5625.中東戦争と米国の対応



サウジ、トルコなどのスンニ派諸国が苛立っている。今後、中東を
舞台とした大戦争になる可能性が高い。その時、米国、中国、ロシ
アの動きが問題である。それを検討する。 津田より

0.中東情勢
シリア内戦の停戦と和平協議が開始したが、1週間以内に敵対行為
中止を目指すとともに、包囲された都市への迅速な人道支援を確保
することで合意が成立したが、全面停戦の保証とロシアによる空爆
の停止については合意に至らなかった。というようにシリアのアサ
ド政権に有利な条件しか確保できていない。

そして、アサド大統領はISを始めとするテロリストから、シリア全
土を解放するつもりだという。

このため、トルコのエルドアン大統領は激怒している。よって、ト
ルコがシリアに侵入する可能性が出てきたし、サウジもシリアに派
兵すると言っている。アサド政権がアレッポに迫り、支援している
反政府勢力が危機にあるためで、米国の支援を受けて派兵したいよ
うである。

しかし、米国は特殊部隊をイラクには派兵してもシリアには派兵し
ない。このため、反政府勢力指導者は欧米が裏切ったとBBCに言う事
になる。

中東情勢の混乱に対して、米国、ロシア、中国が異なった態度に出
ている。米国は中立的な立場、ロシアはシーア派の味方、しかし、
中国はスンニ派寄りになっている。

サウジは米国が中立的な立場に変化したので、中国により始めてい
る。中国もロシアより安い原油をサウジに求めて、サウジと中国は
利害が一致している。それに合わせて、サウジは、安全保障も中国
に依存しようとしている。

ロシアは中国に原油を高い価格で売ろうとしているので、中国は、
うんとは言わない。ロシアの戦闘機などの技術が欲しいので、ロシ
アとの同盟関係を築いているのに見えるが、ロシアからの技術を入
れれば、ロシアは必要がない。

ロシアも中国との関係を気にして、ロシアのラブロフ外相は、中国
との関係について「史上最も良好な状態にある」との認識を示した
が、このようなことをわざわざ言わなければならないほど、中露関
係はおかしくなっているのである。 

その証拠に、AIIBでロシアの出資額は、中国についで2位にあるの
に、副理事長や理事にも成れないという冷遇を受けている。中国は
、ロシアとの関係を一時的であると見ている証である。

ロシアと中国は中央アジアでも競合関係に有り、中国の「一帯一路
」戦略上でも、ロシアは邪魔をすると中国は見ているのだ。

そして、イランの制裁解除により原油が輸出できるようになるが、
その石油取引の決済をユーロにするとしたが、ロシアはイランに対
して、人民元決済も入れるように進言した。中国をサウジ寄りから
シーア派寄りに引き戻したいようである。

1.米国の思惑
米国は中国の持つ米国債を投売りされると、ドル基軸通貨体制の崩
壊になるために、中国に強い刺激を与えることができない。このた
め、南シナ海での行動も中国と協議して実施している。

米国はシェールオイルがあるので、アメリカ大陸に引きこもり、世
界の警察を止めていれば、2040年までには、ユーラシア大陸諸
国が潰しあってくれるので、それを待てば米国の時代が復活すると
している。これが基本的な米国の戦略である。ストラッドフォーが
その戦略を公開した。

その中で日本も島国であり、米国と同じようにしていれば、戦争に
巻き込まれないで、人口減少の経済的なトラブルはあるにしても、
悲惨な目には合わないとしている。

このため、サンダース候補やクルーズ候補など、米国の引きこもり
を目指す候補が出てきたのである。トランプ候補も保護主義を唱え
ているので、引きこもりであろう。

主流派のルビオやブッシュ、クリントンは、外交戦略で引きこもり
まで、言っていないが、国民世論がその方向であり、徐々に支持層
を広げるために、その考え方を取り入れることになる。

米国がやるべきことは、中東戦争で中ロを分裂させて、両国で潰し
合いさせることだ。米国はロシアに対しても、キッシンジャーなど
がロシアとの関係を修復するべきと言っている。というように、米
国は、中ロを中東戦争に呼び込み戦わせて、米国自体は中立にいて
傍観者になろうとしている。

