5613.歴史は繰り返すが現象は違う



現状は2008年から始まる大恐慌が大戦争に向かう時代である。
丸で1929年の大恐慌から第2次世界大戦に向かう時期と同じで
ある。歴史は繰り返し、しかし、その現象は違うという格言の通り
になってきた。その検討。  津田より

0.第1次世界大戦から第2次世界大戦への歴史
第一次世界大戦により各国政府とも金本位制を中断し、管理通貨制
度に移行したが、1925年に復興したイギリスは、ポンド安定の
ために、第一次大戦前の旧平価で金本位制に復帰した。この当時の
非伝統的な金融政策を英国は取ったことになる。

1929年10月29日、ニューヨーク株式市場で株価が大暴落し
たことに端を発した世界規模の恐慌が起こる。一週間で300億ド
ルが失われ、これは当時の米国連邦年間予算の10倍に相当し、米
国が第一次世界大戦に費やした総戦費をも遥かに上回った。

投資家はパニックに陥り、株の損失を埋めるため様々な地域・分野
から資金を引き上げた。この資金の引上げで、米国経済への依存を
深めていた脆弱な各国経済も連鎖的に破綻することになった。

1930年の上半期には景気は自立反転して回復に向かった。しか
し、中期から再び急速に悪化した。30年暮れに投資銀行と普通銀
行が倒産。29年秋には農産物価格が下落して、33年には半分程
度の価格まで下がることになる。工業製品も同様に価格が下がった
。このように深刻なデフレになり、各国は保護貿易主義的な対応を
取り始めた。ここで、関税引き上げ法であるスムート・ホーリー関
税法が30年に成立する。各国が報復関税を掛けたために、世界の
貿易量は1/3にまで落ち込んだ。

これと、29年までは、米国から世界に大量の短期資金が供給され
ていたが、29年のニューヨーク株式市場の大暴落で資金の引き上
げを起こし、経済運営が行き詰ることになる。31年1月にボリビ
アが債務不履行になり、ラテン・アメリカ諸国も同様になった。
5月にはオーストリアで最大の銀行が破綻した。金融市場の混乱で
欧州各国はポンド売り、金に換える行為に出た。1931年英国は
ポンドを支えきれずに、金本位制から離脱。32年末には32ケ国
が金本位制を破棄した。そして、通貨切り下げ競争が起こる。この
ため、国際金融のシステムが完全に秩序を失うことになった。

それと平行して、英国は植民地をウェストミンスター憲章により自
治領と対等な関係にして、新たに英国連邦を形成し、ブロック経済
(スターリングブロック)を推し進めていくことになる。同様にオ
ランダ、ベルギー、フランス、スペイン等も関税報復措置を招き、
1930年代に各国がブロック経済圏をつくることになる。

米国は、閉鎖された銀行が1万行に及び、1933年2月にはとう
とう全銀行が業務を停止した。1932年グラス・スティーガル法
で破綻を防止する意味で、銀行から証券を分離した。投機した株式
が下落することで銀行が破綻することが分かり、預金者を保護する
必要から銀行が株式投資をできないようにした。しかし、この法は
1999年に廃止になる。

1933年にフランクリン・ルーズベルトが大統領になり、公約通
りテネシー川流域開発公社を設立、更に農業調整法や全国産業復興
法を制定したが、ニューディール政策は1930年代後半の景気回
復を前に規模が縮小されたため、1930年代後半には再び危機的
な状況となった。最終的には景気回復は、戦争特需を待たないと解
決しなかった。

どうも、この歴史を現在、繰り返しているようである。

1.ドイツの動きは
一方、32年にはドイツも戦時賠償のデフォルト、支払い停止を宣
言したが、大手銀行の破綻で、ドイツは金融恐慌になる。33年ヒ
トラー首相任命、34年には総統、35年にはヴェルサイユ条約の
破棄と再軍備を宣言。ヒトラーは軍備拡充とアウトバーンなどの公
共事業に力を入れ、壊滅状態にあったドイツ経済を立直し、36年
ラインラント進駐、38年オーストリア併合、39年チェコスロバ
キア進軍、ポーランド侵攻で英仏は参戦した。ここで第2次大戦が
始まる。

1939年9月1日に第2次世界大戦開始し、1945年8月15
日に終わる。

2.2008年からの動き
2008年リーマンショクで、世界的な金融混乱が起こり、中国が
50兆円に及ぶ公共事業と軍備拡充を行う。このため、中国への資
源輸出や機械などの資本財輸出を通じて世界的な景気の下支えした。
しかし、2015年から中国の景気後退で、その資本財、資源など
の輸出ができなくなり、世界的な景気後退になってきた。

世界的な荷物の動きを示すバルチック指数も大幅に下がり、現時点
300程度で、2015年8月には1200以上もあった指数が
1/4程度までに下落している。世界的な荷動きが低下している。
このため、世界的な景気が下落することは間違えないのである。

