5557.中東の過激派対策におけるイランの役割



上記のような講演会が、笹川平和財団で開催されたので、昨日は聞
いてきた。しかし、講演内容、質問ともに普通の日本人では理解不
能である。それだけ、文化差があるようである。講演者も理解され
ずに、途方に暮れるし、我々も質問に答えてくれた感じがしない。

また、通訳も途中で、理解できずに通訳ができない状況になり、2
重の意味で難しい講演会であることを認識した。経典の民と八百万
の神では、普通の感覚が大きく違うことを今回も思い知らされた気
分であった。ということで、講演会で理解できた部分をつないで、
私が理解した範囲で書くしかないようである。

講演者は、テヘラン大学のダビード・フェイラヒー教授とモハンマ
ド・マスジャド・ジャーメイ博士である。今回の日本訪問を指揮し
たザハラニアン氏も少し話した。

(フェイラー氏、ジャーメイ氏)
中東のイスラム過激派のテロシズムは、宗教理論に基づいて実行さ
れている。1つには西洋的な帝国主義の行き詰まりからくるし、2
つには文明間の紛争という形になっている。この2つの中で、イス
ラム社会にはジレンマがある。

このテロシズムの理論は、サルフィー主義から純粋なワハープ主義
になり、アルカイダを経て、現在はタクフィール主義になっている。

この地域は複雑で、その複雑な地域の安定を米国は、イラク戦争、
サダム・フセインの殺害、アラブの春で完全に破壊した。政府組織
や官僚制度を破壊したので組織として、地域を取りまとめる者がい
なくなった。

イスラムの問題は、部族社会であり、ナショナリズムと同じくらい
アラビズムがあり、アラブ諸国がお互いに助けることであるが、一
方、他国への介入もすることになる。このため、国内資源以外を頼
ることになり、近代化ができずにサウジなどの石油を持つ国の金に
依存する。この金を使ってサウジはアラブ世界を分断する外交も行
うことがある。

この社会に過激派が台頭してきた。このテロリストに惹きつけるの
がイデオロジーの要素である。ピュアーなワハープ主義は、イスラ
ム以外を攻撃することを是としている。そして、その後サイド・イ
フブ派が1960年代から出てきた。70年代に大学に入り学生を
感化した。暗殺や抵抗運動が起き、多くが刑務所に入るが、そこで
囚人にその思想が伝搬することになる。アルカイダの現在のトップ
であるアイアマン・ザハディも、このような思想も持ち主であった。

このイフブ派+ワハープ派がISになったのである。反グローバル・
反近代化で思想を確立をして、その思想をモチベーションとして、
世界に思想を広げている。

しかし、テロリズムもグローバル化したことで、テロを拡散でき、
戦闘員の募集も世界にできる。WEBが彼らに力を与えているので
ある。そして、イデオロギーの思想の根本に宗教を使う。

イスラム教は、聖なる+預言者ムハンマドの言行(スンナ)を指導
者イマームが解釈をして、規範シャリーアにするが、この解釈を過
激にして、コーランでは人を殺すなとしているのに、同胞であるイ
スラム教徒に対しても殺戮をしている。

正規のイマームは、コーランの伝統的な穏健な解釈を踏襲している
が、テロリストたちは、コーランやスンナを直接解釈して、自分た
ちに都合よいように解釈している。このため、同胞に対してもテロ
ができるのである。もちろん、異教徒に対しては、それ以上にきび
しい。

このため、軍事的にイスラム国を倒しても、この思想がある限り、
新しいテロリズムが起きることになる。

テロリズムを根絶するためには、宗教教育が必要なのである。

イランは、5世紀から独自のストーリーでイスラム教を構築してい
るので、過激主義にはならない。2014年夏のバクダッド近くま
で、イスラム国が攻めてきたときも、自己犠牲の精神で、これを防
いだ。

イランは、思想的にもテロリストたちを戦う必要を述べている。

(ザハラニアン氏)
テロが起きると国家主権が犯されるが、国家は主権を守ろうとして
警察力を増やして集会などの規制をすることになり、国民の監視を
強める必要も出てくる。国民の権利を制限することになる。

また、EU内の自由な移動を認めるシェンゲン協定も止めるしかな
く、自由な地域社会の仕組みも壊れることになる。このようにテロ
が起きる社会は民主化ではなくなる。

米国は、イランなどの国家組織を潰しただけで、その混乱を正常化
せずに出て行った。このため、テロ組織が入り込める余地ができた
ので、それを止めるには、国家機能の正常化しかない。これをイラ
ンが行う。

そして、テロを潰すだけではダメで、テロに対抗する思想を作り、
それを地道に教育することである。

質問に答えた部分で面白いと思った部分は、
ドイツとフランスと移民政策が違い、フランスの植民地からの移民
には言語教育などがされていずに、ゲットー化しているが、ドイツ
は、移民を入れたのが新しいので、移民の同化政策として言語教育
などを最初に行うので、フランスのようなことにはならないという。

このため、2世、3世がフランス語ができないで、アラビア語で日
常会話して、フランス社会から阻害されるので、イスラムの過激思
想に染まりやすいという。これはイギリスでも同じである。


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