円となるが、これは一部でしかない
。その他の経費を含めると年間5000億円以上は使うことになる。
戦争は非常に高いお遊びである。このため、米国の空爆は1日一回
で3機程度の回数である。

そして、このシリアでの空爆をすると、欧米の制裁は解除されない
ことも明らかになっている。トルコは反発して、防空システムも完
備しないと、ミサイルで爆撃機を撃ち落とされる。経費がかかるこ
とになる。

軍事予算は、2014年で845億ドル(約10兆1400億円)でGDPの4.5%に
もなる。2016年は景気後退であり、軍事予算も縮小するために、こ
のシリア空爆を早期に切り上げる必要があった。

また、ロシアはガス・石油資源大国であり、原油の価格を上げるた
めに、サウジとの原油増産凍結の交渉もしないといけないが、その
ためには、サウジの要望も聞く必要があったのである。

プーチンとしては、ラタキアの空軍基地、タルトースの海軍基地を
守れば目的を達成するので、その地域がアラウィ派の地域であり、
その地域でのアサド体制を守れば良いことになる。このため、連邦
制で良いことになる。

もう1つが、政権維持の国内対策であり、ロシアが偉大であること
を証明することで、愛国心を満足させる必要があった。

というより、それしかできない。

1.イスラエルとの関係
ロシアの軍備の近代化、中国の軍備近代化、特に電子部品、レーダ
ーや中国ではジェット・エンジンの近代化は、その裏にイスラエル
がいる。キー電子部品をイスラエルが両国に提供している。

特に、スクラッチ・ハッド・レーダーは日本とイスラエルしかでき
ない。米国は日本からも買えるが、中国やロシアは敵国である日本
からは買えない。米国は日本からも買えるので、イスラエルの中東
関与をつづていて欲しいとの要求を無視したのである。

そして、つい最近も、ロシアがイランに送った防空システムS−
300の一部が正面の敵であるヒズボラに渡ったことで、イスラエ
ルがキーの電子部品の提供を止めるとロシアに告げたことで、ロシ
アはイランへのS−300の売却を中止している。

イスラエルにとっては、シーア派とスンニ派の対立が激しい方が、
自国の安全保障上有利になる。このため、シリアのアサド政権が劣
勢であったのでロシアの介入は歓迎したが、逆にシリア政権が強く
なるのも反対である。このため、ロシアの撤退を要請しているよう
である。

シーア派でもヒズボラだけは、イスラエルは負けたので、このレバ
ノンのヒズボラは、どこかで叩く機会を狙っている。

2.中国との関係
中国、米国の両国は世界覇権を取れるが、ロシアは無理がある。軍
事費を増やすと、国内投資ができずに経済力が伸びないために、軍
事費をある限界までしか増やせない。産業力が弱いと、技術的な面
でも劣勢になる。このため、電子部品はイスラエルから調達するし
かないのである。中国の近代化が進み、中国に売れる軍備もジェッ
ト戦闘機ぐらいしかない。

このため、中国もロシアを侮っている。ロシアを対等な同盟相手と
は見ていない。その証拠として、一帯一路という中央アジアの経済
圏を中国がロシアから奪う戦略を堂々と発表しているし、AIIBの出
資額2位のロシアを副理事長にもしない。

逆にロシアは、中国に軍備や石油、ガスを売ることが必要であり、
対等ではないのに、ロシアは中国に対等の条件を付けるので相手に
してもらえない。

中国はトルクメニスタンなどの中央アジア諸国に自分でパイプライ
ンを引いて、安いガス、石油を調達し始めている。また、サウジも
中国に安い原油を提案して、ロシアが売り込む量を横取りした。

ロシアは、このため、日本や欧米への売り込むべきであるのに、対
日では北方領土問題で止まり、欧州ではウクライナ問題で制裁を受
けている。

欧州は、ロシアから米国やトルクメニスタンなどからガスや石油を
買うために、パイプラインを引き始めている。

この意味からもロシアの脆弱な経済力により、世界的な覇権を狙え
る状況ではない。それを無理するので、ロシアの衰退が止まらなく
なるのである。

イランも石油決済通貨をルーブルではなくユーロにしたことで分か
る。イランも欧州市場を狙っているのである。ロシアとイランは競
合関係にある。

3、ロシアの今後
プーチンは、欧米日に擦り寄り、工場の進出などを促し経済力を上
げないと、軍事力だけで世界的な覇権国にはなれないことをシリア
介入で思い知ったはず。