欧州はNATOの構成国であるトルコやサウジとの関係的には良い。
シリアでの反政府勢力を支援してきた。ということで、中国もスン
ニ派支持に向かう可能性がある。

そして、中国のスンニ派支持を推し進めているのが米国や欧州であ
る可能性が高い。ロシアと中国を中東で戦わせることである。

2.中国の戦略
中国は東トルキスタンがあり、その独立運動をトルコは支援してい
ることを知っている。このため、中国の支援条件はトルコに対して
、その独立運動をやめさせることになる。

トルコのエルドアン大統領は、シリアのトルコ系住民の保護を最優
先にする必要が有り、シリアへの派兵をしたいのである。クルド人
部隊もトルコ系住民地域に進軍している。このため、トルコはクル
ド人部隊に空爆もしている。このようにシリアでの戦況はトルコや
スンニ派諸国、特に盟主のサウジにとって、最悪な状況になってい
る。

しかし、米国も欧州も動かない。そのため、サウジを中心としたア
ラブ諸国軍を結成して、シリアへの派兵を検討し始めたが、相手に
ロシアがいるので、そう簡単には動けない。イラン、ヒズボラ、ロ
シアの特殊部隊の構成軍に勝てない可能性が高い。

現時点、中国は中立であるが、中国でバブル崩壊になり、国民の不
満が頂点になった時、どうしてもプーチンと同じように国民の愛国
心を高揚するために、海外に軍隊を向ける必要がある。この時、サ
ウジ、欧州、米国などが中国への支持した場合は、中国は中東に出
てくることになる。

3.三国志の世界に
ロシア、中国、米国の3ケ国が世界覇権を目指して、お互いをぶつ
けようとしている。

ロシアは、中国のバブル崩壊で、米国債を大量に売却することで、
ドル基軸通貨制度も崩壊すると見ている。中国と米国の崩壊が同時
に起きると期待している。しかし、それはないと米国サイドは否定
している。

中国は、ロシアや米国が中東や東欧でぶつかり、潰し合うことを期
待している。

このため、当分、平和ではなく戦争が世界の問題の解決に手段とな
ると見る。

米国が優位なのは引き篭れば、自国周辺では敵がいないことである。
ロシアとも中国ともに敵対関係にならないなら、大陸弾道ミサイル
の戦争になることはなく、安全は確保できる。このため、中立にい
ることで、世界の紛争、特に中東から手を引くことになる。

4.日本はどうするのか?
日本は地理的な位置が中国の近傍にあることで、中国の影響を受け
ることになる。このため、中国との関係が最悪になると、戦争の可
能性があるが、米国が引き籠もりになる可能性が有り、それを前提
に戦略を見直す必要がありそうである。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Can Turkey return as a player in Syria?
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/02/turkey-syria-military-intervention-risks-and-opportunities.html#ixzz4061mH04V

Putin is No Ally Against ISIS
http://www.project-syndicate.org/commentary/putin-no-ally-against-isis-by-george-soros-2016-02

More War than Peace
http://www.project-syndicate.org/commentary/violent-conflict-rising-death-toll-by-john-andrews-1-2016-02

China's Yuan Won't Topple the Dollar After All
http://nationalinterest.org/feature/chinas-yuan-wont-topple-the-dollar-after-all-15165?platform=hootsuite

Turkey gives mixed signals on Syria
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/02/turkey-united-states-syria-ankara-gives-mixed-signals.html#ixzz3zoruEqXt

Kissinger’s Vision for U.S.-Russia Relations
http://nationalinterest.org/feature/kissingers-vision-us-russia-relations-15111

