5596.中国や世界の経済体制が変化



2016年の初めから5日続落で東京株式市場は始まった。波乱の
年を暗示している。中国の経済が変質してきている。それを検討し
よう。   津田より

0.現状の株式市場
今回の株の暴落は、年末近くのハイイールド債の利回りの低下によ
るファンドの閉鎖により、米国から始まった。

そして、中国は株価暴落を防ぐために、サーキットブレーカーを1月
4日に導入したが、即日7%下落でブレーカーが作動し上海市場が停
止、3日後の7日には取引開始から30分後にブレーカー作動、終日取
引停止になった。株式ととともに年初早々人民元安も進行している。

その他、株安の要因としては北朝鮮の核実験、サウジとイランの国
交断絶、ロシア・トルコ間の緊張など地政学不安の高まりも指摘さ
れ、この話題もヘッジファンドに使われたが、株安の主因は圧倒的
に中国であろう。

このため、日本では、今年は大発会以来5営業日連続で日経平均が
下落した。戦後初であるが、日米の経済や企業収益の実態が悪化し
ているわけではない。

1月8日(金)発表の12月分の米雇用統計も、非農業部門雇用者数の
前月比は29.2万人増と力強く、10月分も11月分も上方修正されてい
るが、その日のNYSEや世界で株安になった。

1.中国の経済体制の変化
中国は、2014年6月にピークを付けた外貨準備高の減少傾向には歯止
めかからずむしろ加速、2015年12月は過去最高の単月で1079億ドル
の減少になった。中国の最近の経常黒字は月平均200億ドル程度なの
で、差し引き月間1300億ドル程度の純資金流出が起きているのであ
る。

株安(資産価格下落)、通貨安、資本流出はまさしく1997年のアジ
ア通貨危機を引き起した3点セットであり、放置すると中国の混乱は
、1997年の通貨危機と同じことになる可能性がある。中国は世界で
経済規模が2位であり、その影響はアジア通貨危機より大きくなる。

中国のバブル崩壊、金融危機勃発といった事態は、中国にとっては
直ちに共産党の専制支配体制危機に結び付くので、絶対許容できな
い。このため、危機回避策は市場の価格決定機能の歪曲、株の売り
禁止、固定相場復帰となると残された唯一の手段は、市場機能の否
定ということなる。

中国の経済体制が変化して、今までは市場経済社会主義として、資
本主義的な経済運営を認めていたが、国家経済指導体制を復活して
、計画経済体制に復帰することになる。

しかし、中国経済が世界経済から分離されると、世界への影響は限
定的になり、世界は安定化することになる。しかし、中国は社会主
義体制に復帰して、元の木阿弥になる。

2.市場論理の変更
一方、自由経済も変化している。市場は皆の合意で動いている。し
かし、資金量が多いヘッジファンドなどの短期投資家が市場を先導
している。短期に儲けようとすると、空売りが一番儲かる。短期に
1000円株価を下げることが数日で出来るが、株価を1000円
上げるには数ヶ月は必要であり、それに比べて時間が少ない。その
分儲けが大きい。今回の暴落でも空売り率が42%にもなっていた。

しかし、ヘッジファンドが空売りしても、多くが付いてこないと空
振りして、損をするので、皆が納得する理由が必要なのである。正
月から立て続けに、その理由が出てきた。その理由を下に、儲かる
方向に空売りをしている。

1つが、世界的な株安と円高方向にヘッジファンドは仕掛けている。
特に円高方向への論理的はおかしくて、中国経済の不安であれば、
日本が真っ先に影響を受けるために円安方向に向かうはずが、円高
にしている。これは、ミスター・ワタナベ潰しである。FXで円安
に向かうとして、ミスター・ワタナベは掛けていたので大損させた
のである。

ヘッジファンドは、その理由を「危機の時の円買い」ということに
したが、経済的にも安全保障上でも日本は脆弱であるにも関わらず
、米国の国家的な意志を反映して、ヘッジファンドは円高方向を目
指し、それをサポートするコメントが米指導者から出てくることに
なる。今回はトランプ候補が円安を攻撃していた。

