5566.世界経済悪化と戦争経済



ロシア経済は、マイナス成長の最悪な状態であるのに、シリアへ軍
隊を派遣し、トルコと戦争直前まで関係を悪化させている。プーチ
ンはロシア国民の経済不満を栄光復活で抑えている。
このような志向が徐々に増加してくる可能性がある。それを考察し
よう。       津田より

0.世界の経済状況
米国のFRBが12月に利上げをするのは、11月雇用統計が予想より
良いのでほぼ確実である。しかし、株価が日米欧ともに高いのは、
金融緩和でインフレを心配して株に資金をシフトしているからであ
る。本当に経済が良いわけではない。米国は比較的景気が良いので
、金融相場から抜けて実績相場にしようとしている。この転換点を
作るのが、12月の利上げである。

しかし、FRBも景気が非常に良いからではなく、高金利のハイイール
ド債(昔のジャンク債)に投資が集まり、この債券の暴落を気にし
ているのである。米銀行は、債権部門の利益率が落ちて、リスクの
あるハイイールド債にシフトしているので、この債券が暴落すると
、また2008年のような状況になると心配している。

世界景気が落ちたのは、2008年のリーマンショクによる株価の
暴落で資金がなくなったことで、中央銀行は金融緩和で資金を市場
に出して、資金を供給してきた。この資金の行き場が株であり、債
券なのである。

もう1つが中国の成長加速で、世界から資源を買い、資源国が豊か
になり、資源国や新興国が消費を伸ばしたので、世界はやっと回復
したのであるが、中国の成長が止まり、世界経済は急落すると心配
された。しかし、中国の消費は落ちずに維持しているので、日本も
2万円の株価を狙える経済状態にある。

世界経済は、しかし供給過剰・需要不足の状態が継続している。こ
の状態が続くと、本格的な景気の回復は起こらない。また、デフレ
経済に陥りやすい。中国の赤字輸出で鉄鋼業は世界の殆どの企業が
赤字になっている。

石油も米国のシェールオイルの生産で供給量が増えたのに、中国の
減速で需要が不足して、価格が40ドル程度と数年前の100ドル
以上と比べると1/2程度以下になっている。

1929年のウォール街暴落から1939年の第2次世界大戦まで
継続的に景気が悪かった状態に似ている。継続的に需要不足が起こ
っていた。長期停滞が起こり、貧富の差が拡大した。これと同じこ
とが現在起こっているのである。

この需要不足を解消するためには、1つには技術革新で今までの製
品を時代遅れにして、全く新しい製品群に置き換えることである。
もう1つが、戦争を起こして大量の破壊により、今と同じ商品を売
ることである。

この2つが、今の世界経済の供給過剰・需要不足を解決する方法で
あるが、1つ目の技術革新でもエネルギー革命を起こして、石油か
ら電気に主役を変える試みが世界的に行われようとしている。地球
温暖化による二酸化炭素の排出量の規制である。内燃機関からモー
ターへのシフトであり、エネルギーの主役を石油から電気にシフト
させ、その電気を自然エネルギーから取り出す方向にしようとして
いる。次の世界経済の転換を世界で引き起こそうとしているのだ。
これが現在、パリで開かれているCOP21の役割である。

1.ロシアの中東戦略は
もう1つが、中東での戦争であり、その戦争をプーチンが利用し始
めた。現在のロシア経済は最悪である。欧米からの経済制裁により
、ロシアからの輸出が制限され、かつロシアの欧州への逆制裁によ
り生鮮食料品の値上げがきびしい。ルーブルの価値は落ち、石油や
天然ガス価格は下落している。

このような時、国民は経済的な不満で政権を倒す行動に出るが、そ
れをプーチン大統領は、ロシアの栄光を取り戻すとして、国民の愛
国心を利用して乗り切るようである。このために、ロシアの偉大さ
を国民にアピールするために、東ウクライナが必要であったし、シ
リアが必要なのである。

これと同じ道をとったのが、ドイツのヒットラーであるが、国民は
歓喜することを知っているようである。政権を保持するためには必
要なこととして、プーチンは認識しているのであろう。国内政治の
ために海外に出ていく。しかし、この結果は悲惨であろうと思う。

この戦争で何を目的とするかの戦略がない。国民受けだけを狙って
いることで、利害対立がある国際政治の真っ只中に出ていくには、
あまりにも検討不足のような気がした。

案の定、トルコがシリア反政府勢力をサポートしているが、それへ
の空爆を敵対視していたが、この原因でロシア爆撃機を撃墜した。
プーチンとしては、ロシアの栄光に傷が付いたことで、国民の反発
を抑える必要があり、トルコの謝罪がないことで、トルコへの軍事
的な報復を行う可能性がある。経済的な報復では、国民感情が納得
しない。

プーチンは戦術家としては優秀であるが、戦略家としては失格であ
るとタルボット氏が言っていたが、まさにその通りになっている。

2.米国の戦略
トルコはNATOに加盟しているし、事前協議を米国と行っている
はずで、この撃墜は米国も了承している。欧州はロシアとの関係を
復活したいが、米国はロシアとの関係を復活したくない。ロシアと
の関係を悪化させて、米国はイスラエルとの関係を正常化させてい
る。