日本では、ロシアにいる北野さんが情報をロシア寄りで出だすので、
実態よりロシアが大きく見えているが、ロシアは所詮、ガボンと同
じ程度の国であることを知っておくことである。

そのため、かわいそうな国として日本はロシアと交渉して、北方領
土と交換で工場進出をすることである。ロシアの経済は破綻しかね
ない状態になっている。

日本が恐れなければならない国は、中国しかない。この中国との尖
閣列島争奪戦に勝てるように、自国の実力を上げ、周辺諸国と同盟
を結び、準備しておくことだ。

ロシアもその中国封じ込めの一員になるなら、日本も経済の応分の
協力をすることである。もし、中国と同盟を続けるなら、経済破綻
するまで関係しないことだ。

ロシアのプーチンは、自国を大国へとの野望を持つ限り、弱小国に
成り下がることを認識して、中国の脅威を共有して、日本との同盟
を組むべきであると見るがどうであろうか?

さあ、どうなりますか?

参考資料:
Iraqi Kurds to visit Moscow in April to talk Russian arms supplies: RIA
http://www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-russia-iraq-idUSKCN0WJ0XT?feedType=RSS&feedName=worldNews

What Russia's Syria shift means for Moscow-Riyadh ties
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/03/russia-syria-military-withdrawal-ties-saudi-arabia.html#ixzz43KuQpKFs

Putin’s Master Plan for Syria
http://foreignpolicy.com/2016/03/18/putins-master-plan-for-syria-assad-isis-russia-peace-deal/?utm_content=bufferf2d94&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

A hollow superpower
http://www.economist.com/news/leaders/21695003-dont-be-fooled-syria-vladimir-putins-foreign-policy-born-weakness-and-made