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NO4050 『シリア・アサド大統領全土を奪還すると語る』
 [2016年02月13日(Sat)] 中東TODAY
去る金曜日(2月12日)、シリアのアサド大統領が、AFPとのインタ
ビューに答えるなかで、彼は今後のシリア問題への対応を、明らか
にしている。その彼の発言によれば、アサド大統領はIS(ISIL)
を始めとするテロリストから、シリア全土を解放するつもりだ、と
いうことのようだ。アサド大統領の説明によれば、何事もなければ
問題の解決には、しかるべき時間が必要だというこ
とだが、もし、テロリストへのサプライ・ラインをカットすること
ができれば、1年以内に問題を解決することが、出来るということだ。
そのテロリスト(ISIL)へのサプライ・ラインとは、トルコやヨル
ダン、イラクからの支援物資と戦闘員だ。これらの国々から武器弾
薬や医療品、資金戦闘員が送られてくるのでは、IS(ISIL)を押さえ
込むことは、困難だということだ。
アサド大統領は困難はあるものの、シリア領土を敵側に妥協するつ
もりは、全く無いということだ。彼はシリアの内戦は、外国がスポ
ンサーになって、始められたものだった。
シリア政府は2011年の内戦開始当初から、話し合いによる問題の解
決を考えてきたが、反政府側は平和的な話し合いによる、問題の解
決を受け入れなかった。結果的には47万人のシリア国民が犠牲にな
った。
現在では、対話だけでは問題を解決することは出来ず、戦闘と対話
が同時に行われなければならない、とアサド大統領は考えている。
反政府側はロシアの空爆が止まらない限り、和平交渉には参加しな
い、と言っているが、それは受け入れられない。我々は当面、トル
コからアレッポへのサプライ・ラインを、カットしなければならな
い。このサプライ・ラインが非常に重要なのだ。
アサド大統領の語るところによれば、アレッポの周辺地域は、シリ
ア軍がほぼ制圧しているということだ。
アサド大統領がこの時期に、シリア全土の解放を語ったのは、2月25
日にジュネーブで開催予定の、シリア和平会議に向けたものであろ
う。会議に先立って、シリア政府は強い立場を示しておき、そこか
ら交渉を始める、ということであろう。
そして、そのような強気の発言が出てきた、もう一つの理由は、ロ
シア軍の協力でシリア軍が、各地で優位な戦闘を展開し、何箇所も
の重要拠点を、解放できていることによろう。
アメリカやNATOは、このロシア軍の効果的な空爆に対して、これと
いった対応策が無く、ロシア軍の完璧な空爆で、アメリカ軍はこれ
までの、手抜き攻撃がばれてしまい、ロシアに同調して空爆を本格
化させざるを得なくなってきている。現状ではアサド外しが話題に
なるが、実際には難しいということか。そうであるとすれば、何ら
かのアサド側との妥協策が出て来よう。 
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共同通信2016年02月13日 09:02
 サウジ、イランの対立鮮明に シリアのアサド政権めぐり  
 【ミュンヘン共同】ドイツ南部ミュンヘンで開かれている安全保
障会議で12日、断交中のイランとサウジアラビアの外相が相次い
で登壇、内戦が続くシリアのアサド政権存続の賛否をめぐる意見が
対立し、立場の違いが鮮明になった。
 サウジのジュベイル外相は、アサド政権が過激派組織「イスラム
国」(IS)の活動を容認し台頭を招いたと主張。「アサド氏が去
らなければ、ISに対する勝利はない」と述べた。
 これに対し、イランのザリフ外相は「われわれは宗派対立など望
んでいない。(勝つか負けるかの)ゼロサムゲームをしてはならな
い」とけん制した。
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シリア関係国会合、1週間以内に敵対行為中止を目指すことで合意
ただし全面停戦の保証とロシアによる空爆の停止については合意に
至らなかった
2016年2月12日(金)19時45分
米ロなどシリア内戦の終結を目指す関係国による会合が12日当地
で行われ、1週間以内に敵対行為中止を目指すとともに、包囲され
た都市への迅速な人道支援を確保することで合意が成立した。
 ただ、全面停戦の保証とロシアによる空爆の停止については合意
に至らなかった。
