5560.子供騙しの軽減税率論議



■子供騙しの軽減税率論議 ーB層宗教と宦官省庁が日本を蝕む
                    佐藤
●消費税軽減税率導入は、事業者の事務負担の増大(簡便措置の場
合は益税)を招く等、低所得者対策の効果に対して社会的コストが
大き過ぎる。
●加えて、軽減税率品目の線引き決定・見直しが財務省主計局の新
たな利権・天下りの温床となり、経済活動を委縮・縮小させる。
低所得者対策は、「給付付税額控除」等の合理的施策により行うべ
きである。
●そもそも大前提となる消費税再増税は、少なくともアベノミクス
を成功させた後に延期しなければ、日本を平成恐慌に陥らせる。
 
◆天下の愚策◆
日本は危機に在る。
外には、百年遅れの帝国主義に陶酔する中国の脅威が迫る。
一方、内には妖しい新宗教と宦官どもが、経世済民を妨げ国庫を蝕む。
 
前国会で安保関連法案が通り、政策論争は現在、平成29年4月に予定
される消費税の8%→10%増税に伴う低所得者対策としての軽減税率
導入に移った。
 
公明党は、安保関連法成立への協力を巡り、母体の創価学会信徒の
不興を買ったため、その対策として信徒ウケする軽減税率導入に固
執し、見返りを要求された自民党はこれを飲んだ。
 
軽減税率は、EU諸国で導入されており低所得者対策としての意味は
あるが、事業者の事務負担の増大を招く等、社会的コストに対して
効果が小さ過ぎる。
これらの結果、巡り巡って流通コストの増大とその小売価格への折
り込みを招く等、低所得者対策としても、十分な効果を発揮せず朝
三暮四に終わるだろう。
また、これに伴う簡便措置導入の場合には、逆に消費者が店に払っ
た税金が納税されず事業者の所得となる益税問題が発生する。
 
加えて軽減税率は、対象品目の線引き決定・見直しが財務省主計局
の新たな利権・天下りの温床となり、前述の事務負担と相まって経
済活動を委縮・縮小させる天下の愚策である。
 
消費税増税に対し低所得者対策を行うのであれば、諸外国で導入さ
れているように、原則として就労した上でなお一定所得に届かない
層に現金等を支給する「給付付税額控除」(これにより就労を促す
効果がある)等の合理的施策により行うべきである。
 
◆君側の奸◆
そもそも、今は軽減税率論議をしている場合ではない。
大前提となる消費税再増税は、平成26年4月の5→8%増税の失敗が示
すように、少なくともアベノミクスを成功させた後に延期しなけれ
ば、日本を平成恐慌に陥らせる。
 
財務省主計局は、政府の先の増税判断の際、タイミングを合わせた
財政出動と日銀に送り込んだ黒田総裁の金融緩和により束の間の景
気回復を演出し、またマスコミ、学会、財界による増税翼賛会を飴
と鞭により総動員し、先の増税を押し切った。
 
そしてその結果が、先日発表された今年度2四半期に渡るGDPマイナ
ス成長、即ちリセッションとなった。
これに対して、例えば大和総研のチーフエコノミストで熊谷亮丸(
みつまる)という財務官僚の成り損ねは、消費税増税のサンドウィ
ッチマンとしてTVでこれを散々煽ったが、言い訳ばかりで何の反省
も述べずにTV出演を続けており、厚顔ここに極まれりの感がある。
 
財務省主計局の幹部は、ほぼ全員が東大法学部卒のエリート(経済
の門外漢でありこれ自体問題だが)であり、この結果を全く予想出
来なかった程無能ではない。
 
しかし、増税を成し遂げた事務次官は省内で「中興の祖」として奉
られる等、華々しい天下り人生が待っているため、たとえ国の経済
がガタガタになり、場合によってはそれにより実際の税収が減るリ
スクを承知でも、この危険な企てに邁進する事が目的と化して、省
内出世の条件となっている。
そしてそれに逆らえば、総理大臣と言えども、マスコミを筆頭とし
た増税翼賛会と司法を含めた官僚機構の連携により失脚させられる
システムが出来上がっている。
 
◆安倍総理に胆力在りや◆
「税と社会保障の一体改革」という、あたかも内政の中長期の最大
課題のように言われている言葉がある。
しかし、これは逐次税金を上げ続け、社会保障をカットし続けるだ
けの、子供騙しの単なる算盤合わせの対処療法に過ぎず、政策課題
として完全に狂っている。
 
急激な少子高齢化で衰退に向かう社会は、明らかに仕組みがおかし
い。
日本は、隅々に蔓延る悪しき既得権で二進も三進も行かぬ雁字搦め
となっている。
このシガラミを絶ち、税と社会保障ならぬ「働き方と社会保障の一
体改革」によりガラガラポンで仕組みを変えなければ、日本の衰退
は止まらない。
そして、もしそこに踏み込めれば、安倍政権の唱える絵空事と揶揄
される「一億総活躍社会」にも目鼻が付き、無理筋と言われる「
2020年までにGDP600兆円達成」も不可能ではないだろう。
筆者は、将来もし確実にその筋道が付いたなら、経済成長による税
収増との見合いで本当に足らざる分について増税する事を否としな
い。
 
先ずは、正しき政策課題を掲げ来年7月に衆参同日W選挙を打ち、平
成29年4月に予定される10%への増税を取り止める事が出来るのか、
安倍総理の胆力が試されている。
                    以上

佐藤 鴻全



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