5590.スンニ派対シーア派の対立が決定的に



今日発行の有料版でも中東大戦争を予測しているが、その予測が思
いのほか、早く実現しそうである。有料版読者には、午後一番に届
くとは思いますが、これは元旦に書いたので、その展開の速さにビ
ックリしています。有料版は書き直しをしませんので、このコラム
と合わせて、見てください。

サウジアラビアは2日、国内で爆弾などによる攻撃に関与した47人の
死刑を執行した。その中に、サウジ王室に批判的だったイスラム教
シーア派の有力指導者ニムル師も含まれており、宗派間の対立が国
内外に広がることが確実になった。

事実、イラン・テヘランではサウジアラビア大使館に火炎瓶が投げ
込まれた。事前にサウジの大使などは避難して、負傷者などはいな
い模様であるが、サウジは、イラン側のサウジ批判を「内政干渉」
と反発した。

そして、サウジアラビア外相は3日、イランとの外交関係を断絶す
ると表明した。

イスラム国の攻撃をシーア派とスンニ派、そして欧米諸国、ロシア
で共同で実施する可能性はなくなった。イスラム国より宗派対立の
方が大きくなったようである。

ロシア、シーア派対スンニ派、イスラエルという構図が明確化する
ことになる。イスラム国もスンニ派の中に入ると、これは欧米諸国
は見ているしかない。

さあ、どうなりますか?