 ケリー米国務長官は記者会見で、合意は紙面上のものと認めた。
長官は「今後数日間に必要なのは、地上における行動。政権移行な
しに平和は実現しない」と述べた。 一方、ロシアのラブロフ外相
は記者会見で、敵対行為の中止はシリアとイランの大半を制圧して
いる過激派組織イスラム国やアルカイダ系武装組織ヌスラ戦線には
適用されないとして、シリアでの空爆を継続すると述べた。
 シリアの反政府勢力は合意による計画を歓迎しながらも、政府と
の間で行うジュネーブ和平会議に参加する前に合意が実行されなけ
ればならないとしている。
[ミュンヘン 12日 ロイター]
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「西側は我々を見捨てた」 シリア反体制派の指揮官語る
2016年02月12日 最終更新 10:29 JST BBC
シリア北部の主要都市アレッポをめぐる政府軍と反体制派勢力の攻
防が続くなか、戦闘を逃れようとする約5万人が難民化していると国
際赤十字委員会は警告した。政府軍はロシアによる空爆の支援を受
け、反体制派がこれまで掌握していた地域に激しい攻勢をかけてい
る。反体制派勢力の指揮官はBBCの取材に対し、西側が反体制派を見
捨てたと語った。
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イラン、石油取引で中国元による決済を提案
c Fotolia/ Zhz_akey
2016年02月12日 04:31sputniknews.com
イランの石油省は石油取引のドル決済を止め、ユーロ、元など「強
い」通貨を用いる計画があることを明らかにした。
同省のマスード・ハシェミアン・エスファハニ次官は、イランは米
ドルおよびドルの世界での通貨循環に左右されることを望まないと
明言している。
これまで明らかにされたところによるとイランは仏トタル社、西の
石油化学会社Cepsa(セプサ)社、露ルクオイル傘下の大手トレーダ
ーのLitasco(リタスコ)のユーロ決済での契約を結んでいる。
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露外相、中国との蜜月強調「両国関係は史上最も良好」―中国メデ
ィア
配信日時:2016年2月11日(木) 5時40分 recordchina
2016年2月10日、中国・参考消息網によると、ロシアのセルゲイ・ラ
ブロフ外相はこのほど、イタリアメディアのインタビューに応じ、
中国との関係について「史上最も良好な状態にある」との認識を示
した。 
ロシアメディアによると、ラブロフ外相はインタビューで、「ロシ
アは多方位外交政策を固く守り通す」とした上で、対中外交につい
て「中露は隣接する二大大国だ。中国と進めている政治対話と実務
協力は長期的かつ戦略的な性質を有している」と指摘。 
また「中国はロシアの主要な貿易相手国であり、両国は宇宙開発や
航空機製造、原子力発電、軍事技術など各分野でのプロジェクトを
進めている」とし、「両国の関係は、長幼や主従の関係ではなく、
互恵協力の関係だ。史上最も良好な状態にあると言える」と述べた。
(翻訳・編集/柳川) 
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シリア情勢巡り ロシアとクルド人勢力の連携強まる
2月11日 6時14分NHK
内戦が続くシリア情勢を巡り、反政府勢力の一角を占めるクルド人
勢力がロシアに代表部を開設したほか、ロシア側も和平協議にクル
ド人勢力が参加するべきだという立場を改めて示し、双方の連携が
強まっています。
シリア政府と反政府勢力の代表が参加して内戦の終結を目指す和平
協議を巡っては、反政府勢力の一角を占めるクルド人勢力が協議へ
の参加を求めていますが、トルコが国内のテロ組織につながってい
るとして反対しています。
和平協議の再開に向けて、11日にドイツで関係国の会合が開かれ
るのを前に、シリアのクルド人勢力は、ロシア軍の爆撃機の撃墜を
巡ってトルコと対立を深めるロシアに代表部を開設し、モスクワで
10日、開所式が行われました。クルド人勢力の代表部は今後、ロ
シアの政党やメディアを通じてロシアへの働きかけを強めるとして
います。
ロシア外務省のザハロワ報道官も10日、モスクワで記者会見を開
き、「クルド人勢力はシリア全体の土地の15%以上を支配してい