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2016.3.19 22:51サンケイ
イスラム国とクルド、2つの「火薬庫」抱えるトルコ イスタンブ
ール自爆テロで犯行可能性 政府強硬、テロの呼び水の恐れ
 【カイロ=大内清】トルコの首都アンカラで13日に起きたテロ
に続き、最大都市イスタンブール中心部でも19日、自爆テロが発
生した。トルコ政府は昨年以降、犯行への関与が疑われる非合法組
織「クルド労働者党」(PKK)系やイスラム教スンニ派過激組織
「イスラム国」(IS)と敵対。シリア問題にも大きな影響力を持
つトルコは、2つの「火薬庫」を抱える状態にある。
 トルコでは今年に入り、一般市民や観光客を巻き込んでの自爆テ
ロが頻発している。特にアンカラを狙った2件の自爆テロで犯行声
明を出したPKK系組織は武装闘争の継続を宣言しており、今後も
同様のテロが起きる可能性は高い。
 クルド問題をめぐっては、内戦下のシリア北部のクルド人勢力が
今月、一方的に「連邦制」を宣言して独立性を強めており、これも
トルコにとっての懸念材料となっている。
 クルド人の独立機運が高まることを警戒するトルコは、テロ戦術
への傾斜を強めているISの動向に目を配りつつ、国内のクルド勢
力への強硬姿勢を一層鮮明にさせるとみられ、それがさらなるテロ
の呼び水となる懸念もある。
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シリア北部で「連邦制」 クルドが宣言、政権は拒絶
2016年3月17日 22時15分
 【カイロ共同】内戦が続くシリア北部で支配地域を広げた少数民
族クルド人勢力は17日、連邦制の施行を一方的に宣言した。ロイ
ター通信が報じた。自治権の獲得を主張しているもようだ。シリア
外務省は国営通信を通じて声明を発表し「シリアの領土的統一と国
民の統合を危うくする」と非難、憲法に違反しており宣言に実効性
はないと強調した。
 アサド政権と反体制派との一時停戦が発効し、和平協議が再開し
た時期の宣言には、内戦後のシリアで優位を確保するクルド人勢力
の狙いがうかがえる。国境を接するトルコ政府はクルド人の分離独
立問題に神経をとがらせており、強硬な反応を示しそうだ。
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シリアから電撃撤退したプーチンの意図はどこに?
2016年03月17日(木)15時30分newsweekJ
 今月14日、ロシアのプーチン大統領はシリア駐留部隊の「主要な
部分」について、翌日から撤退を開始すると宣言しました。しかも
、政府の会議にテレビカメラを入れさせ、「軍は目的を果たしたの
で、シリア・アラブ共和国からの撤退を明日から開始せよ」と述べ
るシーンの映像を世界中に配信させたのです。
 ロシアは、シリアのアサド政権を支持する姿勢を明確にしたまま
、昨年9月にシリア領内での軍事作戦を開始しました。ミサイルと
航空機による空爆は効果絶大で、内戦が続く中で苦戦していたシリ
ア政府軍は息を吹き返しています。この「空爆開始」も電撃的でし
たが、その時は「アサド体制支援」という意図は明白であり、その
点でのサプライズはありませんでした。
 ですが、今回は国際社会にはサプライズが走っています。サプラ
イズというのは、意外感があるというだけでなく、プーチンの「意
図」が読めないからです。ちょうどジュネーブで行われている「3
年越しのシリア和平協議」が、この14日に再開されているので、「
その日」を狙っての撤退は何らかの「策」であることは間違いない
のですが、一体、何を考えてこの時期に撤退を宣言し、また実行し
たのでしょうか?
 様々な憶測が可能です。依然として原油価格が1バレル30ドル台
という安値圏が続く中で、エネルギー輸出が最大の産業であるロシ
アの経済は苦境が続いています。通貨にしても、1ドルが80ルーブ
ルという悪夢のような水準からはやや持ち直したものの、依然とし
て70ルーブルと安く、とにかく「カネがない」というのも一つの要
因でしょう。
 多くの解説は、和平会議を進展させるためというものです。とに
かく停戦を実施し、恒久化するために、プーチンとして最も有効な
手を使ったという説明ですが、では、どうして激しい戦闘に加わっ
てきたロシアが急に和平へと傾斜したのでしょうか?
 このままシリア領内で軍事行動を続けていると、トルコとの緊張
が高まる一方だという指摘もあります。確かにそうした懸念はあり
ます。ですが、これも決定的な理由ではないように思われます。
 西側、つまり欧米との関係を改善したい思惑、そのように「メッ
セージを解読」することも可能です。和平会議に協力し、トルコと
の緊張を回避するというのは、要するに欧米とはシリア問題に関す
る対立を止める、その延長で全体的な関係改善に進もうという意図
という解釈もできます。
 その動機としては、ウクライナ問題に関する経済制裁を解除させ
るためであるとか、北朝鮮情勢が大変に不穏なので、六者会合の枠
組みに即した「日米韓中ロ」のホットラインを復活させたいという
ことも考えられます。
 ですが、そうした「美しい」理屈のウラには、一つの意図が透け
て見えるのです。それは、このタイミングで、欧米に「自ら進んで
アサド政権を認めさせる」という目的です。
 現在の和平会議の流れは、事実上は「アサド体制の存続」が前提
となっています。ホンネの部分ではそうです。また、連邦国家構想
といったアイディアが出てきている中で、余計にそうしたニュアン
スは濃くなっています。ですが、欧米としては依然として「自国民