量的緩和をしている日本の円が、利上げをして安全保障上も日本よ
り強固であり、景気も上向いている米国のドルを通貨安するのはお
かしいが、米国の指導層が円安を嫌っているために、そのようなこ
とになる。

円安にした量的緩和は、米国がドルの通貨安を仕掛けるために作っ
た1つの虚構である。事実は中央銀行がマネタリーベースを増やし
ても、市中にある通貨量(マネーストック)は増えていない。この
ため、カネ余りではなく物価も上昇しないので、通貨量が増えて通
貨安になることも事実上はない。

しかし、為替市場は参加者の心理的な総意で決まるので、参加者が
教科書に書いてあるように考えて行動するので、通貨安を実現して
いるのである。

カネ余りかどうかを考える上で重要なのは、マネタリーベース(中
央銀行がばらまいた資金の量)ではなく、M2などのマネーストック
(経済全体に出回っている資金の量)で見るべきなのである。

しかし、この虚構が明らかになり、市場の参加者の心理が変化した
か、米国の金融政策担当者が米国に有利ではないので、その論理を
変更するようにヘッジファンドの担当者に言い始めたからのようだ。

そうすると、日本は経常黒字であり、黒字幅が大きくなり、貿易赤
字も原油安で小さくなり、円が強くなっている。そのため、円高に
したのであろう。

経済論理の変更が米国のヘッジファンドで始まったとも言えるので
ある。

ということは、日銀が今後、追加の量的緩和を行っても円安方向に
は、大きくは動かないことを意味している。次の金融政策を考えな
いといけないことになる。

3.日銀や政府の金融・経済政策はどうするか?
金融の量的緩和を行い、円安にして輸出やインバウンド消費で日本
経済の立て直しを行うということは、外需に頼ることであり、海外
の景気動向に左右されることになる。特に中国の人民元の動向や景
気の動向に左右されることになる。

しかし、中国経済は市場社会主義が機能しなくなり、社会主義経済
に復帰する方向である。このため、外需の中心である中国の景気が
悪くなると、日本の景気も悪くなる。

海外の景気動向に影響されないようにするには、内需拡大を図らな
いといけないことになる。

特に、今後の世界は混乱と戦争の時代になり、経済より安全保障と
いうことになり、日本の経済を立て直すには、日本の需要を増やす
政策が重要になる。

外需から内需にシフトするためには、人口減少が一番の壁になる。

そこに本格的な政策を組まないと、中国経済の混乱に巻き込まれる
ことになりそうである。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
量的緩和の効果:
http://shima5.web.fc2.com/kanwa.pdf

