5578.ロシアとトルコの思惑の違い



イスラム国を打ち負かすことは、世界の合意であるが、それ以外が
違い、そのため、敵と味方と敵の敵というような色分けになってい
る。今後、どうなるのか?           津田より

0.世界の経済状況
FRBが米景気が良いと利上げを発表したが、原油市場などコモディテ
ィ価格の下落が止まらないために、ハイイールド債が崩壊して、米
株価は大幅下落している。

日本も日銀黒田総裁が、市場を見下した騙しをおこなったことで、
日本の株価も下落して、金融緩和がこれ以上できないと見透かされ
て、円高121円台前半になってしまった。

FRBが笛を吹いても、世界の供給過剰・需要不足は止まらないし、そ
れを感じて株式市場も盛り上がらない。この市場が活気づかない原
因を解消しないと世界経済は復活しない。

また、日銀が意図せずに示唆したように、国債の量がなく金融緩和
を長くは続けられないことも明確になった。非伝統的金融政策を逸
脱した一部銘柄のJPXというETFを年間3000億円買うとしたが、これ
に日本株の取引7割の世界の投資家が中央銀行として逸脱した行為
だと反発した。このため、日本株の売りが出ている。また財政拡大
による需要創造も財政赤字で限界にきているし、金融政策も限界に
きている。

日本政府は、金融政策もできず財政政策もできずに、企業に投資拡
大を要求しているが、世界経済の需要不足で多くの企業も投資拡大
はできない。もちろん、インバウンド消費が期待できる観光業界や
百貨店などは投資するとは思うが、それ以外の業界では、無理があ
る。

このため、現在世界経済を活性化する方法として、平和的手段は出
尽く、ないのが現状になった。非常に世界経済が難しい状態になっ
てきたことになる。

この難しい経済状況に、石油価格の下落とEUや米国からの制裁で、
ロシアは世界より先に陥ったことで、その打開策を模索している。
その過程で戦争経済にシフトしようとしているようだ。

しかし、主に財政的な問題で、大部隊の展開ができず戦争の拡大も
できずに、かつトルコとの問題が生じて、現在、より苦しい経済状
況になっている。

イランからの要望でシリアを助けるために、シリアに空軍を展開し
たが、ロシア空軍は反政府軍を叩くために、トルコがシリアにいる
同じ民族に対する空爆に反発してしまった。

ロシアのプーチンは、イスラム国も反政府勢力も同じとイランから
唆されて、シリア政府を助けたが、それを米国とトルコに大反発さ
れてしまった。目算が違ったようだ。

1.トルコをめぐる米露
米国は、イスラム国もシリア政府の独裁も認めない立場であり、こ
のため、プーチン大統領は「米ロは共にシリア危機の解決策を探し
ている」と述べ、ケリー長官は「前進に向けて共に多くのことがで
きる」とした。

シリア情勢が主要議題で、過激派組織「イスラム国」(IS)との
戦いで調整を図る一方、和平に向けたシリアの政権移行におけるア
サド大統領の処遇が焦点となった。

外相会談では、ケリー長官は「ISは共通の脅威だ」と述べ、シリ
ア情勢で米ロが協力する必要性を強調した。これに対してラブロフ
外相は「解決すべき問題が残っている」と指摘し、政権移行に参加
できる反体制派とテロ組織の線引きなどで、溝の深さを示唆した。

ラブロフ外相の言いたいことは、要するに、トルコが支援する同じ
民族の反政府勢力をロシアはテロ組織であるということである。ま
た、トルコは、イスラム国の石油を買い、イスラム国へ武器等を援
助しているので、トルコもイスラム国と同罪であり、その支援する
反政府勢力も駆逐しないといけないというのである。

これでは、トルコはロシアと手を組めない。ロシアはトルコとの戦
争も辞さない感じになるが、ボスボラス海峡を封鎖されるとシリア
への物資補給が円滑に行かないことになるのでそれもできない。

しかし、シリアにロシアは、最新鋭のS-400防空システムやシリア
沿岸部に長距離防空システムを搭載した巡洋艦モスクワを展開して
トルコを牽制している。事実、トルコ空軍はシリアへの空爆を止め
ている。

