5630.世界の不安定化で日本の対応は?



世界的な景気減速、不安定化に対応して、日本はどうすれば良いの
か。それを検討する。 津田より

0.経済状況
このコラムを見ている読者は、株価下落の原因が、中国のバブル崩
壊の危険性、石油価格の暴落で石油諸国の経済減速、日本の金融緩
和策の限界などを織り込むためと知っていただいているとは思うが
、これと同じで円高も購買平価に従った動きである。

購買平価は1ドル=100円〜105円であり、日銀の量的緩和政
策の限界と石油価格の下落によるデフレがあり、円が近未来にイン
フレしないので、購買平価は変わらず、そのため、円が実勢価格に
戻す動きになっている。

金融緩和をしようとしたとき、1ドル=110円程度までに留める
ことを提案したのは、購買平価と余り違わない方が、下落の余地が
少ないと思ったことによる。

しかし、この円安で、株価は2万円を着けて、資産家は儲かり消費
を増やして、一時的にデフレ状況から離脱したように見えた。しか
し、多くの労働者階層の賃金は、実勢でマイナスになり、消費を落
としている。このように日本でも貧富の差が拡大したのである。

しかし、現在、株価が1万5千円となり、損が出ている可能性が高
く、資産家たちも消費に回せなくなっている。また、円高と中国自
体の経済がおかしくなり、主に中国の中間層が、日本への旅行はす
るがインバウンド消費を減らし始めている。このようにGDPに占
める消費が、徐々に減っている状態になってきたのだ。

また、企業はインバウンド消費の増加があり、投資をしようとして
いたが、旧正月で中国人旅行者がインバウンド消費を抑えたことで
、投資できるかどうかになっている。このように、日本経済も減速
してきている。その減速が再度、株価を押し下げることになる。

1.トルクルダウンの富者優遇から中流階級の育成へ
今までの安倍政権の方向は、金融政策で円安にして企業の輸出採算
性を向上させて、企業収益を増やして、日本経済を成長させようと
していた。また、一部金持ちたちを儲けさせて、トルクルダウンで
消費を増やしてもらい、日本経済を拡大しようとした。

一部金持ちの優遇政策として、累進課税制度を止めて、最大50%
に削減したが、その政策は間違いであったことが、この20年が証
明した。その政策を提唱した竹中さん自体がトルクルダウンを否定
している。ということは、この政策の根拠が失われたことになる。

というように、その目論見は失敗した。景気が良い間に、構造改革
や累進課税を復活して、中間層の育成をして、貧富の格差がない社
会にして、全体的な消費を増やして、日本経済を成長させるべきで
あったのだ。

20年をかけた巨大な実験は不成功ということである。元の社会に
戻すことが重要になった。そして、その方法としてはマイナンバー
制度を導入し確実な所得の把握ができたことで、給付付き税制控除
制度が確実にできることになる。

母子家庭の把握も、これで出来ることになる。同一世帯の所得が把
握できて、発見しやすくなる。民生委員などが家庭に訪問して確認
することができるようになる。

子どもの教育が重要であり、貧乏であることで教育の機会を奪われ
ることがないようにする必要がある。日本経済は円高に向かい、企
業競争力を高める必要があり、このため、知識と才能がある人を必
要としている。この参加率を上げて、個々の才能を磨くことが重要
なのである。

2.日本企業は
これから人口減少社会になり、日本企業は世界に出て勝負する必要
が有り、日本的な礼儀作法や他者に対する考え方が必要になってい
る。その上でエネルギー分野、医療分野、素材分野などで技術革新
を行い、技術と精神・文化の両方で、世界を安定させることが必要
である。

日本企業には、この数年間で利益を積み増して、膨大な内部留保し
た資金があり、それを世界のために研究やビジネス拡大に使えるこ
とになる。一方、世界はバブル崩壊になり、多くの世界の優良企業
が立ちいかなくなり、助けを求める事態になる。その企業を買収し
て、日本企業は拡大するしかない。

日本企業の拡大は社員の拡大を意味するので、その意味でも優秀な
日本人の需要は多くなる。

しかし、日本人だけでは社員数が足りない。このため、優秀な社員
を広く世界から募集することになる。特に日本へ留学してきた海外
の学生は日本企業も欲しいはずである。日本留学できるように援助
をするのはもちろん、卒業後は永住権などの特典があれば、より多
くの留学生が来る事になる。優秀な知識階層を増やすことである。

米国では、まともに就業しても学生ローンを返せないような状態で
あり、日本への留学は米国の優秀な学生にも魅力的になると思う。

ということは、世界的にも、欧米より日本の方が良いと思えるよう
な優遇策を取れば、世界企業化した日本企業に優秀な学生が来ると
思う。

3.移民政策
しかし、日本国内でも、介護や肉体労働、コンビニなどの分野では
、今でも労働不足状態になっている。この分野は日本人だけでは補
充できない。この分野は、単純労働分野であり、今は海外研修制度
で、補充しようとしているが、今後は技術教育者層も足りなくなる。