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市場心理は実態以上の不安感に囚われている
売られすぎが売られすぎを呼ぶ過剰反応
馬渕 治好 :ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券
アナリスト 2016年01月10日TK
世界の株式市場や外貨相場(対円)は、売られすぎがさらなる売ら
れすぎを呼んでいる。
年末年始の雰囲気は大変暗かった。2015年年間の米S&P500指数は、
前年末比で0.7%下落した。大統領選挙の前年は株価が上昇するとい
うジンクスがあり、1951年以降で調べると、例外的にS&P500指数が
下落したのは2011年だけだった。しかも2011年の下落率はわずか
0.002%で、ニューヨークダウ指数は上昇している。昨年はニューヨ
ークダウも下落した。
日本では、今年は大発会以来5営業日連続で日経平均が下落した。戦
後初だそうだ。日米の経済や企業収益の実態が悪化しているわけで
はない。先週1月8日(金)発表の12月分の米雇用統計も、非農業部
門雇用者数の前月比は29.2万人増と力強く、10月分も11月分も上方
修正されている。
しかし市場は、実態からかけ離れた不安にとらわれている。「ここ
まで大きく株価が下落したのだから、さらに下がるに違いない」「
株価下落は経済実態が大きく悪化するということを正確に予言して
いる」といった説が投資家に信じられやすくなり、さらなる売りを
呼んでいる。こうした展開を、筆者はまったく予想できなかった。
読者の皆様に多大なご心配をおかけしていることを、深くお詫びし
たい。
米金融政策を巡る行きすぎた見解
市場の動きが実態とかけ離れていると述べたのは、米雇用統計だけ
ではない。米国の金融政策を、過去、あるいは今後の株価下落要因
(特に新興諸国に対する打撃)に意味付ける主張をよく耳にする。
確かに、米ドル建て債券の利回りが上がることは、他の資産にとっ
てマイナス要因ではある。
しかし、カネ余りかどうかを考える上で重要なのは、マネタリーベ
ース(中央銀行がばらまいた資金の量)ではなく、M2などのマネー
ストック(経済全体に出回っている資金の量)だ。米QE3(量的緩和
第3弾)前後のマネタリーベースの前年比は、昨年は一時マイナスに
落ち込む局面もあった。これに対してM2の前年比は、QE3の間は7%
前後、そして今でも6%前後で、安定した伸びを続けている。つまり
米経済全体のカネ余り度合いは、QE3前後でほぼ変わってない。
すなわち、QE3でとてもカネ余りになって、それが米国や新興諸国の
株価を大いに押し上げた、というのは幻想であるし、逆にQE3をやめ
て利上げを開始したから、米国の余剰資金が怒涛のように引き上げ
て、米国や新興諸国の株価を押し下げ始めた、というのも幻想であ
ると考えている。
なぜマネタリーベースにかかわらず、M2の伸びがほとんど変わらな
いのか。それは、連銀が民間銀行から国債等を大量に買い入れ、そ
の代金を民間銀行につぎ込んでも、融資などの形で銀行から資金が
その外側に流れ出さなければ、経済全体としての資金量は変わらな
いからだ。
中国株や中国元の下落と日本株
昨年7月のボルカールールの完全実施で、銀行が直接株式や外貨資産
、ヘッジファンドなどに大いに資金を投じるといった道も、極めて
細くなっている。現在の米国における、民間の家計や企業の借り入
れ需要は、景気に沿って緩やかだが安定した伸びを続けている。米
連銀の金融政策にかかわらず、過去3回の量的緩和で銀行に吹きだま
った資金から、民間非金融部門は、安定した伸びで資金を借り続け
ているわけだ。
中国株や中国元の下落も、日本株の売り要因だと言われている。確
かにサーキットブレーカーの導入や停止などのドタバタにはあきれ
返るが、中国経済減速は周知のことだ。上海総合指数が下落しサー
キットブレーカーが発動した1月4日(月)や1月7日(木)は、「中
国株が大幅に下落したから大変だ!」と日本株が売られ、上海総合
指数が上昇した1月6日(水)や1月8日(金)は、「中国株が上昇し
ても関係ない、ほかに悪材料がある」と、やはり日本株が売られる
という、「何がどうなろうと売り」状態だ。これは、市場心理が悪
い方向に傾きすぎていることを示唆している。