そして、ロシアのトルコへの批判と同調するように、カーター米国
防長官もトルコ南部インジルリク空軍基地を訪問し、過激派組織「
イスラム国」(IS)掃討に向け、トルコに対して隣国シリアとの
国境の管理強化を求めた。トルコがイスラム国との関係をより敵対
的にするように勧告したことになる。

米国は、イスラム国の安い原油をトルコが買っていると見ている。

トルコの一番の敵は、シリア政府とクルド勢力であり、次にイスラ
ム国なので、クルド勢力を敵とするイスラム国は敵の敵になる。

このため、トルコはどうしてもイスラム国に甘くなりがちで、米国
も、そのようなトルコに苦言を呈したのである。

そして、国連安全保障理事会は過激派組織「イスラム国」(IS)に
対する決議案で、ISのメンバーや、ISに資金援助した個人や団体に
資産凍結や渡航禁止の制裁を科すことが柱。金融面でも国際的な包
囲網を形成し、IS弱体化を図るのが狙い。この案は米露で一致して
いる。トルコ企業が対象になる可能性がある。

ロシアと同盟関係にあるイラクも自国内にいるトルコ軍の撤退を国
連に申請した。このように、トルコが悪者にされている。

2.アサド政権は
欧米諸国などがアサド政権と反政府勢力との対話の実現を目指して
いることについて、アサド大統領は、「テロリストとは交渉しない
」として、反政府勢力側を強くけん制している。ロシアの支援を受
けて、アサド政権は反転攻勢に出ているので、現時点は自国領土の
復活を目指している。

しかし、アレッポを簡単に奪還するはずが、サウジから支援された
対戦車ミサイルを持つヌスラ戦線の反撃に合い、前進できずにいる。
ここでもイスラム国がヌスラ戦線をやっつけること期待して、イス
ラム国から石油を大量に買っているようである。ロシアがトルコを
非難するように、米国がアサド政権を非難している。

3.イスラエルとトルコが手を組む
このようにトルコも国際的な立場が弱くなり、同じく立場が弱いイ
スラエルと協力する方向になった。イスラム国を生み出したのは、
イスラエルのシーア派とスンニ派を分断政策であり、その意味では
トルコと利害が一致している。

イスラエルは、2010年のイスラエル軍によるトルコのガザ支援
船襲撃事件を受けて関係が悪化した両国が和解案で大筋合意した。
両国の当局者が会談し、召還した互いの大使の再派遣など和解の条
件をまとめた。

というように、ロシア対イスラエル&トルコの敵対関係ができつつ
ある。ロシアの南下が、エゼキエル書ではイスラエルの滅亡になる
としているが、その構図ができつつあることになる。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Cornering Russia - Risking World War III
http://www.zerohedge.com/news/2015-12-14/cornering-russia-risking-world-war-iii

