5543.非正規比率4割の問題



日本の問題点は、非正規比率4割超えていることである。大会社で
も60歳で退職になり、それ以降は非正規雇用となる。大会社に勤
める50歳代の人に聞くと、子供の生まれるのが遅いために、まだ
子供が大学生であり、家のローンも残っているという。

60歳では年金も貰えない世代であり、会社からは月20万円で役
職も付かないと言われているようである。相当生活レベルを落とさ
ないとやっていけない。貯金を取り崩していくしかないようである。

しかし、政治家や評論家の議論を聞くと、60歳代の非正規化は当
然であり、そのために非正規率が上がるのは正常であるというよう
なコメントになっている。下記の記事がそれを表している。

どうもおかしい。正規化率を60歳から65歳までも上げて、正常
な家庭生活にすることが必要であると思うが、そうならないようで
ある。

若い人たちが活躍すればよくて、60歳以上の会社員は若い人に道
を譲り、貧乏な生活でも我慢せよということらしい。

年金の支給年齢を上げて、かつ非正規にすることが正常なのだとい
うことであり、団塊世代以降の人たちは行く手には苦難が待ち受け
ているようである。

さあ、どうなりますか?


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非正規雇用比率「4割大台乗せ」の正しい見方
背景に「高年齢者雇用安定法」の存在
関田 真也 :東洋経済オンライン編集部 記者 2015年11月09日TK
ついに、賃金労働者の4割が非正規になった――。11月4日に厚生労
働省が発表した、「就業形態の多様化に関する総合実態調査」ショ
ッキングな数字が踊った。パートや派遣など、いわゆる「非正社員
」が占める割合が、初めて全体の40%に達したのだ。1990年には20%
だった(総務省「労働力調査」)ことを考えると、25年間で実に倍
増である。
ネット上では、「アベノミクスがこうした事態を招いた」「これでは1
億総活躍どころか、1億総貧困社会だ」といった悲観的な反応が多い。
朝日新聞も、11月5日付朝刊で「高齢世代が定年を迎えて正社員が減
るなか、人件費を抑えたい企業が非正社員で労働力を補っている実
態が浮き彫りになった」と報じている。
しかし、実態を分析すれば、これらの見方は偏っている。どういう
ことだろうか。
率を押し上げた背景に、高年齢者雇用安定法の存在
使用者側の代理人として労働問題を扱う倉重公太朗弁護士は「『企
業が人件費節約のために、さらに非正規を多く用いている』という
のは、誤りなのではないか」と指摘する。率の増大を招いた大きな
要因として考えられるのは、2013年4月1日に施行された、改正高年
齢者雇用安定法だ。
急速な高齢化の進行や、2013年から厚生年金の受給開始年齢が引き
上げられたことに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が
増えることを防ぐ目的で作られた。もともと、全体の8割近くの企業
は、継続雇用制度を整備し、希望者を定年後も雇用していたが、そ
の対象者は労使協定の基準を満たす人などに限っていて、一定程度
の絞り込みがされていた。
改正高年齢者雇用安定法は、企業が労使協定で対象者を選別するこ
とを禁止。また、義務に違反した場合は企業名を公表する規定も設
けられており、企業も無視はできない。その結果、もともと正社員
として勤務していた人は、定年後も幅広く仕事を得るチャンスを手
にすることになった。企業側は、むしろ負担を増やしているとの見
方もできる。
実際、今回の調査でも、定年退職者の再雇用者の割合は、前回調査
の2010年の15.3%から17.5%に増加している。また、定年前に関係
会社やグループ会社に移る事例は、厚生労働省では明確に追跡し切
れておらず、そのような人は、今回の統計では、「パートタイム労
働者」としてカウントされている可能性が高い。そして、この「パ
ートタイム労働者」の割合も、前回の57.6%から60.6%に増加して
いる。
こうしたデータを総合してみると、結局のところ、元正社員の高年
