5607.日本経済の現状と対策?



1月始めから株式市場は大荒れになっている。ドラギECB総裁が金融
緩和を3月にするという発言で、若干戻したが、なぜ世界的な混乱
が起きているのかと、その対策を検討したい。  津田より

0.株価暴落の原因
株価の下落が起こった原因は、米国の利上げであり、その利上げに
よる新興国、特に中国の経済減速や減速による原油価格の下落から
である。株価を決めるのは、1つに企業の利益で、特にROE(配
当率)であり、この部分は実体経済の部分であるが、もう1つが金
利であり、これが上がるとより安全な資産である国債などにシフト
するので、株価は下がる方向になる。

しかし、中央銀行が金利を上げるのは、景気が良い場合であり、そ
れは企業利益が増えるので、金利上昇はその企業利益との見合いに
なる。

3つ目が、リスク・プレミアムである。将来、企業利益が下がるの
ではないかという恐れで、ヘッジファンドなどが空売りを仕掛けて
、株価を急落させて、それに釣られて投資家が投げ売りをすること
で、より株価が下がる局面である。

リスクの恐れがないとなれば、株価は元に戻ることになる。特に金
利動向が不透明であり、景気が利上げに耐えられるのかという心配
があると、このリスク・プレミアムは大きくなる。今回も、このよ
うな原因で株価が急落したが、急落した株価を買う投資家がいるの
が普通であるが、その普通の投資家が日本にはあまりいないので、
米国に比べて日本は異常な下落になったようである。

そのため、原因である米国の利上げがどうなるのか、世界の投資家
が注目している。今週の26日、27日のFOMCの結果しだいである
。利上げ速度を年4回、0.25%で行うと公式的にイエレン議長
は言っていたが、これをどうするのかということである。

投資家の多くが、年2回、0.25%で来年は0.75%になると
見ているようであるが、それに近い回数、数値になるかどうかでし
ょうね。もし、これより、少ない回数、少ない刻みだと米国の株価
は上昇するが、円高になり、日本の株価は下がるかも知れない。

そして、続いて日銀金融政策会合が28日、29日にあり、追加緩
和があるかどうかが注目されている。米国の利上げスピードが遅く
、かつ日銀が追加緩和をしたら、株価の戻り速度は早くなるし、期
待値より少ないと、続落になると見える。

1.現在の経済状況はどうなのであろうか?
量的緩和により日本経済が良くなったのかというと、そうでもない
ようだ。

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 平成27年11月分結果確報
」では、昨年11月の月間現金給与額は、全体的に前年比で横這い気
味ではあるが、名目賃金と、名目賃金指数を消費者物価指数で除し
て算出した実質賃金の動きを見ると、ここ1年でも下降傾向が目立
つことが分かる。

実質賃金が下落しているので、消費も伸びていないし、景気も横ば
いになっている。国民の暮らしは代わり映えしない。ディプロマッ
ト誌には「Japan Without Ambition」が載り、日本は保守的であり
、移民も認めないので停滞社会のままであると絶望している。日本
への見方が大きく変化している。

日本経済は、金融緩和だけでは問題を解決できずに、日本社会の構
造を変革して、移民を認め、女性を認めて多様性のある社会にしな
いと、経済の停滞状況は解消しないと見ている。イアン・ブレマー
も同様な意見を述べている。

日本の企業は、借金を返して内部留保があり、それを日本国内に再
投資できれば、日本は経済的な発展ができるが、日本国内で今以上
の需要が無いので、投資できない。日本は需要不足であり、供給は
今まで通りにあるので、供給過剰な状態になっている。

このため、日本企業は国内投資ではなく、海外に投資したり、M&
Aしたりと海外に投資している。そして、デフレにもなり安い。

このままでは、日本は景気が良くならないと世界の投資家も思い始
めているし、株価的にもアベノミクス相場は終わった。

株価が1/21に16、017円になり、9/29の16、901円を大幅に下
回ったことで、上げ相場はテクニカル的に終わったことが確認でき
る。当面の戻しは、17、348円で、今後の下値は14、581円となる。

しかし、まだ日本の大企業は、好調である。

このためには条件があり、企業業績が良いのは円安の状態であるた
めで、円安が続くということである。

2.日銀の金融政策は
この円安を続けるには、現状では、金融緩和、量的緩和が必要であ
る。金融緩和がないと原油価格下落で日本の経常収支が大幅な黒字
になり、需給面から円高になる。反対に米国が金利を上げると金利
差ができて円安になる。しかし、米国利上げスピードを下げると、
バランスが崩れて、円高になる可能性が出てくる。

もう1つが、金融緩和でマネーサプライが増えていないので、円安
も虚構の1つである。インフレを加速したいなら、銀行に貸し出す
のではなく、日銀が直接、マネーサプライを増やす必要がある。

このため、日銀は日経平均指数連動ETFとリートの株を買っている。

この2つは、日銀が直接マネーサプライを増やす行動である。市中
に資金を供給できる。

現状の株価は暴落したことで、企業業績に比べて、株価が安すぎる
状態であり、日銀が大量に買っても損をしない。株を持っているだ
けで、企業の配当を受け取れる。

ということは、日銀も株価が安い時に買い、高い時に売る方向で、
株価調整をすれば、国民の資金を増やして、その資金を国家予算と
して使うことができる。

今一番、問題なのがヘッジファンドの空売りである。この防止は、
空売りをすると損をする状態にしないといけない。

空売りは、日経255の先物に出るので、この防止は、現物の日経
255で、日銀が介入することである。安い株価の時に集中して、
買いを入れれば、そして、買いの情報を提供すれば、無謀な空売り
はできなくなる。