よって、資源価格の下落、原油の下落も起こっているのである。世
界的なデフレにもなっている。

このため、内需拡大と外需取り込みを各国が行い始めたのが現時点
である。内需拡大としては移民流入を歓迎して人口を増やすことが
必要であるが、欧州ではイスラム教徒の難民・移民であり、テロリ
ストを流入させることになり、危険とできないことになってきた。

このため、世界的に通貨安競争で外需取り込みに動き始めている。
しかし、ECBはドイツの量的緩和反対で、早くからマイナス金利政策
を取ってきたのである。量的緩和ができないのでマイナス金利政策
にしたのだ。

一方、日本は当初、量的緩和で円安を得ようとしてきたが、量的緩
和の限界に来てマイナス金利を導入した。この意味は、円安を維持
して、外需取り込みを持続させることである。

この意味を英紙フィナンシャル・タイムズは「日本がマイナス金利
『クラブ』に加入」と、欧州やスイスなど先行例を念頭に皮肉まじ
りの見出しで報じた。「ユーロと円は既に金融政策で押し下げられ
ており、予想外の日本の動きは(さらなる円安を促して)、新たな
通貨安競争の懸念を引き起こすかもしれない」としている。

3.米利上げ政策は大失敗の可能性
現在、経済大国に植民地がなく経済ブロックができないので、通貨
安戦争に世界は突入したのである。こうなると、ドル・リンクして
いる国は不利になる。米国は利上げ方向であり、通貨が相対的に高
くなるためで、ドル・リンクから離脱する動きになる。

まずは、人民元のドル・リンクからの離脱が必要であるが、資本流
入があることで、中国の近代化・工業化が進んできたので、資本流
出に神経を尖らす必要がある。

サウジアラビアもドル・リンクであり、ドル決済で石油を売ってき
たが、米国の中東政策に不満を持ち、ドルリンクから人民元決済に
して、人民元リンクとなる可能性がある。この方向を推進するため
、中国はサウジに近づき始めた。パキスタンとともに原爆製造や水
爆製造技術をサウジに売る可能性も指摘されている。

これは取りも直さず、ドル基軸通貨体制の崩壊につながることにな
る。

このような世界の動きは、1929年から始まる金融経済政策とよ
く似た動きであるが、その現象面では大きく違うが、参考になる。

ドルの利上げは大失敗であると、サマーズ元財務長官は言っている
が、どうもドル基軸体制を崩壊に導く、それは取りも直さず米国の
覇権を崩壊に導く大失政である可能性が出てきた。

関税引き上げ法であるスムート・ホーリー関税法が30年に成立し
たが、これに匹敵する歴史的な政策の失敗であるような気がする。

世界を大不況に追いやる失政であった可能性が高い。

さあ、どうなりますか?