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イスラエル、トルコと和解へ=ガザ支援船襲撃で関係悪化
 【エルサレム時事】イスラエルのメディアは17日、2010年
のイスラエル軍によるトルコのガザ支援船襲撃事件を受けて関係が
悪化した両国が和解案で大筋合意したと報じた。両国の当局者が会
談し、召還した互いの大使の再派遣など和解の条件をまとめた。
 ハーレツ紙によれば、イスラエル高官は「最終署名はまだだが、
問題は解決されつつある」と述べた。和解案には、イスラエルによ
るトルコへの補償金2000万ドル(約24億5000万円)の支
払いや、トルコに拠点を置くイスラム原理主義組織ハマス幹部の追
放、イスラエル沖の天然ガス田に関する両国間協力の模索などが盛
り込まれているという。
 事件では、パレスチナ自治区ガザに向かっていたトルコの支援船
をイスラエル軍が襲撃し、活動家10人が死亡。13年にネタニヤ
フ・イスラエル首相がエルドアン・トルコ首相(当時)に電話で謝
罪し、和解協議が始まったが、合意には至っていなかった。
(2015/12/18-07:56)
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「イスラム国」資金遮断へ
安保理決議案、弱体化図る
2015年12月17日 10時16分
 【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会が、過激派組織「イス
ラム国」(IS)の資金源遮断を目指して17日に採択予定の決議案が
16日、判明した。ISのメンバーや、ISに資金援助した個人や団体に
資産凍結や渡航禁止の制裁を科すことが柱。金融面でも国際的な包
囲網を形成し、IS弱体化を図るのが狙い。
 安保理は17日午後(日本時間18日午前)、発足以来初めてとなる
公式財務相会合を開催する。決議案は米国主導で作成し、反対意見
はなく採択される見通し。
 共同通信が入手した決議案は「(ISの)テロに関係する団体や人
物へのいかなる形式の支援も阻止すべきだ」としている。
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イエメンの和平協議再開 15日から一時停戦
12月16日 6時08分NHK
内戦状態に陥っているイエメンの戦闘終結を目指して、政権側と反
体制派による和平協議がスイスで再開され、これに合わせて15日
から一時停戦に入りました。混乱に乗じて過激派組織IS=イスラ
ミックステートなどが勢力を拡大するなか、本格的な停戦を実現で
きるかが焦点になります。
イエメンでは、ハディ政権が首都サヌアの奪還を目指して、反体制
派と激しい戦闘を続けていて、政権側を支持する隣国のサウジアラ
ビアなども空爆を行い、国連によりますと、戦闘が激しくなった、
ことし3月以降、およそ5900人が死亡しています。
こうしたなか、国連は15日、スイス北部のビール近郊で政権側と
反体制派の双方を招いた和平協議を、ことし6月以来、およそ半年
ぶりに再開しました。協議には双方から、それぞれ12人が出席し
、冒頭、国連でイエメンを担当するアフメド特使が「今、最も重要
なのは恒久的かつ包括的な停戦の実現だ」と述べて双方に協力を促
しました。
この和平協議の再開に合わせて、政権側と反体制派は15日から一
時停戦に入りました。イエメンでは混乱に乗じて、過激派組織IS
や国際テロ組織アルカイダ系の過激派組織が勢力を拡大させていて
、こうした勢力を抑え込むためにも戦闘の終結を求める声が高まっ
ています。協議は今週いっぱい続く予定で、本格的な停戦を実現で
きるかが焦点になります。 
イエメン首都で空爆やむ
和平協議の再開に合わせて、ハディ政権と反体制派は日本時間の
15日午後6時から一時停戦に入りました。イエメンの首都サヌア
に住むジャーナリストによりますと、サヌアでは直前まで、政権を
支援するサウジアラビアなどによる空爆が行われていましたが、一
時停戦に入ってからは空爆が止まったということです。
ただ、ここ数か月にわたって激しい戦闘が続いていた中部のマーリ
ブや南部のタイズでは、まだ散発的に戦闘が続いているということ
です。
一時停戦は国連の仲介によって事前に調整され、政権側が7日間を
提案し、延長もできると主張していますが、反体制派は期限につい
て考えを明らかにしていません。
WHOが追加の支援物資
イエメンでの一時停戦に合わせて、WHO=世界保健機関は15日
、スイスで記者会見し、イエメンでは戦闘の影響で医療が行き届い
ていないとして、追加で支援物資を送ることを明らかにしました。
会見で、イエメンを担当するWHOのシャドゥール代表は、「人口
のおよそ80%が人道支援を必要としていて、1500万人が基本
的な医療サービスすら受けられない状態にある」と指摘しました。
そのうえで、「戦闘の影響で、およそ3000の医療施設のうち、
4分の1が機能しておらず、医療従事者も不足している」と述べ、