為替市場では、元安が円高の材料とされている。中国元が対円で下
落するのは当然としても、それで日本の輸出企業が中国との競争上
不利であれば、円安になるはずだ。あるいは、日本の輸出が打撃を
受ける、もしくは中国から日本への観光客が減る、という形で日本
の経済が傷つくのであれば、それも円安要因だ。
北朝鮮の核実験でも円高に振れる地合いは、為替市場が「リスク回
避のための円高」病にとらわれているためだろう。北朝鮮に地理的
に近い日本円を買って、北朝鮮から遠い米ドルやユーロを売る、と
いうのは、あるべき姿のまったく逆だ。きっと富士山が噴火しても
、直下型地震で東京が壊滅しても、「リスク回避のための円高」と
して円が買われるのだろう。
短期的には売られすぎが進むリスクも
このように、現在は「日本株は売られすぎ、円は買われすぎ」だが
、いずれ修正が入り、年央に向けて株高基調へと移行しよう。ただ
し、過去の相場をみれば、売られすぎがさらに売られすぎになり、
もっと売られすぎになってしまうことは、しばしばある。
東洋経済オンラインには2014年7月から寄稿させていただいている。
市場の行きすぎという点で思い起こすのは、今回とは値動きが逆に
なるが2015年8月上旬にかけての国内株の買われすぎだ。筆者は5月
頃から危険信号を見出し、日経平均株価が1万8000円を割り込むリス
クを何度も述べたが、実際の日経平均は、ザラ場ベースで8月11日に
2万0946.93円で2度目の高値をつけた。すなわち、買われすぎがさら
に買われすぎになる現象が起こった。この5月から8月初は、筆者の
見立てが外れ、読者の皆様からお叱りを多々頂戴した。しかしその
後、国内株価は大きく調整した。
株価下落後、今度は国内株価が売られすぎに転じたと8月下旬から述
べた。ところが売られすぎはさらに売られすぎとなり、株価底入れ
は9月29日までずれ込んだ。どうも筆者は、売られすぎ、買われすぎ
の判定が早すぎるようだ。現局面も、目先はまだ売られすぎが進む
恐れが残る。年初来6日以上の連続下落記録の可能性も高い。先週は
、日経平均のザラバ高値からザラバ安値までの値幅は1441円もあっ
た。今週(1月12日~15日)は、それより小さくなると見込むが、日
経平均のレンジ(ザラバ安値からザラバ高値まで)は
1万7000円〜1万8000円と、広めに予想する。
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中国経済のフリーランチ、終わりの始まり
世界連鎖株安は中国の市場封鎖で下げ止まる
2016.1.9(土)   武者 陵司 
(1)市場の反乱に市場規制・市場否定で対応する中国
悪循環再作動へ
?中国で株と人民元の連鎖崩落が止まらない。上海、深セン市場は7
%下落リミットとするサーキットブレーカーを1月4日に導入したが
即日7%下落でブレーカー作動、3日後の7日には取引開始から30分後
にブレーカー作動、終日取引停止になった。
?中国株安に呼応して世界株式も新年に入り急落開始、世界金融不安
が急速に高まっている。世界株安の要因としては北朝鮮の核実験、
サウジとイランの国交断絶、ロシアトルコ間の緊張など地政学不安
の高まりも指摘されているが、世界株安の主因は圧倒的に中国であ
ろう。株式ととともに年初早々人民元安も進行している。
?オフショア市場の下落に先導される形で、当局の管轄下にあるオン
ショア相場も下落、当局の介入はあるものの、人民元の先安観が強
まっている。
?また2014年6月にピークを付けた外貨準備高の減少傾向には歯止め
かからずむしろ加速、2015年12月は過去最高の単月で1079億ドルの
減少になった。中国の最近の経常黒字は月平均200億ドル程度なので
、差し引き月間1300億ドル程度の純資金流出が起きているのである。
(1)中国人による対外直接投資の増加、
(2)外国人による対中投資の回収、
(3)中国人の対外資本逃避、等が考えられるが、中心は(2)と(3)
、つまり急速に中国から資本が逃げ始めているのである。
改善しない中国経済失速症状
?株安(資産価格下落)、通貨安、資本流出はまさしく1997年のアジ
ア通貨危機を引き起した3点セットである。中国の金融不安の悪循環
を放置すれば1997年アジア通貨危機の再現の可能性が高まっていく。