て、過激派組織IS=イスラミックステートと戦っている」と評価
したうえで、「自分の国の将来を決定する権利を奪ってはならない
」と述べ、クルド人勢力が和平協議に参加するべきだという立場を
改めて示し、双方の連携が強まっています。 
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サウジとバーレーン、イラン籍船の入港禁止=船舶保険会社
2016年02月10日(水)09時19分
[ロンドン 9日 ロイター] - サウジアラビアと隣国バーレーン
が、イラン籍の船に対して入港を禁止するなどの制限を課している。
複数の船舶保険会社が現地代理店などからの報告をもとに関係者に
出した通知で明らかになった。
今回の措置でイラン政府とサウジ政府の対立がさらに深まる可能性
はあるものの、国際貿易に影響を与える可能性は低い。
ノルウェーの船舶保険会社ガードによると、バーレーンは直近3回
の寄港先にイランが含まれる船はすべて入港禁止としているが、サ
ウジアラビアはそこまで制限していないという。
サウジアラビアとバーレーンの当局はコメントの求めに応じていな
い。
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イランが原油代金をユーロで決済、ドル依存低下へ
2016年02月08日(月)07時00分
[ニューデリー 5日 ロイター] - 経済制裁を解除されたイラン
が、同国産原油の代金をユーロで決済するよう求めることが分かっ
た。インドなどの未払い代金もユーロ建てで回収する方針。ドルへ
の依存低下が狙いという。
イラン国営石油会社(NIOC)関係者はロイターに、フランスの
トタルやスペインのセプサ、ロシア・ルクオイルの子会社リタスコ
などとこのほど交わした原油売買契約をめぐり、ユーロ建てで代金
を請求すると述べた。
この関係者は「請求書では、ユーロでの支払いを明記する」と強調
した。
欧州はイラン最大の貿易相手地域の一つ。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに拠点を置くカメール・エナ
ジーのミルズ最高経営責任者(CEO)は「多くの欧州企業がビジ
ネスチャンスを求め、イランに目を向けつつある。ユーロ建てでの
決済は理にかなっている」と話した。
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米国以外「すべて沈没」という驚愕シナリオ
影のCIAが「地政学」で2030年の世界を読む
ピーター・ゼイハン :地政学ストラテジスト 2016年02月08日TK
2030年までに、いったんは米国中心主義が薄れる。しかしその後、
ロシア、欧州、中国は次々に自滅し、米国は世界で圧倒的な超大国
になる――『地政学で読む世界覇権2030』を上梓した影のCIA「スト
ラトフォー」元幹部の筆者が、ウォール・ストリート・ジャーナル
、ブルームバーグ、APなども注目する衝撃の未来を予測する。
地政学によって導き出された将来とは?
地政学とは、ある土地が、そこに存在するあらゆるものにどう影響
を及ぼすかを考察する学問だ。住民の衣服、食べ物、抵当のサイズ
と有用性、何歳まで生きられるか、子供の数、仕事の安定性、政治
システムの形態とその実感、どんな戦争を仕掛けたり防衛したりす
るか、そして究極的にはその文化が時の試練に耐え抜けるかどうか
。川、山、海、平原、砂漠、ジャングルなどの相互のバランスが、
そこに住む人間の生活と、国家としての成功の双方に決定的に影響
するのだ。
その結果導き出された結論は、しばしば私を落ち着かなくさせる。
わが家には太陽光パネルが設置されているが、将来の世界では石炭
が君臨し続けるだろう。
私は自由貿易と西側諸国の同盟ネットワークこそ史上最大の平和と
繁栄を保障する枠組みだと考えているので、これを強く支持してい
る。しかし地理を研究すると、どちらもやがて放棄されるという結
論を出さざるをえない。
私は規制の少ない政府こそ富と自由の幅広く迅速な分配を可能にす
ると考えているので、小さい政府を支持している。しかし人口動態
を検討すると、やがて私の収入のより多くの部分が、ダイナミズム
に欠け、責任の所在が不明なシステムに吸い上げられるようになり
そうだ。
自分の出した結論を気に入っているかというのは重要ではない。こ