に対して化学兵器を使用」したアサド政権は「下野」させるという
「タテマエ」を崩してはいません。
 ここで、ロシアがシリア領内での軍事作戦を続けるようですと、
欧米としては、この「タテマエ」を降ろすことはできません。それ
は、ロシアの軍事力に屈する形で「非人道的な行為という犯罪」を
犯したアサドを免罪するようだと、国家の威信が損なわれるからで
す。
 ですが、ホンネの部分では、アサド政権の存続を前提としてシリ
ア情勢の沈静化を図りたいという気持ちは、ハッキリと各国の姿勢
の中に見えるようになってきました。特にアメリカのケリー国務長
官の動きはかなり、その方向に傾斜しています。
 そんな中で、ロシアが「軍事行動を停止」するということは、欧
米にとって「アサド体制存続を前提とした和平」というものを、公
式に受け入れることを容易にするのです。ロシアの兵力に屈服した
という印象を与えることなく、現実的な選択として判断したという
説明が可能になるからです。
 そう考えると、欧米とも、アサド=ロシア連合とも激しく対立し
ている「ヌスラ戦線」が、日本人ジャーナリストの安田純平氏の身
柄を拘束しているという「脅迫」をこの時点で発信してきたことも
、タイミングという点で辻褄が合って来ます。和平交渉が進展する
というのは、アサド政権と穏健派の和平という意味であり、ISI
Lやヌスラ戦線への圧力は反対に強まる可能性が高いからです。
 このまま欧米がアサド政権の存続を「公式に」認めるような事態
になれば、政治的にはプーチンが勝利した格好になります。その環
境を整えるための「サプライズ撤退」という説明が、一番筋が通る
ように思われます。
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難民のトルコ送還 EUが合意目指し協議へ
3月17日 6時24分NHK
EU=ヨーロッパ連合は17日から首脳会議を開き、ヨーロッパに
流入する難民や移民の数を抑えるため、トルコからギリシャに渡っ
てくる難民たちをトルコに送り返す対策案で合意を目指しますが、
トルコ側が示した条件に慎重な意見も根強く、協議は難航すること
も予想されます。
EUは17日からの2日間、ベルギーのブリュッセルで首脳会議を
開き、急増する難民や移民を抑えるため、トルコ側と協議を進めて
いる新たな対策案について話し合います。新たな対策案は、主要な
渡航ルートのトルコ経由でギリシャに渡ってくる難民や移民を出身
国に関係なくすべてトルコに送り返し、その代わりにトルコ国内に
とどまっているシリア難民をEU各国で受け入れるものです。
この案を巡っては国連や人権団体などが国際的な難民保護の規定に
合わないとして懸念を示しています。また、トルコがこの対策を実
施する条件として、トルコのEU加盟に向けた交渉の加速やEU域
内に渡航するトルコ国民にビザを免除することなどを求めているこ
とから加盟国の間では慎重な意見も根強く、協議は難航することも
予想されます。
新たな案で合意すれば人道主義の立場から難民や移民の受け入れに
寛容な政策を続けてきたヨーロッパにとっては、一つの転換点とな
るだけに協議の行方が注目されます。 
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シリアからのサプライズ撤退を発表したプーチン大統領の権謀術数
 ターゲットはメルケル独首相だ
2016年03月16日(水)15時10分 newsweekJ
冷泉彰彦
3月14日、ロシアの大統領プーチンが突如としてシリアから撤退を始
めるようロシア軍に命令した。昨年9月末、窮地に追い込まれたシリ
アの大統領アサドを助けるためロシアは空爆を開始した。ターゲッ
トは過激派組織ISではなく、アサド政権を追い込んだ反政府勢力。
息を吹き返したアサドは一時停戦の発効で体制の存続が保証された
かたちとなり、プーチンは所期の目的を達成した。
 戦略家プーチンはロシア抜きでは何も始まらないという現実を米
大統領のオバマら欧米の政治指導者に見せつけ、ロシア海軍の補給
地タルトゥス港やラタキア空軍基地といったシリア国内の軍事的要
衝を確保した。シリア空爆はロシア軍需産業のショーケースにもな
ったはずだ。それにしてもプーチンはなぜ、このタイミングで撤退
を発表したのだろう。オバマへのメッセージか。それとも、13日に
ドイツの3州で行われた州議会選挙で難民への門戸開放で有権者から
厳しい審判を受けた独首相メルケルへの心理作戦か。
プーチンの狙いはウクライナ
 プーチンの最終ゴールは言うまでもなくウクライナ危機をめぐる
経済制裁の解除である。そりの合わないオバマより、ロシア語でプ
ーチンとコミュニケーションが取れるメルケルがそのカギを握る。
メルケルを陥落できれば、オバマも制裁解除に傾く可能性が大きく
なる。プーチンはこれまでメルケルと会談する際、メルケルが嫌い
な犬をそばに控えさせるなど、常に心理ゲームを仕掛けてきた。停
戦直前の「駆け込み空爆」にはアサド政権の優勢をさらに確実にす
る目的以上に、ロシアは難民を大量に発生させるカードを持ってい
ることを示す思惑もあったに違いない。
 四面楚歌のメルケルにとって、プーチンの撤退発表は唯一と言っ
ても良いグッドニュースだ。もし一時停戦が反故にされたら、メル
ケルが取りすがる蜘蛛の糸がプツリと切れてしまう。プーチンはそ
んな心理効果を狙っているように筆者の目には映る。
 反ユダヤ主義政策を実行したナチスが第二次大戦を引き起こした
状況と異なり、70年以上前にはヒトラーと戦った米国や英国で皮肉
にも反移民・反難民という排外主義が台頭している。米大統領予備
選で反移民・反イスラムを公言する不動産王ドナルド・トランプが