日経255のPERが10倍以下になると日銀が介入して買うとい
うような数値を公開すると、その数値以上の空売りはできなくなる。

17倍以上になると、徐々に日銀が売りを出すとなると、それ以上
には日経平均株価は上がらないので、異常なバブルも防げることに
なる。

企業収益が下がってきたら、その数値を見直して、適時公開すれば
よいのである。不景気時は、倍数を大きく、高景気時には、倍数を
少なくして、円供給量を調節すれば良いのである。

儲けが出てくるが、これを国庫に納付するか、株は持っていて配当
金を納付して、国家予算に使えば、国民の税金も少なくでき、ヘッ
ジファンドを損させることができる。

株式市場でオーソドックスに国が儲けることが必要になっている。

金融市場化して、株式市場の歪みを増大しているので、それに一定
の歯止めが必要になっているように感じる。

さあ、どうなりますか?

参考資料:
China: It’s Worse Than You Think
http://democracyjournal.org/arguments/china-its-worse-than-you-think/

Japan Without Ambition
http://thediplomat.com/2016/01/japan-without-ambition/?utm_content=buffer82fb2&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

Financial collapse leads to war
http://cluborlov.blogspot.mx/2016/01/financial-collapse-leads-to-war.html#more

The New Geo-Economics
http://www.project-syndicate.org/commentary/hope-for-better-global-governance-by-joseph-e--stiglitz-2016-01

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今後の相場は「米長期金利の波乱」に要注意
連銀の利上げどころではない影響力がある
馬渕 治好 :ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券
アナリスト 2016年01月24日TK
前回の記事(1月10日)で、「過去の相場をみれば、売られ過ぎが
さらに売られ過ぎになったものが、もっと売られ過ぎになってしま
うことは、しばしばある」と、さらなる株価下落に対する懸念を示
した。残念ながら先週途中までの市場動向は、懸念した通りとなっ
てしまった。
しかし「売られ過ぎ」という言葉で示したように、実体経済・企業
収益から見た妥当な株価水準は、現状のはるか上だとも考えている
。前回は、米金融政策を巡る見解や中国など新興諸国経済について
の見方、「リスク回避のための円高」といった現象を取り上げ、一
つ一つ事実やデータに基づき、市場で語られる不安がどのように誤
っているのかを解説した。