の記事は、私がこうあるべきと考えることを実現するためのアドバ
イスではない。むしろ今後起こるはずのことを予測する記事なのだ。
自由貿易体制が終焉、ヨーロッパと中国は没落
2015〜2030年にかけてのホッブズ主義的な時代は、21世紀の中でも
米国中心主義的な傾向が最も弱い時期になるだろう。なぜなら2030
年までに起きる3つの出来事の結果、それ以後の世界は米国の思いの
ままになるからだ。
重要なのは、このすべて、つまり自由貿易体制の終焉、世界的な人
口減少、ヨーロッパと中国の没落は、すべて移行期に起きる一時的
な出来事にすぎないということだ。2015〜2030年までの間に、古い
冷戦体制は最終的に一掃されるだろう。それは歴史の終わりではな
い。次に来るもののための準備期間にすぎないのだ。
そして現れる新しい時代は、驚くべきものになる。
まず、米国以外のあらゆる国はこの15年間、過去のシステムから残
されたものを手に入れようと互いに激しく争うだろう。資源や市場
を獲得するための競争の激化。海洋国間の競争の再発。さまざまな
困難――特に人口問題――に見舞われた国でも攻勢をかけることを
可能にする新技術の開発。人間の手を最小限にしか介さず、大きな
破壊力を持つドローンが米国の専売特許であり続けると信じる人が
本当にいるのだろうか??それは以前とはまったく異なる、わくわく
するような、恐ろしい時代だ。そしてその結果破滅する、あるいは
消耗する国も少なくない。米国人が競争相手と見なすすべての勢力
――特にロシア、中国、ヨーロッパ共同体――は思いがけない脆弱
さを露呈するだろう。
次に、この混乱と破壊のすべてでなくとも大半は、米国を素通りす
るだろう。15年にわたる競争と痛みと不足の代わりに、米国は安定
した市場とエネルギー供給のおかげで、15年間の穏やかな成長を実
現することができる。2014年の時点ですでに米国は世界に冠たる大
国の地位を得ている。2030年には、この国は絶対的にも相対的にも
圧倒的な強さを誇る一方、世界のほかの多くの国は現状を維持しよ
うと苦闘し、そして大半が失敗するだろう。米国は侵略されず(外
国を侵略することはあるかもしれない)、他国の海戦を無関心に眺
め(漁夫の利は得るかもしれない)、なぜ誰もが突然ドルを再び欲
しがるのかいぶかる(しかし喜んでそれを提供する)だろう。米国
は参加する戦いを選ぶこともできれば、世界から完全に引きこもる
ことも可能なのだ。
第3に、米国の人口状況は再び反転するだろう。2030年にベビーブー
ム世代の最年長者は84歳になるが、2040年には最年少者が76歳に達
する。その頃までに、2007年以来連邦政府にのしかかっていた重い
負担はほとんど完全に姿を消すだろう。ベビーブーム世代が徐々に
空けるスペースを次に占めるのは次の退職者世代、つまりジェネレ
ーションX世代で、この時点で彼らは61歳から75歳に達している。ベ
ビーブーム世代の子供世代であるジェネレーションY世代は40歳から
60歳の間だ。Y世代全体が稼ぐ収入は、米国のシステムを再び資本で
潤すだろう。
米国だけが破滅を免れる
15年間財布のひもを固く締めてきた連邦政府の財政収支は改善する
はずだ。ベビーブーム世代の引退とともに始まった長い闇は終わり
、財政状況には再び光明がさす。そして、すっかり荒廃した世界を
発見するのだ。2040年までに多くの途上国は、ヨーロッパ諸国がわ
ずか一世代前に経験したのと同じ危機的な人口状況に陥り、苦難と
衰退に向けた致命的な下降を始めるだろう。その目立つ例外は中国
だが、それも中国がすでにこの状態にあるからにすぎない。2040年
までに、米国の平均年齢がわずか40歳なのに対して、中国の平均年
齢は47歳になっている。この時点で米国は中国――この国がいまだ
に統一国家として存在していると仮定して――について、現在の日
本についてと同じように「過去の大国」としか見なさなくなるだろ
う。どこからも挑戦を受けない米国は、いくらでも自国にかまけら
れるようになる。
このような未来を確実に手に入れるために米国がすべきことは何か
??何ひとつない。地形のおかげで、米国はすでに必要なものをすべ
て手に入れている。中国とヨーロッパは放っておいても衰退し消滅
するだろう。ロシアはやがて自壊する。イランは独自の理由で中東
をスクランブルエッグのようにひっくり返すに違いない。米国の人
口状況は自動的に反転する。少しでも打撃を軽減しようとする他国
