5600.石油の世紀の終わり



石油を最初に開発したのが、米国である。米国の覇権は石油の覇権
でもある。その石油が揺らいでいる。この揺らぎが米国の揺らぎを
招いている。その検討。  津田より

0.石油価格の下落
年明けから世界的な株安が続いている。原因は2つであり、1つが
中国人民元安であり、もう1つが石油安である。原油価格は30ド
ルを割り込んで29ドル台になっている。2014年には100ド
ルしていた原油価格が3割以下になったことになるし、2007年
では140ドル以上したので、2割程度になったことになる。

しかし、シェールオイルや深海の海底油田では採算割れになるが、
生産停止には成らないで、生産続行で、今の供給過剰が続く。その
理由は、米国では州の管理で90日以上生産停止にすると、その井
戸の権益が消滅して、権利を失う事であると奥村さんがいう。

この上に、イラン核問題が解決して制裁解除され、中東の資源大国
イランが国際ビジネスの場に本格復帰する。イラン産原油の供給増
が見込まれ、市場は1バレル=30ドルを割り込んだ原油相場の一
段の下落になる。10ドルまで下落するという専門家もいる。

このため、石油で恩恵を受けてきた国は、対応策が必要になる。サ
ウジアラビアでは、ガソリン価格・レギュラーガソリンが67%(リ
ットルあたり14.4円から24円へ)の大幅値上げになるという。同日
、政府が2016年予算を発表して油価低迷による赤字削減策の一つと
して、ガソリンなどへの補助金を大幅に減額することにした。さら
に付加価値税の導入も検討されている。

さらに、約2000万人のサウジ国民は税金を支払う必要もなく、学費
も医療費も国庫負担、何からなにまで手厚く保護されてきた。その
時代が終わろうとしている。

サウジより大変なのがベネズエラで、原油安などを背景とした深刻
な不況を踏まえ、経済緊急事態を宣言した。マドゥロ大統領の権限
を2カ月間強化し、民間活動への介入や為替取引の制限が可能とな
る。国家的な危機に直面している。

ロシアも同様に石油に依存して、経済的な苦境にある。しかし、シ
リアへの軍事的援助は止めないようである。

シェールガスや深海油田の開発が、2007年の1バーレル=140
ドルで開発が可能になり、開発された結果が石油供給過剰になった
のである。

1.米国の現状
シェールガスが開発されたのは2000年前半に米テキサス州で成
功し生産が本格化した。近年はオイルにもその技術が活用されて生
産が伸びている。そして、2015年には、米国はサウジを抑えて
世界最大の原油産出国になった。

しかし、生産する原油のコストは、サウジが自噴の石油井戸であり
、10ドル以下もあるが、平均では20ドル以下である。これに比
べてシェールオイルは、コストが高い。テキサス州のイーグル・フ
ォードで30ドルー40ドル、ノースダコタ州のバッケンで35ド
ルー45ドルで、平均は60ドル程度である。ということは、現時
点の29ドルでは、全井戸が採算割れになっている。いつまで生産
している企業が耐えられるかという状態である。

そして、原油井戸の投げ売りを大手石油会社は待っている。開発し
なくて良いので生産コストが低くなるし、10年というスパーンで
見ると石油は供給不足になると見ているからである。

また、米国の外交政策では、シェールオイルでほぼ自給できるので
中東からの石油に依存しなくて済み、混乱続く中東には米国は関与
しなくてよいことになっている。これが中東の混乱の原因でもある。

しかし、ハイイールド債のシェール関連企業の社債組み入れ率は30
%であるが、シェール企業の倒産が多発してデフォルトになり、ハ
イイールド債のファンドも解散している。ジャンク債市場が干上が
っている。

逆に、石油が安いので、米国では大型の自動車が売れ始めている。
しかし、日本や欧州では低燃費な自動車が売れている。それは石油
にかかる税金が高いからである。

2.米国の衰退へ
パリで開かれたCOP21では、地球温度上昇を1.5℃にしよう
と2酸化炭素の排出を減らすことが決まった。

中東の産油国UAE=アラブ首長国連邦では、太陽光や風力など再
生可能エネルギーの普及について話し合う国際会議が始まりまった。
UAEの首都アブダビで16日、世界140か国以上が加盟し、再
生可能エネルギーの世界的な普及を目指すIRENA=国際再生可
能エネルギー機関の総会が行われた。世界的な再生可能エネルギー
ヘのシフトが起きることになる。