米国の中東戦略は今まで失敗続きであり、今後の戦略も期待できな
いが、戦争経済を大きくして、経済を復活させるつもりである。ロ
シアもそうである。国内景気を上げるには戦争特需が一番手っ取り
早く経済を立直させることができる。

米国は戦争を拡大させる気のようである。米国自体はなるべく戦争
の当事者にならずに、戦争に必要は兵器の供給を行う方向のようで
ある。戦争の当事者を多くしたほうが、言い換えると大規模な破壊
を多くした方が、供給量を増やせるので、ロシア対トルコなど中東
各国を巻き込んだほうが戦争経済は大きくできる。

もう1つが、米国の軍事費は、この数年共和党茶会派とオバマ大統
領が減額してきたが、中東イスラム国への戦争拡大でやっと軍事費
の増額ができるようになりそうである。その上にロシアが出てきた
ことで、これも巻き込むとより大きくできる。

米国経済を活性化させるには戦争経済しかない。やっと米国中枢の
要人たちも合意したようである。オバマも渋々了承した。

今まで米国経済を牽引してきたのが、新興国経済の拡大で建設機械
や自動車などであったが、この新興国経済が急減したことで、戦争
経済に活路を見出すしかないのである。

3.中東大戦争へ
その結末は、悲惨なものになる予感がする。戦争は始まると予測不
能になる。利害対立や感情的な憤激などで、今までは起こりえない
と思うことが起こる。

何が起こるかは、その場にならないとわからない。核兵器の使用が
いつか起こるのではないかと心配している。

イスラム国は、サダム・フセインが残した軍事組織とイスラム教の
ピュアーなワハープ主義が結合して、できた組織であり組織自体は
非常に近代化されている。スパイや同調者も世界に拡散している。

核兵器や核ゴミを手にいれる可能性があるので、心配である。

もし、核兵器が使用されると、核の応酬が起きて、中東地域全体が
人間が住めない地域になる可能性が出てくる。

さあ、どうなりますか?


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米株とハイイールド債、崩れた共振の構図
NQNニューヨーク 岩切清司
2015/12/5 9:00 nikkei
 4日の米ダウ工業株30種平均は急反発し、上げ幅は約3カ月ぶり
の大きさだった。労働市場の順調な回復を好感し、年末高への期待
を改めて高めた。ただ、市場に影を落とすのが米国の低格付けの高
利回り(ハイイール…
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NYダウ 370ドル近く上昇 雇用統計受け
12月5日 6時23分NHK
4日のニューヨーク株式市場は、アメリカの先月の雇用統計の結果
を受けて景気の先行きに期待感が広がったことなどから、幅広い銘
柄に買い注文が出てダウ平均株価は370ドル近く値上がりしまし
た。
4日のニューヨーク株式市場は、アメリカの先月の雇用統計で就業
者数が市場の予想を上回り、賃金も堅調に上昇していたことから景
気の先行きに期待感が広がりました。
また、ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁が訪問先のニューヨークで
追加の金融緩和に前向きな発言をしたことも投資家の安心感につな
がり幅広い銘柄に買い注文が出ました。
その結果、ダウ平均株価は大きく上昇し前日より369ドル96セ
ント高い1万7847ドル63セントで取り引きを終えました。
市場関係者は「雇用統計は全体的によい内容で、FRB=連邦準備
制度理事会は今月開く会合で利上げに踏み切るという見方が強まっ
ている」と話しています。 
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2015年 12月 4日 16:22 JST 
日経平均は急反落、ECB緩和策を失望 一時500円に迫る下げ
[東京 4日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は急反落。下
げ幅は一時500円に迫り、取引時間中で11月16日以来の1万
9500円割れとなる場面があった。欧州中央銀行(ECB)理事
会の結果が市場期待に届かず、ポジション調整の売りが先行。今晩
の石油輸出国機構(OPEC)の定例総会や11月の米雇用統計な
ど重要イベントを控え、押し目買いの動きも鈍かった。
ECBは3日、中銀預金金利をマイナス0.2%からマイナス
0.3%に引き下げたほか、資産買い入れプログラムの6カ月延長
を決定。ただ事前には、より大胆な追加緩和への期待感があったた
め、失望感から前日の欧米株が大幅に下落。円上昇も重荷となり、
幅広い銘柄に売りが出た。
ちばぎんアセットマネジメント・調査部長の奥村義弘氏は「ECB
の結果を受けて、これまで積み上げてきたポジションが巻き戻され
ている」と指摘。きょうの下げはやや行き過ぎの感があるものの、
「15─16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)などを見極め
る必要がある」として、積極的には手掛けにくいという。
東証1部全体の9割近くが値下がりしたほか、業種別でも全33業
種が下落し、全面安となった。不動産や海運、医薬品などの下げが
目立った。指数寄与度の大きいファーストリテ(9983.T)、ソフトバ
ンク(9984.T)、KDDI(9433.T)の3銘柄で日経平均を約102円
押し下げた。



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