5561.日本経済の分岐点



失業率が3.1%になり、1995年7月以来の低さと言われてい
るが、人員確保に企業は困っていない。それは多くの労働力を介護
が占めているので、低賃金高労働であり、より良い仕事があれば、
多くの人が乗り換えるためにである。

このため、賃金水準が上がらないことになる。企業は賃上げを必要
としていないし、人口減少の日本の将来需要は落ちてくるので、海
外に拠点を移して、企業の売り上げを確保する方向であり、日本国
内に投資しようとしていない。

安倍首相は、戦時統制経済と同じ感覚で企業に投資をすることと、
賃上げを要求している。企業の経営者は困惑しているし、世界の企
業は、日本への投資を自由市場経済でない場所として、敬遠するこ
とになる。

日本経済の5年後、10年後を見据えた成長モデルを作らないと、企業
は国内投資を増やすはずがない。

10年後、人口が減少して、現工場の生産量を確保するためには、
輸出依存しないといけないし、工場の労働者が確保できるかどうか
定かではない。このような日本に経営者は投資するはずがない。

このため、安倍首相は法人税減免と外形課税の導入をするとした。
中小企業を淘汰して、大企業を優遇する政策である。麻生財務相は
、法人税減免と同程度の財源を確保するというので、いろいろな減
免処置もなくなることになる。

内部留保に税金を掛けることも検討するという。どちらにしても、
大変なことになってきた。これでは、大企業でも日本離脱の可能性
が出る。

将来への成長モデルがないことで、安倍首相は無理な政策を取らざ
るを得ないことになっている。

全ての根源は人口減少であり、その解決なしに成長モデルはないの
であるが、それを避けている。このため、泥沼に日本経済は入ろう
としている。

しかし、株式市場は2万円を狙うというが、日本経済が泥沼に入ろ
うとして、かつ成長モデルがないのに、株価だけが上がることは普
通ないので、いつか、株価は下落してくる。

世界的に見ても、テロとの戦い、地政学的なリスクなど経済成長が
望める感じがしない。なのに株価が日本だけ上がる。何かが変であ
る。

政府主導で、株価を吊り上げていると、いつかしっぺ返しが大きく
なると思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?

