5564.ECBの決定が期待値以下



今の世界経済は、金融緩和で持たせている。米国は利上げであり、
日本と欧州の金融緩和を期待している。そして、ドラギ総裁は、事
前に大きく金融緩和をすると思わせていた。そのため、ECBの量的緩
和を期待して、金融株が上がっていたが、今日は一転、失望売りで
株価は大きく下げているし、円安ユーロ高になった。

どこでもそうであるが、銀行貸出不足であり、それがコア消費者物
価指数(CPI)上昇率を2%の目標に押し上げられるほどに経済
成長の速度が上がらない。

このため、銀行の利益が減っている。このため、少し景気が回復し
てきた米国は利上げで銀行の利益を上げようとしている。欧州は、
利下げして、貸出量を上げようとしている。

日本は、ゼロ金利であり、金利政策はできないし、量的緩和をする
と円安になり物価上昇となり、消費を落とす事になるので、これも
できないということで、自業自縛の状態になっている。

根本にある原因は、供給過剰である。それに比べて需要が少ないこ
とであり、この問題がある限り、世界経済は上昇しない。1929
年のウォール街大暴落後、第2次世界大戦まで景気上昇をしなかっ
たと同様な状態なっている。

悲惨な状況にしたいために、ゼロ金利などの金融緩和や量的緩和な
ど、いろいろな政策を打っているが、根本の需要不足と富の偏在が
あり、経済を深刻な状態にしたいだけである。

そして、イスラム国を打倒するという戦争にロシアは傾斜している。

この政策は有効である。大戦争にして需要を作ることが必要という
ことをプーチンが理解しているように感じる。国家戦時経済にして
戦争兵器の需要を作るということである。弾丸、飛行機、戦車など
を大量に製造して戦地に送りという需要ができる。

そして、欧州の政治家も徐々に、プーチンの考え方に傾斜してきて
いる。

トルコや米国、サウジは、イスラム国打倒より、アサド政権打倒を
優先するし、トルコはクルド勢力を打倒したいというように利害が
食い違っている。ロシアは大戦争にすることが需要量を増やすこと
になる。味方も多い方がよいが、敵が多い方が良い。

いやな予感がするが、どうであろうか?


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2015年 12月 4日 10:33 JST 
コラム:失望誘ったECB追加緩和の「一石二鳥」
James Saft
[3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が3日に打ち出した
追加金融緩和策は、より深刻な政策上の失敗をせずに済んだと同時
に、金融市場の失望を誘ったが、これはかえって「一石二鳥」と呼
べるだろう。
ECBは中銀預金金利の引き下げ幅を0.10%ポイントにとどめ
、債券買い入れプログラムは増額せずに期限延長と対象範囲拡大の
み決めた。全体として市場の期待に届かず、欧州株は約3.5%下
落し、ユーロは急伸した。
しかしある面では、中銀預金金利の下げ幅を0.10%にしたのは
良かった。マイナス金利が進めばそれだけ、ユーロ圏経済が頼りに
しなければならない銀行貸出の環境が厳しさを増すからだ。
ハイ・フリクエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏は
顧客向けノートで「ユーロ圏を苦しめているのは銀行貸出不足であ
り、それがコア消費者物価指数(CPI)上昇率を2%の目標に押
し上げられるほどに経済成長の速度が上がらない理由だ。信用収縮
は銀行システムの資本不足が原因で、これはかつてないほどに自己
資本基準が引き上げられたことに関連している」と指摘した。
ユーロ圏の銀行が抱える問題は2層構造になっている。つまり資本
が必要という点と、もうけが得られる利ざやで融資をしなければな
らないという点だ。中銀の流動性供給とマイナス金利は前者にはほ
とんど効果がなく、後者には実害を及ぼす。
スイスでは1月以降に政策金利がマイナス0.75%まで下がった
が、住宅ローン金利は実質的に上がった。銀行にとって資金調達コ
ストは、国債利回りほど急激に低下しなかったからだ。
ECBは債券の買い入れ対象に地方債を加えた。毎月600億ユー
ロの買い入れで、条件に見合う国債がどんどん少なくなりつつある
中では必要な面があった。
もっともECBはせっかくの好機を逃したともいえる。もしよりリ
スクの高い、銀行のバランスシートで塩漬けになっているローン債
権をも買い入れ対象としていれば、貸出行動に好影響を与えられた
だろう。
<市場の甘え>
ECBがいわゆる市場との対話、つまり市場にサプライズを与える
という面で現実に問題を抱えているが、それは幼稚な期待に基づく
ものだ。ECBの理事会内に意見対立があるのは周知の事実である
とはいえ、むしろ問題なのは市場が自分たちの望む政策が約束され
、いつも適切なタイミングでそれが実施されると考えていることだ
ろう。
金融政策の透明化は適切な流れだ。しかし中銀は過去の発言に合わ
せて現実世界やイベントを作り変える能力までは持っていない。ユ
ーロ圏の危機においてECBのドラギ総裁が見せた英雄的な行動が
、自身や市場に有益に働く以上の過大な信頼性をもたらしてしまっ
たのかもしれない。
万物は流転し、金融政策も情勢に応じて変わっていく。だからこそ
フォワードガイダンスは、自分勝手なこどもたちに間違った教育を
施してしまった。フォワードガイダンスは恐らく市場を落ち着かせ
るが、短期的にも長期的にも相当なコストを支払わなければならな
い。
翻ってECBが市場の期待を裏切ったことが経済にもたらすコスト
を考え見ると、それほどの大きさでないのは確かだ。要は市場が現
実に順応するまでのボラティリティを甘受するか、あるいは先に示
唆した約束に固執して政策の間違いをそのままにするかを選ぶこと
になる。
米連邦準備理事会(FRB)を筆頭に世界中の中銀が政策の透明性
向上を進めようとしている。ただ、それが市場にショックを与えな
いことと同一視されてしまってもいる。
金融危機の間は、中銀が市場を鎮静化したいと考えることに十分な
妥当性がある。それでも危機モードの政策を続けるほど、物価上昇
率が極めて低く経済成長がさえない局面から抜け出せず、こうした
政策を維持するべきという意見の説得力は薄れていくように見える。
結局のところ、中銀の信頼性が大事だとむやみに唱える場合の問題
は、雇用や物価の目標達成に関することではなく、市場の期待通り
の政策を実行することと定義されるだろう。
ECBはもっとうまく政策運営できるので、今回の市場の混乱を過
剰に心配するべきではない。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見
解に基づいて書かれています。




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