悪役を押し付けられた米国金融政策
特に、米国が緩和の出口を出始めたことが、世界の株式市場などか
らの資金引き上げにつながっている、という見解がまったくの誤り
であることを、資金量(マネタリーベースとM2)の具体的な伸びか
ら説明した。
金利面からの解説を加えると、FFレートの誘導目標がゼロから0.25
%にわずか上昇しただけで、天地がひっくり返ったかのように騒ぐ
のは、行き過ぎだろう。ある投資家が、米国の短期金利がゼロなら
大いにリスク資産にお金をつぎ込むが、0.25%になっただけで一気
に資金を引き上げる、などと考えるはずもない。
では、世界(特に新興諸国)の株価がなぜ大きく下げたか、という
ことだが、3つの背景が考えられる。@実際に米短期金利の小幅上昇
について、もしかすると大変なことが起こっているのではと間違っ
た投資家が、株式を売りに回った、Aそのように間違う投資家の不
安につけこもうと、売りを進めた投機筋が多かった、B米国の金融
政策とは関係なく、景気が減速する新興諸国が増えた、というもの
だ。もしくは、Bが主要因だが、12月の連銀の利上げが後付けで悪
者にされた、という面も大きいだろう。
実は、今回の相場波乱において、米金融政策に悪役を押し付けた現
象は「騒ぎ」の域を出ていない。米長期金利について、たとえば10
年国債利回りが2.0%近辺に貼りつき、まったく上がっていないから
だ。
内外の株価は当面、現在の悲観の行き過ぎから、経済や企業収益が
指し示す水準に向けて回復しようが、下に行き過ぎた市場が上に行
き過ぎることも、しばしば生じる。年央に買われ過ぎの状況が強ま
った場合、「1月の騒ぎって、何だったっけ」といった投資家心理に
なっている可能性も否定できない。その時に、「米国株価が大きく
上昇したのは米景気が強いためだ、であれば長期金利が上がっても
おかしくない」という局面に進むことがありうる。
米金利を巡る「騒ぎ」が「懸念」になる展開
米連銀がコントロールする短期金利は、現状で急速に引き上げられ
ることはありえない。今年の利上げの合計幅は1%をはるかに下回る
だろう。しかし米長期金利は、市場が決める。債券市場においても
、行き過ぎはありうる。米景気に対する楽観論が広がり過ぎると、
10年国債利回りが、短期間に一気に1%幅以上上がる展開も否定はで
きない。
資産運用や実物経済に与える影響は、短期金利より長期金利の方が
圧倒的に大きい。長期株式投資と比較する金利は長期金利が基準と
なるし、企業や家計の借り入れ金利も短期より長期連動だ。長期金
利が跳ね上がれば、その影響は連銀の利上げどころではない。つま
り、足元の米金利を巡る「騒ぎ」が、今年後半には本当の「懸念」
になりうる。
以前、当コラムでは、日本株の2016年の見通しは、年央、年末安
だと述べた。そこでは参議院選挙や2017年の消費増税(再延期の可
能性は残るが)を、そうした相場見通しの背景要因として挙げたが
、米長期金利波乱の可能性も、それに加えたい。
ただ、国内株価が、年央に向けて上昇した後、年末にかけて再度調
整色を強める、というのは、少し先の話だ。当コラムの読者におか
れては、「そう言えば1月に馬渕さんがそんなことを言っていたかな
」と心に置いておくにとどめていただき、今後の当コラムでは、当
面一週間ごとの動向を中心に、一歩ずつ進みながら述べていきたい。
投資判断は、最終的には自分だけで判断すべき孤独な作業で、ほか
に誰か絶対に見通しが当たる人がいるわけではない。希望と不安の
狭間で、細く長い道を一人で歩いていくようなものだ。その際に、
隣で重い荷物を背負って、並んでとぼとぼ歩いている馬渕がいるの
だ、とお感じになっていただければ幸いだ。
身動きがとれない日銀の苦しい立場
ということで、今週の展望だが、売られ過ぎからの株価リバウンド
が期待できるなか、市場の関心は1月28日(木)〜1月29日(金)の
日銀の金融政策決定会合に集まりそうだ。ただ、日銀は極めて苦し
い状況に追い込まれている。物価見通しの再引き下げが予想される
が、これはエネルギー価格の下落によるもので、日本にとって悪い
ことではない。それに経済環境には急変はない。
急変したのは、市場動向だ。株価下落に対応するため、追加緩和が
行われた、と解釈されれば、株価が下がれば必ず日銀が助けてくれ
る、との甘えが広がり、今後の金融政策が縛られる恐れが生じる。
株安や円高そのものではなく、それが実態経済に悪影響を与えると
すれば、日銀が対応してもおかしくないが、それを判断するのは時
期尚早だ。
かといって、日銀が何もしない場合、勝手に期待した市場が勝手に
失望するかもしれない。1月21日(木)にECBドラギ総裁が、3月の追
加緩和を示唆するという「口先マジック」で、世界市場の立て直し
に貢献した直後だ。黒田総裁をドラギ総裁と比べる向きも多いだろ
う。
また、現在の日本株の下落材料は、ことごとく海外から降ってきて
いる。国内発の株価下落要因が少ないだけに、日銀が追加緩和して
も株価押し上げ効果は限られているかもしれない。このため、日銀
は、動いても動かなくても、厳しい情勢に追い込まれていると言え
る。
今週の日経平均株価は、基調的にリバウンド継続を見込むが、日銀
の金融政策決定会合を巡っては、依然として相当の株価の上下動が
生じうる。このため今週は、1万6700〜1万8000円と、かなり広いレ
ンジを予想する。
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大西宏2016年01月22日 12:23
安倍内閣には「経済が、結果を出す」 
政権の安定性が唯一の取り得の安倍内閣ですが、経済が思わしくな
く、いよいよ夕陽が沈む黄昏の様相となってきました。下り坂に向
かうと、足元でいろいろ問題も起こってきます。成長戦略の旗振り
役で安倍総理の盟友、甘利経産相の金銭授受疑惑の発覚が象徴して
います。
安倍内閣の功績としてはTPP妥結は評価したいところですが、アベノ