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20年ぶりの低失業率はアベノミクスの成果?
abz20102015年11月30日 09:24
国内外で「アベノミクスは失敗した」との見方が多くみられるよう
になりつつあるなか、先日発表になった10月の完全失業率(季節調
整値)は3.1%となり、1995年7月以来、約20年ぶりの低水準となった。
 確かに雇用は堅調ではあるものの20年ぶりとなると、そこまで景
気はいいかな?と首をかしげる人も多いのではないだろうか? 
筆者はその違和感の要因の一つは右肩上がりの医療・福祉産業の就
業者数にあるのではないかと考えている。本エントリーではこの辺
りを幾つかのデータを示しつつ考察してみる。
まず、失業率の推移であるが、確かにリーマンショック前の最低失
業率 3.6%を0.5%下回っており、2%台にとどきそうな勢いである。
この傾向は就業者数の推移にもあらわれており、労働力人口が減少
する中、2012年中盤以降、少しずつではあるが増加傾向にある。
そしてその増加を牽引しているのが先に言及した医療・福祉産業、
つまり介護関連の産業の就業者数である。 その就業者数は2002年
の462万人から2015年5月の805万人まで実に340万人も増加している。
 この規模感が分かるように失業者数とプロットしてみたのが以下
のグラフとなるが、2002年1月の失業者数がちょうど340万人程度で
あり、労働人口が減少するなか医療・福祉だけは当時の失業者数と
ほぼ同じだけ就業者数を増やしているわけである。
また就業者数からこの医療・福祉産業の就業者数を除くと以下の通
りとなり、こちらは2012年頃からほぼ横ばいとなっている。
医療・福祉産業の就業者数の推移から明らかなのは殆ど景気に左右
されていないことで、アベノミクスの影響どころかリーマンショッ
クの影響すらほとんど受けずに右肩上がりに増加してきている。
 介護職は非常に求人倍率が高いことが知られており、2015年1月時
点で、全職種の有効求人倍率が1.02倍のときに、介護職の有効求人
倍率は全国平均で2.42倍、東京に限定すれば4.34倍と深刻な人手不
足となっている(http://www.asahi.com/articles/ASH145DJQH14ULFA009.html)。
つまりこの分野においては需要>>供給となっており、景気の動向と
関係の深い非自発的失業者は限定的となっていると考える事ができ
るだろう。
よって循環的な景気と失業率の長期的な比較を考えるときには、こ
のような趨勢的なトレンドを考慮にいれる必要があることになる。
厳密な検証は難しいが仮に医療・福祉産業の就業者数が2002年から
全く変わっていなかったと考えて失業率を試算すると下図のように
なり、医療・福祉産業の就業者増が失業率を押し下げている事が分
かる。尚、試算結果の足元の失業率は3.5%であり、ほぼリーマンシ
ョック前の2007年頃の数値と同じとなる。当時もほぼ完全雇用水準
と呼ばれており、現状もそれに近いということであればまずまず納
得できるところではないだろうか? 
しかしながら医療・福祉産業の就業者増を牽引している介護関連の
産業は平均所得が低く、その就業者増が失業率を押し下げていると
いうのは、賃金の押し上げには必ずしもプラスにはならない可能性
が高い点には留意が必要であろう。数字上は低失業率、高有効求人
倍となっても介護職の就業者が潜在的な自発的失業者になるとすれ
ば数字に見えるほどの労働市場のタイト感は高まらないということ
になるからである。
最後にタイトルの「20年ぶりの低失業率はアベノミクスの成果?」
について書くとすると、失業率が20年ぶりのレベルまで下がった要
因は、失業率の分母側で医療・福祉産業の就業者数が数百万人単位
で増加したこと(特に労働参加率の低かった女性を中心に増加した
こと)であり、アベノミクスとは直接関係ないというのが筆者の理
解という事になる。 そもそも失業率をみても就業者数をみても安
倍政権誕生の時期の前後で明らかなトレンドの変化は見て取れず、
「アベノミクスがなかったらもっと高い失業率だったはずだ」的な
主張は否定できないものの、その貢献度が誰の目にも明らかという
レベルにいたっていないことは明らかであろう。
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“鳴かぬなら鳴かせてみせよう“では困る〜安倍政権と企業のせめ
