5550.アベノミクスは失敗か?



2012年12月の総選挙で自民党の安倍総裁は「輪転機をぐるぐる回し
てお札を印刷すればデフレを脱却して日本経済は回復する」と主張
し、選挙に圧勝した。

しかし、2015年7〜9月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比マイナ
ス0.2%(年率マイナス0.8%)と、4〜6月期に続いて2期連続のマイ
ナス成長だ。GDPデフレーター(物価上昇率)はゼロなので、名目成
長率(実質成長率+物価上昇率)もマイナスだ。これはもうアベノ
ミクス不況といっていい。と池田 信夫氏が言う。

また、デンマークの投資銀行サクソバンクのスティーン・ヤコブセ
ン最高運用責任者(CIO)も17日、安倍晋三首相の経済政策で
あるアベノミクスについて「すでに失敗している」と述べ、日本に
は円高が必要だとの見解を示した。

というように、アベノミクスは失敗であると評論家が言っている。

しかし、日銀は18日、2日間の日程で開かれる金融政策決定会合で
、景気や物価情勢の点検に入った。16日発表の7〜9月期の実質国
内総生産(GDP)成長率は2期連続のマイナスとなったが、個人
消費は底堅いとの見方を崩していない。設備投資も今後増えるとみ
ており、景気の基調判断は「緩やかな回復」で据え置く方向だ。19
日午後に黒田東彦総裁が記者会見する。

国内所得×人口をあらわすGDPを目標にして経済政策を運営している。
すると、生産年齢人口は毎年1%以上も減っているので、他の条件が
同じならGDPは1%減るのが当たり前になる。労働人口の減少を埋め
合わせる労働生産性が1%上がってやっとゼロ成長である。

ということは人口減少問題がある限り、経済成長はない。いくら移
民以外の政策をしても、焼け石に水である。

もう1つの問題が可処分所得の減少である。これは1人で支える高
齢者が多くなり、社会保障負担が多くなっていることによるので、
これも人口減少が関係している。

もし、移民政策をしないで、経済レベルを維持したいなら、社会保
障費の削減が必要になる。そうすると、高齢者の切り捨てるので、
その層の消費は期待できなくなる。

如何に移民政策が必要であることが、明白になってきた。

しかし、移民政策でも、安全保障上の問題を起こさないような最低
の制限を掛ける必要がある。テロが起きる環境にしたら、安全保障
で国内でもコストを掛ける必要がある。これは避けることが必要で
ある。

イスラム教徒は、難民・移民として日本には入れないことである。
イスラム教徒(特にスンニ派イスラム教徒)を入れてはいけない。

ということで、親日非イスラム教徒を積極的に移民として入れる政
策になる。

それ以外に、長期停滞から抜け出す方法がない。

さあ、どうなりますか?