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イランとの断交表明=サウジ
 【カイロ時事】ロイター通信によると、サウジアラビア外相は3
日、イランとの外交関係を断絶すると表明した。サウジによるイス
ラム教シーア派指導者ニムル師の処刑で、サウジとシーア派の大国
イランの関係は険悪化していた。(2016/01/04-05:27)
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テヘランでサウジ大使館襲撃
イラン、宗教指導者の処刑に反発
2016年01月04日(Mon)  佐々木伸 (星槎大学客員教授) 
イスラム教スンニ派の守護者を自認するサウジアラビアが少数派シ
ーア派の有力な宗教指導者を処刑したことに対して、シーア派の盟
主イランが猛反発、怒った群衆が3日、テヘランのサウジアラビア大
使館に乱入し、放火するなど暴れ回った。両国関係はシリア内戦や
イエメン紛争をめぐって対立してきたが、今回の事件により一気に
先鋭化、ペルシャ湾にも緊張が高まっている。
“レッドライン”
 斬首刑にされたのは、シーア派の著名な宗教指導者のニムル・バ
クル・ニムル師(56)。サウジ各地で2日、処刑された47人のうちの
1人だった。同師は2011年に始まった「アラブの春」で、サウジやペ
ルシャ湾岸諸国のシーア派による反体制運動の象徴的な存在となっ
たが、12年7月に「宗派対立を扇動した」としてサウジ当局に逮捕さ
れ、死刑判決を受けていた。
 今回の処刑に対して、当のサウジや、イラン、バーレーン、イラ
クなどで抗議行動が発生、イランではテヘランでサウジ大使館が襲
撃されたほか、北東部マシャドにあるサウジ領事館にも暴徒化した
群衆が乱入し、国旗を引きずり下ろすなどして警備の警官隊と衝突
した。
 テヘランの大使館では2日から3日未明にかけて処刑に抗議する群
衆が押し寄せ、一部が火炎瓶を投げるなど暴徒化、大使館の一角か
ら黒煙が上がった。群衆らは「サウド王家に死を」と叫び、大使館
の窓ガラスなどを粉々にした。この襲撃で複数の警官らが負傷し、
約40人が拘束されたという。
 イランの最高指導者のハメネイ師は「サウジの指導者は政治的な
過ちを犯した。彼らは神の報復を必ず受けるだろう」と非難、革命
防衛隊も「サウジは重い代償を払うことになるだろう」と強く批判
する声明を発表した。
 一方のサウジ政府は大使館襲撃を受け、リヤド駐在のイラン大使
を外務省に呼び、イランには大使館を保護する責任があると強く警
告、イラン側のサウジ批判を「内政干渉」と反発した。
 サウジは聖地メッカを守護するスンニ派の太守。しかしペルシャ
湾に近い東部の油田地帯などに反体制派のシーア派住民を抱え、こ
れまでにも再三弾圧を加えてきた。特に79年に対岸のイランでシー
ア派革命が起こってからは、革命が輸出されかねないと警戒、イラ
ンとは敵対関係が続いてきた。
 またシリア内戦では、革命防衛隊を派遣してアサド政権を支える
イランと反体制派を支援するサウジが「代理戦争」を展開、イエメ
ン紛争でも同国の実権を掌握したフーシ派をイランが後押しし、こ
れにサウジが直接的に軍事介入して同派の攻撃に踏み切るなど対立
が激化していた。
 中東のアナリストの1人は「今回の処刑はシーア派の蜂起は容認し
ないというサウジの決意を示したメッセージ」と指摘。ベイルート
筋は「ニムル師はシーア派教徒の間では知らない人はいない。サウ
ジは同師を処刑することで“レッドライン”(超えてはならない一
線)を超えてしまった」と述べ、今後サウジ対イラン、スンニ派対
シーア派の対立が激化するとの見通しを示した。
シリア和平協議困難に
 今回の事件で懸念されるのは、昨年12月に国連安保理で決議され
たシリア和平協議の行方だ。決議では1月をめどに国連の仲介で、ア
サド政権と反体制派の直接協議を開始することになっている。しか
しアサド政権を支えるイランと、反体制派を支援するサウジの関係
が決定的に悪化したことで協議開始は困難になったとの見方が強い。
 サウジは12月、反体制派の主要組織を集めて会議を開催、半年以
内の発足とされたシリアの移行政権にアサド大統領の参加を認めな
いことで一致した。これに対してアサド大統領は交渉の条件として
反体制派の武装解除を要求し、協議のスタートが危ぶまれていた。
 シーア派政権の存続を最重要視するイランもサウジの反体制派固
めとアサド氏排除の決定に強く反発していたが、サウジとの関係が
さらに悪化したことから和平協議で妥協する余地はなくなったと見
ていい。それどころか、中東全域でスンニ派とシーア派の宗派対立
が拡大する懸念すらある。イラクのアバディ首相は「シーア派に対
する抑圧は続かない」とサウジへの反発を強めている。
 こうした事態にオバマ政権は水面下でイランとサウジの緊張がこ
れ以上高まらないよう鎮静化を図っているが、当面は打つ手がない
状態。過激派組織「イスラム国」との戦いに結束を図らなければな
らない時に起きた両国の対立激化に頭を抱えている。
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記事 広瀬隆雄2016年01月03日 10:14
 イランのサウジアラビア大使館が放火される サウジアラビア油田
地帯でも抗議行動 サウジ政府がシーア派指導者を処刑したことが
引き金 
1月2日にサウジアラビア政府がシーア派指導者ニムール・アル・ニ
ムール師を革命扇動の罪で処刑しました。この他に46人が同時に処
刑されています。
ニムール・アル・ニムール師は比較的無名でしたが、2011年の「ア
ラブの春」の際、サウジアラビア東部油田地帯の町、カティーフで
デモ行進などを指導し、サウジ政府に捕えられました。
カティーフはサウジアラビアで最も重要な石油輸出基地、ラスタヌ
ーラの隣町で、ラスタヌーラに働く労働者が多く住む町です。
サウジ東部の油田地帯の住民はシーア派が過半数を占めており、か
ねてから「アル・ニムール師を処刑したりすれば、住民が蜂起する
ぞ」という指摘がありました。
 今日、カティーフで、アル・ニムール師処刑に抗議するデモ行進が
行われた模様ですが、それはトラブルも起きず、粛々と行われた模
様です。
これ以外にも、今日、インドのカシミール、バーレーンのマナマ郊
外で同様のシーア派の抗議行動が行われました。
またイランの首都テヘランではサウジアラビア大使館に火炎瓶が投
げ込まれたそうです。
サウジアラビアとイランは歴史的に仲が悪いですが、今回の事件で
両国間での緊張は高まったと言えます。
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サウジ、シーア派指導者ら47人を処刑
宗派間の対立悪化も
ロイター 2016年01月03日
[リヤド?2日?ロイター] - サウジアラビアは2日、国内で爆弾など
による攻撃に関与した47人の死刑を執行した。大半は国際武装組織
「アルカイダ」の攻撃に関与したスンニ派の過激派だが、サウジ王
室に批判的だったイスラム教シーア派の有力指導者ニムル師も含ま
れており、宗派間の対立が国内外に広がる可能性がある。
目撃者によると、サウジ東部州カティフではニムル師の処刑を受け
て少数派のシーア派住民ら数百人が集まり、デモ行進を行った。
今回の集団処刑は1980年以来数十年ぶりの規模。
処刑の対象となったのは、2003─06年に国内でのアルカイダによる
攻撃に関与したとされるスンニ派が中心。このほか、11─13年に反
政府抗議運動を行ったとされるニムル師らシーア派も含まれる。
シーア派が多数を占めるイランの最高指導者ハメネイ師のウェブサ
イトは、サウジの死刑執行者の隣に過激派組織「イスラム国」の黒
い覆面の男、通称「ジハーディ・ジョン」を並べた写真を掲載し、
「違いはあるのか」とするキャプションを添えた。
また、同国のイスラム革命防衛隊は「テロリストを支持する反イス
ラム政権は、激しい報復によって転覆するだろう」とし、今回のサ
ウジの動きを非難した。
欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表はニムル師の処
刑について、中東地域で宗派間の対立を一段と悪化させ、「危険な
結果」を招く恐れがあるとの懸念を示した。



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