?本来なら経済成長率を高め株式や通貨価値に対する信任を回復する
ことで市場を崩そうとする投機筋に対抗するべきなのであるが、今
の中国経済は相次ぐ金融緩和と財政出動にもかかわらず、経済成長
復元の兆しは全く現われていない。鉄道貨物輸送量、粗鋼生産量、
電力消費量、輸出・輸入などミクロデータは軒並み前年水準を下回
っている。また景気対策の効果が期待される不動産開発投資や鉄道
投資も昨年末前年比マイナスに陥った。経済失速が止まらないとす
れば、株安(資産価格下落)、通貨安、資本流出の悪循環に弾みが
つかざるを得ない。
?しかし中国にとってはバブル崩壊、金融危機勃発といった事態は直
ちに共産党の専制支配体制危機に結び付くので、絶対許容できない。
?残る危機回避策は市場の価格決定機能の歪曲、株の売り禁止、固定
相場復帰となると残された唯一の手段は、市場機能の否定というこ
としかなくなる。
?中国政府は年初来の株価急落に対応して昨年導入されいったん解除
した上場企業の大株主による株式売却禁止を再度復活させるなど、
市場価格立て直しのために強権介入を強めている。また投機筋のタ
ーゲットとされやすいサーキットブレーカーの発動を見合わせるこ
とも決めた。昨年の株価急落後には売りを推奨した証券会社社員や
投資家、ジャーナリストを公安警察が喚問するなど情報統制が打ち
出されたが、それらは一層強化されるだろう。
?為替面でも固定為替制復活とクロスボーダーの資本取引のより厳し
い規制を打ち出すのではないか。
?昨年9月に打ち出された実質的先物売り禁止措置は今や効力はない
。資本流出と元安を食い止めるには、強権の発動が不可避となるだ
ろう。それは1997年アジア通貨危機の際にマハティール首相率いる
マレーシアがとった手段である。マレーシアはIMFの支援勧告を無視
し通貨の大幅切り下げとそこでの固定化、資本流出規制(海外投資
家の資産売却代金の海外送付の禁止、出国する資本に対する課税)
を行い、為替投機を鎮静化した。
?今の中国にはクロスボーダー資本移動の禁止と人民元の釘づけ、株
式取引の事実上の禁止などしかしか対応策は残されていないように
見える。そうなれば株式と人民元売り投機は道を断たれ、世界金融
市場の不安の連鎖は遮断され、世界株式底入れに向かうと期待でき
る。1997年のアジア通貨危機の再現は回避されるだろう。しかしこ
れらの措置は極論すれば市場の事実上の閉鎖である。
?かくして中国が推し進めてきた社会主義市場経済と言う矛盾(市場
経済の都合のいいところだけをチェリーピックするフリーランチ)
は、市場の側面が否定されていくことで社会主義(統制経済)に帰
結していくことになる。それは世界が望む市場主義への改革とは全
く逆行するものである。しかしそれ以外解決策はない、というとこ
ろまで追い込まれていくのではないか。
(2) 金融鎖国は中国にとって両刃の剣
中国のアキレス腱は巨額の対外資金依存
?市場の否定は当面の危機回避には有効だが、それは中国経済をさら
に困難化する。市場経由の資金調達が困難になり、それは中国経済
の命取りになりかねない。これまでの中国経済繁栄の最大の鍵が中
国への国際資本の集中だったからである。
?中国の経済発展には新興国のキャッチアップ過程で特徴的な(日本
や韓国にも存在した)フリーランチが、特に強かったという特質が
ある。フリーランチは技術獲得、市場アクセスとともに、特に資本
取得において顕著であった。世界の余剰資本がこぞって対中投資・
融資となって中国に向かい、中国で巨額の外貨準備が形成された。
しかし金融鎖国は中国の国際資本調達の道を閉ざすのである。
?中国による高経済成長をけん引した投資は巨額の外貨流入、対外借
り入れによって賄われた。対外借入資金の増加が外貨準備の急増を
もたらし、それを裏づけとしてなされたマネーの供給が空前の投資
を可能にしたと言える。中国の中央銀行である人民銀行の総資産に
占める外貨資産は8割に上っていることがそれを如実に示している。
対外金融力の象徴とされている外貨準備高も実は過半が他国資本に
依存したものであるとすれば、中国の対外金融力は相当に脆弱であ
ると言わねばなるまい。
借金依存の中国外貨準備、ひっ迫する外貨事情
?これまでもレポートしてきたことであるが、外貨準備高の性格が日
本と中国ではまるで違うことを知らなければならない。
