5602.セルロースナノファイバーの製造法



セルロースナノファイバーとは、木材をはじめとする植物細胞壁の
基本骨格であり、その幅はわずか4-15nmである。したがって、セル
ロースナノファイバーを製造するためには、セルロースナノファイ
バーを切断・溶融することなく、効率的に植物細胞壁やパルプ繊維
を解繊処理する必要がある。

このため、今までは機械的な方法で解していたが、これではコスト
がかかっていた。この解す方法で新しい方法が出てきた。

東大磯貝明教授が発明した方法で、TEMPO酸化触媒で化学的処理する
方法で、必要なエネルギー量を大幅に減らすことに成功した。これ
でコスト的にも大きく減少することができることになる。

化学的処理するとセルロースナノファイバー同士の相互反発力が与
えられ、極めて軽微な機械的解繊処理によって幅4nmの超微細なセル
ロースナノファイバーが得られる。

セルロースナノファイバーは、軽量で強く、自動車部品や化粧品な
ど幅広い利用が期待されている。

TEMPO酸化触媒で化学的処理は、エビやカニなど甲殻類外皮を構成す
るキチンナノファイバーでも有効であり、こちらの製造コストも大
きく削減される。

このTEMPO酸化触媒で化学的処理により、セルロースナノファイバー
の実用化が一段と近くなっている。いろいろなメーカが参入してい
る。2016年には、一部の製品が出てくる可能性が高まっている。

新素材セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に道を開いた
東大の磯貝明教授(60)ら日本人研究者3人が、スウェーデンの財
団から「マルクス・バーレンベリ賞」を授与された。「森林・木材
科学分野のノーベル賞」ともいわれ、アジア初の受賞となった。

さあ、どうなりますか?

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「森林分野のノーベル賞」、東大・磯貝教授ら受賞  
2015/9/29 11:34
 【ストックホルム=共同】木材の繊維を効率よくほぐす方法を発
見し、新素材セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に道を
開いた東大の磯貝明教授(60)ら日本人研究者3人が28日、スウェ
ーデンの財団から「マルクス・バーレンベリ賞」を授与された。「
森林・木材科学分野のノーベル賞」ともいわれ、アジア初の受賞と
なった。
 CNFは木材繊維を微細化した素材。軽量で強く、自動車部品や
化粧品など幅広い利用が期待されている。磯貝氏らは特殊な酸化反
応を利用し、繊維をナノレベルまで細かくほぐすのに必要なエネル
ギー量を大幅に減らすことに成功した。
 他の受賞者は、東大の斎藤継之准教授(37)とフランス国立科学
研究センター・植物高分子研究所の西山義春博士(43)。ストック
ホルムの式典で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王が賞を手
渡した。
 磯貝氏は受賞に際し、日本の豊かな森林資源をハイテク素材とし
て使える可能性を強調。「実用化のために汗水流している企業の方
々、他の大学で健闘されている方々に勇気を与えられれば」と喜ん
だ。
 同賞は1981年以来、森林・木材科学分野で優れた成果を挙げた研
究者を毎年選び、表彰している。賞金は計200万クローナ(約2800万円)。
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セルロースナノファイバー製造方法

セルロースナノファイバーとは、木材をはじめとする植物細胞壁の
基本骨格であり、その幅はわずか4-15nmである。樹木は階層構造を
有しており、植物細胞壁で合成されたセルロースナノファイバーは
、樹木の内部で幅数十マイクロの細胞壁・パルプ繊維を形作ってい
る。したがって、セルロースナノファイバーを製造するためには、
セルロースナノファイバーを切断・溶融することなく、効率的に植
物細胞壁やパルプ繊維を解繊処理する必要がある。このセルロース
ナノファイバーを植物細胞壁から単離する技術は、東京大学磯貝グ
ループのTEMPO酸化触媒で化学的処理する方法(Saito 2006)や京都
大学矢野グループの機械的な方法に(Abe 2007)により確立されて
る。
東京大学磯貝グループは、パルプ繊維へTEMPO酸化触媒で化学的処理
するとセルロースナノファイバー同士の相互反発力が与えられ、極
めて軽微な機械的解繊処理によって幅4nmの超微細なセルロースナノ
ファイバーが得られることを明らかにした。この「化学処理による
相互反発力の付与」という知見によって、カルボキシルメチル化処
理など、数多くのセルロースパルプ化学処理が提案されている。さ
らに、エビやカニなど甲殻類外皮を構成するキチンナノファイバー
も酸性条件下では相互反発力が生じるため、軽微な機械的解繊処理
によってキチンナノファイバーが得られる。
京都大学矢野グループが開発した方法は、湿潤状態の木材パルプ繊
維へ機械的な解繊処理を行う方法である。この解繊方法では、幅15nm
のセルロースナノファイバーが得られる。この際、解繊処理方法や
処理装置の種類はあまり重要ではない。最も重要な点は、木材細胞
壁からリグニンは完全に除去し、ヘミセルロースは残存させた状態
で機械的な解繊処理することである。過度にヘミセルロースを除去
したり、解繊処理前に精製パルプを乾燥させると、パルプ繊維が角
質化して、幅15nmのセルロースナノファイバーが得られにくくなる。

 


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