一時停戦の間に首都サヌアや南部の都市アデンに150トン分の治
療薬やワクチンなどを送ることにしています。
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トルコが海峡封鎖すればどうなる? 
露土戦争再発かそれとも…
2015年12月16日(Wed)  小泉悠 (財団法人未来工学研究所客員研
究員) 
2015年11月24日、ロシア空軍のSu-24M戦闘爆撃機がトルコ空軍のF-16
戦闘機に撃墜される事件が発生して以降、両国関係が緊迫化している。
2つの海峡を巡って高まる緊張
 ロシアはトルコ産農産物の輸入禁止等を含む制裁措置を導入する
とともに、シリアに展開するロシア軍基地に最新鋭のS-400防空シス
テムや追加の戦闘機部隊を送り込んだ他、シリア沿岸部に長距離防
空システムを搭載した巡洋艦モスクワを展開させるなどして、シリ
ア空軍機の活動を封じにかかっている。
 実際、ロシアがシリア北部にこれだけの強力な防空網を展開した
ことで、トルコ空軍はシリア領内に対する空爆を行えなくなってい
る模様だ。
 そこで気になるのがトルコ側の出方である。
 前述の巡洋艦モスクワをはじめ、ロシアのシリア作戦を支える海
軍力の大部分は、ロシア海軍黒海艦隊が提供している。先日、ロシ
ア海軍が初めて実施した潜水艦からの巡航ミサイル攻撃も黒海艦隊
の所属艦が行ったものだし、ロシア軍やシリア軍が日々必要とする
厖大な武器・弾薬等の補給を担っているのも主に黒海艦隊の輸送艦
だ。
 しかし、地図を見ると分かる通り、ロシア艦隊が黒海からシリア
沖合の地中海に出るには、ダーダネルス海峡とボスポラス海峡とい
う2つの狭い海峡を通過せねばならない。両海峡は両岸をトルコ領に
挟まれており、いざという場合にはトルコが海峡を封鎖してロシア
艦隊を通過できなくするのではないか……というのは誰しも想像す
るところであろう。
 しかも12月には、ボスポラス海峡を通過していたロシア海軍の揚
陸艦チェーザレ・クニコフ艦上で兵士が肩撃ち式対空ミサイルを構
えている様子が報じられ、トルコ側が挑発行為であるとしてこれを
非難するなど、海峡を巡る緊張が高まっていた。
 この「海峡問題」に関して、ロシア国防省系の「ズヴェズダーTV
」に興味深い記事が掲載されていたので以下にご紹介する(「ズヴェ
ズダーTV」は基本的にテレビ局であるが、公式サイトには長文の論
説記事が掲載されることも多い)。
(翻訳)
ドミトリー・リトフキン「もしトルコが海峡を封鎖したら:ロシア軍
の“プランB”」『ズヴェズダーTV』2015年12月11日
 もしアンカラが黒海と地中海の間の海峡を封鎖したら、中東のロ
シア軍へはどのように補給を行えばいいだろうか。
 その法的な根拠は今のところない。同海峡の航行は1936年に調印
された前世紀のモントルー条約ですでに規制されていた。この文書
によると、商業航行については平時であろうと戦時であろうと全て
の国が自由通航権を有している。しかし、軍艦の航行に関しては、
黒海の沿岸国か非沿岸国かで枠組みが異なる。黒海沿岸国は、平時
であればトルコ政府に事前通告の上、あらゆる種類の軍艦に海峡を
通航させることが可能だ。トルコが戦時状態にある場合または戦争
の脅威に晒されていると認識している場合には、同国は海峡をどん
な軍艦が通航でき、何なら通航できないのかを決定する権利が与え
られている。
 トルコが参戦していない戦争が発生している場合には、海峡は全
交戦国の軍艦に対して閉ざされなければならない。幾人かのロシア
人専門家が懸念するように、アンカラが黒海から地中海へのロシア
艦の通航をいつでも禁止できるのはまさにこの規定による。これに
ついてドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、「黒海の海峡通航
に関する手順は国際法であるモントルー条約によって規定されてお
り、我々としては当然、黒海海峡には自由通行規範があると見てい
る」と既に述べていた。
 と同時に、同報道官は、「トルコ指導部の行動を予測するのは極
めて難しい」とも認めた。言うなれば、何が起こってもおかしくは
ないのだ。
 こうした場合、モスクワはいかに行動すべきであろうか? 今のと
ころひとつだけ明らかなのは、アンカラとの戦争はいかなる場合も
あり得ないということだ。クレムリンはこの点を、今回の紛争の最
初から明らかにしていた。だが、トルコが海峡を封鎖したら、シリ
アにいる我が部隊集団への補給はどうしたらよいだろうか?
いざとなればイラン経由も
 トルコはどんな場合でもボスポラスとダーダネルスを封鎖するこ
とはないーー。こう話すのは、元黒海艦隊司令官のイーゴリ・カサ
トノフ提督である。同提督はまた、彼らが我々と敵対した場合の備
えができているかどうかについても仮想的なシナリオを描いてくれ
た。
 情勢が悪化した場合、シリアに展開する我が部隊集団には、たと
えばイランを経由して補給を行うことが可能である。戦時中でさえ
、米国の援助物資がレンドリースの枠内でソ連に運ばれていたのだ