このため、何かの移民制度が必要になる。日本語能力と技能レベル
がある一定以上になった労働者は、日本への永住権や日本国籍を取
れる道を開くことが必要になると見る。

しかし、イスラム教スンニ派国からの移民は、テロ組織との関係が
不満な子孫で出来る可能性があり、将来的なことも考えると難しい
ことであると思う。ヨーロッパの教訓を十分考えないといけない。

当面は、親日仏教国である東南アジアの国とFTAなどを結び、徐
々に導入することが必要であろうと思う。

日本語教育などの手厚い移民政策が必要であることは、今までの日
系ブラジル人家族を見ているとわかる。日系人の子供たちに対して
日本語教育が不足して、何語もまともに話させない子供が出来てい
る。

日本国籍をとっても、日本に同化できない。自国に戻っても同化で
きないので、無国籍的なことになる。悲劇的なことである。十分反
省して移民政策をとるしかない。

4.人口減少では経済成長はできない
2050年には、このままでは1億人を下回ることになるが、それ
は全体的な消費量が減るので、GDPも30%以上も減少してしま
う。地方の多くは住人が少なくなり、立ちいかないことになる。

この対策として、現在、女性の待遇を見直しして、就業も続けても
らい、子育ても社会で行う仕組みを完備する方向である。しかし、
これだけで、出生率が2.1以上になるとは思えない。

女性が子供を生むと、心配さずに子育てができる社会にすることで
ある。子ども手当であり、ある一定以下の年収家族での教育無償化
が必要になる。未婚の母も認めることである。その母親が働いてい
ても子育てができる環境を作ることである。

このような日本の未来を見た政策の集合体が必要なのである。今ま
での延長上の政策では、日本は沈没してしまう。

もし、日本の政策がよければ、日本は次の世界を担う存在になると
思うが、今、その分岐点に来ているようである。

さあ、どうなりますか?