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企業収益が急減速 10〜12月、新興国不振響く
2016/1/31 2:00 nikkei
 上場企業の収益の伸びが減速している。29日までに発表になった
決算を集計すると2015年10〜12月期の経常利益は前年同期に比べ5
%減になった。中国をはじめとした新興国経済の不振と資源安が逆
風になって…
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海外勢の中国悲観論に道理なし=中国官製メディア
2016年1月29日(金) 12時56分(タイ時間) 
【中国】ジョーズ・ソロス氏をはじめとする海外勢が中国経済の先
行きを悲観していることに対し、中国の政府サイドが一斉に反発し
ている。
  米著名投資家のジョージ・ソロス氏は21日、ダボス世界経済フォ
ーラムに参加した際、ブルームバーグテレビのインタビューで中国
経済に言及し、「ハードランディングに直面している」と指摘。「
これが世界のデフレ圧力を強め、株式市場の下げ要因になる一方、
米国債の人気化につながる」と述べ、「アジア通貨を空売りする」
と明言した。ソロス氏が言う「アジア通貨」には人民元と香港ドル
が含まれるとみられる。人民元に対する弱気の見方が改めてクロー
ズアップされた格好だ。
  さらに、同じく米著名投資家のビル・アックマン氏も中国経済を
悲観。「ソロス氏の見解を支持する」とし、今年も人民元の空売り
を続ける考えを示した。
 <官製メディアが反発>
  こうした悲観論に対し、新華社や人民日報は相次いで反論記事を
掲載。26日付の人民日報海外版は、「ソロス氏の人民元や香港ドル
に対する挑戦が成功するはずはない」、「中国はすでに世界第2位の
経済大国であり、為替レートの一時的、小幅な変動を受け入れるこ
ともできる」と強い人民元を強調した。
 <世界マーケット混乱の要因は中国経済の減速にあらず=李首相>
  また、「中国経済のハードランディング懸念が世界金融市場の混
乱をもたらしている」というソロス氏の見解に対しては、李克強・
首相が25日の座談会で反論。名指しこそしなかったものの、「中国
の景気減速が世界経済に影響を与えたと言っている人がいるが、こ
れはどこに道理があるのか。我々を『過大評価』しているではない
か」と語った。
  李首相はまた、昨年の「政府活動報告」で制定された各種経済指
標の目標はほぼ達成できたが、輸出入だけは例外だった点に言及。
輸出入の目標が達成できなかったのは、世界的な貿易の低迷や国際
商品相場の大幅な下落が予想以上に深刻だったためで、「このこと
は逆に、中国経済が世界経済低迷の影響を受けていることを物語っ
ている」と被害者の側にあることを強調した。
  さらに、中国のGDPがすでに10兆米ドルを超え、世界第2位の経済
大国である点を踏まえつつ、「雇用、所得、環境などのデータから
見ると、中国経済は合理的な範囲で運営されている」とハードラン
ディング懸念を否定した。
《亜州IR株式会社》
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2016年01月30日nevada
ガタガタになっていたアメリカ経済とマイナス金利
アメリカで発表されました以下の経済指標を事前に日米で協議した
結果が、日銀のマイナス金利導入決定だったはずです。
 商務省発表:
 1)12月の耐久消費財受注(対11月比)が、事前予想は<−0.6
%>だったものが実際には<−5.1%>となり、2014年8月以来の
大幅な落ち込みを記録。
 2)第4四半期のGDP速報値が前期比+0.7%(年率換算)となり
、第3四半期の+2.0%(年率換算)から急減速
もし、日銀がマイナス金利を導入せず、今までの金融緩和をすると
していれば、恐らくニューヨークダウは暴落し、かつドルも急落し
ていたはずです。
それほど今回商務省が発表した2つの指標の内容が悪かったのです。
アメリカFRBは景気が回復しているとして利上げに動きましたが、実
際には回復どころか、悪化してきている訳であり、このまま2つの
統計が発表されれば、政策の失敗として追及される恐れがあったた
めに、日銀と連携し、今までアメリカ側から求められてきて拒否し
てきたマイナス(ネガティブ)金利を日銀が導入したと見るのが妥
当となります。
この日銀のマイナス(ネガティブ)金利導入で、日本もヨーロッパ
もNYダウも大幅に上昇しましたので、まずは政策当局者からすれば
、「ご同慶の至り」となるのでしょうが、金融の専門家からすれば
、見方は違ってきます。
かなり辛辣な意見が多いのです。
そのために、発表後、日経平均が物凄い乱高下をしたのです。
その理由は、現在続いています日銀の金融緩和は年間80兆円の国債
を買い入れるという内容ですが、実際にはこれ以上国債買い入れを
拡大できる状況ではなくなっているのです。
 日銀が年間80兆円の国債を買い入れるとなれば、償還分を入れれば
総額で120兆円余りの国債が必要ですが、実際に発行される国債は122
兆円余りとなっており、このままいけば新規に発行される国債のほ
ぼ100%が日銀に行くことになり、今回金融緩和を実施しように
も国債買い入れを増額できなかったのです。
 即ち、日銀は景気の悪化、円高の進行を受けて、打つ手がなかった
ことになるのです。
そこに飛び込んできたのがアメリカからの「要請」で、これは日銀
にとり願ってもない「要請」だったはずです。
ところが、このマイナス(ネガティブ)金利効果は事実上効果がな
く、かえって「もはや打つ手がない」と表明したのも同然であり、
今後金融市場が混乱した際には、何もできない状況に直面すること
になりかねません。
また金融機関からすれば、今回のマイナス(ネガティブ)金利で、
利ザヤは更に減る訳であり、今までは保有してきた国債を益出しし
て何とか決算上はお化粧できていましたが、今や売れる国債が枯渇
してきており、これ以上益出しできないところに、マイナス(ネガ
ティブ)金利であり、金融機関にとってはこれから「地獄」を見る
ことになります。
ヨーロッパではドイツ銀行が9000億円余りの赤字を発表しています
が、実際にはこの数倍の赤字が潜んでいるとも言われており、それ
はデリバティブ損となりますが、これは日本の金融機関にとりまし
ても対岸の火事ではないのです。
アメリカを救うために導入したマイナス(ネガティブ)金利ですが
、持てるカードをすべて使ってしまった以上、日銀は今後打てる弾
がない「戦」に出ていくことになります。
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共同通信2016年01月30日 10:13
 マイナス金利で通貨安競争懸念 日銀決定に欧米紙  
 【ニューヨーク共同】欧米の主要紙は29日付の電子版などで日
銀のマイナス金利導入決定を大きく報じた。マイナス金利に伴う円
安の進行が「通貨安競争」を招きかねないとの見方に加え、安倍政
権の追加景気対策の検討につながるとの論評もあった。
 英紙フィナンシャル・タイムズは「日本がマイナス金利『クラブ
』に加入」と、欧州やスイスなど先行例を念頭に皮肉まじりの見出
しで報じた。「ユーロと円は既に金融政策で押し下げられており、
予想外の日本の動きは(さらなる円安を促して)、新たな通貨安競
争の懸念を引き起こすかもしれない」と指摘している。



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