石油から再生可能エネルギーへの転換で世界は次の経済成長が起き
るという専門家もいるが、石油の世紀は終わりが始まったようであ
る。

21世紀のエネルギーは何になるかの競争も起きている。自動車で
は、空気中の2酸化炭素と水でメタンを作り、それでディーゼル車
を駆動するというドイツ、電気で駆動するという米国テスラ、水素
で駆動するいう日本トヨタとホンダの戦いである。過渡的にハイブ
リット車というのが日本メーカの考え方である。

米国はIT技術を生み出した国であり、その発展に寄与してきた。
次はウェアラブル端末であり、人工知能であるとしてベンチャーが
割拠しているが、そのユニコーン企業の投資成績が非常に悪い状態
である。人工知能はIBMが取り組んでいるので良いポジションで
あるが、大型計算機が売れずに、IBM自体は苦戦している。

日本は、繊維に落ち込んだセンサを開発して、ウェアラブルではな
くインビジブル化した服を提案している。IT端末は中国企業が米
企業を仰臥してきたし、アップルのIPONEは、とうとう売れなくなっ
てきたようである。

自動車産業では新しいエネルギーに積極的ではなく、ITでの新し
い提案がなくなってきた。

石油が20世紀を繁栄に導き、その先頭を米国は走り、米国の覇権
を確立したが、石油から再生可能エネルギーになったとき、米国は
その覇権を失うことになりそうである。

その過渡期に今あると見えるのであるが、どうであろうか?

サウジがOPECで生産制限をしなかったのも、再生可能エネルギ
ーが今後、普及してくると見えているので、石油の価格を下げて、
再生可能エネルギーの台頭を遅らせようとしてるようにも感じる。

3.日本の可能性
次のエネルギーは、再生可能エネルギーであることは間違えないが
、どこの国がそれを抑えるのかは、未定である。米国も再度復活す
る可能性はある。

しかし、セルロース・ナノファイバーや燃料電池や医療の革新や新
薬開発に発酵技術を活用する日本が技術を抑える方向であることは
確かであり、日本が次の覇権国になる可能性を感じるのである。

もちろん、経済的な裏付けや人口減少などの問題を解決することが
必要であるが、日本に大きな可能性を感じる。

もちろん、そのような日本の台頭を米国は押さえにかかり、中国と
戦争をさせて、日本を疲弊させる可能性があるので、十分注意が必
要である。

しかし、日本の可能性を高めて行くことが政府の役割であると思う
がどうであろうか?

さあ、どうなりますか?

