5619.ドル基軸通貨崩壊と防衛



黒田日銀総裁のサプライズ賞味期限は2日しかなかった。世界のバ
ブル崩壊をどう歯止めするか、真剣に考える必要がある。それと、
バブル崩壊は米国のドル基軸通貨制度の崩壊でもある。 津田より

0.バブル崩壊にバブルを作り解消
最初のバブルは、1999年のITバブルであり、その過剰なドル
流通量は10%UPであった。その崩壊で米国は、金利を引き下げて、
住宅を買いやすくして、ITバブルで傷ついた銀行を救う。しかし
、これが住宅バブルを生み、崩壊する。これがリーマンショックに
なり、世界の激震が起こった。この時のドル流通量は20%UPであ
り、まだ海外への影響が限定的であった。

このリーマンショクを受けて、米国は本格的に中国へ技術と資本を
投入して、より大きなバブルを作る。FRBは量的緩和をして、この動
きを支援した。QE1からQE3までに450兆円という膨大な資
金を新興国などにばら撒いた。それまでの4.5倍という通貨量を
流し込んだ。

このバブルの摘取期を迎えている。ばら撒いた資金を回収してバブ
ルを防ぐというのがFRBの目的である。このための利上げであるが、
ドル資金を摘み取られる新興国、ベンチャー企業、資源企業などに
痛みが伴う。

その痛みを今、世界は味わっているのである。もしかすると、バブ
ル崩壊を引き起こす可能性があり、FRBもバブル崩壊にならないよう
に注意して、その資金回収に向かうしかないのである。

非伝統的金融政策である量的緩和を行うと、それまでの資金量の数
倍から数十倍の資金が出るので、バブルが起きやすくしてしまい、
そのままにすると、今までに何遍も経験したバブル崩壊なるのであ
る。しかし、現在、バブルの規模が世界的になってきたのだ。

江戸時代、各藩が藩札を出して苦境に陥った経験や戦後のインフレ
を味わっている日本も経験を持っている。このため、長らく量的緩
和は御法度としていたのである。反省をしていたので、量的緩和を
しなかったのだ。

それを1990年のバブル崩壊で、日本がゼロ金利でも浮揚しなか
ったので量的緩和をクルーグマンが提唱した。2008年米バブル
崩壊でこの量的緩和を行い、ある程度成功して世界に広まったので
ある。しかし、その副作用が出てきたのだ。資金が市場にだぶつき
、景気回復すると、いつバブルが起きてもおかしくない状況になっ
てきた。特に米国で景気回復期になり、これから苦悩が始まる。

1.新興国、資源国の苦境
米国資金をばら撒かれた中国の企業債務残高は、実に18兆ドルと
いう膨大なものであり、そのうちでドル起債の社債もある。米国か
らの投資を受けるために人民元はドル・リンクしていたが、リンク
すると、ドル高になってしまうので人民元も高くなり輸出ができな
くなり、リンクを外して人民元を安くする方向である。

インドネシアもドルベースから人民元ベースに変更している。東南
アジア諸国は、中国との貿易量が大きく、人民元ベースの方が安定
する。このため、ドルから人民元に切り替えている。もちろん、準
備預金もドルから人民元に切り替える。

資源国のサウジは、安全保障上からドルリンクを続けているが、米
国は石油を自給できるようになり、サウジから買う必要がない。サ
ウジも石油輸出としては中国の方が断然多い。

現時点、米国が中東離れを起し、イランとサウジの中間に位置して
中立になることをサウジは恐れているので、まだドルリンクのまま
であるが、米国が安全保障的にサウジ離れをすると、ドルリンクを
解消するはずである。

しかし、米国も最新武器のお得意先であるサウジを手放すことはで
きず、外交的な位置としてはサウジ寄りにして、実行上は中立とい
う際どい外交をしている。

というように、米国が資金を引き上げているので、中国やサウジな
ど多くの国で、ドルから人民元などに通貨基軸を変更してきている
ようである。ドルの通貨量が大きく出来たのは、今まではドルが基
軸通貨であり、各国の準備預金をして、米国債などのドル資金化し
ていたからである。

2.ドル基軸通貨制度崩壊と防衛
もし、ドルリンクを外す国が増えると、基軸通貨制度が崩壊するの
であるが、各国は米国債を一斉に市場で売ることになり、ドルの長
期金利がUPしてしまい、そのことでドル暴落になる。このため、よ
り多くの国がドルリンクを止めることになる。ドル基軸通貨制度の
崩壊である。現在、中国が米国債を大量に売り出しているが、まだ
中国だけであるので、なんとか対応できるのである。

日銀はマイナス金利にして、金融機関は金利が大きい米国債を買う
方向である。米国も日本に要求した可能性もある。

このように心配をする必要に米国はなってきたのである。このため
、米国は追い詰められているのだ。ドルという米国の世界支配の道
具が機能しなくなる危険がある。

米国としては各国のドルから人民元への準備預金のシフトを止める
必要がある。特にこの準備預金を人民元化するのは、東南アジアで
ある。この囲い込みをしないといけない。しかし、米国一国では、
貿易量が少なく、中国の貿易量にかなわないので、TPPという仕組み
を作り、アジアを米国離れから守りたいということである。

中国対米国の経済戦争が起きているということは、このことを指し
ているのである。

3.痛みでどうなる
米国投資機関は、新興国、米ベンチャー企業、シェールオイル企業
などに今まで投資していたが、そこから資金を引き上げている。

このため、マルチプル・コントラクションが起きて、アマゾン(AMZN
)-6.6%、ネットフリックス(NFLX)-7.8%、テスラ(TSLA)-6.9%、
セールスフォース(CRM)-12%、フェイスブック(FB)-6%、スター
バックス(SBUX)-6.7%などの急成長してきたベンチャー企業の株価
が急落した。

とうとう、急拡大でも利益率が少ないか赤字のベンチャー企業から
も、投資を引き上げているようだ。

米国債が売られ、かつドルリンク国が少なくなると、ドル高から一転
ドル安にシフトする。

この経路で、円高になり日本企業の外需の売り上げが剥げ落ち、か
つ新興国、特に中国での売り上げが減り利益率は減少の方向になる。

来年度は日本企業全体で、20%程度の利益が減少する方向であり、
株価が2万円になることはない。PERが15倍でも1.6万円程度と
言う評論家もいる。

さあ、どうなりますか?



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