?外貨準備高とは対外決済や為替市場の安定のために当局が保有する
外貨資産である。日本の定義では日銀と財務省が保有する外貨の総
額で、その大半はかつての外貨介入によって取得されたものであり
、その源泉は全てが過去の経常黒字にある。また2015年11月末残高
1.23兆ドルであり、その87%の1.07兆ドルが外国証券、大半は米国
債となっている。
?それに対して中国の外貨準備高の源泉は、過去の経常黒字の積み上
がりに加えて、海外からの借り入れが大きく寄与していると考えら
れる。中国は民間や外資企業の外貨保有を厳しく管理しているため
貿易収入や対外借り入れなどによって取得した外貨の大半は中央銀
行に預託され、その預託額が外貨準備にカウントされていると考え
られるのである。
?だから日本の対外総資産額に対する外貨準備高の比率は16%に過ぎ
ないが、中国の対外総資産額に占める外貨準備高の比率は61%と異
常に高いのである。
?日本の外貨準備はひも付きのない自由な資金だが、中国の外貨準備
の過半は多大なる債務を負っている資金、つまり他国資本なのであ
り、介入には投入できない。ゆえに中国に投融資している華僑系の
膨大な資本が回収に転じ始めたら、上げ底の過大表示されている外
貨準備高では到底足りなくなるという事態もあり得るのである。詳
しくはリンク先の「図表4?中国の対外資産負債残高推移」を参照さ
れたい。
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中国当局が銀行のドル買い制限、一部取引拠点で=関係筋
2016年01月08日(金)16時39分
[上海/香港 8日 ロイター] - 関係筋によると、中国の国家外
為管理局は今月、一部の輸出入拠点の銀行に対し、ドル買いの制限
を指示した。
資本流出に歯止めをかけることが狙いとみられる。
深センなど一部の取引拠点にあるすべての銀行に指示が出されたと
いう。
複数の関係筋が匿名を条件に8日明らかにした。国家外為管理局の
コメントはとれていない。
外資系銀行の外為部門のあるシニアバンカーは「一種の規制であり
、影響はある。ただ、それほど厳しい制約ではなく、制限の期間を
延長しない限りは、通年の取引量が変わることはないだろう」と指
摘。「目的は今月のパニック買いに歯止めをかけることだけだ」と
述べた。
関係筋によると、拠点の一つでは、1月に銀行が顧客に売るドルの
合計額は昨年12月の水準を超えてはならない。
関係筋の1人は「(当局が)購入額を制限するよう求めてきた。タ
ーゲットもある」とした上で、「主に対象となるのは企業などで、
個人に関する政策には変更はない」と述べた。
市場では昨年の元切り下げ以降、オンショア市場とオフショア市場
の人民元の価格差が広がっており、当局が資本流出の抑制に乗り出
している。
関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は昨年末、ドイツ銀行
、DBS、スタンダード・チャータードに対し、一部外為業務の停
止を命じた。
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中国は10━15%の元安必要、中国政府の政策顧問が急落容認求め人
民銀に圧力
金利に下向きの圧力をかけて企業破綻や人員削減の回避を狙う
2016年1月8日(金)13時13分
 中国人民銀行(中央銀行)に対し、政策顧問が10━15%の大
幅な通貨下落を容認するよう求めていることが、関係筋の話で分か
った。
 人民銀は数十億ドル規模の元買い介入を行っているものの、相場
安定には至っていない。こうした中、元がじりじりと値を下げる状
況は市場になお下げ余地があるとのシグナルとなり、かえって悪影
響を及ぼしているとの指摘が出ているという。
 そのため政策顧問は、投機抑制や資本流出への対策を強化しつつ
、人民元の急落を容認するよう中銀に圧力を強めている。
 政府の有力エコノミストはロイターに対し「人民元の大幅下落を
容認すべきだ。肝心なのは、経済や金融システムに多大な影響を与
えず、資本市場に大きなパニックを発生させないこと」と指摘。ど
の程度の期間をかけるのかは言及しなかったが、10━15%の下
落を提案した。
 中国当局は「供給サイド」の改革を通じた産業再編を目指してい