参考資料:
シェールオイルの現状:
http://shima5.web.fc2.com/shaleoil.pdf

シェールオイルのコスト:
http://shima5.web.fc2.com/shalecost.pdf
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@mokumura13:58 - 2016年1月16日
原油価格が今の様に$30以下では、シェールオイルや深海の海底
油田では採算割れになるが、生産停止には成らないで、生産続行で
、今の供給過剰が続く。その理由は一般に、メディアは知らないが
、米国では州の管理で90日以上生産停止にすると、その井戸の権
益が消滅して、権利を失う事がある。
州や領海の国有地で石油を生産すると売り上げの16.6%がロイ
ヤリティーで州・国に治めるので、石油会社が赤字生産でも、関係
無しに、州・国には金が入るので、生産を止めさせない。外国での
操業でも同じで、権益を与える国は赤字生産は関係無しに、生産税
50−80%をとる
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2016年の石油価格の展望-供給過多状況続く
岩瀬昇エネルギーアナリスト
2016年01月14日00:26agora
「石油の富」、再配分が止まる
2015年12月、米国アラスカ州民は州政府から嬉しくないクリスマス
・プレゼントを受け取った。35年ぶりの所得税再導入と、「石油配
当金」(4人家族の標準家庭で毎年8000ドル=約96万円)の半減を検
討している、というのだ。
アラスカから1万数千キロメートル離れたサウジアラビアに住む人
々は、12月28日のテレビ放送でガソリン価格の大幅値上げを知った
。レギュラーガソリンが67%(リットルあたり14.4円から24円へ)
になるという。同日、政府が2016年予算を発表して油価低迷による
赤字削減策の一つとして、ガソリンなどへの補助金を大幅に減額す
ることにしたからだ。さらに付加価値税の導入も検討されている。 
 同国のサルマン現国王が即位した2015年初めには、公務員や軍人ら
に対して600億リヤル(約1兆9200億円;「中東協力センターニュー
ス」2015・2/3所収、辻上論文)もの慶祝特別ボーナスが支払われた
。これまで国王の慈悲により、約2000万人のサウジ国民は税金を支
払う必要もなく、学費も医療費も国庫負担、何からなにまで手厚く
保護されてきた。その時代が終わろうとしている。
 石油価格の低迷がもたらした世界情勢の激変。これから一体どうな
るのだろうか。
 次のグラフから分かるように、石油価格は2014年夏をピークに下落
し始め、11月末のOPEC総会前後にさらに急激に落ち込み、その後
2015年を通して低迷したまま推移している。この石油価格の下落が
アラスカ州民に、サウジ国民に、そして多くの産油国国民に多大の
経済的負担をもたらしている。
サウジ政府の動きに注目
では、2016年の石油価格はどうなるのだろうか?
 将来の石油価格がどうなるかを完全に見通すことは「神のみぞ知る
世界」であり、筆者の能力を超えているが、サウジ政府がどう見て
いるのか、このほど発表された2016年国家予算からを推測してみよ
う。
 前述の通りサウジ政府は12月28日、2016年国家予算を発表した。
2015年の実績見通しは、歳出が9750億リヤル(約31兆2000億円)、
歳入が6080億リヤル(約19兆4560億円)、赤字幅が3670億リヤル(
約11兆7440億円)とした上で、2016年の予算は、歳出が8400億リヤ
ル(約26兆8800億円、前年比約14%減)、歳入が5138億リヤル(約
16兆4416億円、前年比約15%減)、赤字幅が3,262億リヤル(約10兆
4384億円、前年比約11%減)になるという内容だ。
また注目の2015年の石油収入が歳入に占める割合は、約73%の4445
億リヤル(約14兆2240億円)になるとしている。
2016年の歳入額が2015年比15%減であるということは、サウジは現
行の石油政策を2016年も維持するということだろう。価格は市場に
任せ、世界最大の産油国としてのマーケットシェア維持を優先する
、だから生産削減は行わない、ということが読み取れる。
また2016年の石油価格の推移については、当面のあいだ低いままだ
が、年末に向けて上昇すると見ている、と判断していいだろう。
なぜなら予算発表の直後、国営石油会社サウジアラムコの会長
Khalid al-Falih(保健相でもある)は記者会見で「一つの価格だけ
を想定しているわけではない」、「価格は変動するものであり、サ
ウジは異なる価格シナリオに対応する能力がある」と語っているか
らだ。また「2016年中には需要が供給を上回ると見ている」とも発
言している。
