5642.中国4.0の行方



奥山さんが訳されたルトワックの「中国4.0」を読んで、中国の
今後の動きを私が習近平国家主席ならどうするかを考えた。このた
め、ルトワック氏が推奨する中国の行動とは違うことになる。 
            津田より

0.中国の行動
日本の戦略を立てるときには、中国のリーダーになったつもりで、
中国にとってベストな戦略を考え、その戦略で日本はどのような影
響を受けるかを見て、それに対する戦略を作ることが求められてい
る。まず、現在までの中国の行動を見る。

「中国4.0」の内容は、文春新書を読んでもらうとして、中国は
2008年までは国際的な規則に従っていたのですが、2009年
から、特に習近平が国家主席になった2012年からは、中国の復
活を目指して、攻撃的になり国際条約を破り始めた。しかし、20
15年から、周辺諸国からの反発が強くなり、選択的に少し攻撃的
な外交を控えている。

今後の中国での行動がどうなるか。もし、私が現時点で習近平にな
ったら、中国の復活を述べて攻撃的な外交をした事実があり、それ
により中国国民は愛国心を燃やしたので、その攻撃的な外交を突然
、止めることはできない。

このため、中国は「一帯一路」という軍事的な面より経済的な側面
を強調した外交にシフトした。このソフトな進出に対して、欧州が
乗ってきた。しかし、軍事的な側面を出さないと、今後は国民が納
得しない。

私なら、中国の経済援助+軍事基地借用で、まず世界的な海軍ネッ
トワークを作る。現時点でパキスタン、スリランカ、ジプチなどに
海軍軍事基地を作れる状態であり、この拠点を増やすことである。

中国の海軍の問題は、寄港できる友好国の港が少なく、中国人労働
者や中国企業を守れていない。常時、進出国の周辺で企業や労働者
を守るという名目で、海軍基地を作り、そこに常備兵を多数置いて
おくことが必要である。中国拡大戦略である。

1.テリトリーの確保
中国はGDPが大きくなり、自国資源だけでは産業が回らないし、
まだ、付加価値産業での雇用は少なく、まだ重化学工業を維持する
ことが必要である。このためには、その売り先確保と資源確保の両
面で、中国の拡大は避けて通れない。

しかし、拡大するにしても日米欧との摩擦を起こすと経済制裁など
になるので、この諸国とは摩擦を起こさない地域へ進出することに
なる。そうすると、中東、アフリカであり、資源も豊富であり、中
国の経済的な需要とマッチしている。今までは、企業や労働者だけ
で行動していたが、保護の名目で軍も一緒に付けて行く。

そして、徐々に米国の領域と中国の領域を分けていく。太平洋での
行動は、日米との摩擦を生むので避けてインド洋を中心に行動する。
そして、先に中東とアフリカを押さえる。また、鉄道網の整備で中
央アジアも押さえる。ロシアとの摩擦は考慮しない。ロシアへの経
済援助等で黙らせる。

そして、東南アジアのタイ、カンボジア、シンガポール、マレーシ
アなどを味方にする。インド洋に出る航路を確保することである。

2.基軸通貨を人民元に
その地域を人民元を基軸にする地域にして、徐々にドル通貨基軸体
制を崩壊させる。特に石油資源国の人民元化を進める。とすると、
サウジアラビアを中国人民元圏に取り込むことが重要である。

サウジは、今米国のドルと自国通貨をリンクしているが、人民元に
して、石油主要国のリンクをドルから人民元にすることで、ドル基
軸通貨制度は世界的に崩壊することになる。

このためには、サウジの安全保障を中国が担保することで、サウジ
はイランに対して優位な位置になる。米国は中立を維持するので、
サウジの安全保障上では、頼りにならない。

また、パキスタンと中国は現時点でも最重要な同盟国であり、同じ
スンニ派国であるパキスタンとサウジも重要な同盟国であり、核兵
器を必要な時にはパキスタンはサウジに提供することになっている。

このため、中国がサウジと同盟国化するのは、見た目より簡単であ
る。

中国はスンニ派諸国の守り神になる。対して、シーア派の守り神は
ロシアとなる。ロシアの南下政策と中国の一帯一路がぶつかる事に
なる。ここでもロシアに経済援助をして、ロシアを黙らせることで
ある。中東では欧米諸国は中立を守り、イラク戦争からの一連の失
敗で出てこない。この地域はロシアと中国が仕切るしかない。
ロシアがシーア派につき、中国がスンニ派について、利害調整をす
ることである。

3.世界覇権の確保
中国人民元が世界的な基軸通貨になると、欧州などは中国との同盟
関係を望み、中国の独裁体制をあまり問題視しない可能性がある。

中国の独裁体制を問題視するのは、日米とフィリピン、ベトナム、
インド、オーストラリアなど紛争を抱えた国だけになる。それ以外
の国は中国になびく事になる。

このように民主化を問題にする国が世界的にも少数になったら、そ
の時点から世界制覇が始まる。国際的な機関のトップの多くを中国
が占めて、中国の欲しい条約を作ることである。これで世界の中心
になることができたことになる。

4.米国はどうなるのか?
米国の引きこもりは、始まる可能性が高い。クリントンが大統領に
なっても、米国の保護主義は強まる。米国の安全保障に関わる太平
洋や大西洋に中国が出てくると警戒するが、インド洋では、米国の
安全保障には、あまり影響がない。中東の石油確保にも興味がない
ので、中国の行動を規制しようとはしないはず。

ということで、中東やアフリカで中国が行動しても、米国は無関心
な状態が続くことになる。

5.日本はどうするのか?
中国の国力は、米国の半分、将来的には同等になる可能性が有り、
日本だけでは対抗できない。日本はロシアを含めて中国封じ込めを
しないと無理である。

米国も中国が太平洋に出てくると、それは安全保障上問題であり、
日米同盟は機能することになる。中国拡大戦略は止めることはでき
ないが、中国が進出する国に対しては、中国の独善的な行動を忠告
はできる。

しかし、中国進出国のインフラは整備されるので、日本企業も行動
しやすくなるので、平和的な進出をすることである。

日本は、中国が太平洋に出てこないなら、中国との互恵関係は続け
ていくことであるが、尖閣諸島への攻撃には反撃しないといけない
ので、中国が、そのような行動をとらないように日本自体の防衛能
力を上げておくことが必要である。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
5637.中国バブル崩壊は防止できるのか?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/280306.htm



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