5586.脱石油“人工クモ糸”開発



人工蜘蛛の糸ができた。それも微生物の2次代謝物によるというの
で、クモ糸の主成分であるフィブロインを微生物の発酵で作ること
が出来た。関山和秀、32歳が発見。

ノーベル賞をもらった大村智先生は、微生物の生産する有用な天然
有機化合物の探索研究を45年以上行い、これまでに類のない480種を
超える新規化合物を発見、それらにより感染症などの予防・撲滅、
創薬、生命現象の解明に貢献している。

また、化合物の発見や創製、構造解析について新しい方法を提唱、
実現し、基礎から応用までの幅広く新しい研究領域を世界に先駆け
て開拓している。

微生物のDNAがわかると、その微生物が合成できる2次代者物が分か
ることを突き止めた。ということは、多くの微生物がこの地球には
存在するが、そこから、いろいろな有機体を作ることが出来る。

その1つが、蜘蛛の糸の合成であるが、これを石油から合成しよう
としたら、膨大なエネルギーが必要になる。これを微生物にやらせ
ると、ほとんどエネルギーが必要なく、また微生物の食料も大した
ことがない。

どんどん、このような微生物を発見することが、日本の力になるよ
うだ。

さあ、どんなものができるようになるのか、楽しみですね?




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2015年11月1日夢の扉
NASAも断念…脱石油“人工クモ糸”開発脱石油!NASAも米軍も作れ
なかった“夢の繊維”
鋼鉄よりも強い!「人工クモ糸」開発に独占密着スパイバー株式会
社 代表執行役/関山和秀さん
自然界で最も頑丈な物質は何か―。その最有力候補が「クモの糸」。
 鋼鉄よりもはるかに強度が高く、直径1cmのクモの糸で500mの巣を
張れば、 離陸するジャンボジェット機を受け止められるという。
かつて、NASAや米軍は、宇宙服や防弾チョッキをこの強靭な素材で
作ろうと、 「人工のクモ糸」生産に挑んだ。だが、技術を確立でき
ず開発を断念…。
そんな“夢の繊維”の大量生産を世界で初めて可能にしたのが、関
山和秀、32歳。

 関山の夢は、『“脱石油”の未来を創ること』。
 彼が作る「人工クモ糸」は、材料に石油を一切使わない。地球に優
しいタンパク質素材だ。
その用途は、衣服だけでなく、人工血管などの医療分野や、車など
の輸送機分野など、世界の様々なものづくりを変える可能性を大い
に秘めている。
 番組では、世界初の「人工クモ糸製品」開発に独占密着!
 関山はどうやって“不可能”を可能にしたのか?新世代の“素材革
命”に迫る―。 
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「人工クモの糸」を製品化たらしめる「Spiber」とは何者か:
ザ・ノース・ フェイス「MOON PARKA」
BY KENJI ISHIMURA
2015/10/16 wired
人工合成クモ糸素材の開発に世界で初めて成功した山形県のヴェン
チャー企業「Spiber」(スパイバー)が、「THE NORTH FACE」(ザ
・ノース・フェイス)での共同開発プロトタイプ「MOON PARKA」を
発表。これまで困難だとされてきた新世代タンパク質素材の実用化
に向け、大きな一歩を踏み出した。

自然のクモの糸は、鋼鉄よりも強靭で、ナイロンのように伸び縮み
する性質がある。
山形県鶴岡市のヴェンチャー企業「Spiber(スパイバー)」は、そ
れと同じ、あるいはそれを上回る質の人工合成クモ糸素材「QMONOS?」
の研究を行っている。彼らはその素材を用いたアウトドアジャケッ
ト「MOON PARKA」を「THE NORTH FACE」と共同開発し、2016年中に
発売すると発表、あわせてプロトタイプを公開した。
Spiberは関山和秀と菅原潤一が慶應義塾大学在学中の04年から研究
を始め、07年に起業、クモ糸の主成分であるフィブロインと呼ばれ
るタンパク質を微生物発酵を利用して生成し、そこからポリマーを
抽出、それを紡糸・加工する研究を行ってきた。
10月8日の記者発表会で関山は、人類が利用してきたマテリアルの歴
史と、20種類のアミノ酸が50?3000個組み合わさって生まれるタンパ
ク質の無限の可能性に言及。約100年前に社会にイノヴェイションを
起こした石油由来の素材に代わる新時代の素材としてのタンパク質
のさまざまな性質について説明した。
タンパク質は、生物の体を構成する主な要素のひとつだが、さまざ
まに姿を変える。人類はこれまでもタンパク質を自然由来の素材と
して用いてきた。動物の革、羊の毛、鳥の羽、亀の甲羅、象の牙な
どがそれだ。そして、これまで実用化はされていないが、驚くべき
性質をもつタンパク質も世の中には数多く存在する。
そのひとつはもちろんクモの糸だが、それ以外にも、ノミやバッタ
の関節の成分であるレシリンが非常に高い弾性力をもっていたり、
シロアリの顎はタンパク質と金属の複合素材というべきものででき
ていて、チタン合金と同じくらいの硬度があるという。
それらのタンパク質を人工的に合成し、素材として利用することが
できるようになれば、さまざまなアプリケーションが期待できるの
だ。
Spiberでは、そのような将来も視野に入れ、タンパク質を合成する
プラットフォームを構築してきた。微生物を用いた発酵というシス
テムを使うことで、異なる設計図のタンパク質も同様のシステムで
つくることができるようにしたのだ。
そして、このシステムは、消費エネルギーが少なく、微生物に与え
る餌も植物由来の材料からつくることができるエコなものでもある。
それも枯渇が懸念される石油由来の素材にタンパク質が取って代わ
ることを期待されている理由のひとつだ。
Spiberはそのシステムを使って、タンパク質のさまざまな組成を試
し、それをフィードバックすることによってその性質や生産性を向
上させるサイクルを繰り返し、08年からこれまでに650種類以上のタ
ンパク質を試してきたと関山は語る。
このサイクルは、質の向上だけでなく生産コストの低減にもつなが
り、現在は開始時の5万3,000分の1のコストでつくれるようになった
という。
「工業製品に用いられる素材のマーケットを考えると、1キロあたり
の単価が高くても20?30ドルにならないと大きなマーケットサイズは
つくれないといわれるなかで、微生物発酵によるタンパク質の生産
においてはこれまで1キロ辺り100ドルを切るのは難しいとされてき
ました。しかし、われわれはもう100ドルバリアを大きく突破できそ
うなところまで来ています」
関山は「世界初の試みを行うなかで、またいろいろな課題も見えて
きた。それを1つひとつクリアして来年には必ず世に出したい」と
2016年中の発売を約束した。この「MOON PARKA」がどれくらいのス
ペックになるのかは明らかにされていないが、この製品の発売がも
つ本質的な価値は、枯渇資源に依存しない新世代タンパク質素材を
人類が使いこなすためのインフラがついに稼働を開始するという事
実だろう。
Spiberはさらに、自動車などの輸送機械や医療分野で利用できる素
材の開発も進めており、クモ糸繊維にとどまらず「タンパク質を人
類が使いこなすという大きなイノヴェイション」に向けてこれから
も可能性を追求していくという。



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