さらにその2日後、ナイミ石油相は「サウジは顧客の要望に応えるだ
け生産する方針を変えない」とコメントしていることもこの見方を
裏付けているだろう。
即座の改善難しい需給バランス
石油価格に影響を与えるもっとも基本的な要因は需給バランスであ
る。需給バランスがどう動いて行くかで価格は変動していく。だが
悩ましいのは、需給の実態は後追いでしか判明しないことだ。そこ
で需給バランスに影響を与える要因がどう動いていくかを「読む」
ことが重要となってくる。
 現時点で重要な供給サイドの要因は次の通りだ。
 1・OPEC(石油輸出国機構)、なかんずくサウジの石油政策
 2・経済制裁解除後のイランの増産動向
 3・シェールオイルを始めとする非OPECの生産動向
 4・地政学リスク
一方、需要サイドでは、次の諸要因が重要だろう。
 1・価格低下により喚起される需要の伸び
2・資源価格下落による資源国の購買力低下の影響
 3・エネルギーの効率利用促進および地球温暖化対策の影響
ちなみに、多くのメディアが喧伝しているIS(「イスラム国」)に
よる石油の「密輸」は、量も少なく地域限定的であり、また米国の
原油輸出解禁も、米国が依然として数百万B/D(バレル・パー・デイ
、一日当たりの量)の純輸入国であることから、価格動向に影響を
与えるほどの要因ではない。
 実はもっとも重要なのは、上記の需給変動要因を踏まえた上での、
市場参加者の読み、期待、心理状態だ。これは数量的な把握が困難
で、現実の市場の動きを見て推測するしかない。
メディアが報じる原油価格とは、”Front Month”と呼ばれる、期近
に受渡しされる原油の価格だ。この原稿を書いている2015年12月末
現在では「2016年2月受渡し」が該当する。これと、たとえば1年後
の、2017年2月に受渡しされる原油の価格を比較するのが一つの方法
だ。
ちなみにブレント原油の2015年12月30日の終値は、Front Monthであ
る2016年2月渡しが36.46ドルであるのに対し、1年後の2017年2月渡
しは約8ドル高い44.65ドルとなっている。市場は、現在の価格は安
すぎると見ている証左だろう。
 供給者側代表のサウジの「見方」は前述した通りだが、需要者側の
代表であるIEA(国際エネルギー機関)はどう見ているのだろうか。
 次のグラフにから見られるように、IEAは2016年末に向かって初め
て「リバランス」(需給バランスが取れる状態への回帰)が視野に
入って来る、と見ているようだ。
2014年末、石油価格の大幅下落が始まったころ、需給ギャップ(供
給>需要)は150〜200万B/Dと言われていた。OPECおよびIEAの2015
年12月月報によれば、2015年の米国シェールオイルなど非OPECの供
給量は前年比150〜180万B/D減少している。だが、サウジやイラクな
どの増産により、OPECの11月生産量は3170万B/Dとなっており、2015
年末でも依然として100〜200万B/Dの需給ギャップ(供給>需要)が
存在していると言われている。
2015年を通して需要より多く供給された100〜200万B/Dの原油は、す
べて陸上タンクか海上の石油タンカーに「在庫」として積み上げら
れている。この「在庫」は、近い将来かならず市場に供給される。
さらに2016年の春、イランに対する経済制裁が解除されると数十万
B/Dの生産が増加することはほぼ間違いがない。
さらに大手国際石油会社は2015年も2016年も、資本投資(Capital 
Expenditure)を大幅に削減する見通しだ。投資削減は既存油田の生
産効率を悪化させ、中期的には新規供給能力を低下させる。低価格
が長期化すれば、近い将来供給不足になるのは目に見えている。
 以上に述べた要因を総合すると、2016年の石油価格は当面低位で推
移し、年末に向けて上昇し始める、と見るのが妥当だろう。
波乱要因は各地に存在する
 ただし、静かな、落ち着いた展開になるとは思えない。
 低価格が続いた場合のナイジェリアやベネズエラの政治不安、社会
不安が石油生産を妨げるまでに拡大しないか。
サウジのサルマン国王の息子、30歳の第2皇太子であるモハマッド
・ビン・サルマンへの権限集中にみられるように、過度のスデイリ
(国王と同腹の一族)重用が見られる。サウジの王族間の政治的争
いを激化させ、突然、価格重視へ石油政策を変更することはないか。
イエメン、シリアで「代理戦争」を戦っているサウジとイランの地
域覇権争いがどう展開するか。また「リバランス」が視野に入って
くる年末に向けて、投機筋が価格高騰を仕掛けるかどうか。などな
どだ。
これらの可能性があり、2016年は波乱万丈の一年になると予想する
のが妥当だろう。
 (1月6日朝、追記)
 「サウジとイランが断交したことによる影響を織り込んで追記して
欲しい」との要請が編集部から届いた。