。同提督によると、カスピ海やイラン領を経由したり、アラビア海
と紅海を通ってペルシャ湾に至る補給ルートは、黒海を通過するも
のより遥かに長くなる。
 だが、必要となれば、これを実行することは可能だ。運賃の上昇
により、軍事物資の送達コストが上昇することは許容できる。また
、わかっている限りでは、黒海艦隊の少なくとも3隻の揚陸艦が「シ
リア・トランジット」に常に従事している。1171型の「ニコライ・
フィリチェンコフ」と775型の「ツェーザリ・クニコフ」及び「アゾ
フ」である。このうち「ニコライ・フィリュチェンコフ」は艦内に
1500トンの装備及び物資並びに300?400名の上陸部隊、またはそれら
の代わりに装甲兵員輸送車45両ないし、輸送車両50両を搭載するこ
とができる。775型は艦内及び甲板上に装甲兵員輸送車13両又はトラ
ック20両など貨物500トンを搭載できる。
 これ以外には、550M型大型貨物輸送船(BMST)「ヤウザ」が活動し
ている。もともとは開発中止となった909型弾道ミサイル輸送艦「ス
コルピオン」を転用したものだ。技術仕様によると、この貨物船に
は戦略原潜に搭載されるR-29弾道ミサイル発射装置を8基搭載可能で
、それぞれの重量は40トンにもなる。ここから「ヤウザ」の積載重
量を割り出すことができよう。また、輸送作戦のためにトルコから
買い入れた船が数隻ある。紛争がさらにエスカレートした場合には
、これらの輸送船はイランのペルシャ湾岸にあるいずれかの港を陸
揚げ港とすることになろう。
“我が軍には恐れるべき根拠はない”…?
 シリアにおける空軍部隊への補給のために必要であるとなれば、
An-124「ルスラン」超大型輸送機を活用することも排除されない。
現在、空軍はこのような輸送機を26機保有しており、それぞれ120ト
ンの貨物を空輸できる。
 空輸は高価だ。しかし、はるかに機動的である。まさにそのルス
ランは、セルゲイ・ショイグ国防相の命令に従って最新鋭のS-400「
トリウームフ」防空システムをラタキアに二昼夜で展開させた。
 とはいえ、今のところ我が軍には恐れるべき根拠はない。ロシア
国防省によると、海軍の艦船は「海峡の通過に際して如何なる問題
にも遭遇していない」。
(中略)
 また、最終手段としては、地中海への入り口はもうひとつある。
ジブラルタルである。道のりは遠くなっても、存在してはいるのだ
。どんなときでも。
(翻訳終わり)
以前から指摘されていたロシア海軍の輸送能力不足
 以上、シリア作戦をロジスティクス面から解説したなかなか興味
深い記事である。第一に注目したいのは、トルコがボスポラス/ダー
ダネルス海峡を封鎖する可能性は低い、トルコとの全面戦争はあり
得ない、という比較的冷静なトーンが貫かれている点である。
 第二に、仮に両海峡が封鎖されても、ロシアのシリア作戦は続行
可能であるとしており、この意味でも海峡封鎖=対トルコ戦争となる
構図を回避しようとの意図が窺われる。
 だが、記事中でも触れられているように、ロシア海軍は自前の輸
送艦だけではシリアへの兵站を支えきれず、民間輸送船を海軍に臨
時編入している。別の報道によるとその数は8隻に及んでいるという
が、多くはトルコ船籍であるというから皮肉である(傭船した時点で
はトルコとの対立は発生していなかった)。
 ちなみにロシア海軍の輸送能力不足は今回初めて問題になったわ
けではなく、2008年のグルジア戦争でも顕在化していた。この結果
、ロシアがフランスに発注したのが2隻のミストラル級強襲揚陸艦で
あったが、ウクライナを巡る欧米との関係悪化の結果引き渡しが度々
延期され、最終的に契約はキャンセルされた。予定通りに引き渡し
が行われていれば、今頃ロシア海軍のミストラルが「シリア・トラ
ンジット」に奔走していたかもしれない。
 一方、ロシアはミストラルに代わる新型揚陸艦を国産する計画で
あるが、出現にはもうしばらく時間が掛かりそうだ。
 となると、ボスポラス/ダーダネルス海峡が封鎖されたり、トルコ
政府が自国の海運会社に対して対露協力をとりやめるよう圧力をか
けた場合には一時的にシリアに対する補給には問題は出そうだが、
他国船籍の貨物船を傭船することに大きな困難はない筈で、この意
味でも海峡封鎖は致命的なものとは言えない。
海峡封鎖は戦争の引き金にはならない
 もうひとつ、記事中ではAn-124超大型輸送機が「空の架け橋」と
して紹介されているが、ロシアがこれほどの長距離空輸能力を発揮
できるようになったのはごく最近の話である。ロシアがソ連から受
け継いだこれらの超大型輸送機は、整備予算の不足から次々と稼働
不能に陥っていたためだ。
 たとえばAn-124の運用を委託されているロシア国防省系の国営企
業「第224飛行隊(224LO)」によると、2004年の時点で稼働可能な
An-124は1機のみであったが、現在では10機を運用しており、今後は
ロシア空軍の保有機すべてを稼働体制とする計画であるという。
 これに先立つ2014年、ロシア軍はAn-124を用いてロシア南部に3000