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日銀、景気判断維持へ 消費底堅いとの見方崩さず 
2015/11/19 2:00 nikkei
 日銀は18日、2日間の日程で開かれる金融政策決定会合で、景気
や物価情勢の点検に入った。16日発表の7〜9月期の実質国内総生
産(GDP)成長率は2期連続のマイナスとなったが、個人消費は
底堅いとの見方を崩していない。設備投資も今後増えるとみており
、景気の基調判断は「緩やかな回復」で据え置く方向だ。19日午後
に黒田東彦総裁が記者会見する。
 物価上昇率も原油安の影響を除けば1%台前半で上昇率が高まっ
ており、日銀内では「基調は改善している」との声が多い。年80兆
円の資金を供給する現行の金融緩和を続けることで、2%の物価上
昇を目指すべきだとの見方が優勢だ。
 ただ海外経済の不透明感は根強く、企業経営者の心理に悪影響を
与える恐れがある。このところ原油価格が再び下がってきており、
エネルギー価格も含めた物価の上昇が遅れるリスクもある。人々の
物価上昇期待に悪影響を与えないか、慎重に議論する。
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2015年 11月 18日 08:16 JST 
インタビュー:アベノミクスは失敗、必要なのは円高=サクソバン
クCIO
[東京 17日 ロイター] - デンマークの投資銀行サクソバンク
のスティーン・ヤコブセン最高運用責任者(CIO)は17日、ロ
イターとのインタビューで、安倍晋三首相の経済政策であるアベノ
ミクスについて「すでに失敗している」と述べ、日本には円高が必
要だとの見解を示した。また、日本企業は為替を言い訳に改革を怠
っていると指摘し、利益の増加や生産性の向上などに努めるべきだ
と主張した。
コペンハーゲンに本拠を置くデリバティブ取引の世界的大手で、毎
年末に発表する向こう1年の金融市場に関する「大胆予測」でも知
られる同行だが、ヤコブセン氏はチーフ・エコノミストとしてその
予測の責任者も務めている。
インタビューは同氏が来日した17日に東京で行った。概要は以下
の通り。
――日本経済の現状をどうみるか。
「アベノミクスは失敗に終わったと思う。(「アベノミクス2.0
」として打ち出された)新三本の矢は、もはや矢ではない。構造改
革はどこに行ったのか」
「中央銀行が低金利政策をこれ以上継続しても効果がないことは政
策担当者や学識者も認めるところだ。むしろ財政政策に対する負の
影響が上回っているのが現状。
だからこそ日銀も追加金融緩和に踏み切っていない」
「日本の公的債務の対国内総生産(GDP)比はすでに高く、日銀
も政府も、本来すべき減税ができず板挟み状態になっている。
「日銀のバランスシートは今も拡大しているが、拡大のペース自体
は鈍化した。その傾向は今後さらに強まるとみている」
――為替について。
「ドル円相場の上昇に伴い資産価格は上昇してきたが、それも最終
局面に差しかかっている。一時的に130円まで上昇する可能性は
あるものの、1年後にはドルが下落し、2年後にはさらに一段のド
ル安が進むとみている」
「ドル下落は、私が2016年に起きると考える変化だ。ドル安に
なれば、コモディティ価格は安定し、新興国市場の投資意欲は高ま
り、ひいては日米欧の輸出セクターへの追い風となり、世界経済の
成長に寄与するだろう」
「もし私の予想が外れて来年ドル高が進むなら、世界経済は減速し
てデフレに直面し、新興国市場はさらなる危機に瀕するだろう」
――日本に求められることは。
「私は、日本に必要なのは円高だと確信している。
日本は今年を振り返り、低金利、エネルギー安、円安の1年の末に
リセッション(景気後退)に陥ったという現実を見つめるべきだ(
16日発表の7─9月期GDPが2四半期連続でマイナスとなり、
欧米の定義ではリセッション入りとされる)。
円安は資産価格を人為的に上昇させはするが、それは長期的かつ継
続的な企業の収益力強化や生産性向上に基づくものではなく、日本
経済の問題の解決策とはならない」
「通貨安政策を取ることは、いわば他国に負担を負わせて時間稼ぎ
をしているにすぎない。日本は本当にすべきことを見失った結果、
国内企業の設備投資は落ち込み、日本の競争力を大いに弱めた。
円安の恩恵を受けるのは主に輸出企業だが、同セクターがGDPに
占める割合は減少傾向にある。一方で、輸入価格の上昇により多く
の日本人の可処分所得は減っている」
「日本にはモーニングコールが必要だ。長い眠りから呼び覚まされ
なくてはならない。それができるのは円高だと思う。
日本企業はかつては円高、今は円安を盾に使って十分な改革を進め
ず、政府や取引先企業との近過ぎる関係を解消しないでいる。
しかし為替は言い訳にすぎない。問題は円ではなく、イノベーショ
ンやガバナンス、収益構造の改革、経済が政府の強過ぎる影響力か
ら脱することができるかなのだ」
(インタビュアー:植竹 知子 編集:高木 匠)
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なぜアベノミクスで不況になったのか
問題は「GDP600兆円」ではなく社会保障だ
2015.11.19(木)  池田 信夫
2012年12月の総選挙で自民党の安倍総裁は「輪転機をぐるぐる回し
てお札を印刷すればデフレを脱却して日本経済は回復する」と主張
し、選挙に圧勝した。それからまもなく3年たつが、その結果はどう
なっただろうか?
2015年7〜9月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比マイナス0.2%
(年率マイナス0.8%)と、4〜6月期に続いて2期連続のマイナス成
長だ。GDPデフレーター(物価上昇率)はゼロなので、名目成長率(