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2016年 02月 20日 16:18 JST 
安倍首相、リーマンのようなショック起きていない
[東京 20日 ロイター] - 安倍晋三首相は20日、ニッポン放
送のラジオ番組に生出演し、年初から世界的な株安が進み、東京市
場では円高が進行していることに関連し、リーマンショックのよう
なことが起こっているとは考えていないとの見解を示した。
そのうえで2017年4月の消費税10%増税を現時点で延期する
意向はないとの見方を繰り返した。
また、円高・株安の動きについて「日銀のマイナス金利政策が理由
ではない」と指摘。日銀がマイナス金利政策による追加緩和に踏み
切らなければ、市場がさらに悪化していたとの見解を示した。
そのうえで「(日銀の当座預金残高のうち)10兆円しかマイナス
金利にはならない」とし、一般の預金者への影響が少ないとの見方
を示した。
一方、自民党内の見解が分かれている衆院選挙制度改革について「
今国会で成立させたい」と述べた。同時に「衆参ダブル選挙は考え
ていない」とも話した。
 (竹本能文 編集:田巻一彦)
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2016.2.20 10:00sankei
【お金は知っている】
ソロス氏におびえ、内に向かって吠える北京
  北京による著名為替投機家、ジョージ・ソロス氏への非難が止ま
らない。
 発端はこうだ。1月21日、スイスでの世界経済フォーラム年次
総会(ダボス会議)に出席したソロス氏がテレビでのインタビュー
で「中国のハードランディングは不可避だ。実際に目にしているこ
とだ」と言い、人民元や香港ドルの暴落を見越した空売りをほのめ
かせた。(夕刊フジ)
 これに対し、23日に国営の新華社が非難の烽火(のろし)を上
げると、党支配下にあるメディアが競い合うように批判の大合唱で
ある。人民日報の海外版は「中国を空売りする者は必ず敗れる」と
論評し、「ソロスは視力障害」(新華社)「でたらめ」(人民日報
海外版)と罵倒。
 国家発展改革委員会トップが「中国経済ハードランディング論」
をこきおろし、中国人民銀行の周小川総裁は「投機筋には(為替)
市場のムードを主導させない」「中国は世界最大の外貨準備を保有
している」「国境を越えた資本移動は正常の範囲内にあり、人民元
の下落が長く続く基礎はない」と語った。
 ここで、読者は不思議に思わないだろうか。ソロス氏のような海
千山千の投機家で、しかも海外にいる外国人にとってみれば、まる
で、何かに脅えた負け犬の遠吠えのようで、何の痛痒(つうよう)
も感じないはずだ。策略にたけた党官僚なら、そのばからしさ加減
はわかりそうなものだと。
 ソロス自身、弱点がある。人民元投機の足がかりを中国国内に持
っているわけではない。海外で元投機を狙うと報じられているヘッ
ジファンドも肝心の元という弾薬を仕込んでいるわけではない。為
替投機というのは、投機対象の通貨建ての資産、例えば株や国債な
どの債券、あるいは銀行融資など資金提供のルートがなければ、事
実上不可能だ。
 国際金融市場の香港には元資金入手のルートはあるだろうが、香
港当局は北京の命令で対抗策をとるだろう。現に、ソロス氏は
1998年に香港ドル暴落をしかけたが、香港当局はソロス氏が空
売りをもくろんだ株式を大幅につり上げて大打撃を与え、ソロス氏
を惨敗、撤退させた。
 そう、北京がだれに向かって吠えているか、答えははっきりして
いる。相手は習近平党総書記・国家主席にとっての獅子身中の虫で
ある。
 事実、ソロス氏のもとに駆け寄ろうとする資金提供者は中国国有
企業幹部や富裕層など、多くが中国人投資家である。これらの多く
は、習政権の監視が及ばない江沢民元総書記グループの企業や既得
権者たちだ。ファンドは資金規模が大きくなればなるほど、投機の
威力を増す。外貨準備が巨額というが、加速する資本流出とともに
雲散霧消する恐れがある。北京はとにかく、内に向かって吠え続け
るしかないのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
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ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
2016年02月20日 08:48
 市場の信頼を脅かすサンダース氏とトランプ氏  
 市場は通常ならば、米大統領選に大きな関心を払わない。民主・
共和いずれの党の大統領も、選挙活動中はさまざまな政治ショーを
繰り広げる。だが、いったん就任してしまえば、自由貿易であれ、
連邦準備制度理事会(FRB)の独立性であれ、正統的な経済政策を遂
行するからだ。
 今年の大統領選は、こうした前提を放棄するいい機会になりそう
だ。2008年の世界的な金融危機がエコノミストをつまずかせたよう
に、今回の大統領選はこの政治的予言を無効にする。
 投資家たちは今になってようやく、自称民主社会主義者で「政治
革命」を呼びかけるバーニー・サンダース民主党候補や、テレビ番
組司会者のドナルド・トランプ共和党候補が実際に大統領になる可
能性に備えようとしている。いずれの候補も、未曾有の不安をもた
らし、政策を激変させる恐れがある。サンダース氏は大手銀行の解
体や、政府管掌の国民皆保険の導入のほか、連邦最低賃金を時給15
ドルに引き上げることを提唱している。一方のトランプ氏は中国や
