5583.米国の世界観が変化した



米国の世界観が変化してきた。米国は民主主義を世界に広めること
が使命としていたのですが、トランプ候補は独裁体制の崩壊をしな
い方が良い。混乱を広げるより、安定の方が良いという。アラブの
春のような体制変更運動が、今のような混乱を招いたので、そのよ
うな体制変更を米国は仕掛けないようにするべきであるという。

もちろん、クリントンは、世界に民主主義を広めるのが米国の役割
というが、米国の多くがトランプの考え方が良いと見ている。

これは大変なことになる可能性が高い。中国の体制変更をしないし
、中国がアジアで暴れている限りは放置になる可能性がある。

米国の利害に関係ないことは、米国は動かないということになる。

今、ロシア・イラン対イスラエル・トルコの中東地域での冷戦が起
きている。イランには中国がつく可能性があり、イスラエルには欧
米が付く可能性がある。

米国としては、中東への介入はしたくないし、過去の失敗から国民
が承認しない。米軍やマケインは再介入するべきというが、そうな
らない。欧州は冷戦を終結して、対イスラム国で足並みを揃えたい
ので、和平を望んでいる。

米国は中国がロシア・イランの陣営に行かないことを考えている。

中東の戦争が近いので、中国も東シナ海や南シナ海で、これ以上の
紛争を拡大させるわけには行かない。いつイランから泣きつかれる
かわからないためであるが、中国としては石油利権獲得の一大チャ
ンスであり、また、兵隊を動かすための兵站の整備で一帯一路のイ
ンフラが現実的になる大きなチャンスである。

米国が中東まで利権を取りに来ないので、中国のやりたい放題にな
る。米国も中国の地域利権を認めている。
というように、米中は2ケ国で利権の分配をし始めている。

日本の中国敵視政策は、米国の利害とは違うことになっている。

どうか気をつけて、世界観を持って欲しいと思う。

さあ、どうなりますか?


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共和党予備選で盛り上がる「政権交代外交」否定論
2015年12月22日(火)16時30分newsweek
冷泉彰彦
 共和党の大統領候補予備選では、依然として「トランプ旋風」が
続いています。今月初めのカリフォルニア州での銃乱射テロ事件、
それを受けた形でトランプ候補が言い放った「イスラム教徒入国禁
止」発言などを経ても、トランプ候補の勢いは止まりません。現在
では、共和党支持者における支持率が35〜40%という水準で推移し
ており、さらに支持率はジリジリ上昇しています。
 トランプと「お互いに批判を控えて」連携を匂わせているテッド
・クルーズ候補も支持を伸ばしており、来年の2月1日に党員集会
が予定されているアイオワ州では、トランプを上回る支持を獲得し
ています。
 とにかく、この2人の候補が党内を「引っかき回す」一方で、共
和党の伝統的な中道派は3位のマルコ・ルビオ候補に希望を託すし
かない、そんな中で年末を迎えつつあります。
 さて、このトランプとクルーズという「右派ポピュリスト」です
が、「イスラム教徒入国禁止」とか「ISILへの絨毯爆撃をせよ
」といった「暴言」ばかりでなく、大胆な中にも「考えさせられる
発言」を混ぜていることを指摘しないわけにはいきません。
 例えば、軍事外交に関してですが、トランプに続いてクルーズも
加わる形で、過去20年間のアメリカの「レジーム・チェンジ(政権
交代)政策」をハッキリ否定し始めているということが指摘できま
す。
 要するに中東などの情勢に軍事的に介入する中で、「反米的な政
権を交代させる」ように画策したケースのほとんどは失敗に終わっ
ている、だから、そのような「レジーム・チェンジ」は否定すべき
だというのです。
 具体的には「サダム・フセインを温存すべきだった」という論と
、「ムバラク、カダフィ、アサドはアメリカの国益にかなっていた
」という主張です。
 重要なのは、この2つの話が組み合わさっているところです。前
者だけなら「イラク戦争反対論」ということで、どちらかと言えば
民主党などの反戦論に近いわけです。ところが後者の話、つまり「
中東の独裁政権崩壊」に関して言えば、要するに『アラブの春』を
承認した「オバマ外交」に対する強烈なパンチになるわけです。
 ですから、この2つがセットになることで、左派ではなく右派的
な主張になるのです。さらに言えば、カダフィ打倒に手を貸し、今
もアサド打倒を考えている共和党の「軍事タカ派」、つまりジョン
・マケインやリンゼー・グラハムへの「アンチ」にもなります。
 さらに言えば、そうした「独裁政権許容論」というのは、ヒラリ
ー・クリントンの政治姿勢に真っ向から対立するものです。ヒラリ
ーの行動理念というのは、いわば「リベラル・ホーク」つまりリベ
ラルなタカ派とでも言うべきもので、人道危機や民主化要求運動に
は積極的に介入して「自由と民主主義、人権」という普遍的な価値
を世界に普及させようという思想です。ですから、この「レジーム
・チェンジの否定」というのは、そのいわば「ヒラリー主義」の全
否定になります。
 また、この主張は共和党の伝統である「孤立主義」とも整合性が
あります。トランプと言えば、ロシアのプーチン大統領とお互いに
「称賛しあう」妙な関係になっていますが、その「プーチン許容論
」も、この「独裁政権許容論」の一つだと見ることができます。そ
して、プーチンを認めて、アサド政権も認めれば、ISIL攻撃の
体制はかなりシンプルになるという、かなり粗っぽい単純化もされ
ています。
 この「レジーム・チェンジ否定論」あるいは「独裁政治許容論」
ですが、こうした世論感情はトランプ旋風だけでなく、共和党の一
定の部分に浸透しつつあると見るべきでしょう。ブッシュもオバマ
もマケインも、そしてヒラリーも「ぶっ飛ばせ」というわけです。
 ですが、自分たちは「アメリカを再び偉大にする」と称しておき
ながら、理念型の外交を否定するというのは、大変に危険な考え方
だと思います。フセインもプーチンも認めるのであれば、経済的な
関係の深い中国の共産党独裁体制も「損得の話」としてアッサリ認
めてしまう、そんな危険性も感じられます。
 共和党では今、こうしたトランプ=クルーズの動きに対して、マ
ルコ・ルビオ議員が「伝統的な共和党の現実路線」を代弁して対抗
しようとしていますが、現時点ではまだ対抗できるほどの支持を得
ていません。この「レジーム・チェンジ否定論」が今後どう動くか
、注意して見ていく必要がありそうです。



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