共和党の首位を走り、英国の欧州連合(EU)国民投票では離脱派と
残留派が49対51で大接戦を繰り広げている。EU離脱派を後押しする
のは移民や難民への警戒心だ。自分で国民投票を呼びかけた英首相
キャメロンは今、火消しに躍起になっている。そして、ドイツでも
シリア危機で昨年110万人の難民が押し寄せたことで排外主義が一気
に高まった。
ヨーロピアン・ソリューションを
 ドイツの3つの州議会選の結果が何を物語るのかを、正確に理解す
るために独公共放送ARDのデータをもとに得票率の増減グラフ(上)
を作ってみた。一番大きな特徴は、反移民を掲げる新興政党「ドイ
ツのための選択肢」(グラフ右側の濃青色のグラフ)が歴史的な躍
進を遂げたことである。もともと「ドイツのための選択肢」は欧州
債務危機の際、単一通貨ユーロの構造的な欠陥を指摘し、ユーロ解
体を主張していたが、今では欧州統合の「移動の自由」がもたらし
た移民や難民の拡大に異を唱え、支持者を急激に増やしている。先
の大戦以来、ドイツで右派政党が躍進するのは初めてのことだ。
 メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)も得票率を下げたが、
下院から消滅した自由民主党を除き、すべての既存政党が負けてい
ると表現した方が正確だ。つまり今回の州議会選は「既存政党VS反
難民の新興政党」という構図だった。そんな中でCDUより危機的な状
況に陥ったのが戦後、二大政党としてドイツ政治の片翼を担ってき
た社会民主党(SPD)なのだ。3つのうち2つの州で「ドイツのため
の選択肢」の得票率を下回っている。もはやSPDを二大政党と呼ぶの
は適当ではなくなった。
「ドイツのための選択肢」のフラウケ・ペトリー共同党首は「ドイ
ツは根本的な問題を抱えている。それが選挙結果に現れた」と凱歌
をあげ、難民ルートのバルカン半島封鎖を主導するオーストリアの
首相ファイマンは「難民がドイツを目指して押し寄せるのを止める
ため、メルケルは受け入れ制限を設けるべきだ」と訴える。
 CDUの姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)党首ゼーホーファー
は「選挙結果を無視して、これまで通りのことを続けるのが答えで
はない。ドイツ政治は地殻変動を起こした」とメルケルに政策転換
を促している。ポイントは2つ。難民の受け入れ制限と国境管理・
警備の強化だ。しかし、門戸開放にこだわるメルケルは「私たちが
必要としているのはヨーロピアン・ソルーション(欧州全体の解決
策)だ。それには時間がかかる」と頑なだ。
 米大統領フランクリン・ルーズベルトは1941年の一般教書で「表
現の自由」「信仰の自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」
という人類の普遍的な4つの自由を高らかに掲げた。いま、「死から
の自由」「移動の自由」を掲げて譲らないメルケルに甘い誘いを投
げかけてくるのは謀略家のプーチンだけだ。
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ロシアがシリア撤退開始
爆撃機など第1陣帰還
2016/3/16 00:06
 【モスクワ共同】シリア北西部ヘメイミーム空軍基地に展開する
ロシア軍航空部隊が15日、本国への撤収を始めた。ロシア国防省が
発表した。国防省によると、輸送機ツポレフ154、爆撃機スホイ34な
どが第1陣として、本国の所属基地へ帰還した。ジュネーブで始まっ
たシリア和平交渉の進展を後押しする可能性がある。
 インタファクス通信によると、ヘメイミーム基地では撤退に伴う
式典があり、パンコフ国防次官が「テロリズムに勝利したと言うの
はまだ早い」と述べ、過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆は
規模を縮小して続ける方針を明らかにした。
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ロシア大統領、シリア展開軍の撤退を命令
3月15日から順次撤退を開始
ロイター  2016年03月15日
[モスクワ?14日?ロイター] - ロシアのプーチン大統領は14日、シ
リアに展開するロシア軍に対し撤退を開始するよう命令した。15日
から順次撤退を開始する。
プーチン大統領は大統領府で開いた国防相と外務相との会合で、「
ロシア軍に課された任務は全般的に完遂されたと考えている」とし
、「シリアからロシア軍の主要部隊の撤退を15日に開始するよう国
防相に命令する」と述べた。
ロシアは5カ月前、親ロシア路線のシリアのアサド政権を支援するた
めに空爆を開始。撤退を示すことで、ロシアの空爆によりシリア内
戦が泥沼化していると非難している米国との間の緊張緩和を図りた
い考えと見られる。
ただロシアはラタキア地方に基地を保有しており、同基地から空爆
は実施できるため、今回の決定により実際に空爆がやむかは不明と
なっている。
ロシアのペスコフ大統領報道官によると、プーチン大統領はアサド
大統領に電話し、撤退の意向を伝えた。ただ、アサド大統領の去就
については話し合わなかったとしている。
ロシアがシリアから軍隊を撤退するとの報道を受け、外国為替市場
でルーブルが上昇。1900GMT(日本時間15日午前4時)現在、ルーブ
ルは対ドルで0.07%高の1ドル=69.83ルーブル、対
ユーロで0.6%高の1ユーロ=77.50ルーブルとなって
いる。対ドルでの上げ幅は一時1%を超えた。



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