メキシコからの輸入品に大幅な関税を課し、移民の流入阻止のため
メキシコとの国境に壁を築くことを主張している。だが危険なのは
、2人の極端な政策だけではない。
 もっと大きなリスクは、サンダース、トランプの両氏とも正統の
経済思想を認めていないことだ。2人は、主流派経済学者が彼らの提
案を酷評していることを特に気にしていない。インフレ調整後の国
民所得は1999年以降徐々に低下していて、米国は間違った方向に向
かっていると思う人が圧倒的多数になっていることから、国民は非
正統的な経済思想でも失うものはないと思っているのかもしれない。
サンダース氏とトランプ氏は国民皆保険や不法移民などすでに改善
しつつある政策を論点としている。左から:米国は正しい方向に向
かっているか(緑:向かっている、赤:向かっていない)、米国人
の健康保険未加入率、メキシコからの不法移民の数(推定) 
 それは、それほど悪いことなのか。多くの経済学者は、フランク
リン・D・ルーズベルトやロナルド・レーガンの経済思想は危険だと
考えた。しかし両氏とも就任すると、鋭敏な顧問に囲まれ、最終的
には大問題に適切に対処した。ジョン・メイナード・ケインズはル
ーズベルト大統領が金本位制を放棄したことを「大正解」と評価し
、ミルトン・フリードマンはレーガン大統領がインフレ沈静化のた
めの金融引き締めを支持したことに賛同した。
 だが今のところ、トランプ氏の経済政策は整合性がとれていない
。同氏の陣営は、経済顧問として億万長者のヘッジファンド運用者
カール・アイカーン氏を挙げる。一方、サンダース氏の政策を支持
するエコノミストはいる。しかし、彼の考えには経済的な論拠はあ
まりなく、それよりもむしろ、世界は大企業と富裕層に有利にでき
ているという凝り固まった思想に突き動かされている。
 オバマ大統領の医療保険制度改革により、無保険者の比率は少な
くとも過去30年の最低水準に低下した。だがサンダース氏はそれを
葬り去り、代わりにコストの高い国民皆保険の導入を求めている。
彼はまた、金融危機後に銀行規制が厳格化したにもかかわらず、大
手銀行はどうしようもないほど腐敗しているとしてその解体を訴え
ている。
 2008年に共和党の大統領候補だったジョン・マケイン氏は当時、
10年間で1兆ドル以上歳入を削減する大規模な減税を提唱して批判さ
れた。超党派の非営利組織「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」に
よれば、トランプ氏とサンダース氏の施策が支出増や歳入減に与え
る影響はその10倍以上に及ぶ。
 市場は、どちらかが大統領になったとしても、法外なコストがか
かるいずれの政策も議会で承認されることはないだろうと安心して
いるのかもしれない。サンダース氏の場合は特にそうだ。大統領選
とともに行われる議会選で、少なくとも上下両院のいずれかは共和
党支配のままになるととみられるからだ。コーナーストーン・マク
ロのアナリストであるアンディー・ラペリエール氏は、サンダース
氏が大統領になれば銀行は「たたきのめされ」、トランプ氏が大統
領になれば中国と貿易戦争が勃発するのではないかと懸念する。
 さらに言えば、2人とも何もないところから人気を得たわけではな
い。議員や国民の多くは、グローバリゼーションや金融への不信感
を共有している。だからこそ、環太平洋経済連携協定(TPP)は批准
が危ぶまれている。FRBについても、多くの議員は銀行の召使いか、
放漫財政の隠れ蓑とみなしている。オバマ大統領は、共和党が下院
に提出しているFRBへの監視強化法案に対して、議会を通過した場合
は拒否権を発動すると表明している。サンダース氏が大統領になれ
ば、同法案に署名するだろう。
 市場は、中国経済から原油相場までたくさんの懸念要因に直面し
ている。そのリストに、次期大統領がFRBを規制し、貿易紛争を激化
させ、ウォール街への攻撃を強化する可能性も付け加えられそうだ。
By GREG IP
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2016年 02月 19日 08:59 JST 
上海G20、原油安や米金融政策が主たる議題に=麻生財務相
[東京 19日 ロイター] - 麻生太郎財務相は19日の閣議後会
見で、今月下旬に上海で開かれる20カ国・地域(G20)財務相
・中央銀行総裁会議の場では、原油安や、米金融政策をめぐる市場
との対話が主たる議題になり得るとの見方を示した。
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マイナス金利は経済の大転換期を象徴 --- 中村 仁
2016年02月19日06:00agora
新しい経済思想が必要に
マイナス金利という未経験の時代に入り、資金の流れがどう変わる
か、為替や株価の先行きはどうなるかなどのニュースが連日、報道
されています。これまでの延長線上に経済社会がある、との前提で
多くの予測がなされています。そんなことより、これまでの延長線
はすでに断絶していることに気づくべきです。
 経済社会は大きな転換期に入っており、これまでの延長線が切れて
しまい、不連続か、もうつながることのない非連続の時代に入って
いるように思います。マイナス金利はそのことの象徴でしょうね。
目先のあれこれより、重大な変化が起きていることを察知する時で
しょう。
マイナス金利をめぐる議論で、印象的な指摘がなされています。「
マイナス金利を前提にしていないこれまでの予測モデルでは、日本
経済への影響を算定できない」。「これまでの伝統的な枠組みを超