ミクスが長い目でみれば駄目でした。異次元の金融緩和で円安誘導
し、株価があがって、為替で大企業が未曾有の利益をあげた。それ
で宴となりました。
そこまでは良かったのですが、その擬似好景気によって、ほんとう
の課題であった産業構造の転換が遅れる結果になったように感じま
す。しかもお題目としては切れ味がよくない「一億総活躍」を唱え
たのですが、でてきた政策はがっかりするものが多かったのではな
いでしょうか。
アべノミクス第二弾も、総花で、これといった経済政策の目玉がな
いままに、中国経済の減速、原油安が引き金となり、株価の下落、
さらに円安から円高へと流れが変わりました。アベノミクス効果は
足元から揺らいできています。運もツキも尽きたの一言ではないで
しょうか。
つい最近、不要な書籍を処分しようとしていたら、高橋洋一氏の「
アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる」がありました。今か
らすれば、まるでブラック・ジョークです。
日本の経済停滞は「デフレが原因だ」とう風説がメディアを支配し
、経済停滞という原因とデフレという結果を混同した話がまことし
やかに広がっていた頃の一冊でしょうか。その頃は、異を唱えると
「それはデフレ容認だ」とまるで魔女狩りのような状況になってい
ました。
高橋氏にかぎらず、リフレ派の人たちは、日本経済大躍進とならか
ったのは、消費税をあげたからだということのようですが、本当に
そうなんでしょうか。俄には信じられないことです。残念ながら、
経済に関しては、昨年秋の予感どおり、いやそれよりも思わしくな
い展開になってきたようです。
安保法制は数の論理で成立しても、経済はそうはいきません。ほん
とうの力量が問われてきます。さて起死回生の手を打てるのか、な
すすべもなく経済が減速し、内閣が失速するのか、安倍内閣に残さ
れている時間の余裕は少ないのではないかと思います。
 安倍内閣は残念ながらもうすぐ失速しそう
いずれにしても、安定していることが最大の取り得だった安倍内閣
ですが、足元の経済が思わしくなくなれば、自然、やがて支持率も
下がってくるでしょう。自民党が掲げた「経済で、結果を出す」ど
ころか安倍内閣の寿命は「経済が、結果をだす」ことになりそうで
す。
ただ、自民党は小選挙区制で党内にリーダーが育ってくるメカニズ
ムを失い、頼みの野党も、いつまでも過去の時代のパラダイムから
抜け出せず、混迷したままで、安倍内閣に代わる政権リーダーが見
当たらないために、安倍内閣の黄昏状態が長く続くのかもしれませ
ん。それはそれでも、次世代のリーダーなり、新しい改革の芽が生
まれ、育ってくる状況ができればいいことです。
ただ、実体経済を変えるのは政治ではなく、民間の知恵や努力です
。政治ができるのは、そんな民間の知恵や努力を引き出すためのビ
ジョンを示すことや、日本が世界経済のなかで勝ち残るための戦略
を示すことではないでしょうか。
もはや政治や官僚で経済が動く時代ではなく、ビジネスも、政治で
左右されるというのはよほどの大企業か、利権ビジネスぐらいなも
のです。それぞれが、やるべきことをやる、チャレンジするものが
報いられるという時代の空気が広がっていくのがいいと感じます。
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石川和男2016年01月22日 14:00
アベノミクスは平均給与額も平均賃金も上げていない
 厚生労働省が今日発表した「毎月勤労統計調査 平成27年11月分結
果確報」では、昨年11月の給与水準について報告がなされている。
  一昨年12月14日の総選挙において、安倍政権は、2015年10月に予
定していた消費税の再増税(税率8%→10%)を2017年4月に延期す
ることを旨として大勝した。
  この再増税も、社会保障システムを維持するのに必要な安定財源
を確保するためのもので、自民党は再増税に関しては、延期するの
と同時に判断基準には景気動向を関わらせないことを公約して総選
挙に勝った。総選挙直後は、再増税時期は2017年4月に決まったもの
と思われた。
  賃金水準は、国民が経済状況を体感する最たる指標の一つ。直近
のデータで、昨年11月の月間現金給与額は、全体的に前年比で横這
い気味〔資料1〕ではある。だが、名目賃金と、名目賃金指数を消
費者物価指数で除して算出した実質賃金の動きを見ると、ここ1年
でも下降傾向が目立つ〔資料2、資料3〕。
  再増税の可否判断において景気動向は関係なくなったことになっ
ているものの、それは前回の総選挙時での政治の口約束に過ぎない
と思っておくべきだ。
  “再増税の再延期”が適切とは全く思わないが、先の総選挙以降
の経済状況や、勘案すべき政治情勢を考えると、“再増税の再延期
”というもう一つの選択肢を用意しておかなければならないだろう。
  アベノミクスの成否を判定する材料として、賃金水準は引き続き
最重要の指標の一つであることに違いない。
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鉄鋼のたたき売りに見る中国の危ない改革先延ばし体質
2016年01月22日(金)18時44分newsweekJ
齋藤尚登
 中国がマージンを犠牲にして鉄鋼の輸出攻勢をかけています。背
景には過剰生産能力問題があるのですが、その削減は習近平政権の
命綱である安定した雇用を損なう可能性があり、大胆に進めること
は難しいとみられます。中国による鉄鋼のたたき売りは、改革先延
ばし体質がその背景にあり、まだしばらく続きそうです。
 中国の鋼材輸出量が急増しています。中国通関統計によると、2014年
は前年比50.4%増の9,379万トン、2015年は同19.9%増の1億1,240万
トンと日本の鉄鋼生産量を超えるほどの量となりました。
 その一方で、国家統計局によると、2013年に前年比11.5%増を記