ぎ合い - 上野 剛志
ニッセイ基礎研究所2015年11月30日 09:56
 安倍政権が、企業に対する賃上げ・設備投資増額要請を強めてい
る。日本経済の好循環を起こすためには、企業によるこれらの前向
きな支出が欠かせないとの立場だ。一方、企業側から見ると、事業
コストの増加や将来のリスクに繋がりかねない大幅な賃上げや設備
投資に踏み切るには、持続的な経済成長が必要との思いがあるはず。
賃上げ・設備投資と経済成長は“ニワトリとタマゴの関係”にある
と言えるのだが、“どちらが先なのか”を巡って政府と企業の間に
認識の隔たりが感じられる。
   そうした中、今月26日には、企業経営側が官民対話において賃上
げと設備投資について前向きな表明を行うと同時に、政府が法人税
減税の前倒しを関係省庁に指示した。法人税減税を材料として、政
府が企業経営に大きく介入する姿が浮き彫りになった。
   アベノミクス開始から3年がたとうとしているが、最近の安倍政
権は、企業に対する強引な態度がますます目立つようになっている。
具体的には、賃上げ・設備投資への直接的な要請のほか、携帯料金
の引き下げ要請や最低賃金の大幅な引き上げ方針などが挙げられる。
与党内には企業の内部留保に課税すべきとの声もある。まさに、秀
吉ばりの「鳴かぬなら鳴かせてみせよう(ホトトギス)」というス
タンスである。
 確かに、現在の企業収益が過去最高レベルに達している割には、
賃上げや設備投資の動きが鈍いという点は否めず、日本経済が直近
2四半期連続でマイナス成長に陥る中で、政府が企業に催促をしたく
なる気持ちも理解できる。ただし、民間企業の主力である株式会社
にとっての最大かつ直接的な目標は利益の最大化であって、日本経
済の成長を事業目的としているわけではない。また、企業は現時点
においても海外への投資は活発に行っている。つまり、自社の経済
合理性に基づき、グローバルな視点で成長が期待できる市場を見定
めて投資を実行している。政府が日本国内での設備投資を活発化さ
せたいのであれば、企業の投資先選定を巡る国際競争に勝つ必要が
ある。
 安倍首相は2013年春の施政方針演説において、「世界で一番企業
が活躍しやすい国を目指す」と宣言した。さらにその後に発表され
た成長戦略(日本再興戦略)においては、具体的に、「世界銀行の
ビジネス環境ランキングにおいて、2020年までに先進国で3位以内に
入る」との目標値も掲げている。では、現実はどうだろうか?同ラ
ンキングの最新版である2016年版(2015年10月27日発表)における
日本の順位は34位に留まり、しかも順位は年々後退している(2013
年版24位→14年版27位→15年版29位→16年版34位)。先進国の中で
も24位に留まり、目標である3位は遥か彼方だ。さらに、昨今の企業
への強引な介入姿勢は、企業経営の自由を尊重しているようには見
えない。短期的にはそれなりに効果があったとしても、中長期で見
ると、かえって投資先としての日本の魅力を損ね、日本企業による
国内での業容拡大意欲や海外企業による日本への進出意欲を削ぐこ
とにもなりかねない。資本主義経済下においては、企業がどうお金
を使うかの判断は、出来るだけ企業に任せるべきだ。
 確かに安倍政権発足以降、円高の是正や法人税減税、TPPの大筋合
意など、企業経営にとってプラスとなる取組みを進めてきたことは
評価できる。しかし、まだやるべきことは数多く残っている。具体
的には、労働規制をはじめとする規制緩和を通じた成長戦略の推進
や煩雑な各種ビジネス手続きの解消、持続可能な社会保障制度の構
築などだ。日本経済活性化のためには、企業の目線が海外だけでな
く国内にも向かうように、投資先としての魅力を高めていく必要が
ある。
 日本経済の5年後、10年後を見据えた場合、政権が「鳴かぬなら鳴
かせてみせよう」というスタンスを取るよりも、「鳴かぬなら鳴き
たくなるようにしてみせよう」というスタンスを真摯に貫き通す方
が得策だと筆者は考える。
   ホトトギスも羽を休められる枝など居心地のいい環境がなければ
、鳴かないだろう。
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日銀総裁、物価2%の早期達成を明言  
「賃金上昇まで待つ考えはない」
ロイター 2015年11月30日
[名古屋市?30日?ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は30日、愛知県