実質成長率+物価上昇率)もマイナスだ。これはもうアベノミクス
不況といっていい。
GDPは時代遅れの指標
そんな中で、安倍首相は「2020年ごろまでに名目GDP600兆円」とい
う目標を掲げた。2014年の名目GDPは約490兆円だから、これが実現
するには6年間で110兆円、つまり毎年20兆円(4%)近く名目GDPが
増えないといけない。どうやったら、そんな奇蹟が起こるのだろう
か?
今月の経済財政諮問会議に提出された民間議員4人の資料によれば、
「1%を上回るGDPデフレーター上昇率」と「2%程度の潜在成長率」
が実現すれば、600兆円は可能らしい。
たしかに計算上はそうなるが、上にみたように成長率はマイナスで
物価上昇率はゼロだ。諮問会議に出された日銀の資料では、潜在成
長率はゼロに近づいている。この民間議員の中でマクロ経済学者は
伊藤元重氏(東京大学教授)だけだが、彼はどういう根拠で名目成
長率が4%に急上昇すると信じているのか。
そもそも人口が減少する日本で、国内所得×人口をあらわすGDPを目
標にして経済政策を運営することが時代遅れなのだ。
特に生産年齢人口は毎年1%以上も減っているので、他の条件が同じ
ならGDPは1%減るのが当たり前だ。労働人口の減少を埋め合わせる
労働生産性が1%上がってやっとゼロ成長である。
潜在成長率はほぼゼロなので、名目GDPを110兆円も増やすには、毎
年4%のインフレを起こすしかない。インフレを起こすだけなら簡単
だ。たとえば日銀が日本に輸入される原油をすべて買い占めれば、
いくらでも物価を上げることができるが、それが4%でコントロール
できる保証はない。
「デフレ不況」という錯覚が愚かな経済政策を生んだ
労働人口の減少でGDPがゼロ成長になるのは当たり前であり、消費も
減少するのだから、物価が下がるのも当たり前で、「デフレ不況」
などと騒ぐことではない。特に日本の場合は中国という低賃金の国
が隣にあるので、輸入物価が下がるのは歓迎すべきことだ。
もちろん所得は高いほうがいいが、人々の生活水準を表すのはGDPで
はなく、1人当り国民総所得である。安倍首相は2013年に、成長戦略
の目標として「1人当りGNIを10年間で150万円増やす」と公約したが
、このGNIが国民総所得だ。
これはGDPに海外投資の収益を足したもので、昔使われていたGNP(
国民総生産)と同じだが、日本のようにグローバル化が進んだ経済
ではGDPとの違いはかなり大きい。
たとえば電機メーカーが国内で年間50億円の利益を上げていた液晶
の工場を台湾に移し、100億円の配当を本社に払うとすると、日本の
GDPは50億円下がるがGNIは50億円上がる。逆に台湾のメーカーが日
本の工場で上げた利益は、GNIにはカウントされない。
つまりグローバル化が進むと「GNI−GDP」は大きくなる。この20年
、実質GNIは一貫してGDPを上回り、その差は拡大している。2013年
度の実質GDP成長率は1.8%だが、GNI成長率は2.4%だった。トマ・
ピケティも「経済力を示す正しい指標は国民総所得であり、この点
では日本経済はそれほど悲観すべき状況ではない」と言っている。
アベノミクスが失敗したのは、人口減少の経済で名目GDPを増やすた
めにインフレを促進する不合理な政策を取ったからだ。その結果、
実質賃金が下がり、円安で輸入インフレになったため、人々は貧し
くなった。
もう1つの要因は、可処分所得の減少である。可処分所得とは、税金
や社会保険料などを引いた「手取り」の給料のことで、消費者の行
動はGDPではなく、可処分所得で決まる。それが図1のように2000年
以降、月5万円も減っている。成長率が鈍化しているのではなく、現
役世代は絶対的に貧しくなっているのだ。
消費支出も、これとほぼパラレルに減っている。消費は国民経済の6
割を占めるので、これが減り続けていることが、日本の長期停滞の
大きな原因だ。この原因としてよく消費税の増税をあげる人がいる
が、消費税の変わらなかった2013年までもずっと可処分所得は減り
続けている。
社会保障こそ行革のターゲットだ
2000年代には賃金も減っているが、もう1つの大きな原因は年金・医
療・介護などの社会保険料の増加である。日本の所得税はGDP比で5
%と、世界的にみて高いほうではないが、社会保険料はすでに6.1%
とそれを超え、今後の超高齢化社会で急増する。
次の図2は、鈴木亘氏(学習院大学)が、社会保障制度が今のままだ
と国民負担率(社会保険料と税の所得に占める比率)がどうなるか
を推計したシミュレーションだが、20年後の2035年には国民負担率
は60%に達する。分かりやすくいうと、給料の6割が天引きされるの
だ。
年金は積立方式に移行するなどの改革案もあるが、医療と介護はす
べて賦課方式(同時期の現役世代が負担する)なので、その負担は
激増する。2025年には現役世代2人で高齢者1人、2050年には現役1人
で高齢者1人を養わなければならないので、生活費は2人分になり、
国民負担率は80%を超える。
実際にはこんな状態になる前に年金会計が破綻するので、年金は大
幅に減額されるだろうが、現役世代負担が増えることは避けられな
い。消費の減少する最大の原因は、消費税の一時的な効果ではなく
、こうした超高齢化による貧困化の不安である。
アベノミクスが失敗したのは、このように日本経済を蝕む社会保障
の破綻に手をつけないで「GDP600兆円」などという夢想を語ってい
るからだ。高齢者の票を恐れる野党も、この問題には触れない。
与野党を通じて社会保障改革を論じているのは、河野太郎・行政改
革担当相だけだ。社会保障という莫大な無駄こそ、行革の最大のタ
ーゲットである。



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