人の兵力やヘリコプターを3日間で送り込むという緊急展開訓練を実
施しており、今回のシリア介入ではその実力が改めて実証された形
と言える。
 また、ロシアは今年7月、グルジア国境に近い北オセチアのモズド
ク基地を大型機の離着陸が可能なように突貫工事で改造し、An-124
をはじめとするシリア作戦の前進基地としていたことが知られてい
る。さすがのAn-124も、上限一杯に貨物を積み込むと航続距離が3000
kmほどに制限されてしまうため、貨物の積み込みはなるべくシリア
に近い南部の前進基地で行うという方式だ。
 モズドク基地はシリアに派遣された戦闘機の集結地点や、11月か
らシリア空爆に参加した大型爆撃機の前進基地としても利用されて
おり、さながらシリア作戦を支える後方拠点と言えよう。
 An-124に関して言えば、ほぼ毎日1便がシリアのアル・フメイミム
航空基地とモズドク基地との間を往復しているようだ。現在の稼働
機数を考えると、仮にボスポラス/ダーダネルス海峡が封鎖された場
合はこれを一日数往復程度まで増便することは可能であろう。
 まとめると、トルコによる海峡封鎖がロシアのシリア作戦を不可
能とするものではなく、したがって戦争の引き金となるものではな
いという点で筆者の見解はリトフキンと一致している。ロシアもト
ルコも当面は海峡問題をプレイアップするにせよ、政治的なパフォ
ーマンスとしての域は出ないのではないか。
 むしろ、海峡通過をはじめとする各種問題をレバレッジとして、
ロシア及びトルコ双方がどのような着地点を見つけるかが焦点とな
ろう。
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シリア大統領の処遇が焦点=米長官、ロ大統領らと会談
 【モスクワ時事】ケリー米国務長官は15日、モスクワを訪問し
、ロシアのラブロフ外相、プーチン大統領と会談した。プーチン大
統領は「米ロは共にシリア危機の解決策を探している」と述べ、ケ
リー長官は「前進に向けて共に多くのことができる」と同意した。
シリア情勢が主要議題で、過激派組織「イスラム国」(IS)との
戦いで調整を図る一方、和平に向けたシリアの政権移行におけるア
サド大統領の処遇が焦点となった。
 外相会談で、ケリー長官は「ISは共通の脅威だ」と述べ、シリ
ア情勢で米ロが協力する必要性を強調した。これに対してラブロフ
外相は「解決すべき問題が残っている」と指摘し、政権移行に参加
できる反体制派とテロ組織の線引きなどで、溝の深さを示唆した。
 シリア情勢をめぐっては11月24日、ロシア軍機がトルコ軍に
撃墜され、ロシアとトルコの関係が緊張。それぞれアサド政権、反
体制派に影響力を持つ両国の対立はシリア和平の動きを停滞させか
ねず、ケリー長官は自制を訴えたとみられる。
 米ロなどは18日にニューヨークでシリア和平に向けた外相級会
合開催を調整しており、ケリー長官の訪ロには、一定の成果を得る
ための地ならしの狙いもある。米ロは、政権移行に向けたアサド政
権と反体制派の交渉入りを目指している。
 ケリー長官の訪問は5月にウクライナ危機後初めてロシア南部ソ
チを訪れ、プーチン大統領らと会談して以来。ケリー長官は、前回
訪問時に「ウクライナ東部の停戦合意が完全履行されれば、欧米の
対ロシア制裁緩和に着手できる」と表明した。今回も「経済問題の
前進が重要だ」とラブロフ外相に述べ、対応を促した。
(2015/12/16-01:36)
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トルコに国境管理強化要請=IS対策で空軍基地訪問−米国防長官
 【エルサレム時事】カーター米国防長官は15日、トルコ南部イ
ンジルリク空軍基地を訪問し、過激派組織「イスラム国」(IS)
掃討に向け、トルコに対して隣国シリアとの国境の管理強化を求め
た。ロイター通信が伝えた。
 カーター長官は、シリアと約900キロの国境を接するトルコの
地政学的重要性を指摘し、「トルコの取り組みを評価しているが、
もっとやってほしい」と述べた。(2015/12/15-20:21)
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10:40 - 2015年12月13日sankenbori 
トルコの輸出先(2014年)の第1位はドイツ(9.6%)、2位はイラク
(6.9%)、3位は英国(6.3%)でロシアは8位で3.8%にすぎないか
らだ。ー黒木 亮
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ISを「封じ込め」で自滅させよう 
by masa_the_man | 2015-12-12 22:18
ISはなぜ自滅するのか
by イーライ・バーマン&ジェイコブ・シャピロ
http://www.politico.com/magazine/story/2015/11/why-isil-will-fail-on-its-own-213401

