5534.米国の中東戦略が見えてきた



米国のカーター国務長官は議会に3R戦略として、中東戦略を説明
した。シリア内戦に米国も地上の特殊作戦部隊を派遣し、米軍要員
を前線に近づける新たな措置を取り、爆撃の地点情報等を取ること
が目的である。

米国の空爆の効果が出ていないが、一方、ロシアの空爆ではイスラ
ム国の橋や道路を爆撃して補給ラインを破壊するなど、それなりに
効果を出している。ロシアは特殊作戦部隊である「ザルソン部隊」
や数十人の軍情報将校をイラク・シリアに派遣して、情報をイラン
情報部門から貰っている。米国はそのような情報部門があるイスラ
エルとも仲違いして、この地域の情報をもらえていない。情報格差
が空爆の結果に出ている。

ロシア空爆の効果が大きいことを米軍も認めて、その情報力の差で
あることを原因とみなして、現地に情報を得るために特殊作戦部隊
を派遣することになったようである。

無人機での情報収集も行い、空爆の効率化を行うようである。

しかし、この時、問題なのが、ロシア軍と米軍がシリアで遭遇して
戦闘になる可能性である。これを回避することが必要になる。

このため、シリア情勢を巡り、反政府勢力を支援する欧米や中東諸
国、さらにアサド政権を支えるロシアとイランの外相が一堂に会す
る会合が、30日に開かれることになり、この特殊部隊同士の戦闘
回避も話題になるはずだ。

また、自由シリア軍のホッサム・アリ-アヴァク准将は、ロシアとの
協力の可能性も有り得るとし、「我々の立場は、政治面ではロシア
とは異なっているが、我々はロシアを信頼している。『IS(イス
ラム国)』との戦いにおいて協力すれば、実りある結果がもたらさ
れるだろう。

現在、自由シリア軍司令部は、意見の食い違いに苦しんでいる。司
令部のメンバーはそれぞれ、軍の行動プランについて様々な見解を
持っている。我々は『IS』や『アル-ヌスラ戦線』に反対している
が、もしロシアとの間で合意ができれば、それはイニシアチブのレ
ベルにとどまらず、新たな司令部の形成につながるだろう。」とい
う。

ロシアもスンニ派とシーア派の対立のどちらにも味方するわけでは
なく、中立であり、このため、サウジアラビアなどもロシアの協力
を受け入れている。

そして、そのロシアは、先週の4か国会合で、戦闘を停止したうえ
で1年半以内に大統領選挙と議会選挙を実施し、アサド大統領が立
候補する可能性も残した和平案を提案した。

このロシアの案を米国も受け入れることになると見る。

米露がイスラム国攻撃で手を組んで行くことになる。米国は、ロシ
アに中東の主導権を渡して、南シナ海での中国との対決を優先する
可能性が出てきている。

さあ、どうなりますか?