ご存知のように、サウジ政府は1月2日、シーア派宗教指導者ニムル
師を含む47人の「テロリストを合法的に処刑」した。これに対しイ
ラン民衆は激昂し、在テヘランのサウジ大使館を襲撃、放火した。
サウジは即座に在リヤドのイラン大使に「48時間以内の退去命令」
を出し、引き続き交通関係の遮断、貿易の停止措置を取った。サウ
ジと近いバハレーン、スーダンが「断交」し、UAE(アラブ首長国連
邦)とクウェートは大使を召喚し、外交関係を格下げした。
 各メディアや各国の外交当局者のこれらの動きが「ホルムズ海峡封
鎖」あるいは「第三次世界大戦」の導火線になるのでは、との疑心
暗鬼を生み出している。
 筆者の「読み」だけを書いておこう。まず、次のグラフを見て欲し
い。年末年始のブレント原油価格の推移だ。
 原油市場はほとんど影響を受けていないことが見て取れるだろう。
1月5日の終値は、Front Monthである2016年2月渡しが36.42ドルで
あるのに対し、一年先の2017年2月渡しは44.68ドル、昨年末同様8
ドル強高いだけだ。
 市場は、これまでの動きでは需給構造にさほどの影響を与えないと
見ている、と言える。
 今回の一連の動きは、両国の内政上の必然性から生じたものだと思
われる。
サウジ側は、国内の治安維持のため宗教的締め付けが要求されてお
り、同腹ながら第1皇太子(内務大臣兼務)と第2皇太子(経済政
策の最高責任者、国防大臣兼務)の間には強烈なライバル意識があ
るのだろう。
イラン側は2月26日実施の総選挙の「立候補希望者の資格審査」を護
憲評議会が行っている段階にあり、保守派の意向を尊重する必要が
ある。
これらが両国の強硬策の背景になっている。
 現在、両国はイエメン、シリアで現地勢力を支援し「代理戦争」を
行っている。両国がどのような対応を取っていくのか。米露両大国
が調停の意向を示しているが、現時点では、状況の展開を注視する
ことが必要だ。
 特に核協議をめぐる合意に基づき、イランに対する経済制裁解除が
予定通りに発動されるかどうかが重要だろう。シリア情勢への対応
を含め、イランへの融和姿勢を見せている米国に対するサウジの反
発が今回の一連の動きの背景にあるからだ。
サウジとイランの断交。これは、「波乱万丈の2016年」の幕開けに
過ぎない。
岩瀬昇 1948年埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。東京大学法
学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常
務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、二度のロ
ンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクでの延べ21年間にわた
る海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に
三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇
話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けてい
る。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?エネルギー情報
学入門』(文春新書)。「岩瀬昇のエネルギーブログ」
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経済緊急事態を宣言=原油安で2カ月間−ベネズエラ
 【サンパウロ時事】ベネズエラは15日、原油安などを背景とし
た深刻な不況を踏まえ、経済緊急事態を宣言した。マドゥロ大統領
の権限を2カ月間強化し、民間活動への介入や為替取引の制限が可
能となる。
 政府は緊急事態下で実施する具体的な政策には言及していないが
、通貨の切り下げや、補助金で安価に抑えてきたガソリンの値上げ
などが考えられる。ただ、昨年12月の議会選挙で野党が大勝し、
多数派を占めるため、マドゥロ氏はこれまでのような強権的手法を
取りづらいとみられる。
 世界最大級の推定原油埋蔵量を誇り、外貨収入の96%を原油輸
出に頼るベネズエラは、原油相場の下落で外貨準備高の減少に苦し
んでいる。ドルの国外流出を防ぐための為替管理強化は、国内に混
乱をもたらし、輸入品を中心とした深刻なモノ不足を招いている。
(2016/01/16-09:49)
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大国イラン、市場に復帰=原油一段安の懸念−取引復活狙う欧州企業
 【ロンドン時事】欧米による制裁解除で、世界有数の原油・天然
ガス埋蔵量を誇る中東の資源大国イランが国際ビジネスの場に本格