録した中国の粗鋼生産量は、2014年は同0.9%増の8億2,270万トン、
2015年は同2.3%減の8億383万トンと、頭打ちから減少に転じていま
す。輸出量が急増する一方で、生産が低迷するのは、国内需要が落
ち込んでいるためです。中国の実質GDP成長率は2010年の前年比10.6
%をピークに5年にわたる低下傾向が続き、2015年は同6.9%にとど
まりました。特に、2015年は不動産開発投資の急減速や過剰生産設
備を抱える重工業分野の新規投資の落ち込みなどが国内鉄鋼需要の
低迷をもたらしました。こうしたなかである程度の設備稼働率を維
持するために、中国は鋼材の輸出ドライブをかけているのです。
 中国の鋼材輸出金額は、2014年の前年比33.0%増の708.4億米ドル
から2015年は同11.3%減の628.3億米ドルへ減少しました。単価は実
に同26.0%の下落です。鉄鉱石価格の下落もあり、マージンが確保
できていれば良いのですが、2015年1月〜11月の鉄鋼企業の税前利益
は前年同期比68.0%減益と全くの不振です。中国の鉄鋼企業はマー
ジンを犠牲にして輸出攻勢をかけているのです。これによって、鉄
鋼価格は大きく下落し、日本をはじめ世界の鉄鋼メーカーの収益に
逆風が吹いています。供給過剰に起因する鉄鋼価格の値崩れにより
、原料の鉄鉱石価格も下落しており、原料を供給する資源国の景気
にも大きなマイナスの影響を与えています。
毎年、設備淘汰目標は掲げるものの
 何故、このようなことが起きるのでしょうか?問題の根本は、中
国の鉄鋼の過剰生産能力にあります。リーマン・ショック後の世界
的景気低迷への対応策として2008年11月に発動された4兆元の景気刺
激策によって、中国の粗鋼生産能力は2008年の6.4億トンから2013年
には11億トン超へと急速に拡張されました。中国政府は毎年、鉄鋼
の設備淘汰目標を掲げ、それが達成できたと胸を張ります。しかし
、それは多くの場合、単なる一時休止にすぎないのが現状です。全
国レベルで見れば淘汰対象となる旧式設備(工場)であっても、そ
の地方にしてみれば雇用面等で重要な意味を持ちます。旧式設備の
スクラップ化による供給過剰の解消は「言うは易し行うは難し」の
典型となっています。
 2015年12月の中央経済工作会議では、2016年の経済運営方針が話
し合われました。キーワードは「サプライサイドの構造改革」です
。これは聞きなれない言葉だと思いますが、爆買いに代表されるよ
うに中国の消費者の需要はますます高度化・高級化する一方で、供
給側がそれに応えることができていないのが問題であり、改革の重
点を供給側に置くべきだ、という意味合いのようです。規制緩和や
減税などで起業とイノベーションを促進し、「インターネット+(
プラス)」(ネット販売はインターネット+小売業、という具合に
、既存産業とインターネットの融合により、新たなビジネス分野を
開拓することを指します)や「中国製造2025」(製造業のアップグ
レード)を推進する一方で、企業の優勝劣敗や過剰生産能力の削減
を進めるという政策です。起業やイノベーションは未来志向でやり
やすいかもしれませんが、問題は、優勝「劣敗」や過剰生産能力削
減など過去の清算の部分です。
政権維持のため改革より雇用が優先
 昨年12月9日に開催された国務院常務会議では、国家のエネルギー
消費・環境保護・品質・安全基準を満たさないか、3年以上赤字が続
く生産能力過剰業種の企業(いわゆるゾンビ企業)について、M&A・
財産権譲渡・転業・閉鎖破産などの方法によって処分し、2017年末
までに企業の赤字額の著しい減少を目指すとしました。それでは今
後、企業の優勝劣敗や過剰生産能力の削減は大胆に進められるので
しょうか?答えは「否」です。既に政府当局者は「救済合併」を中
心とし、雇用の悪化を引き起こす可能性のある閉鎖破産はできるだ
け採用しない最後の手段である旨を明言しています。
 習近平政権は、経済政策運営上安定した雇用を最も重視し、そし
て人々の生活が前の年よりも良くなっていると実感できれば、同政
権への支持が続くと認識しています。それを損なう可能性がある改
革は、重要度が高くても緩やかにせざるを得ないのです。冒頭でみ
た中国による鉄鋼のたたき売りは、改革先延ばし体質がその背景に
あり、まだしばらく続きそうです。
 しかし、赤字経営が続く生産能力過剰業種のゾンビ企業が生き永
らえることは、不良債権を増やし、その処理コストを高めるだけで
す。それを良しとしないのであれば、企業の「劣敗」や過剰生産能
力の削減を前提として、労働者が能動的に他業種にシフトできるだ
けの再教育・トレーニングを充実させることにこそ、政策の重点が
置かれるべきでしょう。
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ロイター2016年01月22日 15:39
焦点:浮上する政策限界論、消費増税見送りなら市場の洗礼も
[東京 22日 ロイター] - 金融マーケットでは、政策対応の限
界が意識されてきた。金融・財政の政策選択の余地が狭まるなか、
せっかくの政策発動でもコストに見合った効果が望めないとの冷や
やかな視線が政府・日銀に向けられている。特に債務残高が1000
兆円を超える超借金大国・日本が、やむにやまれず10%の消費増
税を延期すれば、今度こそ市場の「洗礼」を浴びかねないという危
機感も広がってきた。 
<「マジック」再現には疑問も>  
市場のリスクオフムード拡大に歯止めをかけたのは、欧州中央銀行
(ECB)のドラギ総裁の発言だった。21日の理事会後の会見で
、3月の追加金融緩和を示唆すると、欧米市場で株価が反発、ドイ
ツの2、5年債利回りは過去最低を更新した。
しかし、市場では冷ややかな受け止め方も少なくない。「(日本株
は)あくまで自律反発。海外勢の処分売りが終わった感触はない」
