5606.不安定な経済状況の原因



米国の利上げにより、今回の世界的な混乱が始まった。まず中国人
民元のドルリンクで、他通貨に比べて人民元が高くなり、輸出がで
きなくなったことで中国政府は人民元の切り下げた。しかし、それ
で中国企業は米ドル債務が多く、その償還を焦ったことで、ドル買
い人民元売りが止まらないことになり、一層の人民元安を招いた。

中国の経済は減速して、かつ米国のシェールオイルの生産は維持し
、その上にイランの制裁解除でイラン原油が世界に供給できること
で、原油の価格が下落して、その下落でオイルマネーが逆戻りする
と怯えて、世界の投資家がリスクオフに傾いた。

このため、世界的な株安になってしまった。特にアジアの株式市場
の下げは厳しい。中国経済の減速を直接に影響することで、香港を
中心に東京市場も大幅に下落した。それに比べてNYSEやヨーロッパ
の株式市場は、それほどでもない。

地理的な環境で経済への影響が違うことで、市場の影響度も違うこ
とになっている。地経学をロゴフは提唱していた。

ということで、日本は中国の影響をまともに受けていたのである。

しかし、量的緩和から抜け出そうとしても、なかなか抜け出せない
ようである。日本も金融緩和から抜け出そうとして、何遍も躓いた
過去があるが、非伝統的な金融政策である量的緩和から、どう抜け
出せない良いのか、経済的な理論もなく、手探りである。

ぬるま湯から出るのはなかなか大変であり、どうしても、またぬる
ま湯を市場は求めてしまうことになる。

しかし、熱を加えて、熱い湯にすると、経済は死んでしまう可能性
もあり、お湯加減が難しい。

FRBのお手並み拝見ですね。

さあ、どうなりますか?


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2016年 01月 22日 14:30 JST 
コラム:世界的リスクオフ反転へカギ握るFRB、焦点はイエレン
証言
田巻 一彦
[東京 22日 ロイター] - ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が3
月に金融政策スタンスを見直す考えを示し、世界の株式市場には、
買い戻しの動きがみえてきた。だが、年初からの世界的なリスクオ
フ心理の強まりは、米利上げが起点になっており、米連邦準備理事
会(FRB)がどのようなシグナルを出すのか、見極めないとリス
クオンへの転換は難しいだろう。その意味で2月10日のイエレン
FRB議長による米議会での発言が、当面の焦点になりそうだ。
<とりあえず効いたドラギ発言>
ドラギECB総裁の発言は、「底なしの下落リスク」を感じ始めて
いた株式市場やコモディティ市場の関係者にとって、願ってもない
朗報となった。
というのも、昨年12月に追加緩和を実施したばかりであり、その
結果も市場の期待値を下回って、ユーロが下落するどころか上昇。
「ドラギマジック」に陰りが見え、今回は何もないという声が多か
ったからだ。
しかし、21日の会見では、年明け以降、新興国の成長見通しや金
融、コモディティ市場の混乱、地政学リスクなどをめぐる不透明感
が強まる中で「下振れリスクが再び高まった」と明確に指摘。「そ
のため次回3月初旬の理事会で、金融政策スタンスを見直すととも
に、おそらく再検討する必要がある」と踏み込んだ。市場は「追加
緩和示唆」と受け取った。
22日の東京市場では、日経平均.N225が一時700円を超える上昇
となり、1万6700円台を回復した。
ただ、この相場上昇が、トレンド変換となるのか、それとも一過性
の「息継ぎ」に過ぎないのか──。多くの市場関係者は、判断を下
しかねているようだ。
<中国市場の波乱・原油安、起点は米利上げ>
年明け早々の市場では、株安の原因を人民元や中国株の下落と捉え
「中国経済は緩やかに成長しており、相場は行き過ぎ。いずれ落ち
着きを取り戻す」との見方が多かった。
また、原油価格の下落に関しても「20ドル台はオーバーシュート
。いずれ30ドル台から40ドル台に戻る」との見方が多かった。
しかし、ここにきてようやく今回のリスク回避現象の中心に「米利
上げ」があるとの見方が広がり出してきた。
中国市場の変動にしても、コモディティ市場の下落にしても、昨年
12月に始まった米利上げによって、マネーがドル建て資産に回帰
するという見通しや思惑によって、その動きが加速している要素が
大きい。
2016年に4回の利上げがありうるとした年初のフィッシャー
FRB副議長の発言は、8日に送信したコラム「世界的株安の中心
に米利上げの反作用、4回維持なら振幅拡大」[nL3N14S1HH]で指摘
したように、リスクオフ相場のトリガーを引いた可能性が高い。
<FRB幹部発言、変化の予兆も>
ただ、ここにきてFRB幹部から、微妙な軌道修正を「予感」させ
る発言が出てきている。これまでタカ派的な発言を繰り返してきた
セントルイス地区連銀のブラード総裁は14日、原油価格の継続的
な下落は、インフレ期待の「厄介」な低下をもたらす恐れがあると
発言。最近の市場動向に警戒感を持っていることを明らかにした。
また、イエレン議長に近いとみられているダドリーNY連銀総裁は
15日、原油安とドル高がインフレ率目標の達成を困難にしている
との見解を表明した。
ただ、期待の低下は「利上げを思いとどまらせるほど十分ではなか
った」とも発言。16年の成長率は2%超、労働市場は多少ながら
さらに引き締まるとの見通しも示した。
もし、FRBが年4回の利上げペースを緩める方針を明確にすれば
、年初から顕在化してきたリスクオフ心理とマネーのリスク回避現
象は、いったん小康状態になる可能性があると予想する。
実際、米アトランタ地区連銀は発表しているGDP・NOWは、1
月20日時点でプラス0.7%にとどまっている。低成長で利上げ
を繰り返せば、景気の足踏みとともにFRB幹部が懸念するインフ
レ期待の低下を招くことになりかねない。
<イエレン発言次第で、日米欧の協調ムード演出も>
その意味で2月10日の米下院金融委員会、11日の米上院銀行委
員会でのイエレン議長の金融政策に対する発言は、当面最大の材料
になるだろう。
ここで3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げに
消極的なスタンスを示せば、リスク資産からのマネー流出に一定の
歯止めをかけることができる。
日銀が1月28、29日の金融政策決定会合でどのような結論を出
すのか、今のところ断定的なことは言えないが、仮に1月会合で追
加緩和を見送っても「必要ならちゅうちょなく」というスタンスの
黒田東彦総裁が、3月にいよいよ動くとの思惑は一層高まることに
なるだろう。
また、ドラギ総裁は3月の追加緩和の可能性を強くにじませる発言
を行った。2月10日にイエレン議長が3月の利上げ見送りを示唆
するメッセージを出せば、日米欧が市場の急変動に対し、足並みを
そろえるという「協調イメージ」を演出することが可能になると考
える。
1月最終週のFOMC、日銀金融政策決定会合と続くイベントの先
にあるイエレン議長の米議会証言が、マーケットの暗夜行路を導く
「一条の光」になるのかどうか。FRBからのメッセージは、いよ
いよ重要度を増しそうだ。 


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