復帰する。イラン産原油の供給増が見込まれ、市場は1バレル=30
ドルを割り込んだ原油相場の一段の下落に身構える。一方、歴史的
にイランと関係の深い欧州の大手企業は取引復活に向け、動き始め
た。
 「他の石油輸出国機構(OPEC)加盟国は自由に生産している
」。イランのザンガネ石油相は昨年12月のOPEC総会で、不満
を漏らした。イランの産油量は制裁前、日量400万バレル弱だっ
たが、現在は280万バレル台。ザンガネ氏は制裁による制約がな
くなれば「速やかに」生産を回復させる意向を示した。
 イランの増産は、原油相場を12年ぶりの安値水準に押し下げた
供給過剰をさらに深刻化させる恐れがある。英金融サービス会社
IGグループのアナリスト、アリスター・マッケイグ氏は「制裁解
除で原油は一段安になる」と懸念。原油安は最近の金融市場動揺の
一因ともされ、市場関係者らはイランの動向に警戒を募らせている。
 制裁解除は、外国企業にとってビジネスチャンスとなる。特に制
裁前にイランとの取引が盛んだった一部の欧州企業は既に「地なら
し」に着手している。
 英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは、制裁の影
響で支払うことができなかったイラン国営石油会社(NIOC)に
対する過去の石油代金23億ドル(約2700億円)について、制
裁解除後直ちに払い込むことで合意。NIOCは「シェルがイラン
産原油を引き続き購入できる道が開けた」と明言した。
 報道によると、独総合電機大手シーメンスはイラン側と高速鉄道
建設や客車500両納入などに関する覚書に調印。シーメンスはイ
ランビジネスで「独大手企業の先駆け」(独紙)となった。
(2016/01/17-07:07)
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再生可能エネルギー普及へ 国際会議始まる
1月17日 6時41分NHK
地球温暖化対策として温室効果ガスの削減が国際的な課題となるな
か、中東の産油国UAE=アラブ首長国連邦で、太陽光や風力など
再生可能エネルギーの普及について話し合う国際会議が始まりまし
た。
UAEの首都アブダビで16日、世界140か国以上が加盟し、再
生可能エネルギーの世界的な普及を目指すIRENA=国際再生可
能エネルギー機関の総会が始まりました。
先月、国連の会議COP21で地球温暖化対策に取り組む新たな枠
組みが採択され、再生可能エネルギーの技術開発や導入が大きな課
題となっていますが、各国からは導入に向けた支援体制をさらに強
化すべきだという声が上がりました。
また、日本からは山田外務政務官が出席し、特にアジアや太平洋の
島しょ国などに対し、再生可能エネルギーの導入に向けた人材育成
の研修を実施するなど、支援を強化していることをアピールしまし
た。
一方、IRENAは、2030年までに再生可能エネルギーの割合
を18%から36%に倍増させた場合、日本円でおよそ150兆円
の経済効果を生み、新たに1500万人の雇用が見込めるなどとす
る報告書を発表し、今後、各国に導入を急ぐよう働きかけを強めて
いく方針を強調しました。 
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原油先物一時29ドル割れ、イラン産原油や中国懸念で
2016年01月16日(土)04時18分
[ニューヨーク 15日 ロイター] - 15日の原油先物市場は一
時、6%超急落し、1バレル=29ドルを割り込んだ。
供給過剰の長期化に加えて、中国株式市場の一段安やイラン産原油
輸出に対する警戒感が重しとなっている。
1741GMT(日本時間16日午前2時41分)時点で、北海ブ
レント先物(3月限)が1.94ドル(6.3%)安の1バレル=
28.94ドル。一時、2004年2月以来の安値となる28.82
ドルをつけた。
米原油先物は2.01ドル(6.4%)安の同29.19ドル。
2003年11月以来の安値、29.13ドルを記録する場面もあ
った。
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サウジアラビアを崩壊に導く独断専行の副皇太子
末路はルイ16世か?急激な改革は命取りに
2016.1.15(金)   藤 和彦 
?1月11日のニューヨーク商業取引所のWTI原油先物価格は、中国経済
の先行き不安を背景にした売りに歯止めがかからず、一時1バレル=
30ドル台を付けた。終値も同31.41ドルと2003年5月以来の安値とな
った(12日には一時、同30ドル割れとなった)。
?中国上海株式市場の下落につられる形で暴落した原油相場だが、
2016年に入り需要減退が材料視される傾向が強くなってきた。市場
関係者は「中国経済の減速がガソリンやデイーゼル油の需要減少に