齢者の再雇用などが増えたことが、4割の大台に乗った大きな要因な
のではないか、という実態が浮かび上がってくる。
ポジティブな非正規雇用が増えている
つまり、4年前と比較して「非正規」の割合が増加したことは確かだ
が、追いつめられた労働者がやむを得ず、というステレオタイプな
「非正規」のイメージとは異なり、法によって企業に義務づけられ
た制度により、労働者にとってポジティブな「非正規」雇用が増加
している可能性が高い。
「改正高年齢者雇用安定法が、非正規割合を押し上げた一つの原因
と言えることは確かだ。昨今の景気の回復によって、65歳以上の就
業割合は上昇傾向にあることを示している。メディアでは少し歪め
られた形で報道されているのではないか」(厚生労働省雇用・賃金
福祉統計課?山口美春氏)
確かに、今回の調査結果は、前回と大きく異なる点もある。非正規
を利用する理由のうち、「正社員を確保できない」という理由が、
前回の17.8%から26.1%と大幅に上昇している。企業が正社員を確
保する意欲は高いのに、人材が不足しているという現実もあるよう
だ。他方で、約30%の非正規社員が、正社員に変わりたいとの希望
を持っている。この部分がマッチングすれば、高年齢者の非正規が
増えた分を相殺してもよさそうだが、現実にはそうなっていない。
労働者側の代理人となって労働事件を多く扱う佐々木亮弁護士は、
「全くの想像だが、たとえば、非正規社員として10年、15年働いて
いた労働者を、雇う側が積極的に正社員として迎え入れるのだろう
か、という疑問がある。おそらく雇う側が正社員として雇い入れた
いのはこうした属性の労働者ではないのだろう」と話す。長期の雇
用を前提に考えると、企業のファーストチョイスになるのは、やは
り20代。雇う側が求める正社員像と、正社員になりたいと願ってい
る労働者の属性に、大きなズレが生じている。
また、依然として企業が「賃金の節約」を非正規雇用の目的に掲げ
ていることに大きな変化はない。これは、前回調査よりも5%割合を
落としているものの、全体の38.8%と今回も非正規を利用する最大
の理由となっている。非正規は、相変わらず企業にとって雇用調整
の手段になっていることが分かるだろう。
高年齢者雇用安定法も、結局もともと正社員だった人だけが恩恵を
受けられる仕組み。順調に正社員を続けてきた人と、レールから外
れてしまい従来から非正社員だった人との間で、「非正規」の枠の
中でも、格差が生じる状態になってきているということが、本質的
な問題なのではないだろうか。
「限られた賃金原資を元正社員の高齢者に取られ、非正規の方は
さらに追い詰められている。65歳までトータルで見たときの身分保
障、生涯賃金格差は、ますます顕著になっているというのが現実。
やはり、特権的な地位が法的に保障されている正社員と、不安定で
保護が極めて乏しい継続的な非正規社員という、『労労対立』の問
題を真剣に議論するべきだ」(倉重弁護士)
氷河期世代の非正規問題は、何も解決していない
正社員といっても、大企業で極めて安定的な身分が保障された人も
いれば、実質的には労働法が守られていない「ブラック企業」のよ
うな会社にいる人まで様々であるから、正社員という枠組みで一律
に区切ってしまうことには、もちろん議論もあるだろう。ただ、正
社員の80%にはある退職金制度が、非正規では10%にも満たず、賞
与についても正社員の86%にはあるのに非正規には31%しかない。
そして、この数値は、正社員については前回調査より微増している
が、非正規は減少している。
佐々木弁護士も「非正規の立場は、制度上正社員より不安定である
ことは明らかである上、月々の賃金だけでなく、生涯収入にも大き
く関わる格差が広がっている」と指摘する。10月10日配信の「中年
フリーター」の残酷すぎる現実でも指摘されているとおり、新卒で
の就職活動で氷河期にぶつかってしまった世代が、非正規として追
い詰められたまま歳を重ね、完全に取り残されているという現実は
、確かに存在する。
4割という数字は一見するとインパクトが強いが、表面的にヒステリ