るが、国内企業にはこれに耐えうる体力がないとの懸念がある。そ
のため人民元が急落すれば、高債務を抱える中国企業への衝撃を緩
和する一助になるとみられている。
 多数の企業破綻や人員削減を回避しながら再編を進めるため、人
民銀は元安を容認し、金利に下向きの圧力をかけて企業の債務返済
負担を和らげるよう求められているという。
[北京/上海 7日 ロイター]
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2016年 01月 8日 14:59 JST 
アングル:政府は株安・円高を当面静観、参院選視野に追加対策の
検討も
[東京 8日 ロイター] - 政府は年初の株安・円高現象に対し、
当面は静観する構えだ。複数の政府関係者がロイターの取材に答え
た。市場混乱の大きな要因である中国経済は、当局のテコ入れ策で
緩やかな回復基調となっており、原油安は交易条件の改善によって
日本経済にプラスとみているためだ。今後は春闘での賃上げを期待
しつつ、7月参院選前に打ち出す追加対策の検討を水面下で進めて
いる。
<中国不安は昨夏に経験済み、緩やかな回復変わらず>
「昨年の状況との違いは2つだけ」──。政府高官の1人は、北朝
鮮の核実験と、イラン・サウジアラビアの関係悪化が、日本経済に
とって新たな材料だとみている。
中国経済への不安による株価下落や円高進行は、昨夏の上海株ショ
ックで経験済みであり、その後に中国政府が打ち出した経済対策の
効果もあって、中国経済は緩やかな成長を続けており、市場が警戒
するような経済の「急停止」によるショックのリスクは小さいとみ
ている。
一方、新しい問題として浮上した中東情勢の緊迫化は、サウジとイ
ランの増産競争を予見し、価格下落が継続。それが市場ではリスク
オフの象徴とみなされ、株安・円高の材料にされている。
甘利明経済再生相も8日の会見で、原油価格の下落が続いているこ
とについては「世界経済全体を見ればよいことでない」と述べた。
もっとも日本の実体経済に関して言えば、原油価格下落の恩恵は大
きい。政府の来年度経済見通しでは、原油価格の前提は1バレル40
ドル台が前提。ある政府関係者は、現状の30ドル台での推移なら
ば、交易条件の一段の改善により日本経済にとっては名目GDP押
し上げ要因となるとの見方を表明。甘利再生相も日本経済には、交
易条件の改善でプラスとの見解を示した。
<選挙前の景気回復は至上命題>
ただ、不安な点もある。地政学リスクなどが障害となって、昨年後
半から回復してきた実質輸出が打撃を受けかねないことだ。
2015年10─12月期の国内総生産(GDP)について、一部
報道で活況と伝えられた年末商戦に期待を寄せる声も政府内にはあ
る。
しかし、個人消費は昨年11月まで不振を続けており、10─12
月期GDPがプラス成長になるのか、予断を許さないと複数の政府
関係者は述べている。
こうした中で、政府の政策判断に大きく影響しそうなのが、7月の
参院選だ。景気が低迷したまま選挙戦に突入すれば、野党側の格好
の攻撃材料になり、政府・与党にとって避けたい展開だ。
政府は2015年度補正予算案で「1億総活躍社会」実現のための
施策や環太平洋連携協定(TPP)対策、災害復旧公共工事など計
上。「スタートダッシュを図る」(安倍首相)計画だが、予算執行
と経済効果が出るまでの「時間差」を考えると、7月にその効果を
実感するのは難しそうだ。
そこで「政権にとって選挙に向けたカギは、4月以降の賃上げ」(
政府関係者)との見方が広がってきた。
ただ、経済界首脳の発言などから正規社員のベースアップを含む賃
上げへの期待感はそれほど高まっていない。
足元での株価下落・円高進行が持続すれば、企業や消費者のマイン
ドを冷え込ませ、賃上げ率が昨年を下回る可能性も否定できないと
の見方も、政府内の一部でささやかれ始めた。
その一方で、別の政府高官の1人は「期待しているのは非正規労働
者の賃金上昇だ」と指摘。労働者数全体の4割近くを占める非正規
社員の賃金は人手不足により毎月上昇。「ある意味ボトムアップが
先行しており、格差是正が縮小しつつある。最低賃金引き上げもそ
のために実施、非正規の賃上げはいずれ正規社員にも波及するはず
」と期待感を示している。
<10%消費増税への対応策、水面下で検討>