(国内証券・株式トレーダー)という。22日の日経平均<.N225>は
900円を超える反発となったが、前場の東証1部売買代金は
1.1兆円に過ぎない。
みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、
ECBが追加緩和でできる施策は限られていると指摘。「想定され
るのは、拡大資産購入プログラム(APP)の月間購入額の増額だ
が、前回はこれができず市場に失望を与えた。ECB内は決して一
枚岩ではなく、3月の会合でも12月のように、肩透かしとなる可
能性もある」と話す。
高まる金融緩和の限界論に対し、ドラギ総裁は「われわれには行動
する力と意欲、そして決意がある」とし、金融政策手段の活用範囲
に対しても「制限はない」と強く否定したが、市場は言葉通りには
受け取っていない。
日銀の次の一手としては、ECBのようなマイナス金利導入も選択
肢の1つだが、日本では金融機関の負担が大き過ぎるとして、導入
には否定的な見方が多い。
超過準備に対する付利の引き下げについても、準備預金の残高が集
まらなくなり、マネタリー・ベースの目標が維持できなくなる可能
性がある。追加緩和で国債買い入れの増額があっても、0.1%の
付利がある限りは、10年債利回りのマイナス突入は考えにくい。
<狭い財政対応の余地>
大和証券・チーフエコノミストの永井靖敏氏は、日銀が大規模に進
めている国債買い入れを増額した場合、むしろ出尽くし感が浮上し
、「玉切れ(限界論)」を意識せざるを得なくなるとみる。
このため、市場では、金融政策に限界が到来したならば、次は財政
政策だとの声も徐々に強まっている。
しかし、2015年度1次補正の成立後、政府は来年度予算の年度
内成立に全力を挙げる構えであり、2次補正予算案の編成と国会成
立は現実味が薄い。15年度には基礎的財政収支(プライマリーバ
ランス)赤字のGDP(国内総生産)比半減目標もある。
4月以降に2016年度の1次補正を早期に組むケースを想定する
声も多い。7月には参院選があるためだ。「円高・株安がさらに進
行し、企業業績が悪化、デフレ脱却どころか、アベノミクス崩壊で
選挙を迎えるようなことは、政府・与党としては何としても避けな
くてはならない」(外資系証券エコノミスト)との思惑が、すでに
出始めている。
2月中旬に発表される2015年10─12月期実質国内総生産(
GDP)が、個人消費の落ち込みによって、小幅マイナス成長にな
るとの観測も市場では浮上。安倍政権は、なりふり構わず景気テコ
入れ策を打ち出してくるとの観測もある。
ただ、建設現場などで人手不足が目立つなか、公共投資拡大は容易
ではない。金利が歴史的低水準にあるのは、日銀の買い入れもある
が、投資機会が減少しているからだ。無理な財政拡大は、中国のよ
うに過剰な設備を増やしかねない。
円債市場が警戒するのは、2017年4月に予定されている消費税
率10%への引き上げ延期だ。政府は再三、財政規律を強調してい
るだけに、増税延期の市場インパクトは想定以上に大きくなる可能
性がある。2度目の延期は財政規律への疑いも強くなりかねない。
円債市場からは「延期になると、複数の格付け会社から日本国債の
格付けが引き下げられることになるだろう。日銀のQQE(量的・
質的金融緩和)があるため、金利の急騰はないだろうが、市場参加
者はリスク許容度を考慮に入れたうえで、日本国債への投資を控え
ることになり、ますます市場規模が縮小しかねない」(国内金融機
関)と、警戒する声も出ている。
世界的なリスクオフが強まる中で、政策対応を求める声も高まって
きた。しかし、2008年のリーマン・ショックで大規模なマクロ
政策を打った後に、残っている「駒」はかなり少なくなっているの
が「日本だけでなく世界の主要国の実態」(大手銀関係者)だ。
3年目を迎えた安倍政権とアベノミクスは、世界的な資産価格下落
の大波を受けながら、重大な岐路に差し掛かっている。
(伊藤武文 取材協力:星裕康 編集:伊賀大記)
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2016年 01月 22日 09:59 JST 
焦点:市場に日銀ETF買い増し期待、株価のゆがみ増大も
[東京 22日 ロイター] - 年初からの株安が止まらない中で、
日本株市場が期待する政策は、日銀によるETF(指数連動型上場
投資信託)の買い入れ増額だ。限界説が強まる国債買い入れと異な
り、日銀の買い入れに応じて新規設定されるETFの増額は難しく
ない。しかし、中央銀行がリスク資産を大量に買うことによる株価
の「ゆがみ」はさらに強まる。市場では期待が膨らむ半面、不安も
大きい。
<昨年は日本株最大の買い主体に>
海外勢が買えば日本株は上がる、売れば下がる──。そうした市場
の「常識」は昨年崩れた。
2015年、海外投資家は現物株と先物合計で3兆2818億円売
り越した。2008年以来7年ぶりとなる大幅な規模だ。
しかし、年間で日経平均.N225は9.07%、TOPIX.TOPXは
9.93%上昇した。米ダウ.DJIはマイナス2.2%、独DAX(
配当なし).GDAXIPはプラス6.8%と、海外の主要株価指数と比べ
ても極めて高いパフォーマンスだ。
現物株のみで見ると、海外投資家が売り越した年に日経平均が上昇
したのは1989年以来、26年ぶりとなる。
誰が買ったのか。筆頭は日銀だ。日銀は15年に3兆0694億円
のETFを購入。自社株買いが中心の事業法人は現物・先物合計で
2兆9467億円の買い越し、(公的)年金の売買を経由する信託
銀行は同1兆7977億円の買い越しだった。
ETF購入による直接的な株価押し上げ効果だけでなく、日銀の量
的・質的金融緩和策(QQE)による株高効果は極めて大きいとみ
られている。
ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏の試
算では、14年10月末に決定されたQQE2による日経平均の押