えた考え方で、現在、進行している動きを見つめ直す必要がある」
などです。
おカネをめぐる深刻な異変
おカネ(たとえば円)は価値の尺度であり、決済手段であり、価値
の貯蔵手段であり、金融システムがそれを仲介してきました。おカ
ネの意義がマイナス金利、ゼロ金利ですっかり変わってしまいまし
た。おカネの価値はマイナス金利のもとで減ってしまうので、価値
を計る手段ではなくなりつつあります。黙っていても価値が減って
しまうので、こんなことが続くなら貯蔵手段でもなくなってしまい
ます。おカネをめぐる深刻な異変です。
 今朝の新聞の経済記事で、「市場機能の低下」、「短期市場の死」
という表現を見かけました。市場経済の時代なのに、大げさにいえ
ば、日銀を含めた中央銀行が「市場」を死に追いやっているのです
。マイナス金利で取引した場合、事後にわざわざ手でデータを入力
しているケースもあるといいます。
 通貨危機のような緊急事態での短期決戦ならともかく、黒田総裁は
「デフレ脱却のためにはできることはなんでもやる」といっていま
す。少なくとも日本では、マイナス金利の異常事態は長引くでしょ
う。黒田総裁だけを責めてもしょうがないのかもしれません。非連
続の時代に入り、黒田総裁もまた、その上で踊らされているのです。
ゼロかマイナスの行進
日本の潜在成長率はゼロまで落ちています。実際に昨年第4四半期の
成長率はマイナスです。消費者物価上昇率も1%に届くかどうか。「
中心的な経済指標のゼロかマイナスの行進」は金融政策が間違って
いて、こうなったのではないのです。成長重視が難しくなった時代
に入ったのに、金融政策で打開しようとして無理なことを続けてい
ることが間違いなのです。
 人口減少という足かせ、温暖化ガスの削減という成長制約、必需的
な消費財の充足など、経済成長に立ちふさがる壁は多いのです。技
術進歩の結果、多くの国は需要をしのぐ生産力を作り出すことでき
るようになり、慢性的な供給過剰が経済停滞の原因となっています。
主要国は成長戦略によって、これらの障害を乗り越えることができ
るような幻想を与えてはなりません。
 特に日本は、成長経済の限界と暮らしの調和を図るモデルにならな
ければなりません。これでは票につながりませんから、従来からの
延長線上で「GDP600兆円目標」、「名目3%成長」だのを掲げて
政権を維持しようとするのです。GDPや物価上昇率で経済、景気
の良し悪しをいつまで計り続けるつもりでしょうか。
成長の限界と折り合いをつける
すでにいくつかの分野で、もう後戻りできないところまで、日本は
きています。安倍政権は財政再建を経済目標に掲げています。赤字
の増大のペースを落とすことができても、1000兆円もの長期国債の
償還は絶望的です。日銀の購入した長期国債はどんどん積み上がっ
ており、どうやって出口(償還開始)にたどりつくつもりなのでし
ょうか。ここまできてしまったら、財政、金融を正常化するのは至
難です。
 無理なのに、いかにも出来そうな計画を掲げて見せる時代になりま
した。無理なら無理で、それとどう折り合いをつけていくかの経済
戦略を立てることが必要です。一部の新興国はかなりの経済成長が
できても、日欧は成長率を引き上げていくことは難しいでしょう。
成長の限界とどのように折り合っていくかです。
だいたい成長率の測定そのものが難しくなっています。技術進歩、
デジタル経済化に、物価統計もGDP統計も追いついていないとい
われます。価格が下がっても効用(満足度)は上がっている分野も
多いことでしょう。効用と価格に断絶が起きているのです。それな
のに時代遅れになった物差しを使うものだから、景気が悪いと錯覚
し、無駄な景気対策をやっているかもしれない面もあるのです。あ
る経済コラムによると、米国の著名な経済学者が「実質成長率は過
小評価されている」と指摘しています。
 成長率を的確に測定する考え方、成長率より雇用の安定の重視、格
差の縮小と社会的分配のあり方、環境保護の価値を尊重する社会シ
ステム、実体経済との乖離が広がるマネー経済の抑制など、新しい
経済思想を育てていくことが大切です。成長を続けないと、国家が
倒れてしまうかのように考える経済思想は、経済の悪化を招くだけ
でしょう。
 中村 仁
読売新聞で長く経済記者として、財務省、経産省、日銀などを担当
、ワシントン特派員も経験。その後、中央公論新社、読売新聞大阪
本社の社長を歴任した。2013年の退職を契機にブログ活動を開始、
経済、政治、社会問題に対する考え方を、メディア論を交えて発言
する。
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円高で「爆買い」景気は後退? インバウンド関連株が減速
一方で訪日外国人客数の増加は続いており、外需関連株と比較する
と依然として優位
2016年2月17日(水)17時16分
 インバウンド関連株が減速している。対人民元で円高が進行して
いるほか、中国人観光客の1人当たり旅行支出の伸び率が頭打ちと
なり、「爆買い」期待が後退しているためだ。ただ、全体の訪日外
国人客数の増加傾向は続いており、世界景気減速の逆風を受ける外
需関連株との比較では、依然として優位性を保っている。利益確定
売りが一巡すれば、再び物色の矛先が向かうとの見方もある。
円高の影響を懸念
 年初来のインバウンド関連株の下落率は、16日時点で三越伊勢
丹ホールディングス<3099.T>が17.4%、マツモトキヨシ<3088.T>
が18.2%、コーセー<4922.T>が20.4%、H2Oリテイル
<8242.T>が21.7%、松屋<8237.T>が30.4%。日経平均<.N225>