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米ロ、シリアに特殊部隊投入か 
戦場で直接相まみえる懸念も
2015年10月29日(Thu)  佐々木伸 (星槎大学客員教授)WEDGE
シリア内戦に米ロがそれぞれ地上の特殊作戦部隊を派遣し、両国が
紛争の泥沼に一段と深くはまり込む様相となってきた。とりわけロ
シアはウクライナ東部に展開していた特殊部隊の一部をシリアにす
でに配備したもようで、双方が今後戦場で、互いに敵方で遭遇する
懸念も高まっている。
先手はプーチン
 特殊部隊の派遣で先手を打ったのは今回もロシアのプーチン大統
領だ。米紙などによると、ロシアの特殊部隊のシリア派遣はこの数
週間のうちに行われ、米国防総省当局者も確認している。「ザルソ
ン部隊」と称されるこの部隊は米国の特殊部隊「デルタ・フォース
」に酷似しており、今のところ30人から40人という小規模な派遣に
とどまっているもようだ。
 ロシアはこの特殊作戦部隊とともに、シリアの軍情報機関と連携
するため、数十人の軍情報将校も急派した。特殊部隊の任務は表向
き、戦闘に直接参加するというよりも、シリア政府軍とロシア空爆
作戦の調整を図るのが主要な役割。シリア政府軍とともに行動して
空爆が正確に行われるよう誘導することが当面の目的のようだ。
 しかし、無論裏の任務もある。それは、これまで指摘してきた通
り、過激派組織「イスラム国」(IS)に加わっているチェチェンやダ
ゲスタンなどロシア出身者の“過激派狩り”だ。プーチン氏は「
7000人ものロシア過激派」が合流しているとしており、特殊部隊の
投入で本腰を入れてこの裏の作戦に取り組む考えと見られる。
 9月末に始まったロシアの空爆作戦はちょうど1ヶ月になろうとし
ているが、空爆の頻度は1日平均80回も行われる激しさで続いている。
攻撃目標もアサド政権に敵対する北西部の反体制派の拠点に集中し
ており、ISに対する攻撃は少ない。こうした中で、プーチン大統領
の支持率は今回の介入で急上昇、ある調査では89.9%と歴史的なレベ
ルにまで達している。
後手に回ったオバマ
 次々に新しい手を繰り出してくるプーチン氏に対し、米国のオバ
マ大統領は後手に回る一方だ。米国は昨年夏から対IS空爆に踏み切
ったが、「弱体化させ、壊滅する」という目標は全く達成できず、
空爆作戦は機能していない。これに苛立ちを深めているのが大統領
の任期が1年3ヶ月を切ったオバマ氏だ。
 オバマ氏は10月初旬、膠着状況に陥っているイラクとシリアの対
IS戦争について、戦況を変える提案を早急に作成するよう国防総省
に要求した。これを受け、国防総省が作成した案は(1)シリアへの限
定的な特殊部隊の投入(2)イラク駐留の軍事顧問団がイラク政府軍と
ともに前線に展開、というものだ。
 シリアに「飛行禁止空域」を設定するという案は、膨大な人員と
戦費がかかるため大統領に提案する前に、カーター国防長官、ケリ
ー国務長官らによって除外された。シリアの戦場へ特殊部隊が配備
されるのは、人質救出やIS急襲作戦など緊急のケースを除けば、初
めてのことだ。投入されるのは「デルタ・フォース」 と見られるが
、反体制穏健派とクルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)ともに作戦
行動し、助言などを行う見通し。
 またイラクの前線に米顧問団が配備されるのも初めてだ。イラク
には3500人の顧問団がいるが、これまでは後方から作戦の立案、助
言を行ってきた。米顧問団は当面、イラク西部アンバル州の州都ラ
マディの奪回作戦でイラク軍とともに行動する見通しだ。
 「デルタ・フォース」は2003年から2011年までの米軍のイラク駐
留で、ISの前身のアルカイダ系過激派の掃討作戦に従事した。ISが
昨年、シリアか らイラクに侵攻、北部のモスルなどを占領した後に
急きょ、イラクに戻され、北部クルド人地域のアルビルに駐屯地を
構えた。
 今年5月には、シリア東部でISの幹部に対する急襲作戦を行って情
報入手で大きな成果を挙げた。10月22日には、クルド人部隊との共
同作戦で、イラク北部にあったISの捕虜収容所を襲い、処刑寸前だ
ったクルド人ら69人を解放した。しかしこの際、デルタ・フォース
の1人が死亡、2011年の米軍撤退以降、初めての米兵戦死者も出して
いる。
 今回の案はオバマ氏が今週中にも承認する見通しだが、対IS戦争
で米国が地上戦に参加するという大きな一歩を踏み出すことになる。
またシリアでは米ロの特殊部隊がそれぞれ敵対する反体制派、アサ
ド政権軍とともに作戦行動することになり、両部隊が前線で衝突す
ることにもなりかねない。
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シリア巡り関係国の外相会合開催へ
10月29日 6時02分NHK
内戦が続くシリア情勢を巡り、反政府勢力を支援する欧米や中東諸
国、さらにアサド政権を支えるロシアとイランの外相が一堂に会す
る会合が、30日に開かれることになり、内戦の終結に向けた道筋
を見いだすため、双方が歩み寄れるかが焦点となります。
ロシア国営通信は28日、外務省関係者の情報として、オーストリ
アの首都ウィーンで29日と30日にシリア情勢を巡る関係国の外
相会合が開かれることになったと伝えました。
初日の29日にはアメリカとロシア、それにトルコとサウジアラビ
アの4か国の外相が先週に続いて協議を行い、30日にイランをは
じめ、エジプトやフランスなどの外相が加わり、拡大会合を開く予
定だということです。
ロシアは、先週の4か国会合で、戦闘を停止したうえで1年半以内
に大統領選挙と議会選挙を実施し、アサド大統領が立候補する可能
性も残した和平案を提案したと伝えられています。