し上げ効果は約2500円。「ETF買いに伴う直接的な株価押し
上げよりも、日銀が下値を買う安心感という投資家心理への働き掛
けが大きい」(井出氏)という。
<連鎖的な株安止める効果に期待も>
年初からの株売りは海外勢が主体だ。東証および大取が公表してい
る投資部門別売買動向(現物・先物合計)によると、16年に入り
約2週間で1兆7211億円を売り越した。CTA(商品投資顧問
業者)など投機筋の売りに加え、海外年金など長期投資家の現物株
売りも出ているとされ、日経平均は1年3カ月ぶりの安値に沈んで
いる。
底の見えない株安が進むなか、日銀のETF買い増額に市場の期待
は高まる。来週28─29日の日銀金融政策決定会合で、日銀が追
加緩和を決定するとの予想は現時点では少数派。それだけに日銀が
サプライズで動けば、急速な株高につながる公算は大きい、と一部
の参加者は予想する。
ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役の菊池真氏は「
マネタリーベースの年間増加額を80兆円から100兆円、ETF
買い入れ額を3兆円から5兆円に引き上げれば、短期的に日経平均
を1000─1500円程度押し上げる」とみる。
株価の急落局面では、たとえバリュエーション的に割安となっても
、恐怖感からリスクを取る動きが極端に低下し、さらなる株安を招
く可能性が高まる。恐怖感に縛られない「公的資金」の買いが、連
鎖的な株安を止めるのには欠かせないという見方も少なくない。
<企業業績拡大なければ、もろい株高に>
だが、株安を止める効果があったとしても、これまで2回のQQE
のような継続的な株価押し上げ効果があるかどうかには、株式市場
でさえ疑問視する声が多い。
1つは円安効果が見込みにくいためだ。QQEを背景にドル/円
JPY=EBSの平均レートは、おおまかに13年100円、14年110
円、15年120円と10円ずつ上昇。それにつれて企業業績は円
安効果を享受し、過去最高を更新してきた。
今年はどうか。連続的な米利上げ観測が後退する中で、たとえ追加
緩和があったとしても、足元の116円台から130円に上昇する
のは容易ではない。企業業績に強気なアナリストでも、円安抜きに
来期大幅な増益を予想する声はほぼ皆無だ。
日銀のETF買いという需給に直接的な影響を与える政策で株価が
上昇したとしても、企業業績の拡大という「裏付け」がなければ、
もろくゆがんだ株高となる。
昨年12月に発表されたQQE補完策を受け、市場では「設備・人
材投資に積極的な企業を対象とするETFが出そろうとみられる3
月以降に新ETFの購入枠を広げる」(外資系証券)との見方が出
ている。
しかし、ETF買いの増額は「向こう2─3年だけの相場にとって
は良いが、10年ないし、それ以降を見ると歓迎できる政策ではな
い」と松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は話
す。
中央銀行が株式を購入するという「異次元」の政策。日銀はすでに
約7兆円のETFを保有している。債券と違い株式には償還がなく
、いずれ売らなければならない。 
追加緩和策としてETF買い入れ増額が決定された場合、市場は短
期と長期、両方の効果を見極めることになりそうだ。
 (杉山容俊 編集:伊賀大記)
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2016年 01月 22日 12:35 JST 
中国のハードランディングは不可避─米投資家ソロス氏=通信社
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米著名投資家のジョージ・
ソロス氏は21日、中国経済がハードランディングし、世界的なデ
フレにつながる恐れがあるとの見通し示した。
ソロス氏は世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催され
ているスイス・ダボスからブルームバーグTVに対し、「ハードラ
ンディングは不可避」と言明した。「これは予想ではなく、実際に
目にしていることだ」と述べた。
同時に、中国が十分な資源や3兆ドル規模の外貨準備高を持ってい
ることなどを踏まえ、同国がハードランディングを「乗り切ること
は可能」との認識を示した。
中国経済減速の影響は世界全体に波及するとし、中国情勢に加え、
原油や商品価格の急落がデフレの根本的な要因になるとも指摘した。
また、米S&P総合500種をショートに、米長期国債をロングに
していることを明らかにした。
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底値見えない原油相場
供給過剰、景気減速続き
2016年1月21日 17時31分
 【ニューヨーク共同】原油相場の底値が見えない。20日のニュー
ヨーク先物相場は一時1バレル=26・19ドルをつけ、約12年8カ月ぶ
りの安値水準となった。原油供給の過剰や中国をはじめとする世界
的な景気減速への懸念が続き、反転材料は見当たらない。
 米国の新型原油「シェールオイル」とのシェア争いで、石油輸出
国機構(OPEC)は生産量を高水準で維持している。16日には米欧な
ど各国が産油国イランへの経済制裁を解除。イラン産の原油輸出が
解禁され世界的な原油余りが加速するとの思惑が強まった。
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鉄壁に見える世界一の外貨準備高385兆円−弱点は対M2比率の小ささ 
2016/01/21 07:07 JST
    (ブルームバーグ):ほぼあらゆる面で中国が保有する
3兆3000億ドル(約385兆円)の外貨準備は、鉄壁に見える。なにし
ろ世界一の規模だ。だが1つの問題がある。 