つながるかどうか」に注目している(2016年1月8日付ブルームバー
グ)。
?中国政府は、年末の原油価格の値下がりにもかかわらず、大気汚染
防止の観点から国内の石油製品価格を据え置いており、景気全般の
冷え込みが強まる中で中国の原油需要は今後先細りしていくだろう。
?北朝鮮が1月6日に実施した核実験も中国経済に暗い影を投げかけて
いる。中国政府は「事前通告はなかった」としているが、1月10日付
大紀元によれば、「中国は2015年12月に派遣団を北朝鮮に送り核実
験の中止を求めていた」という。「1月4日の上海株式市場の暴落は
、『金正恩第1書記が前日に核実験実施に関する最終指令を出した』
との情報が流れたためだ」との憶測もある。1月11日に米ムーデイー
ズが「北朝鮮の崩壊は核実験よりも深刻な脅威となる」と警告した
ように、朝鮮半島の地政学的リスクの高まりが、中国をはじめ東ア
ジア全体の金融市場に悪影響を及ぼすことは間違いない。
?OPECの原油バスケット価格は既に1バレル30ドルを割り込んでおり
、原油市場は底値が見えない状況にある。米バンク・オブ・アメリ
カ・メリルリンチは「同20ドル割れの下向きリスクが高まっている
」との見方を示したが、英スタンダード・チャータード銀行はさら
に悲観的で「同10ドルまで下落する可能性がある」
「戦争を望んでいない」とムハンマド副皇太子
?このような状況にあって唯一の買い材料は、中東地域の地政学的リ
スクの上昇である。
?サウジアラビアが年初にシーア派指導者を処刑したことをきっかけ
に、サウジアラビアとイランの関係が緊迫化している。このことは
、「OPEC内の協調行動がより一層困難になる」との理由でこれまで
のところ原油価格の押し下げ要因にしかなっていない。しかし、今
後の展開次第では急騰要因になる可能性がある。
?サウジアラビアとイランの軍事衝突への懸念が高まっている矢先の
1月4日、サウジアラビアのムハンマド副皇太子は英エコノミスト誌
のインタビューに応じて「イランとの緊張激化を望んでおらず、戦
争を望んでいない」との考えを示し、注目を集めた。
?王位継承順位第2位であるムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は
1985年生まれの30歳。大学卒業後、数年間民間企業で働き、2009年
12月にリヤード州知事を務めていた父(サルマン国王)の特別顧問
として政界入りしたと言われる。
?国防大臣(2010年10月)、皇太子(2012年6月)に昇進する父を、
ムハンマド氏は側近として支え続け、2014年4月には自らも国務大臣
の要職についた。
?2015年1月に父サルマンが第7代国王に就任すると、ムハンマド氏は
国防大臣・王宮府長官・国王特別顧問・経済開発評議会議長に任命
され、4月には副皇太子となった。
?サルマン国王には3人の王妃がおり、12人の息子がいると言われて
いる。ムハンマド副皇太子の母親は3番目の王妃だが、先妻の息子た
ちで要職に就いているのは4男のアブドラアジズ石油鉱物資源副大臣
のみである。
?ムハンマド副皇太子はサルマン国王が50歳の時に生まれた息子だ。
それだけにサルマン国王は偏愛の気持ちを抱いているのだろうか。
ムハンマド副皇太子の学生時代の成績は極めて優秀だったとされて
いるが、権力者が自分の息子を高い地位に引き上げる時に「神童だ
った」と“神話”を広めることが多い。そのため慎重な評価が必要
である。
?ムハンマド副皇太子の初仕事は、2015年3月から現在まで続くイエ
メンへの軍事介入である。夏以降は健康問題を抱えるサルマン国王
(80歳)の代理として、米国に加えてロシアやフランスに接近する
外交政策を展開する。その様子を見て9月8日付ワシントンポスト紙
は「ムハンマド副皇太子が現在の皇太子を飛び越えて第8代国王に就
任する可能性がある」と指摘したほどである。
?米国のケリー国務長官も、1月3日のイランとの国交断絶をムハンマ
ド副皇太子が決定したと判断して、電話でイランとの関係を修復す
るように要請したと言われている。
今後5年で財政赤字解消が目標
?このようにサウジアラビアの軍事・外交面を牛耳るムハンマド副皇
太子だが、彼が思い描く経済政策について欧米ではあまり知られる
ことはなかった。その内容が初めて明らかになったのが、1月4日の
英エコノミスト誌とのインタビューだったのである。
?インタビュー内容の目玉は、国営石油会社「サウジアラムコ」の株
式公開(IPO)についてだった。
?サウジアラコムは、欧米企業から接収した石油権益をベースに1980
年に完全国営化された。今や国内に100カ所以上の油田を有し、約6
万人の従業員を擁する巨大企業である。
?サウジアラムコは元々、石油鉱物資源省の管轄下にあったが、現在
は経済開発評議会の管轄下にある。経済開発評議会の管轄下に移行