の懸命な努力でさえ、2035年までは実を結ぶことはない。残りはシ
ェールが仕上げてくれる。米国の強さは偶然のものかもしれない。
しかしそれが強さであり、長く続くことに変わりはないのだ。
簡単にいえば、世界は確かに破滅に向かっている。しかし米国だけ
がそれを免れるのだ。
日本には軍事的、文化的、体制的な底力がある
 いろいろな意味で、日本は最悪のタイミングで世界の先駆けとなっ
ている。2025年には平均年齢が51歳になることが予測されているこ
の国は、すでに紛れもない世界最高齢社会だ。高齢社会では年金や
医療費などがかさむために政府の支出が増大し、一方消費が冷え込
むため、需要減、雇用減、経済の停滞という負のスパイラルが発生
する。日本社会を見ればそれは明らかだ。日本人になじみのある言
葉で言えば、デフレが起きるのだ。米国の無関心、人口の高齢化、
そしてデフレスパイラルが、今このタイミングで日本の問題から世
界の問題になるというのは、このうえなく間が悪い。
しかし、世界がばらばらになり、日本政府が新旧の課題に対処しな
ければならなくなっても、実のところ日本はほかの多くの国よりも
はるかに有利な戦略的位置に立っている。たとえば以下のように。
・日本ではすでに高齢化が進行しているとはいえ、その人口構造に
は有利な点も見られる。日本では1970年代にベビーブームが起きた
。当時、生まれた人々は今では35〜45歳になり、最も多額の税金を
支払う年齢に達している。そのため資本蓄積という点では、特に高
齢化が急速に進行している国々に比べると、状況はまだまだよい。
・主要国の間では唯一のケースだが、日本の借金はほぼ完全に国内
にとどまっている。したがってこれにどう対処するかは国際金融の
問題ではなく、内政問題なのだ。日本の銀行、金融当局や企業、あ
るいは有権者に対して外部からは誰も指図できない。
・日本には、世界で最も先進的な産業基盤と最も高い技術を持つ労
働力が存在する。たとえ、貿易関係の崩壊と財政赤字の増大によっ
て技術の開発もその応用も不可能になっても、日本は相対的にも絶
対的にも非常に有利な立場からスタートできることに変わりはない。
・日本には世界で2番目に強力な海軍がある。エネルギー供給と貿易
の安全確保のために船団を組まなければならない時代には、これは
非常に大きな意味を持つ。
・日本には陸の国境がない。また最も近いライバル――中国とロシ
ア――は水陸両方で展開できる十分な戦力を持たない。
・住民の98%以上が日本民族であるこの国は、ほぼ単一の文化アイ
デンティティを持つ。これは近代では極めて珍しいことだ。したが
って、これほど統一されていない国なら崩壊しかねない政策を実行
したりプレッシャーに耐えたりする文化的体力を備えているのだ。
日本は、下がる一方の生活水準に耐えられることをすでに示した世
界でも数少ない国のひとつだ。
・移民にとって日本は魅力的な国でなく、彼らを同化できないとい
う事実でさえ、利点である。芝生の世話や建物の管理人といった単
純労働は、ほかでもない日本の高齢者によって担われつつある。こ
の人々がこうした仕事をする1日1日は、年金財政に対して増える一
方の圧力が緩和される1日でもある。
結局、日本はどうなるのか
日本はいまだに――極めて大きな――困難の中にあるが、それはド
イツやロシアや中国の行く手に待ち構えている運命ほど過酷なもの
ではない。そして困難に見舞われているそれ以外の多くの国々と違
って、日本には十分な軍事的、文化的、体制的な底力があるので、
問題の根本的な解決を計ることができる。
イノベーションを通じて、日本は産業の停滞から脱することができ
る。インフレ時代において、日本には税制上および金融上の新しい
政策を採用する、ある程度の余裕がある。先の見えない時代に、日
本には軍事的解決策を探るという選択肢がある。米国を除けば、日
本が競争相手と見なしているどの一国も、これほどの柔軟性や永続
性を持たない。
日本の将来は必ずしも強くはなく、安全でも安定してもいないかも
しれない。しかし、比較的強く、比較的安全で、比較的安定してい
るだろう。で、私は日本の将来を憂えているかって??もちろん、非
常に。
しかし、それ以外のほぼすべての国を憂うほどではない。
時が経てば筆者の誤りが明らかになるだろうって??ぜひ2040年に
会いに来ていただきたい。その頃私は66歳になり、(ベビーブーム
世代のせいで)だいぶ遅くなった定年退職の日を指折り数えながら