の15.6%を超える下げとなっている。
 売り材料の1つは、対人民元での円高だ。昨年8月の「中国ショ
ック」以降、元安/円高が進行。当時の20.1円台から、直近で
は17.4円台まで約13%円高が進行。14年10月以来の水準
を付けた。
 リスクオフの円高が年初から進行するなかで、中国人観光客によ
る消費に陰りが出ないか不安が広がっている。
 実際、中国からの観光客の1人当たり旅行支出は、伸び率がピー
クアウトしつつある。
 観光庁によると、前期比伸び率は昨年4─6月期の34.7%増
から、7─9月期が18.8%増、10─12月期は18.7%増
と徐々にスピードダウン。「高額商品から化粧品や生活必需品など
に消費の対象がシフトしている」(外資系証券)とみられており、
その動きが伸び率鈍化につながっている可能性を指摘する声が浮上
している。
モノ消費に減速の気配
 企業決算にも、インバウンド消費の減速感が表れ始めている。化
粧品大手の資生堂<4911.T>は、株価の年初来の下落率が9.3%に
とどまっているが、9日に発表した2016年12月期の連結営業
利益は、380億円と実質14.3%減(9カ月決算だった前期を
12カ月に調整)の見通し。市場ではインバウンド需要の減速が警
戒されている。
 象印マホービン<7965.T>は、免税モデルの炊飯ジャーの販売数量
について、12月と1月の直近2カ月累計で前年比25%程度の減
少となった。
 同社は減少の背景として「訪日外国人観光客の旅行の目的が変わ
りつつあり、購買対象も(より安価な)日用品などにシフトしてい
る」(広報部)と分析している。
 時計製造・販売の国内大手、セイコーホールディングス<8050.T>
の中村吉伸社長は、9日の決算会見でインバウンド関連消費につい
て、昨年夏ごろの爆発的な伸びは収まった印象があるとの見方を示
した。
 ある国内証券のアナリストによると、中国人の部下が今回の春節
で帰省した際、日本国内のマツモトキヨシに陳列されていた人気商
品が、地元で当たり前のように販売されていたと聞かされた。「日
本旅行のリピーターは温泉旅行など新たな体験などを求めるが、モ
ノの消費に関しては、やはり伸びが小さくなっていきそうだ」とい
う。
外国人観光客は増加中
 もっとも、外需関連株との相対感では、依然有望との見方もある
。中国人観光客による「爆買い」の最大のトリガーは、日本政府に
よるビザ発給要件の緩和。中国の景気減速懸念が広がった昨年8月
以降も、日本国内への中国人観光客は増加基調を続けている。
 日本政府観光局が発表した今年1月の訪日外客数は、前年比
52.0%増の185万2000人。単月としては昨年7月の
191万8000人に次ぐ過去2番目の水準だった。特に中国から
は前年比2.1倍の47万5000人と、大きな伸びを示している。
 SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏の試算では
、元に対し1円(5.6%)円高になると、中国人のインバウンド
消費は年率6.8%(590億円)押し下げられるという。
 15年の訪日外国人の旅行消費額は、全国籍・地域ベースで3兆
4771億円(観光庁の統計)。このうち中国は1兆4174億円
と4割を占める。単純計算すれば、昨年8月からの円高分(約2.7円
)は1600億円弱の影響にとどまる。
 足元では対人民元で円高が進んでいるが、2012年11月半ば
のいわゆるアベノミクス相場開始以来で比較すれば、依然35%程
度の円安水準だ。
 さらに過去1年の株価騰落率をみると、トヨタ<7203.T>(マイナ
ス19.8%)や日立<6501.T>(同37.9%)などが日経平均(
同10.8%)を超える下落率となる一方、インバウンドではコー
セー(プラス64.2%)、マツモトキヨシ(同32.0%)など
、大幅なプラスとなった銘柄も多い。
 昨年、大きく上昇したことの反動で利益確定売りが出やすくなっ
ているともいえ、売り一巡後は再び物色される可能性もある。
 三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジストの市川雅
浩氏は、インバウンド関連株は「円高の影響など、一時的にネガテ
ィブ材料を織り込む形となった。以前の勢いはないにせよ、まだ物
色できるセクター」と話している。
 (長田善行 編集:伊賀大記)
[東京 17日 ロイター]
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2016年 02月 18日 08:29 JST 
コラム:中国の銀行融資急増、いつもの「悪癖」再発
Peter Thal Larsen
[香港 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の銀行は年明
け早々、ある程度おなじみになっている悪習がまた頭をもたげてき
た。人民銀行(中央銀行)が資金供給を拡大する中で、1月の新規
人民元建て融資は2兆5000億元余りという高水準になった。
問題は、既に大きく積み上がっている国内の債務をさらに膨らませ
れば、いずれは避けられない不良債権処理の痛みが一段と増すばか
りという点にある。
毎年1月は中国の銀行の融資態度が寛大になる傾向があるといって
も、今回の融資額の大きさは鮮烈だ。前年同月よりも1兆元以上も
多く、与信総額の伸びの大半を占めた。
なぜこうなったかを説明できる理由はいくつかある。1つは流動性
が比較的潤沢だったことだ。人民銀行は利下げを渋っているものの