今回の拡大会合には、ロシアとともにアサド政権を支えるイランが
初めて参加することになったため、ロシアとしては、先の会合で提
案したとされるアサド大統領が政権を維持する可能性を残した和平
案を軸に、協議を主導していきたい考えとみられます。
一方、反政府勢力を支援する欧米やサウジアラビアなどはアサド大
統領の退陣を求めていて、内戦の終結に向けた道筋を見いだすため
、今回の会合で双方が歩み寄れるかが焦点となります。
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自由シリア軍 ロシアと協力する可能性あり
2015年10月28日 16:00(アップデート 2015年10月28日 16:03)sputniknews.com
自由シリア軍のホッサム・アリ-アヴァク准将は、ロシアとの協力の
可能性も有り得るとした。
准将は、ラジオ・スプートニクのインタビューに応じ、次のように
述べた―
「我々の立場は、政治面ではロシアとは異なっているが、我々はロ
シアを信頼している。『IS(イスラム国)』との戦いにおいて協
力すれば、実りある結果がもたらされるだろう。
現在、自由シリア軍司令部は、意見の食い違いに苦しんでいる。司
令部のメンバーはそれぞれ、軍の行動プランについて様々な見解を
持っている。我々は『IS』や『アル-ヌスラ戦線』に反対している
が、もしロシアとの間で合意ができれば、それはイニシアチブのレ
ベルにとどまらず、新たな司令部の形成につながるだろう。」
自由シリア軍は、多くの武装グループからなる戦闘集団で、アサド
政権転覆をめざし戦っている。
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シリア政権移行へ協力確認=サウジ国王と電話会談−米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は27日、サウジアラビアの
サルマン国王と電話で会談し、シリアの政権移行実現や過激派組織
「イスラム国」掃討で、緊密に協力することを再確認した。ホワイ
トハウスが発表した。
 米サウジ両国外相は23日、ウィーンでロシアとトルコを交えて
シリア内戦の解決策などを協議。30日にも外相級による再協議が
予定されており、オバマ大統領はサウジと協力して、アサド大統領
退陣に反対するロシアを説得したい考えだ。(2015/10/28-09:08)
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「イスラム国」掃討強化=直接行動辞さず−米国防長官
 【ワシントン時事】カーター米国防長官は27日、上院軍事委員
会の公聴会で証言し、過激派組織「イスラム国」掃討作戦について
、シリアやイラクで友軍地上部隊の支援を強化したり、急襲作戦を
さらに実施したりするなど拡充を図ると表明した。
 長官は、同組織の「首都」であるシリア北部ラッカへの軍事圧力
、イラク中西部ラマディの奪還、急襲作戦の三つを焦点として列挙
。シリア北部で空爆の増強を見込んでいると述べたほか、「地上で
の直接行動」を活用した急襲作戦の遂行も辞さないと強調した。
(2015/10/28-06:32)
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シリア反政府勢力 ロシアの和平案を拒否
10月28日 6時58分NHK
シリアの内戦終結に向けたロシアによる和平案について、シリアの
反政府勢力の統一組織は、ロシアはシリアの市民に対して空爆を行
っていると非難し、拒否する立場を明らかにしました。
シリア情勢の打開に向けて、先週行われたアメリカとロシアなど4
か国による外相会談で、アサド政権を支持するロシアは、1年半以
内に議会選挙と大統領選挙を実施して、政権を樹立するとした和平
案を提案したとされています。
アメリカなどが支援する反政府勢力の統一組織「シリア国民連合」
のスポークスマン、ジョージ・サブラ氏はNHKの取材に対し、ロ
シアが過激派組織IS=イスラミックステートを対象に行っている
とする空爆を非難しました。
そして、「ロシアには仲介者の資格がない。シリアの子どもや市民
、病院を空爆している者から政治的解決策を受け入れるのは不可能
だ」として、和平案を拒否する立場を明らかにしました。
また、選挙についても「シリア人の多くが国外に逃れたり、国内で
避難生活を送るなかどう選挙を行うのか」と述べ、実現性に疑問を
呈したうえで、新たに樹立される政権にアサド大統領が参加するこ
とも認めないとしました。
先週、外相会談を行った4か国は今週にも再び協議を行いたいとし
ていますが、反政府勢力がロシアの主導で進む和平交渉を拒むなか
、こうした勢力を支援してきたアメリカなどの対応が注目されます。
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米、シリアに軍事顧問派遣か 穏健派支援で
2015/10/27 17:58   【共同通信】
 【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は27日まで
に、オバマ政権が過激派組織「イスラム国」掃討のため、シリアへ
の軍事顧問団派遣など、シリア、イラク両国で米軍要員を前線に近
づける新たな措置を検討していると報じた。
 軍事顧問を新たに派遣する場合でも人数は限定的な水準にとどま
るが、同紙は新たな措置が実施されればシリア、イラク両国での米
軍事介入の重要な拡大を意味することになると指摘している。
 オバマ大統領が週内にも採用するかどうか正式決定する見込みと
いう。



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