させたのが、評議会の議長を務めるムハンマド副皇太子だった。
?ムハンマド副皇太子はインタビューの中で、サウジアラムコのIPO
について「今後数カ月以内に決定される可能性が高い」と述べた。
?サウジアラムコの原油生産量のシェアは世界全体の12%を占め、確
認済みの埋蔵量でも世界全体の約15%にあたる約2610億バレルを保
有している(米エクソンモービルの約10倍)。株式上場した場合の
時価総額は数兆ドルに達し、米アップルをも凌ぐ可能性がある(最
初に公開される株式の割合は5%以下になるとされている)。
?財源の7割以上を石油関連収入に頼るサウジアラビアの2015年の財
政赤字は1000億ドルを超え、国防費や補助金の支給を統御できない
状況にある。そのため、サウジアラムコのIPOは手持ち資金の確保に
躍起となるサウジアラビア政府の表れであるとみられている。
?要職に就任してから精力的に改革に取り組むムハンマド副皇太子に
とって、サウジアラムコのIPOは改革の一環にすぎない。「透明性の
向上と汚職撲滅に役立つという意味で、サウジ市場とサウジアラム
コにとって利益になる」と強調するが、彼が目指している広範な経
済改革プランは「サウジアラビア版サッチャー革命」(英エコノミ
スト誌)だという。
?ムハンマド副皇太子は「今後5年間で財政赤字を解消する」ことを
目標に掲げている。国民の約7割が30歳未満で、2030年までに労働人
口が2倍に増加すると予測されるサウジアラビアの現実を前に、「国
家が統制する経済の仕組みを一新し、産業の多角化や民間企業の振
興によりマーケット主導の効率性を導入しない限り繁栄はなく、強
いサウジアラビアを実現できない」とムハンマド副皇太子の決意は
固い。
サウジアラビア王国崩壊の危険性も
?だが、ムハンマド副皇太子の改革によって、「税金を取らず、オイ
ルマネーによって教育や医療の無償提供に加え電力・水道・住宅料
金などを手厚く賄ってきた」国のシステムは解体することになりか
ねない。
?英エコノミスト誌との5時間以上にわたるインタビューで、ムハン
マド副皇太子が国王に言及したのは1回だけ、皇太子については一度
も言及しなかった。数千人と言われるサウジの王族内では、彼の独
断専行ぶりに対する不満が高まっている。
?2015年秋、サルマン国王を打倒する宮廷革命を呼びかける文書が王
族の間で出回った。その中でムハンマド副皇太子は「サウジアラビ
アを政治的にも経済的にも軍事的にも破局に導いている」と強く非
難されていたという。文書の作成者は不明だが、専門家は「こうし
た亀裂が表面化するのは異例であり、何かが起こっている」と見て
いる。
?ムハンマド副皇太子に対して不満を抱いているのは王族ばかりでは
ない。サウジアラビアではシーア派だけでなくスンニ派の若者の間
にも政府批判のデモが発生しており(2016年1月9日付ニューズウイ
ーク)、国民の間にも反発の声が聞かれる。1月2日に「現体制を拒
否し、ジハードを訴える」スンニ派の宗教指導者ザハラーニ師が処
刑されたことが大きなきっかけだ。
「アラブの春」を「札束」の力で封じ込んだサウジアラビア政府に
対し、「イスラム国(IS)の脅威が高まっている」との指摘もある
。今や国民に「札束」をバラまくどころかそれを回収しようとする
政府に残されている選択肢は、民主化しかないのではないだろうか。
?ムハンマド副皇太子の孤軍奮闘ぶりが明らかになるにつれ、フラン
ス革命によりギロチン台の露と消えた「ルイ16世」のことが想起す
るのは筆者だけだろうか。
?ルイ14世とルイ15世の長年にわたる放漫財政という負の遺産を継い
で1774年に即位したルイ16世は、経済に詳しい人物を登用し、政治
に積極的に関わり、フランスの改革に力を注いだ。しかし、保守派
貴族が国王の改革案をことごとく潰し、財政の建て直しは失敗した
。貴族層に対抗する窮余の策として招集した三部会が思わぬ展開を
見せ、その後フランス革命が勃発したことは周知の事実である。
?英エコノミスト誌のインタビューアーは「民主主義がないサウジア
ラビアでサッチャー流の改革は可能か」と何度も問いかけている。
それに対して、実質的に国王の座にあると言っても過言ではないム
ハンマド副皇太子は、自らが米マッキンゼーに委託して作成した改
革プランに自信を示すばかりで、全く危機感を有していない様子で
あった。
?急激に改革を実施しようと焦るムハンマド副皇太子の姿勢は、ペレ
ストロイカを旗印に抜本的な改革を目指して逆にソ連邦を崩壊させ
てしまったゴルバチョフソ連共産党書記長も彷彿させる。1980年代
後半の「逆オイルショック」がソ連崩壊の遠因になったように、今
回の原油価格急落はサウジアラビア王国の崩壊につながる可能性を
秘めている。



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