、海外への資金流出に対抗する形で金融システムに大量の資金を流
し込んでいる。中国企業が、外貨建て債務から国内での借り入れに
方向転換しているという面もある。中国の不動産に活気が戻るとの
確信が再び高まり、借り入れ意欲が盛り返したのかもしれない。
ただし中国には国内融資の拡大を許容できる余地はない。一部の見
積もりでは、債務総額は国内総生産(GDP)の250%に迫りつ
つある。公式統計で見た成長率は昨年6.9%まで減速し、物価下
落で名目GDPはさらに下振れた。つまり相対的には少ない借り入
れ増でも、経済全体の負担は増していく。にもかかわらず中国銀行
業監督管理委員会(CBRC)によると、昨年の商業銀行の融資額
は12%伸びて72兆元に達した。
真に懸念されるのは、融資の相当な部分が前向きな理由ではないか
もしれないという状況だ。銀行は、問題を抱えている借り手のデフ
ォルト(債務不履行)を防ぐために新規融資を提供している。事態
の緊迫化は表面化しつつある。CBRCによると、公式に不良債権
と分類された貸出債権は昨年51%も増加し、将来不良債権化しか
ねない債権も37%増えた。この2つのカテゴリーを合計すると、
融資総額に占める比率は5.5%となっている。
もっともこの比率の分母である融資総額が1月にさらに増えたこと
で、不良債権問題はしばらく表面的には深刻度が下がったように見
えるだろう。とはいえ、中国が債務負担から逃れるために、銀行が
手を貸すことができるはずはない。今こそ、何らかの新たな解決策
を打ち出す時期だ。
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2016年02月17日SummingUp(要するに)
【米】エネルギー企業の1/3が倒産するかもしれない 
Tyler Durden   02/16/2016
 石油が20ドル台を突き抜けてさらに下落するかもしれない、と
言われる現在。シェール業界を中心に淘汰が進むかもしれない。表
記はそのざっとした見通しを述べたものだ。
《骨子》
1。1600bps。米国エネルギーの信用リスクを取るのに投資家が
要求している超過利回りは決してより高かったことがなかった。し
かしながら、デロイトからの新報告書が本当だと証明されれば、低
いコモディティー価格が現金へのアクセスや債務切り捨て能力を片
端にするから、彼らが今年石油生産者の概して1/3が倒産に滑落
する高いリスクにあると予測する通り、これは遥かにずっと十分で
ない。
2。記録的な高さの米国エネルギーの信用リスク…
20160216_energy_0.jpg
3。報告書は、ロイターズが報じた通り、公開取引される全球的な
石油及び天然ガス探査及び生産企業500社超の評論に基づき、原
油価格が10年超の最低に居座り、利ざやを溶解し、予算削減と数
千人の解雇を強制しているので、エネルギー部門に浸透している深
い不安を際立たせる。
4。倒産の瀬戸際にあるざっと175社には1500億ドル超の債
務があり、第二次株発行や資産売却価格の下落が現金を生み出す能
力をさらに邪魔している、とデロイトが火曜日発行の報告書で言う。
5。「これら企業は可能な限り下り坂の缶蹴りをしてきて、今彼ら
はバケツを蹴る危険にある」とインタビューでウイリアム・スナイ
ダー、デロイトの企業リストラ長が述べた。「それは万事が流動性
だ」。
6。一部の石油生産者はまた迅速な現金注入のためヘッジ解消の選
択をしている、危険な賭けだ。
7。「2016は全部が頭にくる困難な決定の年だ」とジョン・イ
ングランド、デロイトの副会長がインタビューで言った。しかしな
がら、今の所、多分安全性の点画を提供する市場の片隅がある。
8。前四半期倒産を申し立てた53の米エネルギー企業のうち、た
った14社がサービス提供社だった。短期的に続くと見込まれる趨
勢とデロイトが見つけた。「サービス提供社はより少ない資本を配
備するもっと多くの人間ビジネスに傾く、だから彼らが金融的に柔
軟になるのはもっと容易い」とスナイダーは言う。しかしながら、
スナイダーの結論は…
9。「だが結果的に彼らもガス欠にならねばならない」。(止め)
***
 競合するエネルギー資源国や企業を潰す目的で開始された原油価
格の下落競争、第一標的が高原価のシェール企業、それにイランや
ロシアだった。最近の話題ではイラン原油の市場なだれ込みがあっ
て、需給面で供給過剰は止まらない、つまりまだまだ原油は下がる
公算だ。10ドル台の声も聞かれる。相当数の企業淘汰が起こって
反転すると言うが、この1/3で十分なのだろうか。
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グラフでわかる、当面「円高」が避けられないただ1つの理由
2016年02月16日(火)15時35分newsweekJ
加谷珪一
 為替市場において円高が進んでいる。マイナス金利が発表された
直後は、1ドル=120円まで下落したものの、その後、マイナス金利
の弊害が強く意識されるようになり、一気に円高となった。ニュー
スには「安全資産への逃避」「リスクオフ」などの見出しが並んだ
が、日米欧の中でもっとも景気が悪い日本市場が避難先という話に
は、違和感を覚えた人も多いかもしれない。現在、円高は一服して
いるが、しばらくは混乱が続く可能性が高い。ここは少し冷静にな
り、為替市場のメカニズムについて理解を深めておくことが重要だ
ろう。
理論的な為替レートを超えて円安になることはない
 為替は様々な要因で動いているので、一概に何によって為替が決
定されているのかについて示すことは難しい。為替を動かす要因と
