セルロースナノファイバーとは、木材をはじめとする植物細胞壁の 基本骨格であり、その幅はわずか4-15nmである。したがって、セル ロースナノファイバーを製造するためには、セルロースナノファイ バーを切断・溶融することなく、効率的に植物細胞壁やパルプ繊維 を解繊処理する必要がある。 このため、今までは機械的な方法で解していたが、これではコスト がかかっていた。この解す方法で新しい方法が出てきた。 東大磯貝明教授が発明した方法で、TEMPO酸化触媒で化学的処理する 方法で、必要なエネルギー量を大幅に減らすことに成功した。これ でコスト的にも大きく減少することができることになる。 化学的処理するとセルロースナノファイバー同士の相互反発力が与 えられ、極めて軽微な機械的解繊処理によって幅4nmの超微細なセル ロースナノファイバーが得られる。 セルロースナノファイバーは、軽量で強く、自動車部品や化粧品な ど幅広い利用が期待されている。 TEMPO酸化触媒で化学的処理は、エビやカニなど甲殻類外皮を構成す るキチンナノファイバーでも有効であり、こちらの製造コストも大 きく削減される。 このTEMPO酸化触媒で化学的処理により、セルロースナノファイバー の実用化が一段と近くなっている。いろいろなメーカが参入してい る。2016年には、一部の製品が出てくる可能性が高まっている。 新素材セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に道を開いた 東大の磯貝明教授(60)ら日本人研究者3人が、スウェーデンの財 団から「マルクス・バーレンベリ賞」を授与された。「森林・木材 科学分野のノーベル賞」ともいわれ、アジア初の受賞となった。 さあ、どうなりますか? ============================== 「森林分野のノーベル賞」、東大・磯貝教授ら受賞 2015/9/29 11:34 【ストックホルム=共同】木材の繊維を効率よくほぐす方法を発 見し、新素材セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に道を 開いた東大の磯貝明教授(60)ら日本人研究者3人が28日、スウェ ーデンの財団から「マルクス・バーレンベリ賞」を授与された。「 森林・木材科学分野のノーベル賞」ともいわれ、アジア初の受賞と なった。 CNFは木材繊維を微細化した素材。軽量で強く、自動車部品や 化粧品など幅広い利用が期待されている。磯貝氏らは特殊な酸化反 応を利用し、繊維をナノレベルまで細かくほぐすのに必要なエネル ギー量を大幅に減らすことに成功した。 他の受賞者は、東大の斎藤継之准教授(37)とフランス国立科学 研究センター・植物高分子研究所の西山義春博士(43)。ストック ホルムの式典で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王が賞を手 渡した。 磯貝氏は受賞に際し、日本の豊かな森林資源をハイテク素材とし て使える可能性を強調。「実用化のために汗水流している企業の方 々、他の大学で健闘されている方々に勇気を与えられれば」と喜ん だ。 同賞は1981年以来、森林・木材科学分野で優れた成果を挙げた研 究者を毎年選び、表彰している。賞金は計200万クローナ(約2800万円)。 ============================== セルロースナノファイバー製造方法 セルロースナノファイバーとは、木材をはじめとする植物細胞壁の 基本骨格であり、その幅はわずか4-15nmである。樹木は階層構造を 有しており、植物細胞壁で合成されたセルロースナノファイバーは 、樹木の内部で幅数十マイクロの細胞壁・パルプ繊維を形作ってい る。したがって、セルロースナノファイバーを製造するためには、 セルロースナノファイバーを切断・溶融することなく、効率的に植 物細胞壁やパルプ繊維を解繊処理する必要がある。このセルロース ナノファイバーを植物細胞壁から単離する技術は、東京大学磯貝グ ループのTEMPO酸化触媒で化学的処理する方法(Saito 2006)や京都 大学矢野グループの機械的な方法に(Abe 2007)により確立されて る。 東京大学磯貝グループは、パルプ繊維へTEMPO酸化触媒で化学的処理 するとセルロースナノファイバー同士の相互反発力が与えられ、極 めて軽微な機械的解繊処理によって幅4nmの超微細なセルロースナノ ファイバーが得られることを明らかにした。この「化学処理による 相互反発力の付与」という知見によって、カルボキシルメチル化処 理など、数多くのセルロースパルプ化学処理が提案されている。さ らに、エビやカニなど甲殻類外皮を構成するキチンナノファイバー も酸性条件下では相互反発力が生じるため、軽微な機械的解繊処理 によってキチンナノファイバーが得られる。 京都大学矢野グループが開発した方法は、湿潤状態の木材パルプ繊 維へ機械的な解繊処理を行う方法である。この解繊方法では、幅15nm のセルロースナノファイバーが得られる。この際、解繊処理方法や 処理装置の種類はあまり重要ではない。最も重要な点は、木材細胞 壁からリグニンは完全に除去し、ヘミセルロースは残存させた状態 で機械的な解繊処理することである。過度にヘミセルロースを除去 したり、解繊処理前に精製パルプを乾燥させると、パルプ繊維が角 質化して、幅15nmのセルロースナノファイバーが得られにくくなる。