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アサド大統領 “テロリストとは交渉せず”
12月12日 7時28分NHK
内戦が続くシリア情勢を巡り、欧米諸国などがアサド政権と反政府
勢力との対話の実現を目指していることについて、アサド大統領は
、「テロリストとは交渉しない」として、反政府勢力側を強くけん
制しました。
泥沼化しているシリアの内戦を巡って、欧米や中東諸国などは、来
月1日までをめどにアサド政権と反政府勢力の間の対話を実現させ
る方針で、分裂状態となっている反政府の各勢力は10日、政権と
の対話に向けて統一組織を作ることで合意しました。
これについて、アサド大統領は、11日に配信されたスペインの通
信社とのインタビューで、「われわれは『反政府勢力』との交渉を
始める用意はあるが、それは『反政府勢力』の定義による」と述べ
ました。そのうえで「欧米などは、テロ組織を交渉に参加させて、
シリア政府がそうしたテロリストと交渉することを望んでいるが、
受け入れることのできない話だ」と述べました。
アサド大統領は、過激派組織ISと一線を画し、欧米などが支援す
る反政府勢力も「テロ組織」と呼んで敵視しており、テロリストは
交渉の相手にはならないとして、反政府側を強くけん制した形です。
また、アサド大統領は、反政府勢力やアメリカなどが要求している
自身の退陣について、「私はどんな環境、状況の下でも、シリアを
離れることを考えたことはない。私にはシリア国民の大多数の支持
がある」と述べて、改めて拒否しました。
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イラク、安保理に介入要請
トルコ軍撤退求める
2015年12月12日 11時04分
 【ニューヨーク、カイロ共同】イラクの国連代表部は11日、同国
北部モスル近郊に展開するトルコ軍部隊の即時撤退をトルコ側に要
求、国連安全保障理事会の介入を要請する書簡を安保理議長国の米
国に提出した。ロイター通信が伝えた。
 トルコはイラク北部で過激派組織「イスラム国」(IS)に対抗す
る地元部隊を訓練するため軍の派遣を継続する意向を示し、イラク
のアバディ首相は「主権侵害」と反発を強めている。提出した書簡
は、トルコが「再びイラクの主権を侵害することのないよう」求め
ている。



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