の名古屋市内で講演と会見を行い、賃金と物価の動きは同調的とし
、賃金が上がるまで物価の上昇を待つ考えはない、と語った。2%の
物価安定目標の早期達成にあらためて意欲を示したもので、物価の
基調に変化が生じれば「追加緩和であれ何であれ、ちゅうちょなく
金融政策を調整する」と強調した。
総裁は中長期的に物価と賃金が同調的に動くのは「統計的な事実」
とし、「物価目標の実現をゆっくりやっていれば、賃金の調整もゆ
っくりになるだけだ」と指摘。このため、毎月などのペースでみて
賃金の上昇が物価よりも遅れているからと言って「賃金がもっと上
がるのを待とうとはまったく考えていない」と明言し、「物価のパ
スを考えていく上では、賃金も上がっていくことを期待している」
と語った。
そのうえで、「われわれは賃金をコントロールできるわけでもない
し、ターゲットにしているわけでもない」と述べ、物価2%の早期達
成によって賃上げも実現していくとの見通しを示した。物価の問題
である以上、「まず行動すべきは日本銀行」と強調。「物価が2%の
目標に向けて着実に前進していくことが重要」とし、「2%の物価安
定目標の早期達成が難しいのであれば、ちゅうちょなく追加緩和で
あれ何であれ金融政策を調整する」と語った。
政府は最低賃金を毎年3%程度引き上げ、1000円を目指す方針を打ち
出したが、黒田総裁は、政府が目標に掲げている2020年頃の名目GDP
600兆円達成と「平仄が合っている」と評価。中小企業にも配慮しな
がら最低賃金を引き上げていく政策は「極めて適正だと思う」との
認識を示した。
総裁は物価動向について、日銀が試算している生鮮食品とエネルギ
ーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)や東大物価指数などが
着実に上昇していることなどを挙げ、「今年度に入って、明らかに
企業の価格設定行動が変わり、家計も受容している」と主張。物価
の基調は「しっかり着実に改善してきている」との認識を示した。
日銀は10月末の金融政策決定会合で物価見通しを下方修正するとと
もに、目標達成時期を先送りしたが、追加の金融緩和は見送った。
総裁は、物価の基調が改善する中、現在のQQEの着実な推進で「累積
的に緩和効果は高まる。早期に物価2%が実現できると確信した」と
語った。
(伊藤純夫)
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日本で賃金上昇がなかなか進まない根本理由
企業のデフレ心理払拭する金融緩和の徹底を
村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ス
トラテジスト 2015年11月30日TK
名目賃金の上昇率の伸び悩みが話題になっている。これに対して、
企業の利益が過去最高水準まで増えているのに、人件費や設備投資
になかなか回らない企業行動を問題視する見方がある。
企業が蓄積した内部留保を人件費等に使うのが望ましいとの考えで
、政府から大企業に対する働きかけが続いている。
影響大きかった2014年の消費増税
この政府の対応の是非について多様な見方があるだろうが、実際に
は政府からの要請があっても、民間企業の行動(=お金の使い方)
に大きな影響を及ぼすには至らないのが実情だろう。厳しい競争に
さらされる民間企業の行動は、さまざまな要因が影響するので、法
的拘束力がない声掛けにはおのずと限界がある。効果が不確かな声
掛けよりも、企業が人件費や設備投資への支出を増やすインセンテ
ィブが自ずと強まる経済環境を地道に整える対応が、最も効果があ
るのではないか。
2015年に期待された賃金上昇が遅れている一因を考えると、2014年
に消費増税によって実質GDP成長率が停滞したことがあげられる。現
段階で判明している2014年度の実質GDP成長率はマイナス0.9%と大
きな落ち込みで、実際にはこれほど大きなマイナス成長ではなかっ
たとみられるが、個人消費が失速して急ブレーキがかかり需給ギャ
ップの縮小が止まった。
企業利益は円安効果で増益になったが、前政権の「負の遺産」であ
る尚早な消費増税の後遺症は大きく、脱デフレと相反する政策を採
用した政策への不信から、企業は賃上げに慎重にならざるをえなか
ったのではないか。
脱デフレに向けた中途半端になってしまった総需要安定化政策が、