待っているはずだ。うまい酒でも持って訪ねてきてください。
(翻訳:木村 高子)
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」2016年2月9日4806号
 ロシア、AIIBに早くも失望
  出資で第三位のロシアがなぜ副総裁になれなかったのかと不満
爆発
 憤懣やるかたなし、ロシア財務省である。
 中国の提唱したAIIB(アジアインフラ投資銀行)は1月16
日弐正式発足し、金立群総裁以下、副総裁は英国、ドイツ、インド
、韓国、インドネシアから撰ばれた。
出資比率から言えば、第三位(5・92%)のロシアからは副総裁
が選出されないという面妖な事態の出現にロシアは失望を強める。
もともと格付けを得られないままAIIBはスタートいう異常事態。
日本、米国、カナダが加わらない以上、国際機関は格付けのしよう
がないのは当然で、発会式の記者会見でも「ドアはまだ(そしてい
つまでも)開かれている」と日本の参加に綿々と執着する有様だっ
た。
 後日、TPP署名式に際してオバマ大統領は「中国にルールを作
らせない」と言明し、TPPの目的は中国排除にあることを示唆し
たのだが、AIIBには英国、ドイツが加わった。
 とくに英国である。米国はこれを裏切りと認識したかもしれない。
AIIB副総裁に入った英国の代表はダニー・アレキサンダー卿。
彼はしかも理事会秘書長を兼ねる。つまりAIIBの事実上のナン
バーツーである。
 アレキサンダー卿は英国財政部筆頭補佐官。つまりオズボーン財
務相の一の子分である。オズボーンは英国政界における親中派のチ
ャンピオン。英国を強引にひっぱって習近平訪英のお膳立てにつく
し、AIIBへの参加を舞台裏で推進した。
 ロシアは英国の出資率が第九位(2・91%)でしかなく、ロシ
アの遙か後塵を拝する国が、何をもってナンバーツーなのかと批判
的になるのも無理はない。中国側は「国際金融に通じるベテランが
必要だから」と理由付けをしているが。。。
 オズボーン英国財務相が15年3月に突如「英国はAIIBに加
わる」としたとき、日米は驚き、ドイツは慌てて加盟を表明し、欧
米各国はその列に飛び乗った。日本では「加盟しないとバスに乗り
遅れる」「日本は孤立する」などと皮相な発言が続いた。仕掛け人
のオズボーンはパンダハガーだったのだ。
 AIIBは理事会のほか幹部会と管理部があり、12名の理事選
出など、これからしばらく人事をめぐって参加国の執拗な確執がつ
づき、最初の融資実行は年内になる見込みという。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」2016年2月8日第4805号 
 ロシアは中国のハードランディングに期待。「えっ?」
  なぜならアメリカ経済も甚大な被害とともに沈降するからだ
 ロシアの財務副大臣マキシム・オレシュキンが予測した。「アメ
リカ市場は崩壊する。中国経済のハードランディングの影響を受け
るからだが、さらに原油価格の低迷は長期化すれば、ロシアをはじ
めとする新稿経済軍は、あたらしい現実に直面することとなる」(
英語版プラウダ、2月1日)。
 オレシュキンは続けてこう言った。
「アメリカの経済は過熱気味であり、FRBの利上げが行われても
、この経済の良好状態のまま続くとすれば、また利上げに踏み切ら
ざるを得なくなる。しかしGDP成長が2・5%から3%成長にな
るとは到底考えられない。企業業績は顕著に悪化しており、いずれ
アメリカ経済は崩壊する」
 「中国の経済が6%成長などということはあり得ず、2016年
内に中国の債務は対GDP比で310%に達することは確実であり
、デフレ傾向は情況をさらに悪化させている。空にとどく木々がな
いように、限度を超えたローンは成立しない」。
 さてそうであるならば、ロシア経済は?
 「ブラジルなど新稿資源国からは海外資金が去っているが、ロシ
アへの投資は横ばい、原油価格の下落にロシア経済はうまく適応さ
せて来ている(これ以上、ロシア経済は悪化しない)」
 中国の債務が310%という数字は初めて見るが、ロシア財務担
当巷間が強気の発言は中国の先行き予測の正しさはともかくとして
、アメリカの破産は、なんだか負け惜しみのようでもあり、日本へ
の言及はなかった。



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