こうした中で、17年4月の消費税10%引き上げに向け、水面下
で追加の経済対策を検討する動きもある。
すでに低所得高齢世帯へ3万円を一律支給することは、補正予算で
手当て済みだが、耐久消費財の駆け込み消費後の反動減対策として
、自動車や住宅向けの税制改正、補助金支給などの追加策が検討さ
れている。複数の関係筋によると、6月の骨太方針に盛り込む方針
だ。
政府内では「まだ今年は始まったばかり。金融市場が敏感に反応し
ている、この数日の動きだけで、今年の選挙までの景気を心配して
も仕方ない」と話す。
政府としては、世界的なリスクオフの動きが落ち着きを取り戻すこ
とを待って、実体経済への影響を見極める構えだ。
 (中川泉 編集:田巻一彦)
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2016年 01月 7日 20:15 JST 
中国外貨準備は12月末3.33兆ドル、減少幅が月間・年間とも過去最大
[北京 7日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表
した12月末時点の中国の外貨準備高は3兆3300億ドルで、前
月末時点と比べて1079億ドル減少した。減少幅は過去最大。
市場予想の3兆4000億ドルも下回った。
2015年は、過去最大の5126億6000万ドルの減少となっ
た。減少の3分の2近くが8月以降に発生した。
申銀万国証券のエコノミスト、李慧勇氏は「外貨準備の急減は資本
流出圧力の高まりを示す」としたが、人民銀は元防衛への資金をま
だ十分に有しているとの見方を示した。
しかしフォーキャスト(シンガポール)のエコノミスト、チェスタ
ー・リァオ氏は「予想を上回る減少は長期的に介入が持続不可能に
なることを示す」とし、今後数日で元の一段の下落につながると指
摘した。
外貨準備が3兆9900億ドルでピークとなった2014年6月以
降の累積減少額は6628億5000万ドル、割合にして16.6
%となった。
金準備は12月末時点で5666万ファイントロイオンスで、11
月末の5605万ファイントロイオンスから増加。ドルベースでは
601億9000万ドルで11月末の595億2000万ドルから
増えた。
国際通貨基金(IMF)リサーブポジションは45億5000万ド
ルで、11月の46億ドルから減少した。
IMF特別引き出し権(SDR)は102億8000万ドル。11
月末時点は101億8000万ドルだった。
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中国株、サーキットブレーカー発動 終日取引停止
2016年01月07日(木)11時28分
[上海 7日 ロイター] - 中国株式市場のCSI300指数
<.CSI300>が取引開始後30分もたたないうちに7%下落し、サーキ
ットブレーカーが発動された。
上海と深セン市場は終日取引が停止される。
CSI300指数は7.2%下落し、3284.74をつけた。上
海総合株価指数<.SSEC>は7.3%安の3115.89をつけた。
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米雇用、25万7000人増 15年12月民間調査  
2016/1/7 7:16 nikkei
 【ニューヨーク=清水石珠実】米民間雇用サービス会社ADPが
6日発表した2015年12月の全米雇用リポートによると、非農業部門
の雇用者数(政府部門を除く)は前月から25万7000人増えた。増加
幅は市場予測(19万人程度)を大きく上回り、14年12月(27万5000
人増)以来1年ぶりの大きさとなった。
 分野別では製造業、サービス業ともに雇用が伸びたが、サービス
業の伸びが大幅だった。ADPと共同で調査にあたったムーディー
ズ・アナリティクスは「エネルギー関連を除くすべての業界で雇用
が増えた。雇用拡大の勢いが衰える兆しはない」(チーフエコノミ
スト、マーク・ザンディ氏)と指摘した。
 このリポートは、米労働省が8日に発表する12月の雇用統計の先
行指標として注目されていた。



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