しては、「二国間の金利差」「マネー供給量」「物価」などがある
が、これに加えて経常収支の動向やファンドの買いといった実需要
因が影響することもある。しかし長期的に見た場合、為替が何によ
って動いているのかはほぼ明白である。それは「物価」である。
 為替と物価の相関性が高いことは、いわゆる「一物一価」の原理
で説明することができる。物価が高い国の為替は安くなり、物価が
安い国の為替は高くなるという単純な理屈だ。一物一価に関してよ
く引き合いに出されるのが、各国のマクドナルドの価格を比較した
、いわゆるビッグマック指数である。もし、一物一価の原則が成立
するならば、ある国のビッグマックの価格が永遠に上昇することは
あり得ない。物価が上昇した国の通貨は下落し、物価が下落した国
の通貨は上昇することで、最終的にビッグマックの価格は一定レベ
ルに収束することになる。
 これを為替に適用したものが購買力平価の為替レートということ
になるが、このレートは長期的に見ると現実の為替レートと高い相
関性を示している。二国間のマネタリーベースの差(いわゆるソロ
ス・チャート)など、他の要因については、適用できる局面とそう
でない局面が混在しているが、物価に関してはほとんど例外がない
。少なくとも長期的には為替は物価の差で決定されるとみて差し支
えない。金利差についても、物価動向が金利を決める要因のひとつ
になっていることを考えると、結局のところ為替は物価に収束する
と考えてよいだろう。
 ドル円相場は、1971年のニクソン・ショックをきっかけに固定相
場制が実質的に崩壊。73年に変動相場制に移行してからは、一貫し
て円高ドル安が続いてきた。それ以降のドル円の動きは、日米間の
物価上昇率を元にした購買力平価の為替レートと綺麗に連動してい
る。
 1985年のプラザ合意以降、為替介入などで一時的に円安になるこ
とはあっても、購買力平価による理論的な為替レートを超えて円安
になることはなく、基本的に円高トレンドが継続してきた。
 90年代初頭の日本のバブル崩壊以後、米国は順調に経済成長を続
け、穏やかなインフレが長期にわたって続いている(リーマンショ
ックという一時的例外はあるが)。一方、日本は長期のデフレに悩
まされており、経済水準も物価もずっと横ばいであった。米国の物
価と日本の物価に乖離が生じていることから、為替レートがこれを
調整してきたのである。
 この傾向に変化をもたらしたのが、日銀による量的緩和策である
(実際にはこれを見越して円安が始まっていた)。量的緩和策は、
日銀が国債を大量に買い取ることによって市場にインフレ期待を醸
成させる政策である。先ほどの、一物一価の原則に照らすと、日本
がインフレ政策に転換したのであれば、当然、物価は上昇し、これ
に伴って為替も円安に振れる可能性が高くなってくる。市場ではこ
うした動きを先取りする形で円安が進んできたわけだが、ここに来
て日本のインフレ期待は急速に萎んできている。
「1ドル=100円」まで下がっても不思議ではない
 12月の消費者物価指数は、代表的な指数である「生鮮食品を除く
総合」が前年同月比プラス0.1%とほぼ横ばいの状況だった。エネル
ギー価格を除いた指標はプラス0.8%と値上がりしているが、原油価
格の低迷が長期化するのはほぼ確実である。短期的に物価が上昇す
る要因はほぼなくなったとみてよいだろう。
 こうした状況に加え、これまで円安を見越して積み上がった投資
ポジションの巻き戻しが発生したことで、今回の急激な円高につな
がった可能性が高い。信用取引の場合、手仕舞いをする際には、当
初とは反対の売買を実施する必要がある。つまり円安を見越して円
を売った場合には、逆に円を買い戻す形でポジションを手仕舞いす
る。もし想定したほど円安が進んでいない場合、投資家は損をして
しまうので、皆が慌ててポジションの解消に走ることになる。この
ため際限なく円高への巻き戻しが発生してしまうのだ。
 今回の円高が最終的にどの程度の水準で落ち着くのかについては
、一連のポジションがすべて解消されるまで、何ともいえないだろ
う。ただ、先ほどのチャートからも分かるように、購買力平価を元
にした為替レートは現在1ドル=100円程度となっており、ここまで
下がることがあっても何ら不思議はない。
 今後、日銀がどのような政策を打ち出してくるのかは現時点では
分からないが、仮に量的緩和策を事実上、打ち止めにすることがあ
っても、発行してしまった通貨はすでに200兆円以上も積み上がって
いる。日本経済に潜在的なインフレ圧力が存在しているという状況
に変わりはない。
 また、いくら円高になったとはいえ、1ドル=80円だった時代と比
べれば圧倒的に円の価値は安い。輸入物価が多少下がったところで
、国内の物価が劇的に下がる可能性は低いと考えた方がよいだろう。
 もっとも15日に発表された10〜12月期のGDPは、大方の予想通り年
率換算で1.4%のマイナス成長となった。国内の消費は弱く、事業者
が今後も相次いで値上げを敢行できる状況にはない。しばらくの間、
物価の低迷が続くことは確実である。
 同じ名目金利ならインフレ期待が小さい方が(物価が下がる方が)
、実質的な金利は高くなり、その国の通貨は買われやすくなる。だ
が日本は名目金利がすでにマイナスの状態にあり、よほどデフレ期
待が大きくない限り、これ以上、円を買い進めるのはリスクが大き
いはずである。当面は、購買力平価によるドル円ラインが意識され
る展開となるだろう。



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