それは、広範なマネーサプライ(通貨供給量)の指標であるM2に
対する比率が15.5%相当であるということだ。ブルームバーグの集
計によれば、これは2004年以来の低さ。タイやシンガポール、台湾
、フィリピン、マレーシアなど大半のアジア経済より低い水準だ。 
それ以外の従来からの尺度でみれば、中国の外貨準備高は危機時の
水準を大きく上回っている。野村ホ―ルディングスによると、その
規模はドル建て短期債の返済に必要な額の5倍以上。向こう2年分
の輸入支払いも可能だという。 
だが対マネーサプライ比の小ささは、資本流出が起きればバッファ
ー機能が急低下し得るリスクを浮き彫りにする。昨年11月までの1
年間に1兆ドルに近づいた中国からの資本流出は加速している。 
シュローダー・インベストメント・マネジメントで35億ドル相当の
新興市場資産運用に携わるアブダラ・ゲゾール氏は、「M2に対す
る外貨準備高の比率は資本流出圧力をモニターする重要な鍵」だと
指摘し、「懸念されるのは資本逃避の一段のエスカレートを阻止で
きないことだ」と述べた。 
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人民銀が銀行に6000億元供給へ、春節前の資金不足に対応
2016年01月19日(火)23時56分
[北京 19日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は19日
、2月上旬の春節(旧正月)の連休前に見込まれる資金不足に対応
するため、銀行システムに6000億元(912億2000万ドル
)超を供給する方針を明らかにした。
ウェブサイトに掲載された声明によると、資金供給は、政策ツール
である翌日物の常設貸出ファシリティー(SLF)、中期貸出ファ
シリティー(MLF)、担保付き補完貸出(PSL)を通じて行う。
春節前は流動性がひっ迫しやすく、人民銀は通常、金利を安定的に
維持するため、銀行システムに大規模な資金供給を行う。
人民銀は「国際金融市場の混乱が増しており、銀行システムの流動
性のボラティリティーも高まっている」と指摘。春節前の資金不足
対策として、銀行システムの流動性を「妥当かつ十分」に維持し、
市場金利を安定的に保つとしている。
申銀万国証券(上海)のエコノミスト、李慧勇氏は「流動性の注入
により、目先に預金準備率を引き下げる必要性が低下する可能性が
ある」とし、「これは柔軟な政策手段を用いて潤沢な流動性を維持
するとの中銀の意図を反映している」と述べた。
また人民銀は同日、MLFを介して、国内の銀行システムに4100
億元(623億4000万ドル)を供給。3カ月物MLF金利は
2.75%に、1年物金利は3.25%にそれぞれ引き下げた。
これが春節前の6000億元の資金供給の一部かどうかは不明。
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竹中正治2016年01月18日 17:32
 中国、債務膨張経済の途方もない現状  
BIS(国際決済銀行)がサイトで主要国のセクター別債務(credit)
残高の長期時系列データを開示していることに気が付いた。 バブ
ルとその崩壊は、必ず信用の急速な膨張とその後の信用収縮を起こ
す。従って、近年IMFや各国中銀が力を入れている「バブル・モニタ
ー」のためのデータ整備の一環として行われたのかもしれない。以
下サイト http://www.bis.org/statistics/totcredit.htm 
さっそく、これを使って中国の信用膨張状況について他国と比較し
たところ、途方もない姿が浮き上がって来たので、とりあえずここ
に開示しておこうか。 
まず1段目の図はセクター別に中国の債務残高のGDP比率の推移を示
したものだ。民間非金融部門の債務(credit)比率はもともと右肩上
がりに増加してきたが、2009年以降、GDP比率で見て増加のテンポが
著しく上がり、200%を超えた。 
リーマンショック後の世界不況に対して、財政資金よりも金融資金
を総動員して行った4兆元の需要創出策が、債務の膨張に拍車をかけ
たのだろう。おそらく地方政府が作った融資プラットフォームは形
態は民間なので、このカテゴリーに入っていると思われる。 
2段目の円グラフは、2015年6月時点の同残高規模を主要新興国をピ
ックアップして比べたものだ。 規模において中国の残高が圧倒的で
あることがわかる。額はドル換算 
3段目の図は、同債務残高を日米欧で比較したものだ。中国のそれは
既にユーロ圏を抜き、米国の同残高に迫っている。 
4、5段目の表は、各国の上記残高とそのGDP比率だ。中国の民間非金
融部門の債務GDP比率は201%で、ここにピックアップした全ての国
の中で突出している。 これは債務のグロス残高であり、一般に金
融が発達し、負債の見合いとなる資産も蓄積した先進国では、この
比率は高くなる傾向があるようだ。しかし、中国の債務GDP比率は、
主要他新興国はもとより、日米欧の比率を越えて突出している。 
つまり、中国経済は途方もない速度と規模で債務を膨張しながら、
成長してきたのであり、それがこれまでの高成長のエンジンでもあ
った。それを可能にしたのは、農民から土地を徴発して進められた
様々な固定資本形成だ。 
その結果、自動車、鉄鋼分野などで他国では考えられないような過
剰生産力を抱え、また住民もテナントも入らないゴーストタウンや
ゴースト工場団地を莫大に建設して、失速していると言っていいだ
ろう。 
 中国の民間非金融部門の債務比率が日米欧の平均値並に下がるとし
ても、GDP比率で40%もの圧縮になる。 おそらく債務の相当な部分
は返済不能となる(なっている)。 中国経済の今後には、悪い意
味で想像を超えた展開が待ち受けていると思った方がよいかもしれ
ない。 



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