企業による賃上げへのインセンティブを弱めたということである(
第2の矢が逆噴射を起こした)。つまり、脱デフレにブレーキをかけ
る政策手段には徹底して慎重に対応することが、回り道のようにみ
えて賃金上昇の実現の近道だと思われる。また、賃金が伸び悩んで
いることには、団塊世代など高齢者の再雇用などが進み、またこれ
まで非労働力化していた女性の就業拡大、などの労働供給側の変化
が一因になっている。
賃金水準が低い労働者が増えれば、一人当たりの賃金は抑制される
。これらの労働者の新規採用を優先し、迅速に(手っ取り早く)か
つコストを抑制して労働力を確保することが依然合理的と判断する
企業が多いのかもしれない。人手不足時代到来と言われるが、2014
年に景気回復にブレーキがかかる中で、建設業など一部を除けばコ
スト抑制の制約を最優先にしながら、労働者を確保する余裕が多く
の企業にあるのではないか。
すでに日本は完全雇用に近いと言われることが多い。ただ、日本の
失業率は3%台前半と低いようにも見えるが、1990年代半ば以前の安
定したインフレ期には失業率は2%台で推移していた。過去20年で、
日本の労働市場において摩擦的失業率が上昇したとの分析もみかけ
るが、これらは推計誤差が大きい可能性がかなりあると筆者は考え
ている。
企業は労働市場がタイトだと判断していない
本当に完全雇用といえるほど労働市場が逼迫していれば、企業は、
将来の事業拡大あるいは企業価値を保つために、他社との競争との
観点から、正社員化促進を含め高めの賃金を支払うなど、人的資本
を拡充することが合理的な行動になるだろう。賃金の伸びが高まら
ないのは、多くの企業は、雇用戦略を変える必要性を認識するほど
労働市場がタイト化していないと判断していることが一因ではない
か。
このことは、脱デフレが道半ばであるとともに、2012年以前よりは
大分少なくなったとはいえ、労働市場にスラック(余剰)が残って
いることを意味する。実際に、賃金の伸びの低さ以外にも日本の労
働市場にまだ余剰が残っていることを示すデータがある。男性の現
役世代の労働参加率(=労働市場に存在する人/総人口)が、依然低
下し続けていることである。
女性の労働参加率は過去20年いずれの世代でも上昇しており、これ
は景気動向とはほぼ関係なく起きてきた。一方で、現役世代(20〜50
歳代)の男性の労働参加率は低下が続いている。例えば30-34歳男性
の労働力率は1995年98%だったが、2014年には95%台まで低下した。
労働者の非労働力化にはいくつか要因があるが、就職氷河期を経て
不本意ながらも労働市場から退出を余儀なくされた方も相当含まれ
るだろう。景気回復が長期化してインフレが安定することで労働市
場が引き締まり、こうした現役世代に就業の機会が訪れることで、
労働市場の余剰が縮小する余地があるだろう。
賃金上昇が明確になりつつある米国
上記を含めた労働市場の余剰が更に小さくなり、また不本意に短時
間の非正規労働の職にある現役世代の正社員化が進む過程で、今後
名目賃金が上昇すると予想される。脱デフレの進展とともに起こる
このプロセスが道半ばにあるため2%インフレ実現にコミットして金
融緩和強化を徹底するという、現在の日本銀行の政策姿勢は望まし
いと評価できる。
なお、賃金の伸び悩みは、日本だけではなく一足早く金融政策の正
常化を始めた米国でも議論になっていた。もちろん、デフレには陥
らなかった米国では、日本ほど賃金の伸びは低くないが、失業率低
下が続いた一方名目賃金上昇率は2010年から2%前後でほとんど伸び
ない状況が続いた。
ただ11月初旬に判明した10月の米雇用者の平均時給は前年比2.5%と
ほぼ6年振りの高さの伸びを示し、リーマンショック後の緩やかな景
気回復局面でようやく賃金上昇が明確になりつつある。
米国でも伸びない賃金を巡り、失業率と賃金の関係が崩れたなどの
議論が聞かれた。しかし、量的金融緩和強化解除後も慎重に出口政
策を進めるなど、米FRBのねばり強い政策対応が功を奏して名目賃金
が上昇し始めた。日本に先立ち量的金融緩和政策を拡大させた米国
において、ようやく賃金加速の兆しが見え始めたわけだが、金融緩
和など総需要安定化政策の徹底が賃金上昇にいずれはつながるとい
うことだろう。過去20年続いたデフレ環境に慣れきった日本企業の
行動を変えるには、より時間を要するのかもしれない。


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