ックな反応することは生産的ではない。真に解決しなければいけな
い課題は、まだ何ら解決していないということを、改めて認識する
ことが重要ではないだろうか。
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非正規比率4割超え:政府の正社員化要請は期待薄々 ?政府の役割
は社会保障・労使制度改革
石川和男2015年11月07日 21:42
一昨日付けの毎日新聞ネット記事や読売新聞ネット記事でも既報の
通り、厚生労働省が今月4日に発表した「平成26年就業形態の多
様化に関する総合実態調査の概況」によると、非正規労働者の割合
は、昨年10月1日時点で40.0%で、初めて4割を超えた。
 上記の発表と同じ日、厚労大臣名で、全国中小企業団体中央会に
対して、非正規労働者の正社員転換・待遇改善に向けた取組に関す
る要請がなされた。その趣旨は次の通り。
(1)非正規労働者は、正規雇用労働者と比べ、雇用が不安定、賃
金が低い、能力開発の機会が少ないといった課題。非正規労働者の
希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善を強力に押し進め
ていくことが重要。その結果、雇用の質が高まり、生産性の向上が
期待。
(2)不本意ながら非正規労働者として働く方への対策を強化する
観点から、@より安定した雇用を実現するために、「労働契約に期
間の定めがない」、「所定労働時間がフルタイム」及び「直接雇用
」という要素を満たす「正社員」への転換を図っていくこと、A非
正規雇用で働く方々の希望等を踏まえながら、勤務地限定、職務限
定、勤務時間限定などの「多様な正社員」への転換を推し進めてい
くこと、B希望や意欲・能力に応じて賃金、教育訓練、福利厚生等
の面で待遇の改善を進めていくことが重要。
(3)政府としても、ハローワークによる正社員就職の実現や、正
社員転換、職業訓練等に取り組む事業主に対するキャリアアップ助
成金による支援など生産性向上に向けた能力開発の取組等を行って
いるところ。各企業も、自社の就業実態を勘案しながら、非正規労
働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善に資する取
組を行うことが望まれる。
(4)貴団体におかれても、この取組の趣旨を御理解いただき、傘
下団体・企業等に対する周知啓発に向け、何とぞよろしく。
 政府も、こうした要請に効力があるとは決して思っていないだろ
う。経験的には、全く効果はない。この程度のことしかできないの
が、今の政府の限界だが、これは仕方のないこと。正規比率を増や
せ!などと政府が企業団体や企業に強制できるわけがない。
 経済全体が底上げされることは、経済構造上からも考えられない
し、中小企業や非正規労働者にまで波及するためには好況が相当期
間継続していく必要がある。現実味のある経済見通しを考えると、
どんなに頑張ってもせいぜい『緩やかな成長』しか見越せない。そ
れに見合った政策転換を目指すことが必要となる。
 マクロ労働市場の構造は、徐々に変化してきている。正規比率を
高める“是正”に努めるのではなく、この実態に合った社会保障や
労使交渉に係る制度改革を行っていくしかない。経済社会実態は制
度を慮ったりはしない。だから、制度が経済社会実態に追従してい
かなければならない。
 そのためには、財源が必要となる。政府が企業団体や企業に要請
すべきは、そうした財源確保のための制度改革に関する理解と協力。
政府は、それをきちんと行った上で、所要の法律改正案を国会に提
出し、国民の審判を仰ぐべきだ。政府の行うべきことは、そういう
こと。実は、政府全体としてはこれを重々認識しているはずだ。
 しかし、それでもなかなかできないのは、官僚の意識の問題とい
うより、政治家の意識の問題。特に与党の政治家たちに強い危機感
がなければ、こうした大きな改革はできやしない・・・。






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